第103話 3部隊
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詐欺女神からスキルを授かってから、あっという間に1週間が経った。雨季に入って以来、雨は降り続けている。
「いよいよっスね、コバヤシさん」
「そうだな。……レイドリスさんと2人だけになるけど、本当に大丈夫か?」
「何回訊くんスか!大丈夫っスよ!」
「了解、頼んだぞ。レイドリスさんも、ご武運を」
「ありがとう。コバヤシ殿の強さなら心配は無いですが、どうかご無事で。湿地までは少し距離がありますので、私達はこれで」
「えぇ、分かりました」
まぁ、あのペアなら万が一も無いだろう。
2人の背中が見えなくなったのを確認し、次のチームに声を掛ける。
「──ピピさん、集落の方々を守りながらの戦いになりますが、頑張ってください」
「なっはっは、腕が鳴るのぉ。お主こそ、集落を頼んだぞ?」
「はい、任せてください」
「とはいっても、無理はせんでよい。家などいくらでも建てられる。無駄に気負わず、作戦通りに、な」
災厄の内容や、戦力の配置に関しては嫌になるまで話し合った。結局、最初に金剛と話した布陣がベストだという結論に至った。というのも──
「ピピちゃんも無理しなくていいからね!何て言ったってアタシがいるんだもの!」
「なっはっは!心強いのぉ」
この通り、金剛が魚人族の言葉を話せるようになったからだ。
「意思疎通もバッチリだな」
「絶対に後悔したくないもの!」
100倍のボーナス倍率で“反動”が出るまで頑張ってくれた彼女には頭が上がらない。
「金剛がいるなら心配はない。作戦通りに頼む」
「任せなさい!じゃ、行ってくるわね!」
集落の住人と新しい長を連れて、ピピさんと金剛はネルー湖方面に移動を始めた。これで集落に残っているのは──
「ニャラさん、大丈夫ですか?」
「問題無い。長を引き継げた今、この命に未練などない」
「そんなこと言わないの!生きて災厄を乗り切るのよ!分かった?分からないなら分かるまで繰り返すわよ!昔から言ってるけどねぇ」
「リリさん!来ます!セリンさん」
「あぁ、あの穴だな」
前方数十メートルに突如現れた虚空。直径4メートルはあるアレが何かは分からないが、あそこから大量の魔力を感じる。間違いなく中にいる。あれは……、転移魔法なのか?
その場にいる全員が見つめる中、ソイツらは、姿を現した。
狼にサソリ、鳥に猪、エトセトラ、エトセトラ。大きさも種族も異なる、種々雑多な魔物がとめどなく。わらわらと溢れ出た魔物の群れは、瞬く間に集落を侵食し始めた。
「行きます!」
アイツが現れるのが確定している以上、可能な限り魔力は節約したい。であれば、パロッツに手入れしてもらったこの剣に魔力を──。
「ニャラ!下がっててちょうだい!」
「……ほう、中々やるようだな」
「……やっぱり、そうなんですね」
一息で虚空に近付き、現れた小型の魔物を蹴り飛ばすリリさん。雨音と魔物の胸が爆ぜる音に混じって、魔石の砕ける音が聞こえた。
常人には有り得ないレベルで安定した魔力出力を保ち、難なく俺の背後を取ってみせたリリさん。何のことはない。彼女もまた、こちら側だったのだ。
「リリに続くぞ、コバヤシ。あの2匹は貴様に任せた。今なら1人でも問題あるまい?」
「えぇ、了解です、セリンさん」
次々と魔物を屠る2人から目を離し、身を屈めながら虚空から現れた2匹の魔物に集中する。
「……大森林以来だな」
──ディオメナスとディアメナス。初見の時は生き延びることで精一杯だったが、今なら落ち着いて対処できる。
本能で危険を察知しているのか、2匹は真っ直ぐに俺の持つ剣を見据えている。よくよく見ると大森林で見たヤツらより若干小さいし、体にも傷が無い。最初に出会ったメナス夫婦の体は苔むしていた。要するに、コイツらは生まれたてだ。
「だったら、尚更恐れるに足りないな」
咆哮を上げて動き出した2匹がどう動こうとしているのか、手に取る様に分かる。筋肉の動きを読むって、凄いな。
「魔力を探知して──あった」
瞬間的にストレングスを発動して距離を詰め、一振り、二振り。金属に似た何かを通過した感触が手に伝わり、鮮血が噴出し、2匹の動きが止まる。
「うおっ!そっちには倒れちゃダメだって!」
慌てて蹴り飛ばした巨体が半瞬後に地面を揺らす。
「危なかった……ん?」
開いた傷口から覗くコアを見て、足が止まる。
「──同じだ」
リリさんが蹴り飛ばした小型の魔物のコアと、ディオメナスとディアメナスのコアのサイズが。
「今は考えても仕方が無い。集中しよう」
魔物はまだ、止めどなく溢れ続けている。
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