その2 わんぱく兄弟と動物たちの出会い
「クマさん、そんなにおびえなくてもだいじょうぶだよ」
その言葉を聞いたクマは、自分の前にいる双子の男の子2人の姿を見ました。春太たちのほうも、今までこわいとばかり思っていたクマのやさしさを感じています。
「ヘビはもういなくなったよ!」
「そうかそうか、どうもありがとうね」
クマは、初田と次助の手をやさしくにぎっています。でも、あれだけの図体があるクマがこわがる様子が2人には信じられません。
「どうしてあんなにこわがるの?」
「だって、こわいものを見たら足がすくんでしまうの……。キツネやリスにも、このことでバカにされて……。ううっ、うううううううっ……」
大きなクマは、自分よりも小さい人間の男の子の前で泣き出しました。この様子を見てやってきたのは、キツネとリスの2匹です。
「泣き虫こわがりのクマさんや~い!」
「どんなにでかくても、クマさんはこわがってばかりで情けないなあ」
キツネとリスにバカにされても、気の弱いクマは言い返すことができません。すると、春太と次助はクマに代わって2匹に言い返しました。
「クマさんはこわがりなんかじゃないって!」
クマがこわがりでないことを示すためには、自分の力でキツネとリスに見せつけなければなりません。キツネとリスは、それにぴったりな場所へ案内することにしました。
「どこへ行くのかな?」
「キツネさんやリスさんが知ってるところってどこだろう?」
双子の男の子とクマは、前にいるキツネとリスの後ろをついていきます。やがて、川のせせらぎの音がみんなの耳に入ってきました。
森の中をいったん抜けると、向こう側に見える森の手前に大きな川が目に入りました。大きな川を渡るためには、オンボロ橋と呼ばれるつり橋を通らなければなりません。
キツネとリスは、つり橋の前に立ってニヤニヤと笑っています。
「クマさ~ん、こわがらないと言うならこの橋は渡れるよねえ」
「どうしたのかなあ? 足がふるえているみたいだけど」
大きなクマは、今にも落ちそうなボロボロのつり橋を見ただけでふるえています。これを見た春太たちは、あることを思いつきました。
「キツネさんとリスさんは本当に橋を渡ることができるの?」
「人間の子供に言われなくても、ちゃんと渡れるわい!」
キツネとリスは、自分たちが渡れることを見せつけようとつり橋に足を入れました。しかし、オンボロ橋に足を踏み入れると次第に不安な顔つきになってきました。
「う、うわっ……。ちょっとゆらさないでよ!」
「そんなこと言ったって……」
キツネたちは、先に進みたくてもつり橋に乗ったままなかなか動こうとしません。少しでも動けば、橋から落ちて川の中へ落ちてしまいます。
それでも、オンボロ橋が渡れると言ったからには自分たちの力で進まなければなりません。キツネがおそるおそると先に行くと、リスのほうもゆっくり進もうとします。
「ここでこわがったら、あのクマさんに笑われてしまう……」
キツネが進もうと足をふみ出したそのとき、ボロボロの板があることに気づかずにそのまま川の中へ落ちてしまいました。
「助けてくれ……。お、おぼれそう……」
「うえええええええ~ん! 橋がゆれてもどれないよ!」
キツネとリスの助けを求める声に、双子の男の子はすぐに行動を起こしました。川の中へ飛び込んだ春太は、おぼれているキツネをすぐに抱き上げました。
「クマさん、川の手前でキツネさんを両手で受け取って!」
「で、でも……。ぼくは……」
「だいじょうぶだって! クマさんは弱虫じゃないでしょ!」
最初はためらっていたクマでしたが、春太の励ましを受けながらすぐに川のそばへ近づきました。そして、クマは春太から手渡しされたキツネをやさしく抱きしめました。
そのころ、次助のほうもリスを助けようとオンボロ橋を両手でにぎってささえようとします。
「リスさん、ぼくのほうへ向かってゆっくり歩いて!」
「本当にだいじょうぶなの?」
「1歩ずつ歩けばだいじょうぶだって!」
リスは、次助に言われた通りにおそるおそると足を進めていきます。ようやく橋のたもとへもどると、リスは次助の足にしがみついたままはなれようとしません。
「うえええええええ~ん! こわかったよ! こわかったよ!」
「リスさん、ここまでもどることができたね」
次助は、大泣きしているリスをやさしくさすっています。そのやさしさに、リスのほうも次第に泣くのをやめました。