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その1 ドングリ池のわんぱく兄弟

 むかしむかし、あるところに『逆さ虹の森』という名前の森がありました。


 ある夏の暑い日のこと、春太と次助という2人の男の子がこの森へやってきました。双子の兄弟である2人は、ある場所へ行こうとはだしで走っています。


「早くドングリ池で泳ぎたいなあ」

「今日も池の中で泳いだり、遊んだりするぞ」


 2人の遊び場、それは森の奥にあるドングリ池です。畑仕事や川での水くみといった家の手伝いが終わると、ふんどし姿になって逆さ虹の森へかけ出していきます。


 そんな春太と次助の元気さに、お母さんは少し心配そうに見つめています。


「春太! 次助! 大きなクマがいるから気をつけるのよ」


 お母さんがどんなに声をかけても、2人の耳に入ることはありません。なぜなら、今まで森の中でクマに出くわしたことはないからです。


 奥のほうへ走って行くと、2人の目の前にキレイで大きなドングリ池が現れました。これを見るやいなや、春太と次助は池の中へ大きな水しぶきを上げながら思い切り飛びこみました。


「今日はどっちが速く泳げるのか競争だ!」

「昨日は春太に負けたけど、今日は絶対に勝つぞ!」


 2人は双子だからこそ、相手に負けたくないという強い気持ちがあります。コマドリの美しいさえずりが聞こえる中、春太と次助はどちらが早く向こう岸にたどり着くか競争しています。


 負けん気の強い2人の水泳での対決ですが、最後はわずかの差で次助が勝ちました。春太に勝ったことに、次助は喜びをかくすことができません。


「わ~い! 春太に勝ったぞ! 勝ったぞ!」

「くそ~っ! 今度は負けないからな!」


 大喜びの次助とくやしさをにじませる春太の2人ですが、その後は池の中で遊んだりじゃれ合ったりしながら楽しんでいます。


「よくも水をかけてくれたな! それそれっ!」

「うわっ! 今度はこっちからお返しだ!」


 水のかけ合いっこを楽しむ2人の姿に、森の中を歩くキツネやリスも立ち止まって見ています。2人の元気でにぎやかな声は、森に住む動物たちにも広く知られるようになりました。


 そんな2人が池の中で遊んでいると、近くからうめき声のようなものが耳に入ってきました。


「おっかあから、クマには気をつけろといつも言われているけど……」

「こんな近くにいるなんて、まさか……」


 このままドングリ池にいたら、いつクマにおそわれてもおかしくありません。春太と次助は池から上がると、クマに見つからないように音を立てずにそっと歩き出しました。


 そのとき、歩いているそばの草むらから大きなヘビがはい出してきました。これに気づいた2人は、思わずさけび声を上げてしまいました。


「うわあっ! ヘビが出たあ!」


 春太と次助は、後ろから追いかけてくるヘビからにげるように森のさらに奥へと走って行きます。しかし、えものを見つけたヘビは決して見のがしません。


「いつまでたってもヘビが追いかけてくるよ」

「あの木なら、ヘビが上ってくることはないし」


 森の中にある木に春太が手足を使って登ると、次助もその後を追うように登ろうとします。一方、ヘビのほうも地面を這いながら木の根っこへやってきました。


「たのむからこないで! こないで!」


 木の根っこから垂直にはい上がって獲物をねらうヘビの姿に、2人は上のほうへ登ろうと必死です。


 ヘビは、大きな口を開けて少しずつ次助の足に近づいてきています。何とかして登りたいと手足を上へ伸ばそうとしたそのとき、次助は思わぬ音が出てしまいました。


「プウウウッ! プウウウウウウウウウウッ!」


 おしりに力が入った次助は、真下にいるヘビにおならを2回も続けて命中させました。いきなりの出来事に、ヘビはあわてて春太たちのいる木から走り去っていきました。


「次助、おならでヘビをやっつけたのか! すごいなあ!」

「そんなこと言わないでよ! たまたまおならが出ちゃっただけだい!」


 2人はこわいヘビがいなくなってホッと一息をつくと、ゆっくりと木から降りていきました。春太たちは、近くの木に何やらこわがっている様子の大きな動物がいることに気づきました。


「どうしてこわがっているんだろう?」

「でも、あの動物はどう見てもクマだし……」


 クマがおそろしい動物であることは、森へ遊びに行くたびにお母さんから何度も言われています。それでも、2人はどんな動物なのかこの目で見ることにしました。


 春太と次助は大きな動物に気づかれないように、音を立てずにゆっくりと歩いていきます。ここで音を立てたりしたら、大きなクマにいきなりおそわれてしまうからです。


「だいじょうぶかなあ……」


 2人は、不安になりながらも大きな動物のほうへ近づいていきます。すると、春太たちの耳に大きな動物の声が入ってきました。その声はおびえており、双子の男の子が思っていたのとは正反対です。


「大きなヘビ、こっちにこないように……」


 おびえた声の主は、この森に住む大きなクマです。その大きな図体にもかかわらず、クマはヘビを見るだけでものすごくこわがっています。

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