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転生保険とかいう悪徳詐欺を許すな  作者: 入道雲
第1章 オーガス王国
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第15話 カセットコンロ

いつも読んで下さってありがとうございます!!

「コバヤシ様、体調に問題はございませんか?」


「えぇ、大丈夫です、テラさん。剣術訓練にも参加できそうです」


朝食を片付けに来てくれたテラさんに体調が万全であることを告げ、俺は訓練場に向かう。


一応補足しておくと、今日の朝食にも毒は入っていなかった。正直疑ってなどいないが、これをサボると次あの詐欺女神に会った時に何を言われるか分かったものではない。仏の顔ですら三度までなのだ。あの詐欺女神なら大噴火だ。


いつもの、とは言ってもまだ2度目の経路で訓練場に向かう俺の足取りは軽い。理由は単純、”カセットコンロ”を実践するからだ。


本来なら剣術の訓練に魔力制御の出番など無いのだが、夢で授かった天啓をすぐにでも試したいという欲が止まらない。だから、剣術訓練と並行して魔力制御の訓練も行う。


城を出て西に向かう途中、朝食を食べ終えた騎士達がまばらに集まりつつある訓練場の中にトールさんの姿を捉えた。小走りで近寄り、今日の予定を伺う。


「トールさん、おはようございます」


「おぉ!コバヤシ殿ではないか!体調はもうよいのか!?」


相変わらず声がデカい…20mは離れた状況で出す声だろそれ…


「はい、なので本日は訓練に参加させて頂こうかと思っています。何をすればよいでしょうか?」


「よろしい!では基礎体力訓練の後、パロッツと打ち合いの訓練をすると良いだろう!私の見立てでは、パロッツとコバヤシ殿の実力はそう離れておらん!そこにコバヤシ殿の成長速度を考慮すればパロッツにとっても良い訓練となるだろう!!」


「なるほど、それはそうかも」


「パローーーッツ!パロッツはいるかー!!」


俺のリアクションをかき消す大声でパロッツを呼び出す騎士団長。城内にいても聞こえるんじゃないか?この距離でこんな大声を出され続けたら鼓膜が何枚あっても足りない。


「はい!第三部隊所属、パロッツ4等級騎士、只今参りましたっス!」


どうやら訓練場にいたらしいパロッツがすぐに駆け付けてきてくれた。良かった。もう一度あのボリュームを出されていたら耳がやられていた。


というより、パロッツって第三部隊なんだ。正直どの部隊が何を意味していて、何等級がどれだけの実力なのかはまださっぱり分からないけど。


「よし!パロッツとコバヤシ殿は重りⅡを装備して基礎体力訓練を行うように!完了次第、打ち合い稽古に入れ!」


「了解っス!」

「はい!」


よし、これで今日の予定は把握できた。重りⅡとか言うモノに関してはパロッツに訊くとしよう。


「最後に1つ!コバヤシ殿は無理のない範囲で訓練を行うように!」


「ご心配、有難うございます!」


言われずともそのつもりだ。無理は禁物。焦っても良いことなど何もない。


「なに、体調管理も騎士の仕事の1つであるというだけだ!」


その点に関しては社会人と同じだな。うっ……前の世界を思い出したせいで頭が……


「で、では、訓練に行って参ります」


「うむ!」


トールさんに背を向け、パロッツと共に訓練場の端にある倉庫に向かう。さぞ汗の匂いやホコリの凄い場所だろうと身構えていたが、想像を遥かに超えて清潔感のある場所だった。


「めちゃくちゃ綺麗だな。この倉庫」


「そりゃそうっスよ!訓練終了後にメイドさんが毎回清掃魔法をかけてくれてるっスからね!」


あー!ベリューズさんも言っていたな。城はメイドさんが魔法で綺麗にしているって。ここも含まれると思えばメイドさんの人手が足りていないというのも頷ける。


しかし、ここの清掃もメイドさんの仕事になるのか…テラさんや他のメイドさんが過労で倒れたりしないか心配だ…


「あと、重りⅡって何?」


「前回コバヤシ殿が背負ったのが10kgの重りⅠで、今回が20kgの重りⅡっス!一番重いのが重りⅤで、100kgあるっス!」


重りⅡで20kg!?俺の体重の3分の1近くあるじゃないか!いや、最近は測ってないから正確には分からないけどさ。重りⅤはもう人間の領域を軽くはみ出ているから気にしない。俺には関係のない話だ。


