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23.お招き


「失礼します、大佐殿」

「おや、やっぱりルリアさんとラファエル君か。……って、その大荷物は一体」


 時間的に酒場の開店準備をしていたのだろう、奥のキッチンでエプロンを身に着けたアロイスは驚いたように言った。

 

「昨日ぶりです。実は、お願いがあって参りましたが、お時間は大丈夫ですか? 」

「ああ、大丈夫ですよ。ちょっとお待ちを」


 アロイスはキッチンの火を止めて、エプロンを脱いで畳むと、ルリアの傍に近づいた。


「お待たせしました。それで用事とは一体。まあ、その大荷物や服装を見れば察していますが」


 一部返り血の浴びた衣服に泥の跳ね返った靴。

 それに獣臭い毛皮の袋を手にしているのを見れば、どのような用件で訪れたか察するのは容易だった。

 

「はい。ですが、ここで拡げるのもアレですので、外でよろしいでしょうか」

「大丈夫です。是非、成果を見せて下さい」

 

 ルリア、ラファエル、アロイスは店の庭先へと移動する。

 そして毛皮袋とリュックサックを拡げる、詰めていたオウルベアの肉や内臓を見せた。


「……おお、これは」

「オウルベアの肉やモツです。手足もカタチを残したままあります」

「いやはや、これは立派な……。カルキノスに続いて、オウルベアまで……」

「仕留めたのは二時間前です。鮮度は十分かと思いますが、どうでしょうか」

「どれどれ……」


 アロイスは、切り分けられた赤身肉のうち小間切れになった一枚を手に取ると、おもむろに口に放り込む。

 鮮度と味を自らの舌で精査するためで、奥歯でしっかりと噛み砕く。

 ルリアは当然のような表情であったが、ラファエルだけは「また生で食べてる」と信じられない表情であった。


「うん、美味しいですね」


 一口食べたアロイスは頷く。


「赤身肉がこれくらいなら、トロ肉は食べなくても分かります」

「では、こちらを買い取って頂きたいのですが……」

「毛皮や羽根も全て買い取ってほしいということでしょうか」

「はい。ただ、肉は私たちの食事にもしたいので、その分だけは差し引いて貰えれば」

「なるほど。では、どれくらいの量を買い取りましょう? 」

「必要な分はリュックに詰めますので」


 折角の獲物は自分たちでも食したい。

 また、干し肉にすれば日持ちするし、探索の際には貴重な食糧になる。

 それを踏まえての必要量は三キロ程度だろう。

 ルリアは必要な分だけをリュックに詰め込んだ。


「私たちは三キロほど貰います。……が、それでもかなりの量が残っていますね」


 恐らく引き取った量を差し引いても、残りは十倍以上、三十キロ近くの量があった。


「いやはや、オウルベアの肉山は久しぶりに見ましたよ」

「さすがに買い取る量としては多すぎですか? 」

「いや、ウチの常連ならあっという間に食べてしまう量です。全て買い取らせて頂きますよ」


 お待ちください、と言って一度店内に向かうアロイス。

 一分後、金貨を詰めた小さな革袋を手に戻ってくると、ルリアにそれを手渡した。


「オウルベアの平均価格は百グラムに対して五百ゴールド、つまりグラムの五倍です。今回の食用にした肉は三十キロほどとして、そこに毛皮などの価格も考慮すると、三十万ゴールドで取引させていただきます。どうでしょうか? 」


 ほぼ相場通りの引き取り金額となる三十万ゴールド。

 充分過ぎる値段に、ルリアはすぐに頷いた。


「有難うございます。三十万ゴールド、確かにいただきます」

「こちらこそ有難うございます。……ところで、これからの予定は何か? 」

「予定ですか? これから戻って着替えたらオウルベアの肉焼きでもしようかと思ってました」

「なるほど。それでは一つ提案があるのですが、よければ着替えたあとにウチに来ませんか」

「こちらの酒場にですか? 」

「ええ。お時間があればですけど」

「……そんな。お誘いを受けたとなれば是非もありません」


 小さく頭を下げる。

 アロイスは「うん」と笑うが、一言ばかり付け加えた。


「では、夕飯など食べずに来て下さいね」

「夕飯をですか。……ラファエル、キミは大丈夫か? 」


 朝食以降、動き続けてご飯を食べておらず、ルリア自身も空腹は強く感じていた。

 自分はまだしも、ラファエルが限界ならば何か軽食でも食べさせようと思ったが、彼は首を横に振る。


「ううん、大丈夫だよ」

「無理はしていないか」

「大丈夫! 」


 本当なら多少の無理はしているだろうが、ラファエルの気持ちは固いようで、それを捨てさせる理由は無い。


「それなら、大佐殿。一時間後にお邪魔したいと思います」


 ルリアが敬礼して言った。

 アロイスは

「お待ちしております」

 と、笑顔で返事した。


「では、一度、自宅に戻って着替えてまいります。行こうか、ラファエル」


 そう言って、ラファエルと二人、自宅へと帰宅する。


 今すぐソファやベッドに転がりたい気持ちはあったが、アロイスとの約束がある手前、休む暇などない。


 さっさとオウルベアの肉を無理やり水魔石と合わせて冷蔵保管庫に突っ込み、血と泥に汚れた服を脱ぎ捨て、シャワーを浴びて新しい服装に着替え直す。


 そして、互いに準備が整ったことを確認したあとで、二人は再びアロイスの酒場に赴いた。



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