第九十話 ディア王女
何処だ?
ディアは何処にいる?
辺りを見回してもフードの子は見当たらない。
もう移動しちゃったのか。
「リン?どうかした?上手くいかなかったの?」
「翼は上手くいったよ。でも、ここにさっきのフードの子が居たんだ。その子と話がしたい。この翼で何とか見つけられないかな」
「つまり、女神様だけじゃ足りないって言うの?」
「そう言う事じゃないないよ。僕の家族の知り合いらしいんだよ」
「家族?兄弟?」
「姉、、、かな?姉2人とあとは妹と弟」
「意外と多かった」
「まあ、血は繋がってないけどね」
「待って。それって家族って言えるの?」
「え?家族だよ?」
「そ、そう。何か腑に落ちない感があるけど」
ああ、ディアって分かってたら、さっきフィアの事を話せば良かった。
ディアもフィア達の事を探して、フォルクヴァルツまで来たんじゃないのか?
「対象、ディアマント=ツィン=ヘルグリューン」
まだ、リストには残っていたから、ステータスを見てみることにする。
名前 ディアマント=ツィン=ヘルグリューン
性別 女
年齢 13
レベル 5
職業 シュタール王国王女
種族 エルツ族
階級 なし
称号 最高硬度の姫
所属 なし
加護 なし
生命力 985/985
CP 25%
SP 252G/252G
状態 正常
スキル
・・・・
おお、人のステータスを勝手に盗み見るのって、悪い事をしてるような気がするよね。
分かってはいるんだけど、そういう魔法だし、天使だし。
はあ。何言い訳言っても、罪悪感は残るもんだ。
ここはもう開き直るしかないね。
………次からは知り合いにこの第六の翼は使わないようにしよう………。
状態の欄を触り、入力が出来るようにする。
状態 正常/光り輝く
こう変えてみた。
こんなステータス聞いた事無いけど、あ、ほら、あそこにいた。
人がたくさんいる中、一箇所だけ眩しいくらいの光を放つ場所がある。
そこに行ってみると、フードごと光り輝くディアが居た。
「何だ!この光は!神に召されるのか?!」
ああ、こんなの混乱するって。
ちょっと悪いしたかな。
ステータスを元に戻すと、光は消え去り、元のフード姿に戻る。
周りから注目を浴びていたけど、光がなくなった事で皆んな興味が失せたのか、散り散りになっていく。
ディアに声を掛ける。
「あのさ」
「!!また貴様か。くっ」
あ、逃げた。
なんで?
「もう見えなくなったわね」
「逃げ足速いな。じゃあこうだ」
状態 正常/移動できない/天から光が差す
これでどうだ。
おお?空から光が一点に降り注いでいる。
そこに行ってみると、足を踏み出したまま固まっているディアに光が当たっていた。
便利便利。
目立つから天からの光だけ消しておく。
「これは、貴様がしているのか?早くこれを解け」
「話をしてくれるなら」
「………分かった、話をしよう」
「本当に?もしまた逃げたら今度は頭の上に、この人はディアです、って表示させるよ?」
「何を、、、ん?何故我の名を知っている?ディーとしか言っていない筈だが」
「その呼び方を他の人にさせたらフィアが怒るんじゃないの?」
「!!貴様!フィーちゃんを知っているのか?!」
本当にフィーちゃん、ディーちゃんって呼びあっていたのかよ。
流石にフィアの名前を出したら食いついてきた。
逃げるどころか、早く詳しい話をしろと、ぐいぐい来るくらいだ。
「と、まあ、そんな感じで、今は王都に住んでいるんだ」
「なるほど。貴様にはラーちゃんを助けてもらったようで、感謝しなければならないな」
「ラーちゃん………。あ、ラナの事か。あと、マルモとブロンも知ってる?」
「ああ、我のメイドの子供達だろう?マーちゃんとブーちゃんだ!」
