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第七十八話 代行神罰

 何かが起きている。

 このまま死んでしまうのは、何か違う。

 生き延びるためには何かしないと!

 そ、そうだ。


「ス、ステータス、、、ウィンドウ!」



 魔法 [鍵]

 一部ロックされています

 緊急解放 代行神罰 LvF



 魔法が一部使えるようになっている!

 手が動かせないから、魔法名をコールしてみる。


「だ、代行神罰!」



 代行神罰


  執行する神罰を選択してください


  雷を落とす

  煮えたぎった油をかける

  毒を与える

  切り刻む

  火を付ける



 何だこれは?!

 色々突っ込みたいけど、それどころじゃない!


「切り刻む」


 神罰が選ばれるとほぼ同時に妖魔の動きが止まる。

 そのすぐ後にはバラララッとゼリー状の妖魔の体が細かく分解される。

 内臓らしき部分もすべて指の先サイズにブツ切りになっていた。

 ぼたぼたと小さなブロックになった妖魔の体が落ちると、またしゅわしゅわと溶け始める。


 助かっ、、、た?


「アリア!良かった!生きてる!倒せたのね?ああ、良かったー。もうダメかと思った」

「ああ、良く生命力が保ったな。妖魔に喰われ始めると、数分で消化されて死んでしまうと言われているが、今の間ずっと回復していたのか?」

「あ、えっと、そんなところです」


 ステータスには生命力が120/3325と赤い文字で表示されていた。

 これが、どれくらいの残りなのか、良くわかっていない。

 今までステータスなんて見たことなかったから、生命力もいつも何となくで、まあまだいけるだろう程度で闘っていた。

 字が赤くなっているから、少しヤバかったのかもしれないな。


「回復はもうできないのか?」

「は!ポーション!飲んで!ほら!安いのだけど、いっぱい持ってきたから!」

「あ、あの、一度にそんなに飲めないです」


 口にぐいぐいとポーションのビンを押し当ててくるけど、それじゃあ飲めないよ。

 まずはポーションを一本だけ貰って飲み干す。


 ステータスの生命力は220/3325となった。

 一本で100回復するのか。


「ほら、次!まだ最大になってないでしょ?」

「は、はい。これ飲み過ぎても平気ですよね?」

「お腹は下すけど死ぬよりマシでしょ!」


 まだ飲め、まだ飲め!と合計5本も飲まされた。

 ステータスは620/3325だ。

 文字の色も黄色になったし、これで平気かな?


「火傷も治ったわね。ふううう。間に合った〜。ごめんね、アリア〜。あなたに向かっていくとは思わなかったのよ」

「ああ、あの動きは予想外だった。すまん、もっと気を付けておけば良かった」

「い、いいえ!私も気を抜いて、ダグを収めてしまってましたから、これは私の落ち度です」


 しばらくの間3人で何度も謝り合ったら、落ち着いてきた。


「でも、これで、妖魔退治、完了ですね」

「ええ。最後は危なかったけど、アリアのスキル?で何とかなったわね。あれすごいスキルね。あんなに細かく一瞬で切り刻んでしまうんだもの」

「えへへ」


 変なスキルって事で誤魔化すしかない。

 あの後、『緊急解放を終了します』と出て、また完全なロック状態になってしまい、代行神罰というのは魔法欄から無くなっていた。


 あれは、このアバターが死の危険にさらされた事で、一時的に天使の能力が使えるようになったみたいだな。


 お婆ちゃんに庭に出てきてもらい、妖魔の倒した後に残る内臓のような部分を見て何匹いたのかの確認を一緒にお願いする。

 最後のはバラバラになったけど、それでも1匹分だと分かるから全部で4匹と数えて貰える。

 お婆ちゃんは窓から見ていたから、4匹いたってちゃんと分かってくれていたけど、一応ギルドの規則で決まっているらしい。


 依頼達成ということで、クエストの紙にサインをしてもらう。


「それじゃあ、おれ、、、私達はこれで」

「ちょっと待って。お嬢ちゃん、怪我は平気なの?」

「は、はい、ポーションで治りましたから平気です」

「そう。良かったわ。でもそのお服では、お外を歩けないわ。孫がたまに来る時に着せている服があるから、それを着て行って」

「ええ?い、いえ、服が汚れてしまいますから、平気ですよ」

「ダメよ。可愛い女の子がこんな血まみれなんて、いけないでしょ?服は差しあげるわ。お湯を沸かすから体をキレイに拭いて、奥の部屋で着替えて?」


 うう、確かにこの血まみれの服はもう着れないだろうし、全身血まみれなのは早めに何とかしたい。


「アリア、ここはお言葉に甘えたら?」

「は、はい。それじゃあ、お婆ちゃん。服を頂戴しますね」

「ええ、ええ。女の子は2人とも湯浴みをしてしまいなさいな。男の子の方はここで待ってるのでいいわね。お茶をだすわよ」

「あ、はい。そうですよね、、、」

「クロードは何でがっかりしてるのよ。覗かないでよ?」

「わ、分かってるよ」


 まずい。

 2人で湯浴みだと?!


