その3 仲直りの動物たちとわんぱく兄弟
「クマさん、本当にごめんなさい!」
キツネとリスは、バカにしていたクマの前で頭を下げてあやまりました。すると、春太と次助の兄弟が3匹の前へやってきました。
「オンボロ橋を渡れるかと言わなければ……。キツネさん、リスさん、ごめんなさい!」
春太がキツネとリスに向かってあやまると、次助も大きなクマの前であやまろうとしています。
「ぼくも、クマさんのためと思ってウソをついてごめんなさい!」
頭を下げてあやまる次助に、大きなクマはそっと手を当てました。
「そんなことを気にしなくてもいいよ。だって、わしのことを思ってそう言ってくれたんだもの」
クマのやさしい気持ちに、次助はいつもの笑顔を取りもどしました。すっかり仲直りした動物たちを楽しませようと、春太は森の出入り口の方向へかけ出しました。
「みんな! ドングリ池でいっしょに遊ぼうよ!」
「春太、ちょっとまってよ!」
弟の次助のほうも、一足先に走り出した春太を追いかけるようについていきます。2人のあまりの元気さに、後をついていく動物たちもすっかり参っているようです。
クマたちがドングリ池へたどり着くと、すでに春太たちが水中で泳いだり遊んだりして楽しんでいます。
「クマさん! リスさん! キツネさん! いっしょに水遊びしよう!」
春太と次助は、池の入り口でピョンピョン飛びはねながら動物たちを呼んでいます。けれども、動物たちは人間の子どものように泳ぐことができません。
そんな動物たちに、双子の兄弟はあることを思いつきました。
「みんなで水のかけ合いっこをしようよ!」
これなら、泳げる泳げないに関係なくみんなで楽しむことができます。春太と次助は、さっそく大きなクマにパシャパシャと水をかけ始めました。
すると、クマのほうもお返しとばかりに水の中へ入りました。
「ぼくも負けないぞ! パシャパシャパシャ!」
「わわわっ! もうっ、クマさんったら!」
クマはその大きな図体ということもあって、はげしい水しぶきが春太たちに次々とかかってきます。一方、リスは体が小さいのか池の水をパシャパシャさせることができません。
「いいなあ……。ぼくもせめてキツネさんぐらい大きな体だったらなあ……」
リスは、となりで水をかけあっているキツネの姿にうらやましそうです。この様子に、キツネはリスに声をかけました。
「体の大きい小さいは関係ないよ。だって、リスさんは木登りが得意だし、木の実を見つけるのも上手なんだし」
人間も動物たちも、それぞれ得意なのもあれば不得意なものもあります。リスは、キツネさんの言葉を聞いて再び笑顔を取りもどしました。
こうして、森の中でいっぱい遊んだ双子の兄弟は動物たちとお別れすることになりました。大きなクマは、春太と次助の2人がいなくなることにさびしさをかくせません。
「おうちへもう帰るの? さびしいよ」
「夕方になったから、そろそろ帰らないとおっかあにおこられちゃうの」
「おっかあに心配をかけたくないし……」
もっと遊びたいと考えるのは、春太たちも同じです。でも、続きはまた明日までのお楽しみです。
「また明日の遊びにくるから!」
「ドングリ池にいるから、みんなも集まってね!」
ふんどし姿の春太と次助は、動物たちに手をふりながら逆さ虹の森を後にしました。クマやキツネ、そしてリスは双子の兄弟がまた遊びにくるのを楽しみにしながら森の奥へもどっていきました。