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らしく  作者: 綾瀬徹
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第18話

 「はぁー、あっという間に学校に着いちまった」


 俺は下駄箱でローファーから上履きに履き替えて深い溜息をついて呟く。


 重い足取りで階段を上がって2階の2年B組の扉を開けて自分の席の机に鞄を乗せて隣の洋太郎と目と目で挨拶して椅子に腰を下ろす。


 「おい、健二。あれから鮎川さんとどうなったんだ?」


 「いや、何もないよ。でも、今日昨日の事を謝る」


 「そうか、ならいいけど。お前、今日も日高君の家行く?」


 「夏葉との話し合いによるな。それに、俺が書いた手紙を日高君が読んだかどうか分からないがもし読んだとしたら反応がどうか気になるな」


 「なんて書いたんだ?」


 「分かってんだろ……」


 俺は横目で悪戯な笑みを浮かべてる洋太郎を見る。


 「お前は不器用だけど頑張ってるよ」


 洋太郎は椅子から立ち上がり俺の肩にそっと手を乗せて真面目な顔つきをして軽快な口調で一言ボソッと言って教室から出て行った。


 「あんな臭い台詞、普段吐かないやつが珍しいな。てか、またアイツ大便かよ」


 俺は教室を出てく洋太郎を目で追って言った。


 「ねぇ、健二。あんたさ、鮎川さんと仲良いよね」


 彩音が洋太郎の席に座り俺の方へ前のめりになって言った。


 「今は絶賛喧嘩中だけどね」


 「そうなんだ。健二、どうやって鮎川さんと仲良くなったの?」


 「映画好きで俺達の部活に興味があってそこから仲良くなって映画語り部に入部して今に至るってとこ」


 「嘘、あの人気のかけらもないあの部活に入るなんて……」


 彩音は目をぱちくりさせて毒づいたことサラッと言う。


 「相変わらず、嫌味な女だね。2人も女子が入ったんだ。人気の部活にはならないけど少しは興味を引く人もでてくるだろ、たぶん」


 「え、もう1人女子入ったの?」


 彩音は俺に顔を近づけてまたもや驚きの声を上げた。


 「そんなびっくりしなくても。てか、顔がちけーよ」


 近い彩音から鼻に妙に甘い香水の香りがした。


 「まぁ、健二は隼人が叶えられなかった夢を果たす為に映画語り部を1年の時に創設して毎日ビラ配りして頑張ってたからその努力が報われ始めたんじゃない」


 彩音は穏やかな顔つきになり喋った。


 「……意外だな、彩音がそんなくさい台詞言うとは」


 普段、彩音は俺に対して関心なんてこれっぽっちも示さないし、嫌味や毒づいたことばっか言うから思いがけない台詞に思わずハッとする。


 「私もたまにはダメな幼馴染に良い事言うでしょ」


 「褒めようとしたがダメな幼馴染みで減点だな」


 「なんでよー」


  俺は彩音はお互いの顔を見て口元が緩む。


     * * *


午前の授業が終わり、昼休みになって1人で教室を出た夏葉を追いかけるように椅子から立ち上がり後を追った。


 「待ってくれ、夏葉」


 「何か用?」


 夏葉は振り返り冷たい視線を俺に向けた。


 「昨日のことで謝りたくて」


 「何に対して謝りたいの?」


 「手紙を1枚送るって約束を破って嘘をついたことと身勝手な行動を取って踏み込んだ行動をした事に関して、本当にごめんなさい」


 俺は自分の至らなかった点について誠心誠意を込めて頭を深々に下げて謝罪した。

 

 「健二、頭をあげて。周囲にあなたを調教してる関係にみられたらやだから」


夏葉は周りの視線を気にして声のトーンを下げて言った。


 「いや、見られないだろ」


 俺は夏葉の飛躍した想像力にツッコミをいれる。


 「まぁ、真摯さは伝わったから許すわ。それに、あなたが送った手紙に日高君から返事があったから逆効果でもなかったみたいだしね」


 「え、返事来たの?」


 俺は食い気味で訊ねた。


 「ほら、これ」


 夏葉は俺に手紙を渡してくれた。


 「差し支えなければなんて書いたか教えてくれない?」


 「あぁ、いいよ。いずれ話そうと思っていたし。この手紙の内容は俺が不登校だった中学の頃の話なんだ」

 


 

 

 

読了ありがとうございます。


すみません。次の更新は5月28日(木)か5月29日(金)に更新になると思います。

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