表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
87/162

第八十七話 第五の翼、第六の翼

 レリアがアリアの中身が僕だって分かってくれだと思う。


「あ、、、え?、、、え?」

「アウグステンブルク!天使様に馬鹿とは何事だ!土下座してお詫びしろ!」

「は、はい!」

「いや、待って!レリア!土下座はダメ!副隊長さんもレリアを赦してあげてください!」

「ですが、しかし、、、分かりました。アウグステンブルク!天使様のこの寛大な配慮に感謝するのだぞ!」

「はい!アリア様、、、ありがとうございます」


 副隊長は早くあっちに行って欲しい。

 レリアが混乱し過ぎて何が何だか分からないって顔になってる。


「レリア、レリア。僕の事分かった?」

「アリア様。先程は大変失礼いたしました。少し頭が混乱しておりました。もう大丈夫です」


 いや、分かってないのかよ!

 副隊長はずっと近くにいるから、レリアと話がしづらいな。


「天使様。大変申し訳ないのですが、駐屯地に戻る前に少し寄らせてもらってもよろしいでしょうか。自分達がこの町に派遣されて来たのには、理由がありまして、その現場に行く途中だったのです」

「あ、そうだったんですか。そんな時に私を助けていただいてすみません」

「いえいえ!天使様をお助けできるなんて、名誉な事でございます!フードを被った怪しい者が急に現れて、自警団が少女を売り飛ばそうとしている、と聞いた時は驚きましたが結果的に天使様をお守りする事になりましたので、あのフードの者には感謝ですな」


 あのエルツの女の子が僕が連れて行かれるのを見ていて、副隊長さんに通報してくれたんだ。

 助かったよ〜。




「あれだ!皆気をつけろ!動かないからといって油断するなよ」

「「「は!」」」


 露天の並ぶ賑やかな通りの真ん中に一箇所、人のいない空間があった。

 道行く人はそこだけを避けている。

 その中心には人が立っていた。

 いや、人ではない。

 見慣れた、そして、やや懐かしい、その人の形をした物は、、、ダミー君!だった。


 何故こんな所に、、、。


「なんでダミー君がこんな町の中に?」

「さ、流石天使様!ダミー君の存在をご存知だとは。あれは、学校などに置いてあるダミー君とは一見、見分けが付かないのですが、話によりますと、このように一定の距離に近づきますと、、、」


 シュバッ、と何かの音がして、副隊長の服の前がパラリと裂ける。

 ああああ、こんなの見たくなかった、、、。

 誰がこんなおじさんの胸元がチラリとか見たがるんだよ。

 レリアをチラッと見ると口元を押さえて吐き気を堪えていた。


「し、失礼しました。いや、しかし、危なかった。あと少し前に出ていたらさっくりとやられていましたな!」


 そうだ。服だけで良かったけど、かなり危険なんじゃないのか。

 全く動きは見えなかったな。

 何か刃物が飛び出しているんだろうか。

 このアリアの素早さでも見えないんだから、速度だけで言えばかなりのレベルと同等なのだろう。


「副隊長さん。あれはただのダミー君では無いようですけど、、、。あの、、、胸元を両手で押さえるのは、出来ればやめてほしいかなって」

「むむ?変ですかな?お見苦しい物ですので出来るだけ見えないようにと思ったのですが」


 副隊長さんが、そっと、手を離すとそこには胸毛モジョモジョが見え隠れする。


 くっ、どっちに転んでも悪夢だと!?


 ダ、ダメだ!こんな災厄!早くなんとかしないと!


「セラフの翼!第三の翼!対象!アロイス・トロムリッツの服!」


『セラフの第三の翼を行使します。対象の損傷、欠損を修復します。修復完了まであと、2秒』


 よっし!対象を指定すればいけるかもと思ったけど、上手くいったぞ!

 副隊長さんの服が見る見る内に縫い合わされていき、元通りに穴が塞がる。

 ふう。これで、悪夢は去った、、、。

 つらい闘いだったよ、、、。


「おお、奇跡がここに!!なんという事だ!こんな服の為に神の奇跡を使われるとは!天使様の御心の広さには感服いたします!」


 神の奇跡じゃなくて、天使のスキルだけどね。

 しかし、今までにかつてこれ程までに無駄な天使スキルの使い方をしただろうか。

 恐らく天地開闢以来、初のことなんじゃ無いだろうか。


 ああ、だけど、天使の翼を広げ出してしまった事で、かなりの注目を浴びてしまった。

 というか、僕を拝んでいる人もいるし。

 ごめんなさい。中身はただの子供なんです。


「天使様、あのダミー君モドキはああやって近付いた者を切り刻み、触手のようなものを出してきて、捕食しているようなのです。王国内の地方の町などに急に現れ始めたので、その調査に自分達がここに派遣されて来たのですが、、、」

