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転生保険とかいう悪徳詐欺を許すな  作者: 入道雲
第1章 オーガス王国
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第18話 魔法訓練の修了

いつも読んで下さって有難うございます!

召喚から2ヶ月が経った。いつものように演習場に向かった俺は、ベリューズさんの姿が見当たらないことを確認してから、すぐ側にある頑強な石造りの魔術研究棟に入った。彼が演習場にいない時は大体ここにいるのだ。


案の定、研究棟の1階にある研究室に彼はいた。


「ベリューズさん、今日は何をする予定なのですか?」


しばし考える素振りを見せた後、彼はこう応えた。


「いや、もうコバヤシ殿に教えられることは何も無い」


ベリューズさんに言われた一言が飲み込めず、反射的に聞き返す。


「今、何と仰いましたか?」


豊かに蓄えられた髭をゆっくりと撫でながら、彼は先程と同様に口を開く。


「何度でも言おう。もう私がコバヤシ殿に教えられることは無い、と言ったのだ」


「え、いや、でも……」


言いたいことがあり過ぎて口ごもってしまう。とにかく、そんなことは有り得ない。


確かに最初と比較すればかなり成長しているとは思うが、それでもベリューズさんの実力の底すら計り知れなていないのが実情だ。そんな状態で「免許皆伝だ」みたいなことを言われても納得できるわけがない。


「不服そうな顔をしているな。安心せい。ちゃんと理由を説明してやる」


相変わらず、俺の顔は雄弁らしい。何にせよ、理由は聞いておきたいな。


「未だに理解に苦しむが、コバヤシ殿は魔法の発現に不可欠な魔術理論を全く知らないのにも関わらず魔法を使える。それも、基礎的な属性魔法だけでなく、”ストレングス”のような比較的難易度の高い強化魔法すら即座に習得してしまった。違うかね?」


まるで不服なのはこちらの方だ、とでも言いたげな表情でベリューズさんは問いかけてきた。


「まぁ、そうですけど……」


何せ魔法を使うのに理論なんて要らないと言い放ったのは他でもないあの詐欺女神だからな。とは言え、「あなたのやっていることは完全に無駄ですよ」などと言えるはずもなく、これまでにされた小難しい話は全て良い感じに聞き流している。


このスキルは死ぬ前に身に付けたものだ。相槌の上手さには自信がある。


「そうなると、私に出来ることなどたかが知れている。私の魔法はこれまでに先人達が築き上げてきた魔法理論に対する深い理解から練り上げられている。故に、コバヤシ殿の魔法は私にとっては魔法ではなく、奇跡に近い」


「それ、褒めていますか?」


訊いておきながら、そんな感じは微塵もしていない。だって、ベリューズさんが俺を見る目は、どちらかと言うと異物を見るソレに近いから。


「どうだろうな。それで結局のところ、コバヤシ殿は私にどうしてほしいのだ?」


どうしてほしい、か。そう言う聞かれ方をすると答えるのが難しいな。


「そうですね……例えば、何か凄い魔法とか見せてくれませんか?」


「随分、漠然とした願いだな」


呆れられてしまった……凄い魔法を見せてもらえればイメージが簡単にできるし、それはほぼイコールで魔法の習得になるから良いアイデアだと思ったんだけどな。


「ダメでしょうか?」


「断るとは言っていない。そうさな……であれば、空間接続魔法でも見せてやろう」


おおっ!何だか凄そうな響きだ!!


「是非!是非お願いします!!」


「玩具を与えられた子供を思わせるはしゃぎようだな。取り敢えず、後ろのドアを閉めてもらえるかね?」


「あ、はい……」


は、恥ずかしい。ガキみたいだと言われてしまった……もう23歳のいい大人なのに。


言われるがままに開いていた研究室のドアを閉じる。直後、相当な量の魔力がベリューズさんから発せられたのを感じた。


「コバヤシ殿、そのドアを開いてくれるかね」


今しがた閉めたばかりのドアを開けろと言うか。それによって一体どんな魔法が見られるのだろうか、楽しみだ。


「僕の……部屋!?」


扉の先は、畳石が敷き詰められた冷たい廊下だったはずだ。それなのに、俺の眼前にはいつも使わせてもらっている部屋が広がっている。


「これが、空間接続魔法だ。色々と制約はあるが、瞬間移動に似た事象を起こすことが出来る」


「凄いですね!」


これは便利だ。だが、何かしら制限があるらしい。気になるな。


「どんな制約があるのですか?」


「まず、接続したい空間に訪れたことがなければならない」


「なるほど」


それは何の引っ掛かりもなく頷ける。でないとその空間に繋げるメージが出来ないからな。


「次に、接続したい空間において、1度以上魔法を使ったことがなければならない」


ん?なんでだ?


「これは確固たる証拠があるわけではないが、魔力には人それぞれ特徴があるとされている。丁度指紋とよく似たその特徴を、我々研究者は”魔紋”と呼んでいる」


初めて聞く概念だが、何となく受け入れられる。魔力感知の技術がある程度向上してきた段階で、魔力で人を識別できるようになってきたのも多分この魔紋が関係しているのだろう。


「その魔紋は、恐らく半永久的に魔法を使った空間に残り続ける。そして、空間接続魔法ではその魔紋を頼りに空間と空間を繋げるのだ」


少し難しい制約ではあるが、これも納得だ。魔紋という分かりやすい目印をイメージの補助に使っているのかもしれない。


「そして最後に、接続先の空間が閉じている必要がある」


「閉じている?」


「簡単に言えば、飛びたい部屋のドアが開いていれば魔法は失敗するということだ」


「あ~、なるほど!」


言われてみると、移動したい場所が閉じていなければ”どこからどこまでが飛びたい場所なのか”が上手く定められない気がする。


「この3つの制約を守っていることと、膨大な魔力を持っていることが空間接続魔法を成功させる条件だ。コバヤシ殿の満足いく魔法だったかな?」


「はい!それはもう!!」


今の話で詳細なイメージが出来た。後は魔力量を増やすだけでこの魔法を使えるようになる!楽しみだなぁ。魔力増強を頑張るモチベーションが生まれた。


「そうだ、言い忘れていたが、明後日の討伐遠征にコバヤシ殿も同行してもらうことになっている。問題無いかな?」


「はい!……え?」


浮かれていて即答してしまったが、討伐遠征?明後日??


「ちょ、ちょっと待ってください。なんですか討伐遠征って」


「定期的に騎士団、及び魔術師団合同で王国近辺に出現する魔物を討伐しているのだ。これは我が国の安寧を守るためには必須の任務でな。その任務に、今回はコバヤシ殿も参加してもらうのだ」


もう参加することは決定なのか……召喚主であるベリューズさんがそう言っている以上、俺は従わざるを得ない。


「因みに、危なくないんですか?」


「危険が無いのなら討伐に出向く必要が無いであろう。一体何を言っているのだ?まぁ安心せい。今のコバヤシ殿の実力なら問題あるまい」


た、確かに。凄く当たり前のことを聞いて当然の如く論破されてしまった……ベリューズさんのお墨付きなら何とかなるんだろうけど、やっぱり不安だなぁ。


もう用は済んだと判断したのか、ベリューズさんは机に座って書物を読み始めてしまった。仕方ない。自主練でもするか。


研究棟を出た俺は、演習場で一頻り魔法を使い魔力を消費してから部屋に戻った。


明後日の遠征、無事に済むといいんだけど……

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