「流石にキツそうだなぁ…」


「コバヤシ殿なら大丈夫っスよ!前回みたいにすぐ慣れるに決まってるっス!」


会ったばかりの俺にどうして全幅の信頼を寄せられるのか甚だ疑問だが、ここまで屈託のない笑顔で言われてしまうと、頑張らざるを得ない。



倉庫を出て、前回と同じように重りを装着したまでは良かったのだが、やはり倍はやり過ぎな気がしてきた。これで5kmは無茶だ。


「この重さは半端じゃないな」


「自分も慣れるまで1週間はかかったっス!」


「寧ろ1週間で慣れたんだ…」


凄いなパロッツ。それだけでも十分人間離れしていると思うぞ……


「と、思っていたんだけどな」


「コバヤシ殿、正直に言うと、自分は今ちょっと引いてるっス」


最初はスローペースでしか走れなかったが、走り始めて10分もすれば前と同じくらいの速度を出せるようになってきた。ボーナス倍率様様だ。


逆にこの重さに慣れる程の成長を考えれば、今の時点でもう筋肉痛が怖いけどな。


「酷いなぁ、すぐに慣れるって言ったのはパロッツだろ?」


「すぐの基準が全然違うっスよ…」


この余裕さなら多分出来るな、カセットコンロ式魔力制御が。


走りながら自分の魔力を探ると、ほんの僅かではあるが自分の身体から魔力が漏出しているのが感じ取れる。


「へぇ、パロッツって意外と魔力あるんだな」


「何か言ったっスか?」


「いや、なんでもないよ!」


並走するパロッツから漏れ出る魔力量は、俺の軽く倍はある。まぁ、俺が一般人に毛が生えた程度の魔力しかないことを考えると、決して多い方ではないのだろう。


そんなことより、取り敢えずこの自然な状態を”弱火”と定義しよう。そして更に魔力を放出して現状出せる限界……ココだ。これを”強火”と定義する。


「コバヤシ殿!少しスピードが落ちてるっスけど、大丈夫っスか?」


「あぁゴメンゴメン!大丈夫だから気にしないで!」


気付かない内に速度が落ちていたようだ。う~ん、やっぱりマルチタスクは苦手だな。結局慣れでしかないってのは分かっているんだけど…


おっと、思考が逸れてしまった。この出しっぱなしの強火の半分……これくらいか?これを”中火”とする。最後に、この漏出を完全に体内に収めた状態を作り出して……これを”消火”としよう。


完璧だ。各段階へと切り替えるまで5秒近くかかってしまうが、想像以上に簡単に魔力制御が出来てしまった。やはりあの詐欺女神の言う通り、魔法は想像力で何とかなる、そのイメージをこの魔力制御を通して脳に刻み込めた気がする。


「コバヤシ殿、今度はどうしたんスか?急にニヤけ出したりして、疲れでどうにかなっちゃったっスか?」


「失礼だな!そんなわけないだろ!」


「あっ、急にスピード上げないでほしいっス!自分これで割と限界なんス!!」


「じゃあ今ここで限界を越えるんだパロッツ!」


「そんなの無茶っスよ~」


とか言いつつ笑顔で速度を上げてくる辺り、パロッツは根性のあるヤツだ。


そのままの勢いで訓練場を5周して基礎体力訓練を終えた後、2時間程打ち合い稽古をしてその日の訓練を終了した。


正確には、俺だけ見学に入り、パロッツは他の騎士達と訓練を継続していた。見学をしつつ魔力制御の訓練をコソコソ行う俺を何度かトールさんがチラ見していたが、アレは多分「コバヤシ殿も余裕があるなら訓練に参加してみてはどうかね!?」という視線だった。


申し訳ないがトールさん、学習能力のある俺は程々に抑えることを学んだんだ。今日の剣術訓練は誰が何と言おうともう終わり。続きはまた次の機会にします。


……本音を言うと、カセットコンロ式魔力制御が思いの外楽しくて剣術訓練どころではないのだ。ま、たまには手を抜くのも悪くない。

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