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転生保険とかいう悪徳詐欺を許すな  作者: 入道雲
第三章 レインティシア・イリア教皇国
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第73話 謁見

いつも読んで下さって有難うございます!

読者の皆様のお陰で楽しく書けております!


正午を過ぎてから凡そ2時間、漸くそびえ立つ強固な壁が姿を覗かせてきた。


「あら~、すっごく高いわねー!」


「初代教皇が最初の外壁を創造し、更に4代目、11代目が新たな外壁を同心円状に形成して国土を徐々に拡げていったそうだ」


ずっと見上げていると首が痛くなりそうだ。オーガス王国のソレより数メートルは高い上に、微弱ながら魔力らしき不思議な力も感じられる。鉄壁の要塞だな。


俺がじっくりと観察をしていると、不意にセリンさんが指示を出してきた。


「コバヤシ、コンゴウ。念の為、現時点から魔力を最大出力の4割に抑えておけ。そして、国を出るまで維持し続けろ」


「どうしてですか?」


「理由は数点ある。が、私の懸念事項から説明は避けるべきだと判断している」


まぁ、出力を抑えるくらいお茶の子さいさいだから別に構わないけど、秘密にされると余計に気になっちゃうよな。


「細かい事は考えないで、出力を制御しろってことね!任せて!」


これ程手厚く守られている国だ。国内での戦闘なんてまず有り得ないだろうし、消費を抑えられるという観点から見ても4割キープにはメリットしかない。


「それから、言語に関しては案ずるな。オーガス王国のソレと酷似している」


「助かりますね。ギド帝国の時は大変でしたから」


「アタシはまだ完璧じゃないのよね~。ずっとギドにいたから」


全員が出力調整を終え、レンツ車を堅牢な門扉に近付けていくと、門兵の1人が笑顔で話しかけてきた。


「ようこそ我が国へ!先ずは荷台の中身を拝見してもよろしいですか?」


「構わん」


かなり友好的だな。“人族至上主義”を掲げている宗教国家だから、もっと厳めしい雰囲気を予想していたのだが……。百聞は一見に如かずとはよく言ったものだ。


荷物を確認されている間に、もう片方の門兵が問いかけてきた。


「入国前に、確認事項が2点ございます。ご協力頂けますでしょうか」


「無論だ」


「では1点目、お三方の信仰している宗教をお教え願えますか?」


おっと、いきなり来たな。嘘を吐くべきなのかもしれないが、他国から来た旅人が全員イリア教を信仰しているというのも変な話だよな。う~ん……。


「ファリス教だ。オーガス王国出身なのでな」


即答するセリンさん。え、大丈夫なのか?


「なるほど、有難うございます!残りのお二方は?」


おや?他宗教にも寛容なのか?どちらにせよ、この世界で無宗教は殆どいないだろうから、俺も詐欺女神教と答えておくか。


「僕もファリス教です」

「あ、アタシも!」


「そうですか!素晴らしいですね。ファリス教は唯一神イリア様の別のお姿。言わば我々は同士!歓迎いたします!」


あー、そういう考え方なのか。しかも実際間違ってはいないし。良かった良かった。


「次いで2点目ですが、お1人だけエルフ族が混じっていらっしゃいますね。余程特別な事情でもあるのでしょうか」


先程と変わらぬ口調で問いかけてくる門兵の笑顔を見て、背筋を冷たい汗が伝う。


この瞬間に確信した。どうしようもないレベルで根付いているのだ。決して揺るぎない地盤の下に、強いイデオロギーが。


現に兵士は彼女に一瞥もくれていない。俺か金剛に答えを求めているのだ。代わりに対応するしかない。


「1つ修正させて頂くと、彼女はハーフエルフです。フェート大森林を抜けるにあたり、僕達2人を助けてくれた大切な恩人です。どうか、入国を許可して頂けないでしょうか」


なるべく丁寧に、細心の注意を払って言葉を選んだ結果返ってきた反応は、意外なものだった。


「あぁ、勘違いさせてしまったようですね!申し訳ありません!例え人族以外であっても入国は可能ですよ。ただ、イリア教皇国では大変珍しい種族ですので、街中ではフードを被ることをお勧めします!目立ってしまいますからね!」


「荷台の確認も完了しました!ようこそ我が国へ!どうぞお入り下さい!」


立派な門扉の横にあった兵士の出入り口と思しき扉から、割合すんなりと入ることが出来た。第一関門突破、なのか?


「少し意地悪だったけど、想像よりは大分優しかったわね!もっとおっかない国だと思っていたわ!」


「……だといいな」


言葉に刺々しさはあまり無かったが、言動の端々から彼らの思想が滲み出ていた。


ふと気になって振り返ると、入り口が閉じる寸前に門兵が何かを握りしめているのが見えた。まるでガッツポーズをしている風な動きをしていたが、アレは一体……。


「先を急ぐぞ。付いてこい」


「あ、はい」


いつの間にかフードを被っていたセリンさん。予め用意していたのか。第零部隊だ、身を隠す道具などいくらでもあるに違いない。


それよりも、謁見となると種々雑多な手続きやら何やらで相当時間がかかりそうだな……。


と、思っていた。ほんの数時間前までは。


「教皇様との謁見ですか、大変運がよろしいですね。日頃の行いが良いのでしょう。1時間程お待ち下さい。案内いたします」


「あ、有難うございます」


国の中心に位置する大聖堂をモチーフにした荘厳な城、その城門に配置されていた兵士は、明らかに国民ではない俺達を見て「ようこそイリア城へ!ご用の方は入口すぐ横に座られている女性にお声がけ下さい」と敬礼をし、元の位置へ戻って行った。


そう、身体検査の類は一切無かったのだ。物理的な検査は勿論のこと、魔法によるチェックも無い。守りに絶対の自信があるのか、はたまた罠なのか。判別がつかない。


城に入り、言われた通りにシスターの格好をした女性に突然の非礼を詫びつつ謁見に都合の良い日程を尋ねた結果が、あの返答だ。


楚々として立ち上がり、階段を登っていく彼女を見送りながら、後ろに立っていたセリンさんに尋ねる。


「これ、どうなんですかね」


「不自然なのは間違いない。しかし、目的までは伺い知れない。油断はするな。出力にも留意しろ」


「分かりました」

「そうね。ちょこっとおかしな空気が漂っている気がするわ」


様々なケースを想定して時間を潰している内に、受付をしてくれた女性が降りて来た。


「大変長らくお待たせいたしました。準備が整いましたので、どうぞ付いて来て下さい。足元にお気を付けて」


依然として相手側の目論見が読めない。武器を持たずに戦場に駆り出される新兵の気分だ。交渉の主軸は人族である俺か金剛になるに違いない。あらゆる“最悪”に備えろ。


二階に昇り、豪奢な扉の前に立った時点で覚悟を決めた。万全には程遠いが、最善を尽くそう。

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