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37.ハニーバーガー


(見たところ天然の洞窟の類な気はするな。暗くて奥が分からない……。少し照らしてみるか)


 右腕を伸ばし、魔力を込めた指先をパチンと鳴らす。

 弾いた指の先端から弱めの火花が放たれ、洞窟の奥へと導火線を辿るようバチバチと走った。

 内部を照らしたのは一瞬だったが、ルリアは"ソレ"を見逃さなかった。


(むっ……! )


 手前は土壁であっても、途中から岩場に囲まれた洞窟に変化し、更に洞窟自体が地下に向かい斜め下へ潜るよう続いていた。火花は壁を反射しながら奥の地下へと消えていき、反射音も鈍く、相当深さがあるようだ。


(地下に続いているようだな。どれ、少しだけ見てみるか)


 危険が潜むかもしれない未知の空間にも、進むことには躊躇(ちゅうちょ)せずに足を踏み入れる。

 土壁にはゾワゾワとした小さな虫たちが(うごめ)いていても、それを片手で払いつつ、奥の地下に潜る傍までさっさと近づいた。


(……! )


 そして、それを眼前にした瞬間、好奇心は更に燃え盛る。

 目の前の穴の先は、斜め四十度程度で地下へと深く続き、まるで地獄の底に通じているように、考えていたよりもずっとずっと深いものだった。


「これは面白いな……! 」


 すぐさま右腕を伸ばして地下に向かって指を弾き、光源代わりの火花を穴の底に向けて放つ。しかし、それはあっという間に闇に吸い込まれ姿を消す。


(光が途中で途切れるとは、深いだけじゃなくて長く続いているのか。それに、見えた限りでは大きめの岩石で道はつくられていた。これはもしや……)


 脳裏に浮かんだのは、鍛冶師リーフの言葉。

 このカントリータウンの山々には古き時代より鉱山として栄えた面もあり、鉱脈が今もなお眠っているという話だ。

 もし、この洞窟が廃鉱に準ずる代物か、鉱脈の眠る天然洞窟だとすれば、願ったり叶ったりの話であった。


(謎の洞窟……探索する価値は大いにあるぞ! 鉱石を入手すればお金になるし、何よりもリーフさんに鉄鋼剣の更なる強化をして施して貰える。防具なんてのも鍛造(たんぞう)して頂けるかもしれない! )


 もしや、魔獣の棲家よりも遥かに価値のある発見をしてしまったのではないか。

 興奮と喜びに笑顔が浮かぶ。

 しかし、非常に心苦しい事だが、今日はこれ以上の探索をするわけにはいかなかった。


(ぐぬぬ、本当は先に進んでみたいが、時間もなければ専用装備もない。場所を見つけただけでも収穫として、いずれ探索すべき日が来たら改めよう)


 退くことも勇気ある判断に等しく。

 どれだけ探索心に惹かれようとも、洞窟に背を向けた。


「さて……、帰ろう。あまり遅くなると、ラファエルが腹を空かせてしまうからな! 」


 こうして、帰路についたルリア。

 下山する際に大きな問題はなく、無事、自宅へと到着した。


(……ラファエルは、まだ寝ているんだな)


 そっと寝室を覗いてみる。

 ラファエルは今も深く寝息を立てているようだった。


(よっぽど疲労が蓄積していたのだな。しかし、この休息がキミを更に強くしてくれるぞ)


 彼を起こさないように寝室のドアを閉めると、今度は晩御飯の支度を開始した。


(今日からしばらくは、ようやく栄養バランスの良い普通のご飯を食べれそうだ。せっかく食材もあるし、少しばかり腕を振るうか! )


 まず、昼間に購入していた丸パンとキャベツを準備。パンを二つに切り分ける。続いてキャベツをむしり、それを片方のパンに乗せた。


(次はソースだ)


 ボウルを用意したら、そこにオリーブオイル、少量のハチミツ、酢、塩、マスタードを適量放り込み、泡立てすぎない程度に混ぜ込んだ。それだけで、甘さとスパイスがマッチしたお手製のハニー・マスタード・ドレッシングが完成。たっぷりとキャベツの上に垂らしていく。


(あとは肉を"挽いて"焼くだけだ……)


 次に保存していたオウルベアの肉を包丁で細切りし、立てた刃で何度も叩き、ひき肉にする。そこに塩コショウを加えたら、素手で丹念に()ね、楕円形に整える。あとは、それをフライパンで焦げ目がつくくらい焼き上げることで出来上がった"ハンバーグ"を、最初のキャベツの上に乗せ、もう一度ハニーマスタードを垂らす。


(最後にハンバーグの上にパンを乗せて、キャベツとハンバーグを挟めば完成……っと♪ )


 所用時間は三十分も掛からず、出来上がった料理は誰もが知っているお馴染みの一品。


「ふふっ、ハニーバーガーとでも名付けようか」


 パンズに挟まれた新鮮なキャベツと、柔らかな肉厚ハンバーグ。甘くスパイスのあるハニーマスタードが効いた、食欲そそる一品が完成した。



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