第19話
今日は深夜の更新になってしまってすみません。
中学生3人組が横一列に並んで学校の帰り道に談笑をしている。
「隼人、1年D組の相沢健二って知ってる?」
洋太郎は横目で山下隼人を見て訊ねた。
「そいつって、小学校俺らと同じ奴だよな」
「そう、知ってたか」
「話した事ないけど顔は知ってるぞ。で、相沢がどうしたんだ?」
「今、不登校なの知ってた?」
「え、そうなの?なんで?」
隼人は軽く顔を反って驚く。
「相沢って小学生の頃は社交的で明るい奴だったんだけど中学に入ってから人との関わりを避けるようになったらしいんだ。それで、クラスで1人孤立してから次第に学校休むのが増えて今に至るって感じ」
洋太郎は抑揚をつけて長々と喋る。
「なるほど、いじめとかではないんだ。それで、何故相沢の話を俺にしたんだ?」
「隼人が映画好き集めてクラブ作りたいって言ってたろ。相沢もめちゃくちゃ映画好きなんだぜ。以前、話した際もかなり俺の知らない作品を教えてもらってよ」
「そうなの?じゃあ、相沢の家に行こうぜ」
隼人は目を輝かせて言った。
「いや、相沢の家は分かるけどさ。家に行ったら入れてくれるかな?」
「分かんないよ、そんなの。でも、行ってみなきゃ分からないだろ」
「そりゃそうだけど……隆一はどう思う?」
「相沢の家の近くにレンタルビデオ店があるよね。あそこで、何か借りて必然的に映画の話題なるだろうからそれで借りてきた映画を一緒に観るとかは?でも、そんな簡単にうまくいかないか……」
隆一がいいアイデアを閃めいた顔をして言うがよく考えてみると可能性が低い案に気づき声が小さくなる。
「めちゃくちゃいい案じゃねぇか、隆一」
隼人は隆一に肩を回して嬉々した声色で言った。
「たしかに、その案は思いつかなった。いい案かもしれない」
洋太郎はを左手を軽いグーにして親指と人差し指の間の溝に顎を乗せて断続的に頷く。
「よし、レンタルビデオ店に行こうぜ」
* * *
3人は相沢健二の家の付近にあるレンタルビデオ店に着き、映画コーナーでDVDを物色する。
「やっぱり、これだな。"大人は判ってくれない"」
「もう既に観てるかもよ」
洋太郎は隼人が手に取ったDVDを見て言う。
「それでも、何回観てもこの映画は映画好きで世の中にうまく順応できない人々に響くんだよ」
隼人は映画になると早口になって熱く語る。
「まぁ、確かにラストシーンは凄まじいもんな」
「あ、俺これ観てないわ」
隆一は"大人は判ってくれない"を観てないと言った。
「じゃあ、これで決まりだ」
隼人はケースを優しく叩いて言った。
* * *
「ここら辺なんだろ、相沢の家?」
3人は住宅街を行ったり来たりして健二の家を探す。
「たしか、外観がすげー立派だったのを覚えている」
隼人の後を歩いてる洋太郎が言った。
「ここじゃない?」
2人から遠く離れた場所で探してる隆一が大声を上げる。
2人は早足で駆け寄り表札に"相沢"と書かれてるのを見て互いにハイタッチした。
「俺の家の前で何してんの?」
隼人がインターホンのボタンを押そうとした瞬間、背後から相沢が3人に訊ねた。
「相沢、久しぶり」
洋太郎は優しく声をかける。
「お前もレンタルビデオ屋にいたのか」
隼人は相沢の店の手提げ袋を見て言った。
「俺が借りたい作品は誰かに借りられてだけどな」
相沢は3人に視線を向けず地面を見てた。
「何、借りようとしてたんだ?」
隼人は興味津々な表情で言った。
「フランソワ・トリュフォーの"大人は判ってくれない"って作品だよ」
読了ありがとうございます。