「ああ、やっぱりやめておこうかしら、、、なんて」

「何言ってるの。ほら、早く奥に行くわよ」


 ああああ、手を引かれて連れて行かれる。

 お婆ちゃんは仕事が早い!

 もうお湯を沸かして持ってきてくれていた。

 まあ、体を拭く程度のお湯だから、すぐに沸くか。


「この布で体を拭いてね。今着ているのは洗ってあげるからこの籠に入れておいて」

「ああ、何から何まですみません。それじゃあ、お湯をお借りします」


 ひぃーん。

 もう逃げられないよー。

 隣でアニエスがするすると服を脱ぎだそうとする。

 慌てて僕は反対を向く。


「ん?どうしたの?そっち向いちゃって。ああ!恥ずかしいの?分かるわ〜。わたしもアリアくらいの頃は皆んなの前で着替えるの恥ずかしかったなあ」


 僕くらいの頃って、このアバターはアニエスと同じくらいの歳だと思うんですけど。

 ってそう言う事じゃなくて!

 仕方ない。このまま、こっち向いてさっさと着替えてしまおう。

 服を全部脱いで布をお湯に浸し、軽く絞ったら体を拭いて血を落とす。

 まだ乾ききっていなかったから、すぐにキレイになった。


 ああ、なんだか自分の体なのに、自身の体を見るのもダメな気がする。

 もう、目をつぶっておこう。


「アリア、それじゃあ拭き残しがあるわよ。わたしが拭いてあげる。ん?何で目をつぶっているの?」

「あわわわ。平気です!僕1人で出来ますから!」

「僕?」

「あ、いえ!私です!」

「ふーん、焦るとボクっ娘になるのか〜。なかなか、ポイント押さえてるわね〜」

「何の話ですか!って拭かないで!ちょ、ちょっと、待って!ひゃあっ」


 ダメだダメだ。

 このままじゃあ絶対ダメだよ。

 お婆ちゃんに貰った服を急いで着る。


 よ、よし、これでもう目を開けても、、、、ダメだ、アニエスがまだ着替えてない、、、と思う。

 そっちは絶対見ないようにしないと!


「ああ、もう着替えちゃったの?惜しい。もうちょっとイチャイチャしたかったのに」

「先にあっちへ行ってますね。ご、ごゆっくり」


 後ろで「待ってよ〜」と言う声を聞きつつ、居間へ戻ってきた。

 クロードもお湯と布を借りたらしく、少しさっぱりしていた。

 着ているものはそのままだ。

 僕と違ってそんなに汚れてなかったしね。


「お帰り。ア、アニエスはまだ、、、かな?」

「?はい。まだで、、、、あ!むぅ、クロードは結構スケベなんですね」

「違う!違うよ!アニエスがあの扉の向こうで着替えてる想像なんてしてないよ!」

「何、大声で恥ずかしい事を叫んでいるのよ、、、」


 アニエスも着替えて戻ってきた。


 僕もアニエスもマルブランシュの若者が最近の流行りで着ているような服を貰った。

 良いんだろうか。

 結構良さそうな服だけど。


「お婆ちゃん。ありがとうございます。とっても可愛い服です」

「ありがとうございます。わたしもついでに貰っちゃって。すみません」

「いいのいいの。2人とも、とっても似合っているわよ。孫が増えたみたいで嬉しいわ」


 僕とアニエスの元々着ていた服はお婆ちゃんが洗うと言って聞かなかった。

 そこまでしてもらうのは悪いと断ったんだけど、「またあなた達に会える楽しみを取り上げないで欲しいわ」と言われてしまったら、断れなくなってしまうじゃないのさ。


 胸元に付いていたブローチは高価な物だからって取り外して渡してくれた。


「このブローチは懐かしいわね。こんな所で見る事になるなんて。今日お嬢ちゃんに会った時からずっと気になっていたの。これはあなたのお爺様から貰ったの?お父様?」

「え?えっと、これは、、、、その」


 何?カルが用意した物だったから、天の世界の物だとばかり思っていたけど、マルブランシュの物だったの?


