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44.ダイブ・イン・ザ・ホール

ドワーフや女性たちを敵にする発言と、言われても。

 別にそういう意図があったわけでは無く……。


「そういう意味で言ったわけでは! 」


 ルリアは慌ててそれを否定する。と、リーフは"んふっ"と笑顔を浮かべて言った。


「冗談ッスよ~。本当に世界の女子には敵視しちゃう人もいるかもしれないッスけど」

「い、今の言葉だけで敵視されますかね」

「そりゃあそうッスよ。おっぱい大きいって言うだけでズルい話ッス」

「おっぱ……、あまりそういう事は気にしたことがないので私には何とも」


 自らの胸を見下ろしつつ、苦笑いした。


「まあ大きいモンは大きいッス! それよか、他のサイズは用意してないッスからねえ」

「そうなんですか。なら、このままでも構いませんよ」

「ルリアが大丈夫っていうなら大丈夫ッスけど、中々視線を集めそうなスタイルッスね」


 肌着は薄く透けた白シャツ一枚のみ。作業服(ツナギ)は胸元のチャックを開き、大きな胸が強調されたセクシーなスタイルも良い所だ。


「構いませんよ。元々、そういう事はあまり気にしていないですし」

「まるでモデルさんみたいッスね。顔立ちもキレイだし、やっぱり色々ズルいッス」

「も、もうその話は結構ですよ。それより準備をして、さっさと行きましょう! 日が暮れる前に! 」


 あまり褒められ慣れていないルリアは少し照れたように叫び、急いでリュックに道具を詰めてさっさと背負う。リーフはルリアの様子に笑いながら同じく準備を進めて、十分後。

 いざ、準備を終えた二人は"謎の洞窟"に向かい、出発したのだった。


「さて、天然資源の眠る洞窟だったら嬉しいッスねえ」

「そしたらお金稼ぎも加速度的に進みますね。もしダンジョンの類ならお宝とかも在るんでしょうか」

「可能性はゼロじゃないし、目指せ一攫千金ッス! 」

「頑張ります! 」


 ………

 …


 ―――そして、二時間後。

 二人は商店街で食料を買い込んでから直ぐに裏山へと向かった。

 リーフは、元々アロイスの仲間だったと言うだけあって足腰は強く、てんで疲労も感じない様子で例の洞窟へと辿り着くことが出来た。


「……入口はここです」

「ふむふむ、なるほどッス」


 リーフはいきなり洞窟に入ることはせず、周囲から確認する。

 ルリアが説明していた通り、昨日訪れたルリアの往路した足跡以外の痕跡はなく、確かに手つかずの洞窟のようだった。


「……中に入ってみるッスか」


 パチンッ。リーフが中指と親指を擦り鳴らせば、腰に装備した小型魔石ランプが柔らかく道を照らした。そのまま先陣を切って洞窟内の構造を確認しつつ歩みを進める。

 ……そして、それから直ぐ。例の"底の見えない縦穴"に二人は辿り着いた。


「ここがルリアの言っていた」

「そうですね。底の見えない縦穴です。かなり深いみたいですが……」

「ふむ。リーフが確かめてみるッス」


 指を鳴らして空中に散らした火花を、穴の底に向かって射出する。

 それはルリアの魔法と同様に、洞窟の闇の中へと吸い込まれるように消えて行った。


「……なるほどッス」

「え、今ので何か分かりましたか? 」

「まあ、簡単にッスけど」


 それだけで、リーフはある考察を立てた。


「壁は灰色の岩壁だけど、途中で白茶混じりだったッスよね」

「あ、いや……そこまでは良く見えていないもので。申し訳ありません」

「にゃはは。いやいや、チラっと見えただけッスからね。でもアレは石灰岩の可能性が高いッス」

「……ということは」

「鍾乳洞の類ッスね。だとすると、ちょっと厄介ッスねえ」

「どう厄介なのでしょうか」

「まあ、目に見えてというか、耳に聞こえる可能性が無きにしも非ず……ッス」


 そう言ってリーフは背負っていたリュックを下ろすと、ある物を取り出した。


「それって……」

「クズ鉄を溶解して造った魔力鉄球ッス。重量は二十キロくらいッスかねえ」

「二十キロ!? 」


 予想外な重量に驚いた。

 それはリーフは片手で、みかんを手のひらで遊ばせるようにひょいひょいと扱う。

 世界一の冒険者と呼ばれたアロイスの仲間、ただ者ではないと思っていたが、想定の範疇には嵌まらない相手のようだ。


「まあ、ドワーフはもともと力持ちッスから驚くことじゃないッスよ~」

「私の時代にもドワーフは居ましたけど、男性でもそこまでパワフル過ぎなかったような……」

「にゃはは、まあ気にしなくて良いッス。それより、この鉄球ッスけど」

「あ、そうだった。それを何に使うんです? 」

「さっき言った通り、これが鍾乳洞なら面倒だと言った理由……耳に教えてあげるッスよ」


 リーフは握っていた鉄球を、穴の底に向かって"ぽいっ"と軽く投げ落とした。

 すると、約十五秒後。

 穴の底に届いたらしい鉄球が、壁を伝った反響音で確かにバシャンという水の音が聴こえた。


「いま、水の音……! 」

「やっぱりッスか。鍾乳洞の類は石灰水を溶けさせる地下水があると思っていたッス」

「ということは、この穴の底は水に沈んでいるという事ですか」

「一応鉄球を持ってきて正解だったッスね。しかも、この穴は二百メートル近いッスよ」

「……落下速度で計算したんですね。水に沈んで深い場所、か」


 かなり難所というか、問題の塊のような洞窟らしい。道理で獣すら近づかなかったはずだ。


「やれやれ、折角面白いものを見つけたと思ったんですが。これではどうしようもないですね」


 ルリアは残念そうに言うが、しかし。

 声をかけた瞬間、ルリアが見たものは「お先ッス♪」と笑顔で穴の底に飛び込むリーフの姿であった―――。


「えっ、えええーーーっ!!? 」


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