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転生保険とかいう悪徳詐欺を許すな  作者: 入道雲
第1章 オーガス王国
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第12話 初めての魔法

新年あけましておめでとうございます。

本年もよろしくお願いいたします。

「コバヤシ殿、本当に大丈夫っスか?」


「まだ若干痛いけど、問題無い範囲だよ。有難う」


あの詐欺女神の宣言通り、まともに動けるようになるまで丸二日の休養を要した。「もう無駄に張り切ったりしない」この2日で何度心に刻んだことか。


「じゃあ、ベリューズさんのいる魔法演習場まで行きましょうか。案内は…」


「大丈夫、覚えてるから」


「ですよね!それでは、無理のない範囲で頑張ってくださいっス」


「勿論!パロッツのおかげで本当に助かったよ。いつかこの恩は絶対に返すからさ。楽しみにしててよ」


「それは期待できるっスねぇ!絶対に約束っスよ!恩返してくれなきゃ死ぬまで言い続けるっスからね!」


ここで遠慮せずにノリノリになってくれるところもパロッツのいい所だ。話していて気持ちが良い。安心しろ。何せ俺はSNSでの口約束を守って死ぬくらい律儀な男だからな。


「任せとけって。それじゃ、行ってくるよ」


「行ってらっしゃいっス!」


元気に手を振るパロッツに背を向け、魔法演習場へと向けて歩き出す。演習場は城から出て東、つまり訓練場と真逆の方向にある。広さは訓練場と同じくらいあり、その横に魔術研究棟なるものも併設されていたはずだ。


「よし、今日こそ程々に頑張るぞ」


──────────── 


「待っていたぞ、コバヤシ殿」


演習場には、ローブを纏った大勢の騎士が横一列に並び、数十メートル先のターゲットに向かって火や水、土や風等の様々な魔法を放っていた。どうやらターゲットに当てれば後ろの人と交代するルールらしい。


そんなことより、まずはベリューズさんの予定を大幅に狂わせてしまったことに詫びを入れておくか…


「ベリューズさん、丸二日もお待たせしてしまってすみませんでした…」


「よい、先代の”英傑”にも同様の症状が出ていたという記録がある」


「それを聞いて安心しました」


良かった~、お小言の1つや2つは正直覚悟していたけど、ちゃんと前の”被害者”の記録が残っているようだ。


「もっとも、先代は1日で症状が回復していたようだがな」


「そ、そうですか…」


俺より自制の利く賢い人か、俺よりボーナス倍率が低い人だったんだろうな。後者だと少し嬉しい。


「無駄話はこのくらいにして、早速魔法の基礎を教えよう。訓練の大まかな流れとして、魔力の感知、魔法の構築、そして魔法の発現を予定している。今日の目標は簡単な火魔法の発現だ」


「あぁ、魔力の感知ならもう出来ますよ」


あの詐欺女神に教えてもらったからな。因みに、毒探知魔法と解毒魔法はまだ一度も使っていない。あの激痛で今朝の朝食を食べ終えるまで完全に忘れていたからだ。こちらに関してはもう”お小言”を覚悟している。


「…なに?」


「あ!とは言っても手で触れないと分からないと思います!」


その方法しかあの詐欺女神に教えてもらってないからな。体内に存在する魔力や触れた人の魔力は感知できる。しかし、接触していない場所にある魔力を感知する方法はまだ知らない


「今、私の右手と左手のどちらかに魔力を込めている。それを当ててみろ」


触れていいのなら造作もない、躊躇いなく伸ばした俺の両の手が差し出された両拳に触れる直前。


「っ!!」


反射的に飛び退いてしまった。その魔力のあまりの冷たさに。


「いかがした?コバヤシ殿」


顔に驚きと困惑の表情を浮かべるベリューズさん。


完全にあの詐欺女神と同じ暖かい魔力を想像していたから、氷の様な冷たさに体がビックリしたのだろう。もっとも、後ろに飛び退いてしまったのには俺自身も驚いているが。


「い、いえ、何でもありません。左手、ですよね?」


「……本当に感知できているようだな。どこで習った?」


「女神様から、その…」


「なるほどな」


色々と突っ込まれるかと思ったのに、何も言われなかったな。先代の記録とやらに似たような史実が書いてあったのか?


「魔力の感知以外には何か習わなかったのか?」


うーん、毒探知魔法と解毒魔法は習っているが、それを言うのは心証が悪いだろう。「僕はあなた方を信用していませんよ」と宣言している様なものだ。


「いえ、それ以外は何も習っていません」


「そうか。何にせよ魔力感知を教える手間が省けたのは有難い。では魔法構築について教える前に、魔力量の検査に移ろう」


「分かりました」


魔力量か、これで「こ、この魔力量は…!!」となってくれれば助かるんだけど、そうはいかないんだろうな。それが出来るなら筋力も最初からチート級にするはずだし。


「この魔力水晶に手の平を乗せれば、コバヤシ殿の魔力量が分かる」


ベリューズさんが懐から取り出したのは、手の平に十分収まるサイズの無色透明な水晶玉だった。言われた通りその水晶に右手を添えると、球の中心にロウソクの灯ほどの光が浮かぶ。


「…見事なまでに一般人並だな」


「なんか、すみません」


「いや、想定内だ。これだけあれば基礎の火魔法を2発は発現できる」


でも明らかにガッカリした顔してたよね?一瞬だったけど見逃さなかったぞ。日本人はそういうのに結構敏感なんだからね??


「魔法の構築についてだが、専門的な内容は省こう。膨大な時間がかかる上に、理解が困難だからな。今は時間が惜しい。今日は火魔法の発現に特化した説明を行う」


「了解です」


詐欺女神の話では体内の魔力を認識してイメージするだけで一応発現できる、という話だったが、やはり現実はそう簡単にはいかないのだろうか。


「一言でまとめると、火魔法は空気中に存在する火の元素に己が魔力で干渉することで発現させられる。これだけでは何のことだか分からないと思うが」


何だ、単なる化学反応の話じゃないか。燃焼は、可燃物が連続的に酸化反応を起こすことで起こる。火とはその結果生じる光と熱だ。


今回の場合、自分の魔力が酸素にとっての可燃物に相当するのだろう。というより、たとえそうでなくても”そういうイメージ”で魔法が発動できる気がする。


「何となく分かりました。やってみます」


「いや、コバヤシ殿、魔術とはそんな簡単な話では」


何やら話を続けるベリューズさんを一旦無視して、体内の魔力を認識する。雀の涙ほどの魔力がある。これが燃料となり、酸素と反応するイメージ……出来た。


「火の元素と言うのは……!」


俊敏な動きで飛び退くベリューズさん。その理由は明白だった。これは謝らねばならない。だが、あのガッカリ顔でほんの少しだけ嫌な思いをしたからな。意趣返しをさせてもらおう。


「何も言わずに火魔法を発動してしまってすみません…それとも、これも想定内でしたか?」


「これは…想定外だな」


あー、スッキリした。

ブックマーク、評価、感想のほどよろしくお願いいたします。

それがお年玉になります。

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