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第八十五話 トリーアの町

 どうしよう。

 3人いれば何とかなるかと思ったけど、意外と弱かったな、あの傭兵3人組。

 しかも、1人倒れて、2対2じゃもっと危なくなる。


「傭兵のおじさん!ポーションとか持ってないの?」

「無い!馬車代で精一杯だ!」


 そうか、貧乏傭兵か。

 家族連れやフードの人を見るけど、首を横に振っている。

 僕もポーションは持っていない。

 というか、リーンハルト時代から持ったことがない。

 魔法で何とかなるのに、かさばる上に割れやすいビンなんて持ってられないよ。


「お、おい、ルナール!死ぬな!目を開けろ!おい!」

「く、くそっ!俺たちもすぐお前のところにいってやるからな!」


 ええ?!ダメだよ!そんなすぐ跡を追いかけちゃ。

 あーもう!

 しょうがないか。


「レーベンの泉!リーフデの癒し!」


 僕じゃないよ?

 だって、このアバターはその魔法は使えないし!

 見ると傭兵さんの所にあのフードの人が駆け寄って、今の魔法を掛けていた。

 フードがパサっと外れ、蒼い髪に銀の瞳が現れる。

 あ!エルツ族だ!


 フードから溢れた髪は風に流れて大きく広がる。

 コートで体格までは分からないけど、顔はフィアに似た女の子だ。

 姉妹?ってくらい似ている。

 ラナとは似てない。

 それは性格の差で、なのかもしれないけど。


 ん?ちょっと違う?左の目は銀の瞳じゃなく、金色をしている。

 ハーフエルツ?


「おお、傷が塞がった!助かったぞ!」

「い、いえ」


 また、エルツの女の子はフードを被ってしまう。


「コイツ、魔法使いだ!先にコイツをやらねえとやべえぞ!」


 まずい、女の子にあっちの2人が襲いかかる。

 でも、女の子も左手を前に掲げ、呪文を高速で唱える。


「エーヴンナールの火!!」


 おお、前に僕も魔法試験の時に使ったことのある、火の玉の魔法だ。

 拳くらいの大きなの火の玉が窃盗に当たり、服が燃え始める。


「うあああ!消してくれ!この火を消してくれ!」

「おい!こっちくんな!やめろ!火が移る!」


 ゴロゴロと転がるけどなかなか火は消えない。

 よし、あっちは何とかなるかな。


 こっちのヘッポコ2人は、斬れ味ゼロのリボン剣で股間を強打、、、しようかなと思ったけど、今は女の子だし、そういうのはやめておこうかな。

 いやいやいや、なんでそんな恐ろしい事を僕はしようと思ったんだよ!

 こ、怖いな。

 女子だと、アレの強打とか平気で考えられちゃうのか。

 まずいまずい!

 僕は男子!僕は男の子!

 今はアレは無いけど、常にあるつもりでいないと!


 ふ、ふう。一番の敵は僕自身だったな。


「おい、何を、もう敵は倒せた、みたいな顔してるんだよ!」

「おじさん達は僕に感謝してもらいたいくらいだよ!」

「何を言って、、、」


 アレ狙いは絶対やめるとしても、斬れ味ゼロリボン剣で、他を狙えば良いんだ。


「やあっ!!」

「うぼごお!」

「えいっ!!」

「ぐばらあ!!」


 よし、ヘッポコ2人は夢の中だ。


「物凄く雑に倒してないか?」

「強さの差があるからそう見えるんじゃないかな」

「ほう。それなら、俺とは対等に闘えるっていうんか?」

「どうだろうね、ほいっ!」

「ぐああっ!」


 ああ、やっぱり一発だったね。

 流石に1対1なら、余裕かな。


 あっちは、、、、と。


 ああ、あのエルツの子が敵2人を難なく倒せていた。

 火の玉を何個もおじさんに焚べては、げしげしと蹴りを入れている。

 なかなかエグい闘い方だな。


「えっと、もう平気じゃ無いかな?」

「え?ああ、そうか。ちとやり過ぎたか」


 おお?口調はちょっと変だけど、可愛い声だ。

 フードで顔を隠しているけど、ちょっと覗き込むと金銀の瞳がキラッと光っている。


「み、見るな!」

「あ、ごめん。あのさ、キミさ」

「君たち助かったよ!もうダメかと思ったが、命の恩人だ!」


 さっき怪我を負ったおじさんが来た。


「あ、どうも」

「ふん」


 あ、エルツの子は馬車に戻ってしまった。


「この人達はどうします?」

「ああ、本来なら軍やギルドに突き出せば良いのだが、ここは町からもかなり距離があるからな。縛りあげておくにしても、誰かが町に行って連絡してこないといけないな」

「じゃあ、このまま放っておきましょう」

「いやしかし、コイツらをここで見逃せば、また盗賊を繰り返すぞ。ギルドに入っているなら盗賊を捕まえたら、連行するまでが義務になっているしな」


 あんたら、冒険者だったのか。

 傭兵だろう、、、とかカッコつけて予想してたよ。恥ずかしい!

