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28.努力、才能の片鱗


「ど、どうして。ボク、やっぱり何かダメだった!? 」


 まさか、拒否されると思ってもみなかったラファエルは、慌てたように言う。

 だが、ルリアが「無理だ」と言った理由は、ラファエルの動きが駄目だったから、というわけではない。


「……いいや、きっと明日は起きるのも辛いほどに地獄だからだ」

「どういう意味? 」

「今日は全身を使って追い込んだからな。明日の朝は、筋肉痛でズタズタだぞ」

「あ、えっ……」

「だから明日は一日療養だ」

「そういうこと……。な、なんか情けないなあ~……」


 意味の分かったラファエルが深いため息を吐くと、ルリアは人差し指でラファエルの額を突き、言った。


「最初に言った通り、弱いのを恥じるな。私は情けないとも思わないし、今はその強い精神力に尊敬さえ抱いている。時間はあるのだから、ゆっくり一歩ずつ強くなっていけば良い」


 ルリアの優しい言葉が身に染みる。

 ラファエルは「うん」と頷いた。


「明日は療養しながら、別の勉学に励もう」

「あ、あはは……そうだね、勉強タイムってことだね……」

「そんな顔をするな。数学やらも良いが戦闘鍛錬の続きで魔法学なんてのもどうだ? 」

「魔法学! それなら面白そう! 」

「私自身が得意なワケではないが、今から本屋で参考になる書物でも買ってくる」

「あ、じゃあボクも」

「駄目だ。今日は残り時間は全て休む。休む事こそ鍛錬の一つ。それとも言う事をきかないか? 」

「……ききます」


 そう言われては返す言葉もなく、ラファエルは諦めたように目を閉じた。

 ルリアは「フフッ」と笑って立ち上がり、軽く背伸びする。


「では、一旦家に帰ろうか。キミをベッドに寝かせたら参考書を買いに行ってくる。ほら、手を貸すぞ」

「あ、ううん。ボクは少しこうやって横になってるよ。あとで一人で家に戻ってるから」

「……そうか? なら、私はこのまま参考書を買いに行ってくるぞ。戻ったら昼食にしよう」

「うん、待ってるね」

「分かった。では、また後でな」


 ルリアは片手を上げて、そのまま商店街への道に消えて行った。

 その後ろ姿を見送りながら、ラファエルは「凄いや」と感嘆したように呟いた。


(ボクと同じように動いてるのに、全然息も切らしてないし。いつか、お姉さんみたく強くなれるのかな。……じゃなくて、強くなるんだ。お姉さんと肩を並べて、一緒に戦えるように! )


 拳を握り締め、意気揚々と天に伸ばす。

 だが、その手のひらにビリリと疲労の痛みが走って叫びを上げた。


「痛いっ! ……はは、まだまだお姉さんのようになるには遠過ぎるや」


 パタンと大の字になって一人笑う。

 いつか、ルリアのように強き戦士になりたいと夢に見て。


 ―――……が、しかし。


 ラファエルの才能の一つが花開き始めるまで、そう遠い時間はかからなかった。

 その片鱗(へんりん)は次の日、魔法学の勉学にて示される事になる……。


………



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