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転生保険とかいう悪徳詐欺を許すな  作者: 入道雲
第二章 ギド帝国
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第58話 三者面談

いつも読んで下さって有難うございます

今回は詐欺女神回です!

「うっわ、このタイミングでか~」


目の前には、腹立たしい笑みをたたえたファリスが、鎮座ましましていた。


「せっかく祝勝の言葉を申し上げようと思っていましたのに、心外ですね!」


うるせぇよ人外。お前から褒められても大して嬉しくないっての。


「そうよ!女神様に対してその物言いは失礼よ!……って、小林ちゃんじゃないの」


「金剛!?」


こんなパターン、初めてだぞ。


「そう言えば、3人で話すのは初でしたね。実は、こういう三者面談も可能なんですよ。今後はちょくちょく開催すると思います。お見知り置きを」


「サラッと流すな!最初から3人で摺り合わせてたらもっと上手く事が運べたかもしれないだろ!!」


「いいえ。その場合、彼女の現状を知った貴方は強い義務感に駆られ、”十八番”の無茶によって心身を壊していました。或いは、ギド帝国に行きたがる召喚者を警戒したベリューズによって、1度目の魔物侵攻を切り抜けた直後、さっくり暗殺されていましたね」


「そ、そうですか」


悔しいが、これに関しては反論できそうもない……


「あら、どこの国もおっかないのね」


「良い奴も沢山いるんだけどな。ベリューズがクソなだけだ。それで、三者面談を始めた目的は?何かあるんだろ?」


「さっきからすっごく砕けた口調で話しているけれど、小林ちゃんは彼女が誰だか分かってるの?人類を滅亡から」


「あぁ!別によいのです。彼とはかなり密にコミュニケーションを取ってきましたからね。此方側から許可を出したのです!」


……当然知っているさ。御前にいらっしゃるお方は、今回”は”人族を滅亡から救う女神様だ。


「逆に、金剛は畏まり過ぎじゃないか?ほぼ同時期に”転生”したんだから、もう少し距離感が近くてもいいだろ」


「私からも言及はしたのですが……」


「そりゃあんな目に遭わされて多少恨んではいたけれど、何度も親身になって励ましてもらったし、治癒魔法だって相当難度の高いレベルまで教えてもらっちゃったから、アナタみたいにフレンドリーにお話しなんて出来ないわ」


「だそうです」


俺とは違って、アフターケアもバッチリだったようだな。まぁ、お世話になったのは素直に認めるけどさ。


「無駄話は止めて、本題に入らせて下さい。……事態は逼迫しています」


声をワントーン下げ、神妙な表情をする女神を見て、自然と背筋が正される。


「誠に申し上げ難いのですが、あと1時間で、オーガス王国に真の災厄が訪れます。申し訳ございません」


「嘘、だろ?」


「いいえ、確定事項です。加えて、ベリューズ・バーナムとトール・スリーヴは、一昨日より始まった4大都市ベルティアとルインへの侵攻に対応すべく派遣されております。端的に申し上げまして、王都は圧倒的な戦力不足に陥っております」


……ここで荒れても何も良くならない。冷静に、冷静にいこう。


「どうして、そんな危機的な状況になる直前まで気が付けなかったんだ?」


「何故未来視がいつも通り機能しなかったのか、それすら究明できておりません。重ね重ね、申し訳ありません。お2人には早急に覚醒してもらい、セリン様を連れて速やかに王都に戻って頂きます。現在、あちらの様子がまともに視えていません。完全に異常事態です」


「え!?もう2度目が来るの?」


「ギド帝国もオーガス王国も勘違いしておられましたが、本物の災厄は、アレの比ではありませんよ」


殿下だけは、見破っていたけどな。


「それから、金剛様はなるべく魔法による治癒に専念して下さい。何度も申しました通り、貴方は戦うことに元来向いておりません」


やはり僧侶向きだったか。何が起こるか分からない分、寧ろ回復役が多い方が助かる。


「だけど、大丈夫か?」


明らかに、手が震えている。当たり前だ、実質戦闘経験が無いに等しいのだから。


「正直、心底怖いわ。でもね、言ったじゃない。『この恩は何があっても返すから、期待してて頂戴』って」


「……有難う、向こうには、何があっても助けたい人が3人いるから、その人達に万が一の事があったら、頼らせてくれ」


「モチのロンよ!」


「では、一刻の猶予もないので強制的に覚醒させます。いきますよ」


……光に包まれて消えたのは、片方だけだった。何のつもりだ?