 あれ?でも、自分達で傭兵だとか言ってなかった?

 普段は傭兵のフリしてカッコつけてるのか、、、。

 しかし、連行しないといけないのか。僕もアリアとして冒険者登録しちゃってるしな。


「お、おほん。そ、それでだな。もし、他の人がこの盗賊団を連行する気がないというなら、俺達が仕方ないからその役目を果てしてもいいと思っているんだ」

「は、はあ」

「それで、どうだろうか。あのフードの子もあちらの家族の人達もそう言った気は無いようだ。後は君だけなのだが」


 ああ、そういう事ね。

 貧乏傭兵、、、じゃなくて貧乏冒険者だったけど、その貧乏3人組が盗賊達を連れて行くから、その報奨金は全部もらうぞ、と言いたいんだな。その連行の義務と権利を独占するぞ、と。


「あー、私は急ぎの用がありましてー。連行はとても出来ないですね。でも、良いのですか?また、町に戻らないといけないのですよ?」

「あ、ああ、問題ない。2人で見張って、1人で町に行く。後はギルドが馬車を出してくれるはずだ」

「そうですか。それなら私でも出来そうですね」

「いやいや!見張りが必要だしな!それに君のような若い女性をこんなむさ苦しい男どもの連行になど付き合わせられんよ」


 ぷふぅ。

 困ってる。

 そろそろ意地悪しないであげようかな。


「分かりました。では、大変でしょうが、お任せしてしまってよろしいでしょうか。あ、もちろん私はすべての権利を放棄しますね」

「あ、ああ。す、すまないな」


 ちょっと意地悪し過ぎたかな。


 この3人のおじさん達はここに残る事になって、残りの人達だけで、再出発となる。


「助けてくれて、ありがとうございました」

「え?ああ、いいえ、どういたしまして。私だけじゃ無いですけどね」


 家族連れのお父さんが僕にお礼を言いに来た。

 律儀だな。

 こういう時はお互い様なんだから別に良いのに。

 んん?お父さんの後ろから男の子がひょこっと顔を出す。


「天使のお姉ちゃん。助けてくれてありがとう!」

「こら、何言ってるんだお前は。すみません。さっきも天使様が闘っているって、ずっと言っていたんです」

「あ、ははは、、、」


 びっくりするなあ。

 まあ、小さい子供って大人には見えないものが見えたりするもんね。


 馬車に再び乗り込むと、既にエルツっ娘は座っていた。

 気になるなあ。

 フィアに似てるんだよな。

 ラナより。

 絶対、親戚とか実はもう一人姉妹がいたとか、そういうんだよ。

 話しかけてみようかな。


「あのう」

「…………」

「う。あのー!」

「……………………」


 むむむ。相手してくんない。


「こんにちは〜。私はアリアって言います。これからフォルクヴァルツの王都に帰るところなんですよ」

「………そう………」


 これはあれか、フィアと会ったばかりの時と同じで、嫌われてる感じか!

 あの時はぶつかっちゃって変に勘違いされてたんだよな。

 でも、今回は印象悪い事してないと思うんだよ。



 それから馬車に揺られる事丸一日。

 野営を挟みつつ、ようやくフォルクヴァルツの最初の町に到着した。

 いつの間にか国境を超えてたんだ。

 越境の検問とか無いんだ。

 と思ったら、この最初の町に入る門が関所になっていて、この町からが実質上のフォルクヴァルツとなるようだ。


 辺りは険しい岩稜帯の広がる急峻な山々が連なっていて、この街道とこの町を通らなければ、国の間を行き来出来ないようだ。

 実際の国境はもう少しマルブランシュ側らしいけど、この関所で、人の行き来は管理している、ということになる。


「やあ、どうも。旅行者が5名、御者が私ら2名です。これが旅客名簿です」

「ああ、お疲れ様。んん?旅行者は8名となっているが、賊にでも襲われたか?」

「ええ、ですが、やられたのではなくて、逆にとっ捕まえてあっちの国に連行していったんですよ」

「ほほう。国境付近に出る盗賊団だろう?アイツらはかなりの腕を持つって言われてたんだが、その3人は凄腕だったんだな」


 そんな声が御者台の方から聞こえてくる。

 その後に関所の人が幌の中を覗きにくる。


「少し確認させてもらうぞ。全員ステータスをこちらに見せるようにしてくれ。ああ、10歳未満なら不要だ。まだ見れないからな。まずは、そっちの3人は、、、と。家族だな。次は、君は?」

