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第八十六話 フィアンセ

 町の自警団の詰所に連れてこられた。

 お財布はあそこにばら撒かれたままだ。

 せっかくアニエス達と稼いだお金………。

 ううう。

 もうこの人達を斬り捨てて、お財布を取りに行こうかな。

 それだと、指名手配犯になっちゃうか。


「おい!早く吐け!お前がエルツ族なんだろう!」

「違いますって!」


 さっきから、この問答ばかり繰り返している。

 違うっていってるのに、全然信じてくれない。

 よく居るよね、こういう、自分が一度信じたら、何言われても考えを覆さない人って。


「だいたいエルツ族だったとしても、何がいけないんですか!」

「ようやく認めたか!エルツ族は我ら人族の運命を壊す厄災だ!エルツはそれだけで罪だ!」

「何それ!エルツ族は何も悪いことなんてしてないですよ!」

「うるさい!おい!こいつはエルツだと吐いたぞ!牢にいれろ!」


 何人もの男の人に連れられて牢に入れられてしまう。

 牢と言っても窓が無いだけの普通の部屋だ。


 違いといえば、扉には外から鍵がかけられるくらいだろう。

 普段は会議室か何かに使っているらしく、椅子やテーブルが置いてあり、書棚には何かの資料のような物が並んでいた。

 まあ、鍵がかけられて自由に外に出られなくなっているので、牢としての役割は十分果たしている。

 と思ったら隣の部屋に行ける扉があるじゃないか。

 ここから出られたら意味ないんじゃ無いの?

 そのもう一つの扉をあけてみる。

 ガチャリ。開くじゃないか。いいのかこれで。

 隣の部屋を見てみると、、、トイレだった。


 何だこの部屋の構成は。

 まあ、牢の代わりにする為なのだろうけど、ここの人達は会議中にダイレクトにトイレへ行くんだろうか。




 あれから半日ほど経った。

 お腹すいた。

 ご飯どころか水の一杯も飲ませてくれていない。


「おーい。誰かー。せめて水とパンくらいくださいー」


 誰も居ないのかな。

 物音一つしない。

 このまま、何も与えられず餓死させようっていうんだろうか。


 あ、誰か帰ってきた?

 話し声が聞こえる。


「そうなんですよ。あの女は絶対エルツの中でも上位の奴ですって。あの見た目の良さならドロールさんも見たらそれが分かりますよ」

「ああ?本当にそんな顔だけで分かるもんか?」

「いやほんとに天使か女神かって感じなんすよ。ちょっと歳が若過ぎるんですけど、ドロールさんは、そういうのはいける方なんでしょ?」

「オメエ、馬鹿言ってんなよ!あまり、大声で言うと世間にバレるだろ」

「あ、否定はしないんすね」


 何だか嫌な会話を聞いてしまったような気がする。


「どれどれ、ご尊顔はどんなもんか、な?」


 ガチャガチャと鍵が開けられ、扉が開く。

 2人の男性が牢に入ってくる。

 片方は取り調べの時にいた人だから、もう1人がドロールとかいう人なんだろう。


「お、おお、これは、、、なんだこの感覚は!思わずひれ伏したくなるような、、、威厳だとか、オーラとでもいうか、神々しさがあるな」

「でしょー?これはもしかしたらエルツの王女とかなんじゃないすかねー」

「ああ、、、いや、そんなもんじゃないぞ、これは。もっと上の存在かもしれん」

「え、、、いや、王女より上って女王とかですかい?」

「違うよ、そんなのよりももっと上だ」

「は、はあ」

「お前もいってただろう?天使とか女神とかよ」

「ま、まさか」


 そのまさかだけどさ。

 人の事ジロジロ見て、品定めされてるみたいて、感じ悪い。


「それなら、かなりの値段がつくぞ!」

「ええ?天使とか女神も売れるんすか?」

「ああ、下手をすると、白金貨何枚にもなるかもしれん」

「は、、、そんなにですかい。オ、オレの取り分も」

「ああ、焦るな。ちゃんと分け前はやるよ」

「す、すいやせん」


 ええええ、、、。

 天使を売り買いしてるの?

 っていうか、買う人がいるのかよ。


 エルツに間違われて捕まったけど、もう、誤解を解くとか関係なくなっちゃったよ。


「あのー。そろそろ帰してもらえませんかね」

「ははははっ!」

「あはは、はは、、、」

「もうお前はどこにも帰れねえよ。何処かの天使や女神をコレクションしている大富豪に売り飛ばされるんだ」


 そんな収集家なんているんか。

 ヤバイな、そいつ。

 でも、天使とか女神ってそんな捕まったままになるんだろうか。天罰とか神罰とかでいくらでも、逃げられるんじゃないのか?