「そうね、ここでは言えないわよね。でも、わたしの話は聞いてくださる?このブローチはね、わたしがあなたのお爺様にプレゼントした物なのよ?」

「え?お婆ちゃんが?お、お爺様、、、、に?」


 ぼくのじいちゃん?あの?

 村の外れで1人で住んでいて、よく僕に賢者様の話をしてくれていた、あのじいちゃん?


 それとも、このアバターの前の中の人のお爺様なのかな?


「お爺様って、そのフォルクヴァルツの、ですか?」

「ええ、ええ。懐かしいわ。わたしこれでも若い頃は妖艶の賢者って言われてたのよ?あなたのお爺様、アルフレート・フォルトナーとは同じパーティでずっと一緒だったのよ?」


 やっぱり、僕のじいちゃんだった。

 あのじいちゃんと同じパーティって事はこのお婆ちゃんも現役時代は相当な腕前だったんじゃないの?

 あれ?でもじいちゃんはフォルクヴァルツの王宮に居たんじゃなかったっけ。


 その事を聞くと、じいちゃんが王宮で働き始めたのはパーティを解散した後だったらしい。

 パーティに居たもう1人の女性と結婚した事でパーティは解散して、その時にずっと誘われていた王宮に入る事になったんだとか。

 その女性が僕のばあちゃんなのか。


「わたしはあなたのお爺様に振られてしまったのよ?あの時は泣いたわね〜。7日は泣きはらしたわ」


 そんなにか。

 うちのじいちゃんがごめんなさい。

 でも、こんな偶然なんてあるんだろうか。

 たまたま、受けたクエストの依頼人が僕の血縁者の昔の仲間だったなんて。



 いや、違う。

 これは、前に聞いたぞ。

 人の考えを直接変えるのは無理でも、会話や出来事とかに人の行動や考えに影響する何かヒントのようなものが、神や女神によって、与えられているって。

 これって、クロがクエストボードにある紙の中からこのクエストだけ目立たせて見えるようにして、このクエストを受けるように誘ったんじゃないのか?


 だとしたらクロは僕の事を今も見てるって事じゃないのかな。会話は出来ないけど、このお婆ちゃんに会えるようにした事で、クロは僕を見てるよ、って事を伝えたかったんじゃないかな。


 でもさっき死にそうになったから、もしかしてこのお婆ちゃんの事とは別に、僕を天の世界に連れ戻すために、クロは僕の命を奪おうとしてたりして。

 いやいや、クロはそんなやり方はしないはず。

 信じてるよ?

 そうじゃないと、僕がクロに命を狙われる事になっちゃう。


 クロ?聞いてる?

 僕を倒そうとしないでよ?

 クロに殺されるのとか嫌だからね?


 で、この件はクロが全く関係なくて、今も別に僕の事を見てる訳じゃなかったりして。



 お婆ちゃんとは、洗ってくれる服を取りにまた遊びに来る約束をして別れた。

 また来るのは楽しみだ。

 今度はじいちゃんの話も聞いてみたい。


 冒険者ギルドに帰ってクエスト用紙を渡すと、報酬の銀貨を貰えた。

 いきなり手渡しなんだ。

 ポイントも付かないし、だいぶ王国とは違うよね。

 でもなんとなく、冒険者ギルドってこっちの方が正しい、、、というか、似合っている感じがする。

 王国のが何か変なんだよ。


「はい、これ、報酬の分け前ね」

「ありがとうございます。あれ?1万ブランもありますよ?」

「ん。そうよ」

「え?でも、2万ブランを3人で分けたら、、、」

「もう、何言ってるのかな、この子は。倒した妖魔の数で分配でしょ?1匹いくら、のクエストなんだから当然よ?」


 そうなの?

 僕が王都でクエストをしていた時は、もう家族でしていたのが殆どだから、財布は1つだったし、分け前の考えが既になかったもんな。

 皆んなでキレイに分配するってイメージだから、こんなに差が付いて良いのかなって思ってしまう。


「こういうのは決まりだから気にしなくていいの。最後のアレは私達のミスでアリアを危険な目に遭わせちゃったから、そのお詫びもね」


 そう言われると余計に受け取りづらくなるよ。

 でも、王国に早く帰りたいから、ありがたくもらう事にします。


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