「あ、はい、ちょっとお待ちを、、、。えっとこうやって、こうして、あれ?えっと、、、」

「おいおい、ステータス取りたての歳でも無いだろうに」

「す、すみません。はい、出来ました!」

「はいはい、っと。なんだい13歳かよ。もっとステータスは使い慣れてないと大人になってから困るぞ?」

「ご、ごめんなさい」


 ふひぃ。まだ使い始めて数日なんですー。


「あとは、奥のフードの方?顔を出して、ステータスもお願いします」

「………」

「あれ?寝てるのかな?悪いけど君。起こしてくれないかな?」

「え?僕、、、私ですか?」


 ええええ、、、。どうしよう。この子、エルツ族なのがバレたくなくて、困ってるんじゃ無いかな。


「ああ、ええ。もし?起きてください?」

「…………」

「ダメみたいですね。さっき、少し気分が悪そうにしていたみたいでしたよ?」

「ふーむ。そうか。その人と君は知り合いなのか?」

「、、、あ、はい!そうです!親友です。幼馴染です!一緒にマルブランシュから帰ってきたところです!」

「お、おう、そうか。ならまあ、いいか。よし、言っていいぞ!」


 ふう。何とかなったかな。

 馬車は町の中に入っていく。


「そこのお前。さっきはうまく誤魔化してくれた。よくやったぞ!褒めてやる」


 おおん?エルツの子が話しかけてきたぞ。

 しかし、口調はやっぱり変だな。

 フォルクヴァルツ語が苦手とか?

 外国の言葉を覚える時に変に物語とかで覚えると、言い回しを間違って習得してしまう事があるからな。


「いいえ。どういたしまして。流石に検問だとバレますもんね。髪と瞳」

「ぬ。お前、我の出自を知っているのか?」

「え、ええ。まあ」

「ふむ。それを知りながら、我を庇ったのか。珍しい奴だのう」

「どうも」


 褒められた。

 まあ、4人も同じ出身を知ってますからね。


「だが、もう我には関わるな。我に関わると運命が逃げるぞ?ではさらばじゃ」


 ぽーんと馬車の荷台から降りてしまった。

 もっと話をしてみたかったのにな。

 フィアの名前を出したら、何か反応が変わったかな。


 あの子達の名前は極力出したく無いから、ちょっと躊躇しちゃったんだよな。


 馬車は乗降場に着き、家族連れと別れたら、少し町を散策してみる。

 ここからは別の馬車に乗り換えるから、それまで少し時間が空いている。

 この町はフォルクヴァルツ最南端にある、トリーアの町という。


 ここは、ノルドとは反対の国境付近になるから、戦争があったとは思えない程、平和な雰囲気いっぱいの街並みだ。


 さあて、次の馬車までの時間は何してようかね。

 やっぱり食べ歩きかな。


 屋台がたくさん並んでいる通りを歩く。

 流石にフォルクヴァルツに入って来ているだけあって、懐かしい食べ物ばかり並んでいる。


 それでも、マルブランシュに隣接しているから、バゲットやチーズがあったり、ワインをオープンテラスで飲めたりするお店もあったりする。


 丁度両方の国の味が楽しめそうだ。

 あ!あれは、ブラートヴルスト、、、だけど、アンドュイエットとザワークラウトが入ってないか?


 もしかして、アニエス達?と思ったけど、売っている人は違う人だった。

 店員さんに聞いてみると、最近マルブランシュではこのタイプのブラートヴルストが流行っているから、ここでもそれの真似をして売り出し始めたんだってさ。


 アニエス達!凄いよ!流行ってるんだって!

 本場のフォルクヴァルツが逆輸入するくらいになってるよ!

 嬉しいねぇ。


 せっかくだからこれを食べようかな。

 お財布をカバンから取り出す。


「おい!お前!」


 ばっと腕を掴まれる。

 その勢いでお財布が宙を飛び、中身がばらまかれる。

 ええ?!何すんのさ!


「ちょっと、何するんですか!」

「おい!こっちに来い!お前はさっき馬車から降りた奴だろう!お前にエルツ族の疑いが掛かっている!取り調べをするから来い!」

「うえっ?!待ってくださいよ!ぼ、私はエルツ族じゃないです!それより、お財布、、、」

「いいから来るんだ!」


 え?え?

 何だよ〜!お財布〜。


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