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転生保険とかいう悪徳詐欺を許すな  作者: 入道雲
第1章 オーガス王国
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第14話 2度目のアドバイス

いつも読んで下さってありがとうございます!

「調子はいかがですか?小林様」


「うぉわ!?」


「人の顔を見て驚くなんて、失礼じゃありません?」


「す、すみません」


いや、誰でも目を開けると同時に声をかけられたら驚くだろ…


しかし落ち着いて周囲を見回せば、ここはいつものあの場所で、目の前にはいい加減見慣れた詐欺女神が座っているだけ。要するに、ここは夢の中なのだろう。


「以前小林様が『席に座った状態から始めればいいのに』と考えていたので、せっかくそれを叶えて差し上げたというのに!」


「僕はその後ちゃんと『いきなり目の前にあの神がいるのは心臓に悪いか』とも考えたはずですがね」


てっきりそこら辺の気遣いくらいはこの詐欺女神にもできるものなのかと感心していたのにな。


「神の鉄槌を下しますよ。それに、”先客”がいた場合も待合スペースから夢が始まるようになっているんですよ」


サラっと怖いこといいやがる…だが、それよりも今、気になる発言をしなかったか?


「先客ってどういうことですか?まさか、新たな被害者が…」


「人聞きの悪い言い方をしないで下さい!今の小林様には関係の無い話なので、気にしなくて結構です。それで、最初の質問に戻りますが、調子はいかがですか?」


あくまで教える気はないってか。相変わらずどこまで信用していいのか分からない女神様だ。今の所アドバイスは十分役に立っているし、言っていることに矛盾点は無さそうだからそこまで神経質になる必要もないと思うが…



「拷問の様な2日間を経て以来は、順調ですよ。魔法のコツも多少は掴めましたし、毒探知魔法も成功しました」


「あれだけ忠告してやっと1回毒探知を使っただけで何ドヤ顔しているんですか?この3日間、小林様を暗殺可能なタイミングが何度あったと思っているんですか?」


口角は上がっているのに目は少しも笑っていない。これが神業というやつか?怖すぎるから止めて頂きたい。実際、その点についてはこの女神の言う通りだ。


「すみません…パロッツが面倒を見てくれている間はつい気が緩んでしまって…」


「全く!このタイミングで暗殺される可能性はほぼゼロだったとは言え、100%起こり得ない、なんて保証はないんですからね!私が直接干渉できるのは召喚前まで。既に召喚が完了している小林様にこうして忠告することは出来ても、いざという時に助けることは出来ないんですよ?」


いつになく真剣な表情の女神ファリス。その眼差しから、俺のことを真面目に心配してくれているのが伝わってくる。だからこそ、俺の中に鋭い罪悪感が芽生える。


「はい、以後気を付けます」


「本当にお願いしますよ?小林様がポカやらかして死んだら私の評価が下がるんですからね!」


……俺という人間は、何度この詐欺女神に騙されれば気が済むのだろうか。己の学習能力の低さが情けない。


「冗談はさておき、何か私に訊きたいことがあったのではないですか?」


「そうです!魔力制御のコツが知りたくて!魔力感知までは何となく出来るようになったのですが…」


急がずともその内出来るようになるとは思う。だが、一度気になればどうしても知りたくなってしまうのは人の性というものだろう。


「う~ん、コツですか…魔力制御も広義では魔法の内ですからね。結局自分がイメージできるかできないかでしかないのですが…強いて言えば、難しく考え過ぎないことです」


「難しく考え過ぎない?」


「小林様は魔力制御を高等技術の一種だとお考えになっているようですが、決してそんなことはありません!自分の中で『コレだ!』という出力調整イメージを固められる何かを見つけさえすれば、すぐにでも出来るようになる基礎的な技術ですよ」


確かに、俺はベリューズさんの話を聞いてつい魔力制御を難しいモノだと思い込んでいた。火魔法はあんなにあっさりと発現できたのに、魔力制御はそうはいかないと決めつけてしまっていた。


