第十四話 「一蓮托生、九死に一生」
ローリーは倒れていて、それを背に、アフロ隊員がアジフライに立ち向かっていた。塞がったその道以外に逃げ道はない。
かなりヤバい状況。後回しにしていたツケが回ってきてしまったのだ。どうしたものか、テッドは考えあぐねる。
「このリボルバーには六発。アイツのを奪っても十一発にしかならない、か」
アジフライらはぞろぞろと後ろに列を成している。操っていたのがアルバートではないとなると、あの“スターゲイザー”以外にはないだろう。
テッドは重い足取りでローリーに寄り、ぺちぺちと頬を叩いた。
「生きてるか?」
僅かに目が動いた。生きてはいるが、それだけだ。
「よし、上出来だ。おい、バカアフロ野郎! 死ぬ用意は?」
彼はアジフライの噛みつきを手錠で防いでいる。安心と信頼のRDD製だからこそ成せる技だ。
「血で遺書を書きますか!?」
「ハッ、いい返しじゃねえか! 行くぞ!!」
生きて帰れはしないだろう。テッドには分かっていた。
アルバートのおかげで今は冷静でいられるが、本来なら焦らなければならない局面だというのを重々承知していたのだ。
アフロ隊員が手前のアジフライを押し返し、隙間を縫ってテッドの銃弾が炸裂する。一尾が倒れ、ドミノ倒しのように数尾が巻き添えになった。
続けざまにアフロ隊員が蹴りつけ、道を拓く。その隙にテッドは、アルバートが持っていたリボルバーを拾い上げた。
ローリーの身体を飛び越えて螺旋階段に戻る。一段一段びっしりと、律儀にアジフライが並んでいる。
「バカだろ……あのスターゲイザーとかいうヤツ」
手錠が邪魔で撃ちにくい、が、ブラインドホークの隊長は伊達ではない。手前側十尾の足元を正確に狙い撃って螺旋階段の下に突き落とす。アジフライが到達するまで少しだけの猶予ができた。
「弾はあと二つ、ぶん投げればいけるか」
アフロ隊員が後ろからドアを持ってきた。
「これも使えそうです」
「いや、そりゃローリーの特等席だぜ……」
担架代わりにはなるだろう。
だが、打つ手が少なくなってきた。アジフライは一向に減らない。落としても落としてもまた上がってくる。
「万事休す。バンジーでもあればな……“バンジー救す”だなんてジョークが飛ばせたもんだが」
テッドはアルバートのリボルバーを投げた。一尾のアジフライとともに、階段の下へと落ちた。ガシャンという音。
その直後、けたたましい銃声が螺旋階段にこだまする。いきなりのことで二人は耳を塞いだ。下の方が太陽でもあるのかというくらいに眩しく光る。
階段が次々と崩れていった。相変わらずこの教会はオンボロだ。
戸惑うテッドの背後で窓が割られる。
「ローリー! お前やっちまったな!!」
地上数十メートルのそこにいたのはサムであった。軽快に笑い飛ばすが、肝心のローリーは致命傷だ。
――サムは比較的クールな印象があったが、コイツも能天気なのだろうか。
「テッド、コイツが迷惑かけたな!」
彼はフックを取り出し、こちらに投げてきた。これで降りろということか。
「あー、それでだな、どっちか抱いてやってくれねえか?」
ポリポリと頭を掻いてローリーを指さす。
「それなら喜んで!!」
アフロ隊員が飛び跳ねながらローリーの隣を所望する。多分、彼は『抱く』の意味を取り違えている。
彼は丁寧に腕の輪っかの中にローリーを抱え、窓から見えるワイヤーにフックを取り付けた。器用なもので、ローリーにとって楽な姿勢を常に保っている。
そして、窓枠に足をかけて風景から姿を消した。
螺旋階段の方からシウムの声がする。
「たーいちょー!! ご無事ですかー!?」
「ああ! ……って、俺はプリンセスかよ」
溜め息が狭い部屋に充満した。腹いせにアルバートの頭を蹴り飛ばし、テッドは逃げるように窓から飛び出す。
ワイヤーに掴まり、あっけなく脱出を完了したのだった。