 まあ、一応、穏便に済ませられないかやってみるか。


「私は天使とかエルツとかじゃないですよ?ただの人族です。ほら、こんなぼけっとしたのが天使な訳ないじゃないですか」

「なら、ステータス見せてみろ!エルツでも天使でもないなら、見せれるだろう?」

「う」


 がっつり職業欄に天使って書いてあるもんな。

 でも、種族が人族なんだから、職業欄を見えなくすればいけるかも。


「おい早く見せてみろよ。職業欄か種族欄に何か書いてあるはずだ。今まで何度も見たことがあるが、いくつかパターンがあるらしい。とにかく全部見せてみろや」


 ああ、ダメだー。

 もう、セラフの翼の力で逃げ出しちゃおうかな。

 売られるくらいなら、指名手配犯の方がマシかな。

 どうせ、リーンハルトの体が戻ってくれば、もうアリアは居なくなるんだし。


「この奴隷の首輪を付ければ、奴隷化して抵抗できなくなる。天使や女神の奇跡みたいなのは使えないからな」


 何それ。奴隷の首輪にそんな制約があったのか。

 ラナに付けてるのとはちょっと違うものみたいだし、天使専用とかなのかもしれないけど。


「よし、おまえ、コイツを抑えてろ。その隙にオレが首輪をつける」

「へ、へい!」


 うわっ、ヤバイ。あんなの付けられたらどうにも出来なくなる。


「こら、暴れるな!大人しくしてろ!」

「ちょっ!やめっ!変なところ触んな!」


 怖いんだけど!

 もう、ダメだ!


「セ、、、セラフのつ」

「そこまでだ!不法な人身売買の疑いで貴様らを逮捕する!」

「ばさ」


 あ、しまった?

 あと少し待ってれば助かってたのか。


 ぶあっさあ、と僕の背中に6枚の翼が広がる。


「お、おお!本当に天使だったのか!」

「ドロールさん、適当だったんすか!?」

「す、凄い、、、。本物の天使様にお目に掛かれるとは、、、。はっ!この2人を捕まえろ!天使様への不敬は重罪だ!」

「「「はっ!」」」


 たぶん、騎士団らしい人達が部屋になだれ込んで、自警団のこの2人を捕まえて行ってしまった。


「天使様、、、でよろしいですかな?」

「、、、あ、はい、そうです」


 もうこの翼を見られている以上認めざるを得ない。

 本当はアバターだけが天使なんだけどな。


「お目に掛かれた事、大変光栄に存じます。また、此度は我が国の民が御身を危険な目にあわせてしまい、大変申し訳なく」

「あ、いえ。あなた方に助けていただきましたから。ありがとうございます」

「ありがたきお言葉。自分はリヴォニア騎士団第2部隊、副隊長のアロイス・トロムリッツ6段騎士であります!」

「え?リヴォニアの第2部隊?ローデンヴァルト隊長はお元気ですか?」

「天使様は我が隊の隊長と御面識がおありで、、、。正直驚きを隠せません」


 ああ、懐かしくて思わず言ってしまったけど、今はアリアだったから、第2部隊の隊長さんとは面識無かったんだった。


「ああ、いえ。会ったことはありませんが、、、、あ、あのお方の事は少し前から何かをやるお方だと、注目しておりましたので、、、」

「お、おお!それは、隊長も喜びます!」

「そ、それよりも、わたしはこれから王都に向かわなければならないのです。もし、よろしければ、王都まで連れて行ってもらえませんでしょうか?」

「ええ、勿論です。天使様のお言葉とあらば!何処へでもお連れいたします!」


 ほっ。どうにかなりそうだよ。

 お財布は無くしてしまったけど、王都にさえ入れればあとは何とかなる。

 はやく、フィア達に会いたいよ。


「では、しばらくはお供させて頂きます。おい!アウグステンブルク!このお方のお側に付いて道中お世話をするように!」

「はっ!お初にお目に掛かります、天使様。ヴァレーリア・アウグステンブルク、7段騎士でございます」

「レリア!レリアじゃないの!」

「え?て、天使様?!わたくしめなどを、そ、そんな愛称で、、、」

「あ、、、その、、、失礼しました」


 ああ、レリアだよ。

 そうだよ。第2部隊だもん、いてもおかしくないよ。

 びっくりして愛称で呼んじゃったけど、今は副隊長さんもいるし、あとで事情を説明しよう。

 あ、でも、信じてくれるかな。


「そ、それから、私は天使ではなく、アリアと呼んでください」

「御名をお聞かせ頂けるとは、光栄にございます!それでは、これからはアリア様とお呼びさせていただきます」

「アリア様。お世話させていただきます」

「さ、様もちょっと、、、」

「何をおっしゃります。本来なら御名を口にする事も許されぬ身です故、敬称はつけさせていただきます」


 うう。仕方ないか。

 まあ、ベルシュにはリン様とか呼ばれたし、いいか。

 いいのか?