「………ああ、うん、そう。まあ、呼び方はどうでもいいや。もし、フィア達に会いに来たんだったら、一緒に行く?軍に王都まで連れて行って貰うんだけど」
「いや。我は王女だからな。万が一にも捕まる訳にはいかぬ。この国の軍ともなれば我を捕獲して母国との交渉カードに使おうとするものもいない訳ではない」
そうだな。
国王ですら、最初はエルツ族は排除すべきと頑固だったし、敵地みたいなものだよな。
「分かった。何も手助けできないのは心苦しいけど。フィアの所はこの場所だから」
僕の家の場所を地図付きで書いて渡す。
「ああ、助かる。もし、我より先にフィーちゃんに会えたら、ディーが会いに行くと伝えておいてくれないだろうか」
「分かった。伝えるよ。あ、そうだ。さっきのお詫び」
加護 アリアージュ・ミヌレの加護
僕の加護を付けておいた。
他の神様の加護を勝手に付けていいものか分からなかったし、僕のなら問題ないでしょう。一応天使だしね。
ディアにステータスを確認して貰う。
「これは、、、貴様は、、、あなたは女神だったのか?」
「あ、いえ。えっと、一応、ただの人族なんですけど、天使っぽい事もちょっとできるので、ハーフ天使、みたいな?」
「そ、そうか。変わった属性もあるものだな。だが、このあなたの加護はありがたく受け取っておく。では、また会おう!」
ばささあっとマントを翻して、颯爽と行ってしまった。
そして、気がつくともう何処にも見えなくなっていた。
何か隠密系のスキルでも持ってたんだろうか。
ディアの事を早くフィア達の所に戻って、知らせなきゃ。
「ねぇ」
「ん?何?レリア」
「加護って何?」
「え、あ、何だろうね」
「隠すんだ」
「わ、分かったよ。説明するよ。と言っても、どんな効果かあるかなんて分からないから、御守りみたいなもんだよ。気休め程度。僕の天使の力が少しでもあの子を護れれば良いかなって思って、僕の加護を付けたんだよ」
「わたしも」
「え、、、っと」
「わたしにも、その加護を付けて」
そう言うんじゃないかと思ったよ。
仕方がないので、レリアにもアリアの加護を付けておく。
「言っておくけど、何も効果は無いと思うよ?それに、王都に帰ったらリンに戻るんだし」
「いいわ。それでも。ねぇ、これって、リンの加護ってならないの?」
「もっと意味ないじゃん、それ。ただの人族の加護なんて何にもならないよ」
それでも良い、という事らしいので、リンとアリアの二つの加護を付けておいた。
その後もレリアは自分のステータスを見てずっとニヤニヤしていた。
何がいいんだか。
翼を出さずに魔法を使えるようになったので、さっきのお店のおじさんの所にまた行ってみた。
「さっきのおじさん!腰をもう一回みせて!今度こそ大丈夫だから!」
「お?何だ何だー?本当に治せるのかー?言っとくけど回復魔法じゃ、一時的に痛み止めにしかならないぞ?教会で高い金払ってやってみた事もあるけど、次の日には再発してたからな」
そ、そうなんだ。
やっぱダメかも。
「ああ、それじゃあ、やめとこっかなあ、とか」
「リン!やってみなさいよ。戦場じゃ何でもやってみてたじゃないの!見た目が変わったら、気持ちも変わっちゃうの?」
「レリア………。そうだね。うん!やってみるよ!」
「おい、なあ、俺で何か試そうとしてないか、、、。チャレンジっぽいニュアンスがあるんだけどよ」
「おじさん!細かい事気にしてたらダメだよ!」
「ええええ、、、。細かい事かなあ」
そうそう。細かい細かい。
小声でセラフの翼を起動する。
そして、第六の翼をこのおじさんに向けて実行する。
あれ?
状態 正常
正常って出たぞ?
腰痛くらいだと、バッドステータスにならないのかな?