「小林様は勘付かれていたご様子ですが、私は、彼女に対して嘘を吐いています」


そうだな。だがしかし、重要なのは、欺いている理由だ。


「お前が”世界のバランサー”だと告げなかったのは、何故だ?」


わざわざ1人残してまで会話を続けたんだ。意味があるんだろ?


「察しが良くて助かります。原因は単純にして明快、彼女の性根が優しく、常識人過ぎるためです」


「……つまり、本旨の為なら魔族にも肩入れして人族を大量虐殺するケースもある、なんて真実に耐えられないってことか?」


「仰る通りです。看護師として多くの人を救ってきたあの方にとって、この残酷な真実は間違いなく受け止め切れません」


俺の性根が非情で、かつ非常識な人だと言われている様にも聞こえるな。


「そうは言っていませんよ。ただ、身内びいきが激しく、それ以外に対してはドライになれる面をお持ちな小林様には、初めから真実をお伝えしていただけのことです」


……否定できないな、ぐぅの音も出ないってヤツだ。


「言う必要も無いと思いますが」


「口を滑らせたりはしない。誓うよ」


「お気遣い、痛み入ります。では、起こしますね。頼みましたよ。ついでに、到着までに4時間以上かかってしまうと、正門側にいるパロッツ君が99%の確率で死んでしまいますからね。レイドリスさんは裏門側で交戦中なので、助けられません」


「は!?おい!今何て!!」


詳細な話を聞く暇もなく、現実に引き戻された。


──────────── 


「おい、コバヤシ、急いでテリム車に乗れ。宿代も払ってある。準備は万全だ」


事情は既に聞いたのだろう。凄まじい切り替えの早さだ、頼もしい。だがそんなことよりも……!


「全力のストレングスで走った方が圧倒的に速いじゃないですか!本当に余裕が無いんですよ!?」


詰め寄る俺を、どこまでも冷静に真正面から見据えるセリンさん。


「正気になれ愚か者。真の災厄は前のソレとは比にならない規模だと聞いた。ここで全員が魔力を大量に消費して、肝心な局面で魔力切れを起こしたらどうする」


理屈は理解できる、でも……!


「一番魔力の多い私がテリム車に強めに”ストレングス”と”コンフォート”をかけておいた。3時間もあれば王都に着く、2時間で落ちる程、我が国は脆くない」


「……分かりました。お願いします」


御者席に着いたセリンさんが鞭を打つと、一息の間にミダの宿が小さくなり、帝都の明かりも遠ざかっていった。


……落ち着け、”勇者”だっているし、3時間で着くならパロッツが助かる可能性も十分にある。大丈夫、大丈夫。


ビズの治癒魔法と秘薬もどきが効いているのか、日付を跨いでも”反動”が殆ど来ないのは僥倖だ。魔力もマックスに近い。


──────────── 


出発から僅か1時間半で、カラムが見えてきた。見た限り、何処にも被害は無い。喜ばしいことなのに、どうしてか違和感を覚えてしまう。


何にせよ無事なのだ、引っ掛かる点は無い。村が目前に迫り、幾つもの民家が目に入ってきた瞬間に、奇跡の一手が舞い降りた。


「……!カラムで止まって下さい!妙案が浮かびました!!」


「ど、どうしちゃったの急に?」


無視される可能性も考えていたが、意外にも到着と同時に停車してくれた。


「もしも無駄足だったなら、分かっているな?」


目が本気だ。国の存亡がかかっているわけだし、内心穏やかではいられないのだろう。


「着いてきて下さい。ショートカットします」


「……貴様、まさか」


「大丈夫です。僕の空間接続魔法はコストパフォーマンスが良いので」


真っ赤な嘘だ。けれど、これで相当な時間を前倒しできる。


「金剛さんも、細かいことは考えず後に続いて下さい!」


目と鼻の先にあった民家の扉を、魔力を込めて引き開ける。……よし!懐かしきあの部屋だ!失敗しても玉座の間で再チャレンジするつもりだったが、無事に一発でアタリを引けた。


「な、なによコレ!?瞬間移動!?」


「正門に急ぐぞ!!裏門では殿下が戦っている!ファリス様が仰っていた!」


「貴様が壊していた窓を修理していなくて良かった。そこから出るぞ」


「ちょ、アタシだけ全然着いていけてないんですけど!?」


「道中説明するから!兎に角着いてきて!」


テラさんは生きている。複数の魔力が集まっている地下倉庫の中に魔紋を感知できた。恐らく、メイドはそこにまとめられているのだろう。


レイドリス王子に至っては、心配などするだけ余計なお世話だ。


だから頼むぞパロッツ、残るはお前だけなんだからな……!

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