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らしく  作者: 綾瀬徹
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第1話

初の長編小説になります。


読んでいただけると幸いです。

 学校の体育館裏は閑散としてた。オレはワイシャツの皺を伸ばし、襟を正し、口臭スプレーを口の中に二滴スプレーして、両手で口臭を確認した。


「よし、バッチリだ!レモンは女子の受けがいいからな」


 オレは幼馴染の"森田あかね"に告白するために体育館裏に呼び出した。


 あかねが遠くから手をふりこちらへ急ぎ足でやってくる。


 オレは顔の向きをあかねから逸らして、口臭がもう一度気になり、口内に二滴スプレーした。


「念入りにしとかないとな」


 オレはレモンの酸っぱさで顔が引きつった。


 あかねがオレに近づいてくる。


「健二、またせちゃってごめん」


 あかねは、申し訳なさそうな顔をして頭を下げ謝った。


「大丈夫?なんか急な用事でもあったか?」


「神木くんに急に呼ばれて……」


「あぁ、神木ね……あかね仲良いもんね」


 オレは全身の力を両手の拳に力をこめて意を決した表情で話を切り出す。


「あかね、好きです。オレと付き合ってください」


 オレはあかねの目をじっと見つめ告白し、頭を下げると同時に手を差し出した。なんとも典型的な告白の仕方。なんでもシンプルが一番いいっておばぁちゃんが言ってたっけ、だから変に凝った告白よりこれがベストだと思い実行に移した。


「……急でびっくりしちゃった。健二のことはもちろん好きだけど、その好きは恋愛感情の好きではなくて友達としての好きなんだよね。だから、付き合えない、ごめんね。これからも、友達として仲良くしよう」


 時々、あかねは俺から視線を逸らしたり地面をみたりの繰り返しでとにかく気まずそうに話した。


「……ありがとう。急にこんなこと言ってごめん。でも、これがオレの気持ちだから。…

…そうだね、これからも仲良い友達としていよう」


 友達でいよう、一番聞きたくなかった言葉だ。俺は言葉を詰まらせながら、あかねと目が合い、恥じらいながら微笑む。


「そういや、髪型変わったね。前は、ボブにしてたのにポニーテールに変わったね」


「気づいてくれありがとう」


 あかねは無理して笑顔を作ってるのがバレバレだった。まぁ、オレも無理くりな笑顔なんだけどね…


「あ、ごめんな。忙しい中時間使わせちゃって。じゃあ、また……」


 オレは痒くも無い髪を掻きながらぎこちない喋り方で言った。


「……いや、いや。じゃあ、また」


 あかねはオレに背を向けて足早に立ち去っていった


 なぁ、これが現実なんだよ。よくあるだろ、幼馴染と結ばれる物語。最初は幼馴染を恋愛感情と意識してなくて気づいたら近くにいるお前のことが一番大切だったと言って、男子と女子が結ばれるやつね。オレみたいなバカでオタクはそういう映画、小説とアニメを鵜呑みにしてしまうんだよ。でも、あんなの嘘だよ。実際、あかねのことは"好きだった"。でも、現実はあんな風に上手くいかないんだよ。


 それに、これからオレとあかねは以前と同じような仲良い友達のままじゃなくなる。きっと、お互い目が合うと気まずくなる関係になるだろう。


 涙が頬を伝って口の中に入り、口臭スプレーのレモン味と相重なって塩っぱさが倍増した。


 こうしてオレは幼馴染にフラれてしまった。

読了して頂き感謝です。


他にも長編がこの作品と同時期に書いた物がいくつかあります。まぁ、それも少し経ったら投稿すると思います。

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