なんだよ、状態 腰痛、とかってなってたら、そこを正常に戻せば治せると思ったのにな。
あ!こっちのこれか、、、、。
スキル
腰痛持ち SLv3
串焼き SLv4
商売 SLv1
何だよ、腰痛持ちスキルって。
しかもレベル3もあるし。
腰が痛くなるスキルなのか。
ああ、つまり、一時的な状態の変化というのではなくて、常に発動するパッシブスキルとして、いつも腰痛になる、って言う物なのか。
これじゃあ、回復魔法で治しても、根本的には治らないよな。
だって、この人のスキルなんだから、回復魔法で消せる訳ないよ。
でも、この第六の翼なら、なんて事ない問題だな。
スキル欄から腰痛持ちを消してしまう。
スキル
串焼き SLv4
商売 SLv1
よしよし。
これでどうだ。
「どう?おじさん。腰まだ痛い?」
「おおん?お?なんだ?痛くねえぞ!おお!ほら!こんなに捻っても下向いても何ともねえ!ふはははは!こりゃいい!嬢ちゃん!ありがとよ!」
「おお、上手くいった」
「へぇ。何だい。腰に効く魔法でもあるんかい。ワシにもやってくれんかの」
「ええ、いいですよ」
お店に来ていたご老人も、腰痛持ちスキルを消して治してあげる。
ついでに、関節痛持ちスキルもあったから、それも消し去った。
「ほうぅぅ。こりゃスッキリしたわい。膝の痛みもなくなった気がするし、ベッピンさんに治してもらえたし、長生きしてみるもんじゃのう」
おじいさんは、プルプル震えながらスキップして帰っていった。
治しすぎたかな。
まあ、お年寄りが元気なのはいい事だ。
なかなか面白い使い方が分かって良かった良かった。
さて、そろそろ帰るとするか。
「ねぇ」
「ん?帰るよ。僕は帰るったら帰るよ?」
「見ない振りする気?」
やっぱりダメか。
お店の前には行列が出来ていた。
お店のおじさんだけでやめておけば良かった。
さっきまで、よろよろだったおじいさんが、いきなりスキップして帰れば嫌でも目立つよな。
マルブランシュの時と同じで、目の前で奇跡が起きればこうなるのは分かってたじゃないか。
そして、あの時も大変だったじゃないか!
「はい、次の方。あ、おじさんごめんね?お店の端、使わせて貰っちゃって」
「ああ、いいさ。俺の腰を治してくれた治療費みたいなものだよ」
「うん。ありがとう」
結局、腰痛のおじさんのお店を間借りして、臨時の治療院が開業した。
大抵のお客は腰痛持ちや関節痛持ちだった。
冷え性スキルとか、偏頭痛スキルというのもあった。
皆んな大人は苦労してるんだな。
またいつかはスキル持ちになってしまうだろうけど、しばらくの間は悩みの種とは離れられてスッキリする事だろう。
皆んな晴れ晴れとした顔で帰っていく。
やっぱりお礼を渡そうとする人が後を絶たないけど、全部断った。
持っていた飴をくれるくらいなら受け取るけど、価値のあるものやお金そのものは絶対に受け取らないようにした。
何となく天使の力ってお金儲けに使う物ではないと思ったから。
中には風邪とかの病気の人も居たけど、その場合は、
状態 ただの風邪
と出ていたから、、、ただの風邪って何だよって思いながらも状態を「正常」に戻したら簡単に病気も治った。
皆んなそんなに深刻じゃない困りごとだったから、マルブランシュの時と比べれば、のんびりとした治療院といった雰囲気だった。
天使と言うよりは、町医者だね。
「あの、、、僕も治してもらえますでしょうか、、、」
お年寄りばかりの中では珍しく、若い、、、10代くらいの男子が来た。
「はい。いいですよ?早速診てみますね、って脱がなくていいから!顔を赤くしないでよ!残念そうにしない!ふう、全く最近の若者はこれだから、、、、」
「リン?最年少はあなたよ?」
そういうの言うってのは野暮ってもんだよ。
こほん。気を取り直して、この若者を診てみようかね。
んー?状態も正常だし、スキルも変なのは付いてないな。
何を治すってんだい?
ああ、、、、これか。
職業 奴隷
この男の子は奴隷なんだ。
奴隷の首輪は服でうまく隠しているようだ。
これは、でも主従契約の主人がいるはずだから、勝手に解約しても良いものなのかな?
「えっと。その首の物を取りたいって事でいいのかな?」
「は、はい!僕はノルドからの移民だったんです。始めはマルブランシュが移民受け入れをしてくれたんですけど、そこで、奴隷商人に捕まってしまって、この国に売り飛ばされたんです」
本当に奴隷ってラナみたいに売られてくるんだな。
そう考えると助けてあげたいな。
「うん。じゃあやってみるよ。ちょっとジッとしててね」
「は、はい!」
職業欄の奴隷部分を触り消してみる。
『警告!この変更をすると、このアバターユニットの所有者に通知が送られます。変更を実行しますか?』
よく分からないけど「はい」と答えてみる。
『このアバターユニットの職業を変更します。変更後、10s以内であれば、ロールバックする事が可能です』
職業欄は空になった。
それから10秒経った時に、
『変更が自動コミットされました。主従契約の強制解約を実施しました。このアバターユニットの所有者にステータス変更のお知らせを通知しました。奴隷職消失により、一部スキルが削除されました』
これでいいのかな?
何か色々問題が起きそうな感じがしないでもないけど。




