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転生保険とかいう悪徳詐欺を許すな  作者: 入道雲
第三章 レインティシア・イリア教皇国
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第70話 四面楚歌

いつも読んで下さって有難うございます

今後は隔日更新を再開しようと思います

「お疲れ~!小林ちゃん凄いじゃないの!突然戦闘が始まったのにはビックリしちゃったけど、互角以上に戦ってたじゃない!!」


「向こうは本気じゃなかったよ。小手調べって印象かな」


「だが実際、貴様独自の魔法や使用のタイミングは中々に卓越していた。今後次第では“十指”は超えられるだろう」


「あ、有難うございます」


ド直球の褒め言葉がぶん投げられるとは予想外だ。素直に嬉しい。


「結局、話はどうなったの?」


「そうだな、飯でも食べながら説明するよ。保存食はまだ残っているだろ?」


「ってことは、村には入れないの……?」


「そこら辺も諸々説明するからさ、準備を頼む」


「は~い」


露骨にしょんぼりとする金剛。更なる追い討ちをかける俺を許してくれ。


激戦の後に頼まれた“おつかい”の内容を聞いた彼女は、珍しく真剣な表情で尋ねてきた。


「本当にイリア教皇国に行くの?セリンちゃんもいるのよ?」


どうやら人族至上主義に関しては既知だったらしい。確かに俺も気に掛けていた点だ。


「構わん。有象無象に多少見下されるだけだ。或いは“火の粉”が降りかかるかもしれんが、都度払えばいい。強いて言えば、教皇国はレインティシアの北に位置し、一年を通して気温が低い。降雪下での戦闘に慣れていない貴様らの方が寧ろ心配だ」


い、イケメン過ぎる……。それよりも雪か、対策を考えておかないとな。


「出発は早朝。加えてコバヤシは消耗している。“反動”の負担を考慮し、今夜は二交代制で見張りを行う。異論無いな?」


「ええ!今日は全く動いていないから、そのぐらいお茶の子さいさいよ!」


眩しい……!セリンさんこそ女神なのではないだろうか。彼女の爪の垢を詐欺女神に煎じて飲ませてやりたい。


「お2人とも、ご配慮感謝いたします。お言葉に甘えて休息に専念します」


「水臭いわね!アタシとコバヤシちゃんの仲じゃない!」


「……それもそうだな。じゃ、お先に」


「おやすみ~!」


──────────── 


翌朝目が覚めると、丁度セリンさんが朝食を用意しているところだった。


「コバヤシ、いけるか?」


つまらない見栄を張っても意味が無い。偽りなく答えよう。


「どれだけ頑張っても全力の6割しか出せませんね。最低限は動ける、といった感じでしょうか」


「相分かった。留意しておこう」


「あら、あの子が例の護衛?なんだか怯えているみたいだけれど」


村の入り口を見ると、“賢者”に引きずられるように歩く女性が目に入った。見た目からしてこの場にいる誰よりも年上な筈だが、金剛の言う通りプルプルと体を震わせており、魔力もブレッブレだ。早くも先行きが不安になってきた。


「「おっはよー!」」


「おはようございます」

「おはよう!後ろに隠れている子がアタシ達を支援してくれるの?」


「そう!」

「さ、自己紹介して!」


「リリ、リリーラ・ソル・ポエトです。あぁ、どうしてこんな目に。精霊様……」


消え入りそうな声で自己紹介をして祈りを捧げる様子を見て、堪らず双子に目を向ける。


「だいじょーぶ!安心して!!」

「近接戦闘はからっきしだけど、魔法にはちょー期待していいよ!ワタシ達のお墨付き!」


「お止め下さい……期待値を上げないで下さい……」


「ホントに大丈夫かしら?」


「経験からくる直感でしかないが、存外役に立つやもしれん」


へぇ、セリンさんがそこまで言うんなら、心配ないかもな。


「立ち往生しても仕方ありませんし、出発しましょうか」


「御者は金剛、私とコバヤシはこやつに何が出来て、何が出来ないのかを聞き出しておく。大森林では情報不足による連携ミスでいともたやすく人が死ぬ。いいな?」


「オッケー!」

「了解です」

「よ、よろしくお願いしましゅ!」


……先ずは緊張を解いてもらわないといけないな。パフォーマンスや判断力に対する影響がデカ過ぎる。


早急に本懐を達成するため、レンツ車はかなりのスピードを出している。当然“コンフォート”のお陰で振動は伝わらないので、早速リリーラさんの得手不得手を把握する流れになった。


「接近戦は足りている。どんな魔法を、どの程度使えるのだ?」


「えと、あの、例えばこんなのとか」


「ほぅ」

「凄い……」


「こ、こういうのも可能です」


「ふむ、なるほど。双子の言っていた通り、中々に有能だな」

「初見じゃ、余程の抵抗力が無いと対応は無理ですね」


魔法抵抗力、これは昨晩教わった概念だ。“ストレングス”で防げるのは質量も持つものに限られ、今しがた見せてもらった類の魔法は“プロテクト”と言う別種の防御手段が必要らしい。理論も難解らしく、イメージも中々に難しい。


「第零部隊向きですね」

「あぁ、こやつを引き抜くことも考えておこう」


「そそ、そんな恐れ多い……。全然当てにしないで下さい……」


理解に困るレベルで過剰な謙遜をしているが、対人でも対魔物でも相当に有用だ。流石ファンタジー、俺の頭はまだまだ固かったようだ。


セリンさんが敢えて魔力を放出しているからか、はたまたレンツ車の速度が原因か、道中の接敵は殆ど無かった。


一度だけラウネーシュがリリーラさんに襲い掛かったが、ビビり散らかしつつも素早く対処していた。反応というよりも反射に近い動きに年季の違いを感じた。


後15分もすれば大森林ともおさらばというタイミングで、ソレらが感知に触れた。


「セリンさん、マズくないですか?」


「相当にな。上手く動かなければ、死人が出る」


「ああ……お終いだぁあ」


並走する二組の“番”が、徐々に距離を詰めて来ている。狡猾な事に、二手に分かれて四方を囲むような陣形まで取り出した。どう動いても確実に衝突する。


「コンゴウ、止めろ。そして、覚悟を決めろ」


「了解よ」


徐々に速度を落とし、全員が降車したタイミングでディオメナスとディアメナスが2匹ずつ姿を現した。古の時代を支配していた恐竜を彷彿とさせるその魔物達は、体の所々が苔蒸していた。フェート大森林で長年食物連鎖の頂点に君臨していた証だろう。


……まさか、“最悪のパターン”を超える状況に陥るなんてな。精霊様でも詐欺女神でもいい、後生だから助けてくれ。


「私とリリーラで1組対処する。残った貴様らはどんな手を使ってでも生き延びることだけを考えろ」

「はわわわわ」


「行くぞ」

「ガッテンよ!小林ちゃん」


勇ましく応える金剛の手は震えていたが、見なかったことにした。


冷静に考えよう。2匹同時処理は至難の業だ。となれば、この戦闘のカギを握っているのは、間違いなく彼女だ。


「向こうが1匹倒したら、間を空けずにこっちも1匹倒す。いいな?」


「作戦があるのね?詳しくは聞かないわ。じゃんじゃん指示を頂戴」


見違える程に頼もしくなったな。何とかなりそうな気がしてきた。さぁ、俺も腹を括るとしようか。

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