「そ、そうなのですね。排除はできないのですか?」

「それが、あの速度ですので、何が起きたのかも分からず、やられてしまう為、対策のしようもなく、、、更にダミー君をご存知であれば、その特性もお分かりかと存じますが、、、」

「ああ、魔法や物理攻撃に異様な程、耐性がありますね」

「はい。戦略級魔法でも無いと一撃では倒せないでしょう。ですが、街中でそんな物を放つ訳にもいかず、、、。王宮や軍でも、どう対応していいか悩んでいまして」


 なるほどね。

 あれ?でも前に魔法試験で消滅させちゃったような。

 いや、そんな事実は無かった。

 そうそう、あれは夢だったんだよ。


「そこで、天使様!その御翼であのダミー君モドキを封じていただけないでしょうか!」

「え?封じる?」

「はい。失礼ながら、その3対6枚の翼は熾天使セラフの御翼とお見受けいたします。その五の翼は伝説によれば『戒めの鎖』と呼ばれるものではありませんでしょうか」


 名前ついてるのかよ、翼!

 選択肢にも名前くらい付けておいて欲しいよ。

 その第五の翼なら、このダミー君を抑え込めるんだろうか。


「ですが、この翼の力でも抑え込めるか分かりませんよ?」

「はい、天使様にこんなお願い事をするのもおこがましいのですが、あなた様の民をお救いくださいますよう、どうか、どうか!お願いいたします!」

「わ、分かりましたから、土下座しようとしないで!」


 まったく、、、フォルクヴァルツの男性は皆んな土下座好きなの?


「では、皆さん何が起きるか分からないので、少し退がっていてくださいね」

「はい。おい!総員退がれ!市民ももっと退がらせるんだ!」

「ア、アリア様、、、」

「大丈夫だよ、レリア。あ、それと、後で話があるから、2人きりの時間をとって欲しいんだけど」


 今なら副隊長さんも離れてるし、、、あ、今言っちゃったほうが早かったかも。


「え?、、、は、はい、、、、。ポッ」


 いやいや、反応おかしいよ!

 別に告白する為に呼び出した、とかじゃないから!

 それに、レリアは僕の事が好きなんじゃないの?!

 なのに、僕に告白されそうになって赤くなってるの?!

 あ、いや、今も僕なんだから合ってるんだけどさ。

 あれ?何言ってるんだ僕は???


「ま、まあ後ででいいか。じゃあ、やってみます。セラフの第五の翼の!!対象!ダミー君モドキ!」



『セラフの第五の翼を行使します。対象の捕縛を開始します。座標特定。対象を世界座標系に投錨します。投錨完了。対象を戒めの鎖で捕縛しました』



 これで、封じられたのかな。

 ちょっとずつ近づいてみる。


「ア、アリア様!危ないです!」

「そろっと行くから、、、もうちょい」


 さっき、副隊長さんを厄災に引き上げたポイント辺りまで来た。

 まだ、ダミー君は沈黙している。

 よし、もう少し前に進んでみる。

 一歩、足を前に出す。

 更にもう一歩。

 ダミー君はピクリともしない。


 とうとう手が届く所まで来たけど、攻撃は来ないようだ。

 後ろを振り向くとレリアもすぐそばに付いて来ていた。


「うおお!レリア危ないじゃないのさ!付いて来たらダメだよ!」

「いいえ!アリア様お一人を危険な目に遭わせられません!わたくしめもお供いたします!」

「う。あ、ありがと。でも、もうこれで、大丈夫そうだよ」


 レリアも副隊長さんも皆んなホッとしている。

 でも、このダミー君はこの後どうすれば良いんだろうか。

 このままって訳にはいかないだろうし、第五の翼だっていつまで保つのかわからないしな。


 あ、そうか。


「ステータスウィンドウ」


 へへへ。すぐにステータスウィンドウを思いつくようになったぞ。

 もう窓無しとは思えない程マスターしてきたと思うんだ。



 魔法 [鍵]

 一部ロックされています

 常時解放 セラフの翼 展開中 [閉じる]

 セラフの第五の翼 錨泊中 ダミー君モドキ

 残り 3512s [抜錨する]



 ああ、これって1時間しかもたないんだ。


「あの、副隊長さん。この戒めの鎖はあと1時間で外れてしまいます。ですので、今の内に破壊してしまわないとです」

「そうですか、、、。しかし、魔法は効きませんし、剣などで攻撃しても、1時間で壊せるかどうか、、、」


 そうか、魔法が付与されている武器だと全部無効化してしまうし、通常武器も殆どダメージを与えられないだろう。

 ん?副隊長さんが僕をチラチラと見ている。

 え?何?

