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第七話 「そこには人がいて」

 

 ローリーとサムは検問所で世間話をしていた。聞くに、基地からの応援を待っていたようだ。

 想定していないアジフライの存在を確認した軍はさらに多くの人員を投入することにしたのらしい。それでも僅かだが。


 二人の元まで駆け付けたテッドは投げかけた。

「アジフライに指示を出している存在がいるかもしれない……!」


「……どういうことだ?」

 現場は騒然とする。誰もアジフライの裏側の存在なんて気にかけていなかった。

 ――やはり知らなかったか。


「“伏兵がいた”、それだけだ。だが、用心するに越したことはないはずだ」

 正直なところ、アジフライにナメてかかっていた節がある。テッドらも、軍も。


 サムが検問所内の通信機を取り、本部にそのことを伝えた。


 ローリーはテッドに質問を飛ばした。

「指揮がいると想定して、そいつはどこにいるんだ?」

「一番怪しいのは教会だ。中心地であることには間違いないはずだ」

 なるほど、とローリーは広げた地図を眺めた。顎髭を触りながら考えている。


「……作戦を変えよう。サム、命令だ。『応援を検問所で待機させろ。あとお前も残れ』」

「『増援部隊は検問所で待機、これからの指揮はこのサム・スクワイアが執る』」

 ローリーの下す命令を噛み砕き、兵士たちに分かりやすく伝えている。ローリーが脳、サムが口といったところか。


「それで俺とこの二人で偵察を兼ねた撹乱(かくらん)に向かう。不審者、いけるよな?」

「俺はテッドだ。プロに同行して貰えるのなら、安心安全だな」


「……納得だ。しかし、プロはあんたらだ。俺らはブラインドホークに比べれば蟻未満さ」

 相も変わらず、俺たちを買いかぶり過ぎてる。

「射撃の腕は良いようじゃないか」


「……それだけだぜ」

 ローリーはどこか開き直ったかのような、そんな自嘲を含んで呟いた。



 ――検問所を後にした三人は、十字の交差点に着いた。真っ直ぐ行けば、バルミアの中心地に着く。左には先程二人が登った看板、もっと行けばルノハン・ビーチ。右には無人のパブが所狭しと並んでる。


 周囲の確認を怠らずにした三人は気が付いた。

 あの看板、その下に数尾のアジフライが群がっている。テッドの声に気付いたアジフライたちなのだろう。


 ――やらかしてしまった。ヤツらの警戒レベルを上げてしまったのかもしれない。


 ローリーは無線機に話しかける。

「サム、気を付けとけ。いたぞ、すんーごく近くにな」

『了解。気を付けられたし』


「最短ルートは右からだな。パブの裏路地を抜けて川を渡る」

 ローリーが先導し、一息に道路を渡った。


 川を渡れば団地がある。そこで一度、周囲の確認をする考えだろう。

「やけに静かじゃないですか?」

 アフロ隊員が尋ねる。その街の静けさは、例えるならば映画の修羅場の直前の無音。不穏だった。


「――多分、もう一人も人がいないんだろう。ここに住んでた人はいい人ばっかりだったんだけど」

 ローリーは表情を曇らせつつも、笑って誤魔化した。しかし、彼は不器用だったのか引きつっている。


 察したのだろう、隠さなくなった。

「あっという間だったのさ。多分、十分もかからないうちに街の全員が死んだ。うちの基地も三分の二は死んだよ」


 彼は淡々と語った。淡々と語らなければ耐えられないのだろうと感じた。それだけ壮絶な体験だったということの裏返しだと。


 それを考えると、船にいたテッドたちは幸運だったのかもしれないとすら思う。

「もし、アジフライが誰かの陰謀だったら……」

 テッドは呟いた。


 ローリーが振り向いてテッドを一瞥したが、無言で向き直る。

 一瞬の出来事に、表情が読み取れなかった。


 そこから何の会話も交わされずにパブとパブの間の路地を進んだ。その路地を抜け、川まで来たときにローリーは口を開く。

「絶対にヤツらを許しはしない。裏に人間がいてもいなくても……」

 斜面を下り、小川に差し掛かる。



 ――――三人は右方向から痛烈な一撃を食らう。青色のアジフライが川の流れに乗って突進してきた。

 一瞬の出来事だった。


 銃弾にも匹敵する速さ。いや、ヤツらは銃弾だった。為す術なく三人は数メートル吹っ飛ばされた後、衝撃で意識を失った。


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