35.ひっそりと
「うん……。今日は大人しくしてるね……」
怒られたことに、ラファエルはしゅんと落ち込んで言った。
「それが良い。じゃあ、改めて出かけてくるから、ちゃんと食事をして、大人しくしているんだぞ! 」
ルリアはもう一度しっかりと注意すると、再び家から出て行った。
ラファエルは玄関まで彼女を見送ったあと、深くため息を吐いて、自分の行為を深く反省した。
(馬鹿なことしちゃった……。やっちゃいけないって分かってたのに。今日は言われた通りご飯を食べて、ゆっくりしてよう)
ラファエルは彼女に言われた通り、今度こそ自ら昼食を用意し、ひとり静かにベッドに潜り、ゆるりと休息の時間に入ったのだった。
……そして、ラファエルが昼寝に寝息を立て始めた頃。
丁度ルリアは町での買い物を終え、ホクホクと帰路を歩いていた。
(とてもパンが安くて助かった。それに新鮮な野菜や保存の効くチーズも安く手に入れられたのは嬉しいことだ。……ついでに、中継所を切り開くための巨大斧も三万ゴールドという破格で買えたしな。しかし、どうして町のみんなは私をチラチラ見ていたのだろうか)
買い物を終えて帰宅する際、商店街で行き交う人々や魔族たちは、自分をチラチラと横目で見つめていた。
もしかして顔に何かついているのだろうか? とか、口元を触ってみたりする。
(何もついていないと思うのだが……)
だが、その理由は彼女その格好にあった。
美しい容姿に対し、両手には主婦顔負けのいっぱいになった買い物袋を握り締め、背中には歴戦の戦士顔負けの巨大な斧を背負う様は、あまりにも異質が過ぎたスタイルであった。
(むー、まだ私はこの町では新顔だからか……? ま、まあ、あまり気にしないでおこう。ともかく、一旦買い込んだ食材は家に置きに家に戻って、と。ついでにラファエルが勝手に鍛錬していないか確認するためにもな! )
二度も注意したのだから、さすがに休んでいるとは思うが、まだ鍛錬しているようならもっと厳しく注意せねばなるまい。しかし、ルリアが自宅についてから、そんな心配は無用だったと知る。
「……うん、素直でよろしい」
静かに彼の寝室を覗くと、ラファエルはベッドで静かに寝息を立てていた。
(連日の疲れもあって、今日はきっとしばらく起きないだろう)
それはルリアの読み通り。
彼自身、平気だと思っていても、連日の鍛錬により肉体的に限界が来ていた。
(……よし、ラファエルは休んでいるようだし、私も夕方まで山に登ってくるか)
彼が休んでいることに安堵して、自分は改めて中継地点に赴く準備をする。
軽装に着替え、ポシェットに水を詰めた革袋、買ってきたばかりの丸パンをそれぞれ詰めた。
また、鉄鋼剣を納めた鞘を腰にベルトで締め、背中には伐採斧を背負う、完璧な冒険者スタイルに構えた。
(よし、行くか! )
いざ、中継地点の山小屋の開拓へ。
意気揚々とルリアは裏山に出発する―――。
………
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