 副隊長さん僕の事が気になってるの?

 うえぇ。変な事考えさせないでよ!?


「て、天使様。その、、、大変厚かましいのですが、もう一翼、振るっていただけませんでしょうか」


 もう一翼って、もう一杯みたいに言われてもな。


 あの雷の槍のはビリビリするだけの物だから、破壊まではできないよな。

 そうすると、あとは第六の翼か。

 これって何の力なんですか?って聞けないよね。

 自分の能力じゃん!って突っ込まれるよ。


 まあ、やってみるか。

 副隊長さんはこれで、なんとか出来るって思ってるみたいだし。


「セラフの第六の翼の!!対象!ダミー君モドキ!」



『セラフの第六の翼を行使します。対象の走査完了』




 名前 ダミー君モドキ

 性別 男

 年齢 5日

 レベル 1

 職業 ダミー君

 種族 ダミー君モドキ

 階級 なし

 称号 なし

 所属 なし

 加護 なし


 生命力 100000/100000

 CP 100%

 SP 30.5T/32.0T

 状態 ログアウト中/自動操作中/錨泊中〔行動不能 スキル・魔法無効化〕


 スキル

 魔法絶対耐性 SLv5

 物理攻撃絶対耐性 SLv5


 魔法

 自動切断 SLv5

 自動搾取 SLv5


 部隊

 なし


 アイテム

 なし




 ダミー君モドキのステータスが出て来たぞ。

 本当にこの名前であってたんだ。

 スキルも魔法も封じてるから、攻撃は効きそうだけど、生命力、、、ってあるのか、それが、異様な程高いな。

 1時間でこれを削れるのか?

 それにログアウト中って、中の人が居ないのなんてあるんだ。

 空っぽのアバターを何かの仕掛けで動かしてるって訳か。


 というか、この第六の翼は他人のステータスが見えるだけなのか?

 まあ、普通の人にしてみればすごい能力なんだけど、最後の翼にしては、なんだかショボいというか、もう少しなんかあっただろうって感じだな。


「あ、あの、副隊長さん」

「は。なんでしょうか」

「あ、えと、その、この第六の翼は皆さんの間ではどのような呼ばれ方をしているんでしょうか」

「は、、、呼ばれ方ですか。そうですね。窓を破壊するウィンドウブレーカーとかは神話には書かれてますが」


 何その恥ずかしい呼び名は。

 しかも、神話に載ってるのかよ。

 昔の人、後になって、この名前を付けたの恥ずかしくて、ゴロゴロ転げまくってるんじゃないのか。

 それにしても、窓を見る者とかじゃなくて、破壊する者か。


 表示されているダミー君モドキのウィンドウを触ってみる。

 これで、破壊できたりして。


 何も変わんないか。

 ぽんぽん触ってみるけど、何も起きない。


 あ、生命力の数字を触った時に、左の数字全体が青い四角で囲まれて、その端に縦の線が表示されて点滅するようになった。

 その下には数字が0から9まで書かれたボタンが現れる。

 そうっと、その内の1を押してみる。

 ぱっと数字が置きかわり、「生命力 1/100000」となった。


 おお!第六の翼は他人のステータスを勝手に変えられちゃう能力なのか。

 これは反則級の力だな。

 まだ、縦線が1の右で点滅している。

 このままだとまだ数値は確定していないんだろう。

 他の何も書かれていない所を触ってみると縦線は消えて、これで、変更が反映されたと思う。


「セラフの第四の翼!」


 右手に雷の投げ槍が現れる。

 それをトスっとダミー君モドキに刺すと、ボロボロっとダミー君モドキが崩れ落ちる。

 流石に耐性のスキルが封じられていて、残り生命力が1なら、この雷槍でも倒せたな。


「おお!あのダミー君を一撃で!!流石、熾天使セラフ様!」

「「「おおおおお!!!」」」


 盛り上がってるなあ。

 でも、まあ、こんな危険なものの排除が出来て良かったけど、他の町はどうやって破壊してるんだろう。


 こんなのが至る所に出てくるなんて、誰の嫌がらせだよ。

 誰の仕業かなんて、何となく予想はつくけどね。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