31.ルーンナイトへの道
(気のせいだと思ったが、やはり。ラファエルの魔法は、強く"一極化"していた。濃縮されているとでもいうべきか。あれに触れていたら、肩が外れるくらいの爆発だったかもしれない。やはり、この子は……)
ルリアは額に一筋の汗を流し、ラファエルを見つめ、言った。
「ラファエル。どうやらキミは、魔力が少ないわけじゃないようだ」
「……えっ? 」
「優れた魔力は無いかもしれない。でも、優れた技巧の持ち主だと今分かった」
「ぎこうって……」
「巧みな技術ということだ。恐らく、両親のために励んだ自己流で芽生えた奇跡の技術なんだろう」
「ど、どういうこと? 」
五本の指で別々の魔法を具現化した時点で、遠からず気づいていたことだった。
だが、何を言っているか分からないラファエルは、首を傾げた。
「ボクの魔法が技巧って、どういう意味? 」
「簡単にいえば、魔法を粘土のように自由に扱えるタイプだということだ」
「自由に……それって良い事なの? 」
「キミの魔法に似たような兵士が私の時代にも居た。だから、気づくことが出来たんだ」
「それって、一体……」
ルリアは目を閉じて、その名を口にした。
「ルーンナイト部隊。いわゆる魔法剣士の部隊だ」
「魔法剣士!? 」
―――古代戦争時代。
人間の騎士隊のうち、エースとして君臨した上層部隊があった。
その名を、魔法剣士部隊。
自らの剣に魔法を宿らせ、長けた剣術と変幻自在の魔法術を用いて戦い、最も戦果を上げたエース部隊である。
「彼らは、魔法を自在に操り戦う魔法剣士だった。秀でた魔法技術に長けた剣術、二つを融合させた戦闘は、人間の騎士団でも髄を許すことなく……」
ルーンナイトというだけで、当時の人間たちは勇者のように崇めたものだ、とルリアは続けた。
「え、じゃあボクは魔法剣士の素質があるってこと!? 」
「素質はある。最低条件となる、魔法の技巧派であることはクリアしているに等しい」
「……じゃあ! 」
「だが、所詮は剣術も魔法も戦闘面で見れば稚拙なものだ。そこは理解しておくことだ」
「う、うん。ボクはまだまだ弱いってことだよね。分かってる。でも、それを聞いてもっとやる気が出てきたんだ」
ラファエルはひらいた手のひらを見つめて、嬉しそうに言った。
「やる気は大事だ。素質は充分。なら、あとはお前の努力次第ということだな」
「……ボク、やるよ。もっともっと本気になって、お姉さんの力になりたい! 」
「ああ。それなら私も昨日以上に容赦はしないぞ」
「望むところだよ! 」
「なら、話は終わりだ。改めて、魔法の鍛錬を始めるぞ! 」
「はいっ! 」
まさかの予想外たる一流の騎士たる才能を見つけたことで、二人のやる気は更に激しく燃え上がった。
そして、ルリアは彼を"強者"にすべく、持てる技術を以って、本気の技術指導を施す日々が始まったのである!
「ほら、魔力の全てを吐き切れぇ! 腹の底から空気を絞り出すように、限界まで追い込むんだ!! 」
「は、はいっ!! もっと、本気で……全部を……吐き出すように……ッ!! 」
「まだだ。もっといけるはずだ。初日だからといって、ヤワに教えるつもりはないぞ!
「頑張りますっ!」
…………
……
…




