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転生保険とかいう悪徳詐欺を許すな  作者: 入道雲
第二章 ギド帝国
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第46話 情報収集

いつも読んで下さって誠にありがとうございます。

「イッッテェー!岩でも殴ったのかと思ったぜ!!遂にやりやがったな!コバヤシ!!」


「はい!ようやくです!」


通常のストレングスを”剛のストレングス”と呼ぶならば、今しがたモノに出来たアグダロトは”柔のストレングス”だ。


そして、身に付けたことで新たに理解が深まった。どちらのストレングスにも長所と短所がある。ビズとの試合までに両方の良さを最大限に活かせるようになるのが新たな課題となるだろう。


「あれから1週間で仕上げられては、開発者であるボクの立つ瀬がないですね……コバヤシさんは、きっと歴史に名を刻むお方になると思います」


俺を褒めちぎるヘルさんの顔からは、明らかに悔しさ滲んでいた。その表情を見て、心が痛む。


3週間、つまり60年以上に相当する修行を重ねたに等しいのだ。俺を力強く励ましてくれたパロッツの言葉を無碍にしない為にも同じ様な罪悪感を抱かないようにしたいが、やはりズルをしているという感覚は拭い去れない。


「発案者であるヘルさんの献身あってこそですよ!心の底から、感謝の意を申し上げさせて下さい。有難うございました」


せめてもの贖罪に、深々と頭を下げて誠意を示す。この場で俺に出来ることなんて、このくらいしかない。


「ああ頭を上げて下さい!ボクなんて大したことしてませんよぉ!!」


「馬鹿言うんじゃねぇ!この3週間でお前さんは何回ぶん殴られたと思ってんだ。それによぉ、人の心からの感謝は素直に受け取るのが礼儀ってもんだぜ?」


ベイルさんは、俺とヘルさんのコミュニケーションにおける潤滑油だ。彼にも感謝の念が絶えない。


「ベイルさん、ヘルさんを紹介してくれて有難うございました。お陰で、少しだけ勝機が見えてきました」


「おいおい!ここまでしてやったんだぜ?少しだけじゃなくて、ハッキリと勝利への道筋が見えていてほしいもんだねぇ!」


「あはは、善処します」


彼なりの激励を心に刻みつつ、今後の方針を考える。間違いなく、アグダロトは切り札に成り得る。だがしかし、俺とビズの力量差はまだ埋まっていない。あともうひと押しが欲しい。


詐欺女神の言う3ヶ月までは残り1週間だが、アイツはここ最近夢に出てきていない。少し楽観的過ぎる考えかもしれないが、災厄まではもう少し猶予があると見ていいだろう。その間に何とかしてダメ押しの一手を見つけておきたい。


「では、お二方、ボクは一旦宿に戻ります。この3週間、本当にお世話になりました!」


「こ、コバヤシさん、絶対に死なないで下さいね?後、万が一死んだとしてもボクの枕元に立ったりしないで下さいね??」


「試合、俺とヘルで絶対に観に行くからよ、無様に負ける様なんて見せんじゃねぇぜ?」


「任せておいて下さい。約束します」



それから、俺はセリンさんとこれからの動きについて摺り合わせを行う為にメダの宿に戻った。俺とビズの力量差に関しても、客観的な意見が欲しかった。後は、可能な限り対戦前にヤツに関する情報を集めておきたい。


「というわけで、新しい魔法は会得できたのですが、どうでしょう?僕はビズに勝てるでしょうか?」


「そうだな、見たことのない魔法だが……私の見立てでは、90%だ。90%の確率で貴様が負ける。そのアグダロトとか言う魔法の練度を十全に上げても、五分五分になるかすら怪しい」


想像よりも、遥かに厳しいお言葉だった。だが、無駄や世辞を嫌う彼女がここまで断言するのであれば、それは単なる脅しなどではなく真実なのだろう。


「逆に訊こう。貴様には今、自分に何が足りていないと思う?」


「対戦相手であるビズの情報と、更なる一手、ですかね」


「概ね正解だ。そして、今の貴様と約3ヶ月前の貴様、実力以外に何が違う?」


「……?」


ここに来てからはひたすらに修行しかしていない。実力以外に変化した点などあっただろうか。


「はぁ……”登竜門”だ。ここまで言えば分かるな?」


「あぁ、なるほど!」


アグダロトの会得に精を出しつつも、最低限魔物を狩る生活は続けていた。その結果、現在俺は弐の札を持っている。即ち、今の俺は”いきなり現れて暴れ倒したヤバいヤツ”ではなく、”最近メキメキと頭角を現し始めた期待の新人”という評価に変わっているのだ。


弐の札に昇格して以降、明らかに受付嬢の態度が良くなったのには若干の悲しさすら覚えたものだ。


何はともあれ、重要な点は、昇格したことによって情報収集が可能となったという点だ。


「じゃあ、行ってきます。アイツらがいれば手っ取り早いんですけどね」


「十中八九いるだろう。あの2人は暇だからな」


この約3ヶ月間、セリンさんとの距離感は未だに掴み切れていない。いつもは日に一言二言しか話さない非協力的な監視者だが、俺が相談事を持ち掛けた時や、完全に行き詰まった時なんかは割合真剣に助言をくれる。


行動原理が少しも理解できない。……もしかして、ツンデレなのか?いや、セリンさんに限ってそれはないな。この件について考えるのはやめよう。迷宮入り間違いなしだ。


「では、行ってきます」


「あぁ、行ってこい」


ここ数週間は、セリンさんは無理に同行しようとしなくなった。彼女の言い分を元に考えるならば、現在の俺なら万が一の事態が起こるとは思えないくらいには強くなった、と見做して良いのだろうか。


いや、精々『私が魔力の異常を感知して駆けつけるまでの間、ボロ雑巾になるのを免れるくらいには粘れる力が付いた』程度の認識だろうな。あまり実力を過信するのはよくない。


そんなよしなしごとを考えている内に、登竜門に到着し、木製の扉を開く。魔力感知からあの2人組がいることは分かっていた。どうやら、無駄足にならずに済んだようだ。


「おっ!コバヤシのアニキがこの時間に来るなんて珍しい!何用ですかい?」


「ファング、お前はもう少し考えてものを話す癖を付けろ。コバヤシのアニキは手ぶらだ。となりゃあ、誰かに用があって来た可能性が高ぇだろうがよ~」


「フィンドは一言多いんだよ!それくらい分かってるっての!」


俺が初日でボコボコにし、それから破竹の勢いで弐の札に昇格して以来、この2人は完全に俺のパシリ……もとい協力者になってくれていた。その件に関しては、実力至上主義万歳だ。


目の前で繰り広げられる狼と猿の口論に付き合っている暇は無いので、とっとと本題に入らせてもらう。


「ビズ・ナーバの情報が欲しい。どんな些細なことでも構わない。頼めるか?」


「任せて下せぇ~。これでもオイラは情報通で有名なもんでね」


「じゃあ、俺はこの足でかき集めてくるとするぜ!!」


言い終わるや否や、ファングは走り去ってしまった。せめて俺がどんな情報を欲しているのかくらいは確認してほしかったものだが……情報収集に関してはフィンドに任せるとしよう。誰にでも得手不得手はある。


「じゃあ早速、ビズ・ナーバの性格や戦闘スタイル、それから癖なんかを知っていたら教えてくれるか?ヤツと闘う上で勝機に関わる情報は全て欲しい」


「あいあい。了解でさぁ~」


これで何かしらの糸口が見つかると良いんだが。あとはファングが面倒事を持ち帰ってこないといいな。アイツ、マジの馬鹿だから……

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