 翼は目立ちまくる為、この部屋で閉じておく。


「その御翼は出し入れが出来るのですか」

「え?あ、うん。そうなんだ。便利でしょ?」

「は、はい。も、申し訳ありません。わたくしめのような下賎なものが、つまらない事を聞いてしまいまして」

「ええ?何でさ、つまらなくないよ?前みたいに気軽に話してよ?あ、もしかして、また、赤目の剣姫の口調で通してるの?」

「ア、アリア様、、、。なぜその事を、、、」


 あ、いかんいかん。

 久し振りに知ってる人と会ったからつい今まで通りに話しちゃった。

 アバターが違うんだから、レリアは訳わからないよね。

 どこかで2人きりになったら、説明してわかってもらおう。


 これから、リヴォニア騎士団のトリーア駐屯地に行くらしい。

 第2部隊としては、まだ、このトリーアで5日程職務があり、王都へは6日後に戻る予定だそうだ。


「申し訳ありません。てん、、、アリア様をすぐにでもお送りすべきなのですが、予定上馬車や移動中の食料の調達がすぐにはできず、急がせますが、早くても3日後になると思われます」

「いいえ。副隊長さん。連れて行っていただけるだけでも助かっていますので、お気になさらず。日程も最初のままで大丈夫ですよ」

「勿体無いお言葉。ですが、我ら騎士団の名に懸けて、全力で準備をして、一刻も早くアリア様を王都へお連れいたします!」


 悪いよ、そんなの。

 中身はただの、10歳児なんだから。


 副隊長さんとレリア、それから数人の隊員達と一緒に町の中を歩く。

 この町も、国境付近の町だけあって、人の往来が激しい。

 マルブランシュとの取り引きをする商人が多く行き交っているように見える。


「あ、そうか、行き来できるようになったからか。ねぇレリア。王都の戦闘はどうなったの?街は?学園のみんなは!」

「え?天使様?戦闘というのは先月のノルド襲撃戦のことでしょうか?それであれば、最初の襲撃から3日後には鎮圧して、王都内のノルド兵は、ほぼ、倒したか捕虜にしました。クリストフォルス王子殿下のレアスキルのお陰で、大半のノルド兵を亡き者にしたと聞いております。流石王族のスキルです」

「そ、そう!クリスが!良かったあ。じゃあ、学園の皆んなは無事なのかな?」

「は、はい。学生の死者は1人も出ていないと聞いております。王都民の被害も恐ろしい程に無かったとの事でした」


 ああ、少し安心した。

 でも、まだだ。フィア達家族はその報告には入っていない。

 シルフを付けたけど、絶対安全とは限らない。


「アリア様は我が国の民をそこまで気に掛けていただいて、とてもお優しい天使様でいらっしゃいますね!」


 副隊長さんは大声で天使様とか言わないでよ!

 道行く人達が何事かと注目してるじゃないのさ!

 レリアも横で、はあぁ、とか溜め息ついて、手を前で組んでうっとりとこっちを見ないでよ!

 あとで正体をバラした時に恥ずかしくなるからさ!

 早く2人きりになって、僕だよ!って話したい!


 あ、でも、中身がリーンハルトだって知ったら、何女装してるのよ!って幻滅されちゃうかな。

 いやいや、誰だってどんな格好をする権利はあるよ?

 僕が女装の趣味があるって訳じゃなくて、、、というよりこれは女装じゃなくて、女子化だしね。


「アリア様?」

「あ、ダイジョブ、ダイジョブ。………あれ?レリアその指輪って」

「あ、これですか?これは私のフィアンセがくれた婚約指輪なのです。早く婚約披露をしたいのですが、ノルドに攻めてこられて延期になってしまいまして、、、」

「いやいや、僕そんなの送ってないよ?それに、なんでもう婚約している事になってるのさ!レリアのお父様もどういうつもりなのさ!」

「だって、リンったらなかなかプロポーズしてくれなかったじゃないの!だから、私の方からリンが言い出しやすいように仕向けたんじゃない!リンの馬鹿!、、、あ、、、え?」

「あ」


 おお?会話が成立したな。

 レリアったら、僕の事分かったのか?


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