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第六話 「理想の上下関係」

 

「バカアフロ野郎、街の様子はどんなだ」


 街の外れにある看板の上で、彼は双眼鏡を手に偵察をしていた。


「さっきのアジフライがそこかしこにいるんですが、検問所側から見て伏兵になるように配置されている気がします」


「まさか、敵はアジフライだぞ。思考力なんてあるのか?」

 テッドは疑ってかかったが、アフロ隊員に渡された双眼鏡を覗き、息を呑んだ。


 街を彩る凄惨な血の量、というのもあるがそれよりも、建物の影にアジフライらが潜んでいることに驚いた。建物の窓から覗く内部にもアジフライの姿が確認できた。


「ヤツら…………もしかすると、裏に人間がいるのかもしれない。いや、いるはずだ」


 フォート・ゼンチはこれを知っているのだろうか。少なくとも、テッドらが受け取った作戦概要にはこんなこと書かれていなかった。

「隊長、もし人間が指揮を執っていたとして、作戦本部はどこにあるのでしょうか?」


 テッドは地図を広げ、候補となる場所を探した。

 いくつかの地点が考えられたが、テッドは言い切る。

「ここだ。この教会だ」


 それはバルミア教会。この街一番の教会は駅にも近く、それなりの高さを誇る。

「簡単に逃げられる高台はそう多くない。まずは駅を潰す必要がありそうだな」


 テッドは地図を睨みつける。まるで俺の欲しい情報を寄越せ、と脅すかのように。

 しかし、一向に良い案は浮かんでこない。


「軍と合流しますか?」

「ああ、それは手だな。だが……」

 テッドは言い淀んだ。


「だが?」

「だが、情けないことに少し恐ろしくてな」

 主にトラベス中尉が、だ。雰囲気がではない。あの頭のキレの良さで尉官だというのが変な話なのだ。こんな辺境にいていい人材ではない。


「俺たちをこの作戦に投入したのにも、理由(ワケ)があるように思える」

 あまり勘ぐるべきではないのだろうが、気になってしまう。

 ――俺たちは彼女に従っていいのだろうか。用が済んだら殺されはしないだろうか。

 そこまで考えるにふさわしいトラベスの風格だった。


「……今はこの作戦が最優先です。違いますか?」

 アフロ隊員の一言に、テッドは我に返った。


「確かに。お前に諭されては、隊長失格だな」

「……いえ、頼りにしていますよ」


 部下に励まされる隊長など、どこにいようか。こんなに幸せな隊長が他にいていいものだろうか。

 どうしてか目頭が熱くなってきた。


「たっ隊長! 落ち着いてください!」

 それを見て、アフロ隊員が飛びついてきた。


「ちょま!? 落ちる!! バカアフロ野郎ォォー!!」


 ――――テッド渾身の叫び声は検問所にまで聞こえたという。



「おはよう。目覚めた気分はどうだ? 貴様が一番遅かったぞ」

「あ、あなたは……確か……悪魔の副官(セカンド・サタン)では?」

 シウムは目を凝らして、その顔を眺めた。


「ほう、傭兵会社にまで私の顔は割れているのか……」

 彼女は頭を抱える。

「――ということは、ここは“トリニティ”の?」

「いや、ごくごく普通の軍基地だ…………ところで貴様の手術に多大なる費用がかかった。働いてもらう」

 彼女は席を立ち、部屋を出ていった。


 シウムは呆然とする。起きてからの数十秒でこれだけの情報は処理できない。

 半ば伝説化した人物が“普通の軍基地”で自分の目覚めを待っていた?


 呑み込むよりも先に、ベッドから起きて彼女を追いかける。立ったとき身体の重心が右にズレていることに気が付いた。


 ――私、もう左腕がないんだ。

 様々な不安がシウムを襲う。真っ先に考えたのが、仕事のことだった。


 今までのように、ショットガン二丁持ちで暴れることなどできないのは火を見るより明らかだ。

 これからどうすればよいのだろうか。まずは隊員のみんなに謝らなければならないだろう。


 下を向きながら考えていると、彼女に追いついていた。

 廊下を進み、大きな扉の前。彼女は扉に向かったまま話し始めた。

「リハビリが要るだろう。貴様はRDDお抱えのリーサルウェポンだ。この程度で戦いから逃れることはできん。一生戦い続ける運命にあるだろう」


 戸を開け、振り返った彼女は不気味に微笑んだ。悪魔の副官という二つ名である由縁を身をもって知った気がするのだった。

「入れ。トリガーを引く前に、クライアントである我々に話すべきことがあるはずだ。それも貴様が今まで放った弾丸の数ほどな」


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