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転生保険とかいう悪徳詐欺を許すな  作者: 入道雲
第4章 ネルー湖・ネルー大湿地
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第107話 集結

そろそろ、終わりが見えてきました。

「あら、お久しぶりですね。コバヤシ様」


……末恐ろしいな。こんな突拍子もない状況で、ここまで冷静でいられるのか。


「お久しぶりです。パルメナさん。突然で申し訳ないのですが、お邪魔してもよろしいですか?」


「えぇ。お茶の用意はありませんが、それでも構いませんよね?」


「えぇ、有難うございます。皆さん、入ってください」


「さて、時間もないでしょうし、本題に入りましょうか。とは言っても、ワタクシは既に話を聞いております。戦力が要るのですよね?お供しましょう」


「は、話は聞いているって、一体誰から?」


「神託があったのですよ。コンゴウ様。……あぁ、確か王国では、女神ファリス様というのでしたね」


詐欺女神め、たまにはいい仕事してくれるじゃないか。


「コバヤシ殿は、これ程までに凄まじい方とお知り合いだったんだね」


「と、とんでもない魔力量っスね……」


「ハッ、相変わらず澄ましてやがるぜ」


「お初にお目にかかる方がいらっしゃいますね。ワタクシは、パルメナ・ネイダルと申します」


おぉ、ヘラを完全にスルーしたな。スルーされたヘラの方はこめかみをピクつかせてはいるが、暴れ出す様子はない。


「失礼いたしました。私は、レイドリス・オーガスと申します」


「じ、自分はパロッツと申します!」


「よろしくお願いします、レイドリス様、パロッツ様。祖なる者に挑むにあたって、ワタクシが聞いていた面子には一人足りないようですが、今からお誘いに向かうのですか?」


……もう少しごちゃごちゃとした説明が必要だと思っていたが、かなり時間の節約ができそうだ。


「はい。パルメナさんの仰る通りです。付いてきてくださいますか?」


「えぇ、勿論ですとも。すぐにでも出立できますよ」


「あ、あの、置手紙とか書かなくても大丈夫ですか?急にパルメナ様がいなくなっちゃったら、騒ぎになるんじゃないかしら」


「ご心配有難うございます、コンゴウ様。ですが、先ほども申した通り、既に話は聞いておりますので。この通り、置手紙も用意してあります」


一枚の便箋を取り出すパルメナさん。完璧だ。


「準備は万全のようですね。であればお言葉に甘えて、すぐにギド帝国へと向かいましょう」


ただなぁ……。次が厄介なんだよな。接続先が彼の家だから、メチャクチャ騒ぐだろうし……。


まぁ、久しぶりに会えるのは嬉しいけどさ。


「では、行きます」


再び魔力を込め、空間が繋がったのを確認してから、俺は扉を開いた。


──開けた瞬間に、ザラついた鑢の様な魔力が肌を撫でる。レイドリスさんを始め、その場の全員が緊張している。あのヘラでさえ、息を飲んでいた。


まさか、ここまで手回しが済んでいるとはな。


「やっと来やがったかァ、コバヤシ。カスみてェに弱かったヤツが、ちったァ強くなったみてェだな」


「お久しぶりです。ガル・ニールさん、ヘルトイルさん」


「コバヤシさん!?一体どうやって!?というか、やっぱりアレはただの夢じゃなかったんだ!いやいやそれよりも!助かりました!ボクもう胃が痛くて痛くて……!!」


予想通りのリアクションだ。あれから変わりないようで嬉しいよ。


「オイ、うるせェな、黙ってろ」


「はいぃ!し、失礼いたしました!ガル様!!」


一睨みされ、口と鼻を覆うヘルトイルさん。……それ、息できなくない?


「ここにいる、ということは、ガルさんも?」


「あァ、オレ様でも倒せねェヤツがいるンだってなァ?」


「はい。ですが、ソイツを倒すにはガルさんの力が不可欠です」


「カッ!オレ様とタメ張れるようなヤツがそんだけ揃ってても足りねェってか?」


「そうですね。欲を言えば、あと6人はほしいですね」


あの詐欺女神が初めて祖なる者を封印した時は、俺と同じチート持ちを10人用意したらしいからな。


「……いいねェ。オレ様が“挑戦者”になれる日が来るなんてよォ。血が滾るぜェ」


「乗り気で嬉しい限りです。早速向かいたいのですが、準備の時間は必要ですか?」


「寝ボケてんのか?オレ様の武器はこの拳だ。何時でも、何処でも、準備は万全なンだよ」


牙を覗かせ、凶悪に笑うガル。流石は“王者”だ。


「それは何よりです。一秒でも惜しいので、直ぐに向かいましょう。ヘルトイルさん、急なことで驚かせてしまってすみませんでした。短い時間でしたが、お会いできて嬉しかったです」


「あ、あの……」


「どうしました?」


今の今まで空気と化していたヘルトイルさんが、おずおずと口を開いた。出発を邪魔されたガルが、再度睨み付ける。肩を震わせ、目を逸らしつつも、ヘルトイルさんは口を閉じなかった。


「その、コバヤシさんは、これから途轍もない強敵に挑むんですよね?」


「はい」


「し、死なないでくださいね。そ、それから、今度は遊びに来てください!そして、ベイルさんにも会ってやってください!き、きっと喜びます!」


「……えぇ、必ず」


死ねない理由が、また一つ増えた。


今しがた開いたばかりの木の扉に近付き、最後の確認を取る。


「レイドリスさん、パルメナさん、ガルさん。セリンさん、ヘラさん、金剛。それからパロッツ、これから敵の目の前に空間を繋げます。何が起こるか分かりません。覚悟を決めてください」


「大丈夫だよ。問題ない」


「えぇ、ワタクシもです」


「何度も訊くンじゃねェよ。早くしろ」


「何時でも構わん」


「ワクワクするぜ」


「大丈夫!何があってもワタシが守るわ!」


「絶対に勝つっスよ!コバヤシさん!」


「勿論だ!」


今日で三回目となる空間接続魔法。そして恐らく最後となる空間接続魔法を、発動した。

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