「勿論、その技術の練度を高めるのは簡単な話ではありませんよ?キャベツを千切りにすることは誰でも簡単に出来ますが、それを素早く、正確に行うのは難しいのと同じことです!」


「言われてみれば、至極当然のことですね。そうなると、出力調整イメージを固められる何か、ですか…」


何がいいんだろうか。自分に合ったイメージと言われると、すぐには思い付かないもんだな。


「だからそれも変に凝ったモノを見つける必要はないんですって!なんなら、カセットコンロでも」


「それだ!!」


「え?」


カセットコンロ!正に天啓だ!消火・弱火・中火・強火で”魔力の漏出を完全に抑えるイメージ”から”全力で放出するイメージ”まで満遍なくカバーできる。


しかも、”中火”を全力の5割と決めておけば、前に言われた『魔力を解放する時も最大量の半分以下になるように抑えること』を守るのも簡単だ。もうカセットコンロ以上に適切な物は考えられない。


「…私から言っておいてなんですが、本当にそんな地味な物でいいんですか?」


「えぇ、最高のアドバイス有難うございます」


いやぁ、今すぐにでも起きて実践したい。ここまで心の底からこの女神に謝意を伝えられたのは、これが初めてかもしれないな。


「何か、今までで一番素直な感謝の意をこんなことで受け取るのは凄く癪なんですけど…」


「まぁまぁ、いいじゃないですか」


「…はぁ、そうですね。やる気になってくれる分にはこちらとしては一向に構いません。ただ、また調子に乗ってやり過ぎないようにして下さいよ!」


「分かっています。それはもう、身に染みて分かっています」


「他に、何か訊きたいことはありますか?」


一番の問題は解決してしまったからな。あ、でも1つだけ気になっていることはある。とは言っても、これはただの好奇心に近いが。


「僕も魔法について色々と勉強した方がいいんでしょうか?」


ベリューズさんのあの話し口調、魔法とは小難しい理論を理解して初めて習得可能なものである、とでも言いたげな感じだった。俺自身、もし魔法に関してそういった確立した理論があるのなら、理解しておいた方が良い気はしている。


「あぁ、アレは無視して大丈夫ですよ!意味無いので!」


清々しい笑顔で、とんでもない爆弾を投下する女神様。


「そ、そうなんですか?」


「人間は、自分の理解できない事象を過剰に恐れ、その恐怖を克服するためにごちゃごちゃと法則や原理を見つけ出そうとします。しかし、残念ながら人智を越えた概念はいくらでもあるのです」


「例えば、あなたのように?」


「そう、神は人間の理解の範疇を大きくはみ出した概念です。私という存在にあなたの知る法則や原理は一切適用されません」


言いたいことが段々と分かってきたぞ。


「つまり、魔法もその1つ、というわけですね?」


「はい。魔法にも人間がこれまで培ってきた知識は適用されませんし、それ故に私が小林様に魔法の真髄を理解させることも出来ません。最初に言ったように、自分が実現したいことを明確にイメージする、それだけでよいのです」


「なるほど。僕には理解できない、ということが理解できました」


「そろそろ日付を越えてしまいますが、もう大丈夫ですか?」


「そうですね。特に気になることはありません」


と言うより、もし何かあればこの詐欺女神が今みたいにさり気なく誘導してくれるだろう。


「全く、可愛げのない人ですね。小林様は」


「あなたにだけは言われたくありませんよ」


そして俺の意識は、暗転を迎えた。


──────────── 



「き、気持ち悪い…」


酷い二日酔いみたいな感じだ…頭痛と吐き気が半端じゃない…


「きょ、共鳴のベルを…」


結局、その日1日は何も出来なかった。丸2日潰さなかっただけ、成長したと思いたい。

沢山のブックマーク、評価、そして感想をありがとうございました!

お陰様でファンタジー(異世界転生・転移)部門において日間ベスト300に入ることが出来ました!

これからもこの物語を盛り上げていきたいと思います!

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