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転生保険とかいう悪徳詐欺を許すな  作者: 入道雲
第二章 ギド帝国
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第49話 お告げ

いつも読んで下さって有難うございます!

「おめでとうございま~す!!」


クラッカーの破裂音と詐欺女神の祝辞が耳朶を打つ。突然の展開に心臓が跳ねたが、敢えてそんな事実はおくびにも出さない感じで行こうと思う。めちゃくちゃ悔しいから。


「いや、バレバレだっての」


「だよな」


この空間にプライバシーというものは無いのか?神様でもやって良いことと悪いことがあるだろ。


「私は世界の管理を任されているのですよ?何を考えているのかも分からない輩にアレコレ指示するなんてマネ、出来るわけがないでしょう」


それはその通りだけどさ、愚痴みたいなものだからスルーしてくれよ。


「おちょこ並に器の小さかった小林様も、遂に”人外の領域”が見え始めてきましたね。私、予想外の早さに感動しております!」


『見え始めてきた』か、つまり俺はまだまだ人間からはみ出せていないということだ。先の長さに頭が痛くなるな。


「ただ、祝辞と共に、一つだけ注意勧告をさせて頂きます。”反動”を無視して訓練を断行するような無茶は今回限りにして下さい。ベイルさんに会う直前まで、小林様の心身は非常に危険な水準にありました。私の言っている意味が、小林様になら分かりますね?」


「……勿論」


あのまま無理を続けていれば、恐らく前世と同じ道を辿っていた。その場合、当然動けなくなった俺に対し契約違反として”ペナルティ”が発生する。しかしそうなれば、自ら命を絶っていただけだろう。


「小林様は激烈に運が悪い。修行が始まった後、96%の確率で早々にベイルさんと再会し、そのままヘルトイルさんを紹介してもらう流れになる筈だったのです。何故か尽くそのタイミングを逃してしまったせいで、あの苦行とも言える修行を行う羽目になったのですから」


「え?もしかして、あそこまで自分を追い込まなくても強くなれた感じ?」


「そうですね!アグダロトの習得にかかる時間はどちらにせよ変わりませんが、早期の習得によってより強い魔物との戦闘が可能となります。その結果、修行効率が段違いに変わる世界線の方が遥かに多かったのです。小林様は数多い世界線の中から、余りにも少ないハズレを見事引き当てたのです!」


「あまり、聞きたくなかった話だな」


「うふふ、そう思いました」


今日も女神ファリス様は絶好調なようだ。


「そろそろ本題に入ろう。あと1週間で3ヶ月が経ってしまうが、災厄の方はどうなんだ?」


「……多分、1ヶ月後に起こると思われます。すみません、ここまで未来がハッキリと視えないのは初めてで、私自身戸惑っているのです」


いつになく険しい表情のファリス。冗談や意地悪の類ではなさそうだ。


「そうか……じゃあ、後1週間だけ修行を継続して、それからビズに挑む方針がいいのか?」


「いえ、残念ですが、今の小林様に勝ち目はありません。お気付きの通り、アグダロトは部位強化に特化した魔法です。相手がアグダロトからの反作用に耐えて殴打を継続してきた時、通常のストレングスを使うよりも致命的なダメージを負ってしまいます。その常識外れな打撃が可能なのが、ビズ・ナーバなのです」


これが、人外の一角か。はてさて、どうしたものか……


「未来予知が完全でない現状において、これは賭けに近い案ではありますが、3週間だけ修行を継続し、その間に小林様オリジナルの魔法を開発して下さい。その魔法さえ完成してしまえば、勝率は五割にまで引き上げられます」


「オリジナル魔法?」


「そうです、あれだけ派手に暴れたのですから、ビズの耳にも今日の出来事が伝わっていてもおかしくはありません。であれば、ギリギリまで地力を上げつつ、彼の虚を突ける一撃を編み出すしか勝機はありません」


言うは易しってもんだ。新技ってそうポンポン生み出せるもんじゃないだろ……第一、その新技とやらが通じなかった場合はどうするんだよ……


「うじうじ面倒臭ぇな……それしかねぇって他でもないこのファリスが言ってんだ。グチグチ言わずにやるっきゃねぇんだよこのタマナシ」


出たよ、絶対王政。若干小林と韻を踏んでいるのが殊更ムカつく。


「じゃあせめてヒントとか助言とか無いの?その新技とやらの」


「他の人にならヒントを出していたかもしれませんが、小林様はご自分で考えた方が良いタイプですね。普段からうだうだと物事を考え過ぎな小林様は、その分私でさえ思いつかないアイディアを生み出す可能性を秘めているのです」


褒められているようで貶されているよな、コレ。


「とは言え、ノーヒントでどうにかなる程の猶予はありません。ですので、これだけお伝えしておきます。帝都の外に出なさい。そして、目に付いた魔物を狩りまくりなさい。アグダロトの練度を上げつつ、適度に魔力を消費して地力を上げる。新魔法を生み出すにはこれが最善です」


「それをこれまでやってきたと思うんだけど……」


「いいえ、小林様は無意識の内に狩りやすい魔物や、金策的に効率の良い魔物ばかりを狙っている節がありました。それを止め、選り好みをせずに魔物を狩って下さい。私から言えることは、以上です」


指摘を受け、ハッとする。少し前から獲物を探す時間が増えた気がしていたのは、俺が狩る魔物を選んでいたからだったのか。


「了解です。ヒントが乏し過ぎる気もしますが、今話した路線で行ってみようと思います」


「1から10まで指示した方が成果を残せる人間と、敢えて3くらいに留めておいた方が注文以上の仕事を仕上げてくるタイプの人間がいます。小林様は後者なんですよ」


おだてられているとしか思えないが、悪い気はしない。偶にはこちらから騙されてみようじゃないか。


「その意気です。魔力消費は多かったかもしれませんが、今日の分の”反動”はそこまで大きくないでしょう。苦行の成果ですね。なので、早速明日から動いて下さい。本来ならスケジュール管理は私の仕事なのですが、不甲斐なくもそれが上手く機能していない以上、1分1秒が惜しいですから」


あの詐欺女神がここまで念を押すのだ。余程の非常事態と見て間違いない。一度始めた仕事を投げるのは性分じゃないし、やれるだけはやってみるさ。


「ご協力、有難うございます。最後になりますが、金剛様は放っておいてもあと半年間は精神的にも肉体的にもギリギリ何とかなります。なので、小林様はこれからの3週間、安心してご自身のなすべき事に注力なさって下さい」


そうか、それなら、万事オーケーとまではいかずとも少しは安心だ。


「日が変わります。期待していますよ」


「はいはい、分かってますって」


意識が揺らぎ、覚醒する直前に見えたファリスの表情が、いつもより硬く見えた。


……無理のない範囲で、頑張ろう。

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