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第六十九話 婚約者

 王宮の受け付けにぞろぞろと入って行く。

 ここまで来て思ったけど、リーカとベルシュは帰ってもらっても良かったような気もする。

 まあ、今更ここで帰らせるのもなんだから、全員で行くけど。


「おお、これはこれは王女殿下に王子でん、、、、か?最新のファッションを取り入れられたようで、よくお似合いです」


 ほほう、流石王宮に仕える人は一味違うな。

 このクリスを見ても一瞬で立て直したぞ。


 王女と王子がいる事もあって、他の謁見者を全て追い抜いて、すぐに国王に会える事になった。


「おお!リーンハルト!全く、なかなか来ないと思ったら、今度は我が子供達を連れて来るとは。粋な事をするではないか!どれ、エルフリーデ、クリストフォルス、久しぶりに会えたのだから、こっちに来てよく顔を見せてくれないか」


 親子なのにあまり会えてないんだな。

 一緒に住んでるのに公務が忙しいんだろうか。


「おお、エルフリーデは少し背が伸びたのか?うむ、母さんに似て日に日に美しくなる。クリストフォルスは………お前どうした?」


 まあ、そうなるよな。


「我はクリストフォルスでは無くなった!我が名は魔王オーニュクス!闇と暗黒と漆黒の化身!魔王の中の魔王とは我のことだ!」


 自己紹介のバリエーションが無くなってきたんなら、前のと同じのにしてもいいのに。

 段々変になってるよ?


「リーンハルト!リーンハルト!クリスが、、、クリスがグレた!どうする?どうしたらいい!」

「国王、落ち着いて。クリスはグレた訳ではないです。その何と言いますか、、、ある仕事に就いたんです!そう!女神から賜った大事なお仕事です!」

「女神から?クリス、それは本当なのか?」

「うむ!我は運命の女神から作られし、混沌の魔王なり!その天命は人々を天に返し、世の乱れを正す事!」

「リーンハルト。リーンハルト。クリスの言っている事はとても危険思想に聞こえるのだが、これは合っているのか?」


 そうだよね。

 魔王だもんね。

 これだけ聞いたら、魔王が大暴れして大虐殺を起こしそうだよね。


「問題ありません。言葉選びがちょっとだけおかしいですけど、クリスが任された仕事はこの世界を救う事に繋がっています。そこは、僕が保証します」

「本当かあ?魔王とか言ってるぞ?」

「ま、、、魔王というのは職業の名前、、、みたいなものです!「魔」法を使って世を正しく導く「王」のような職業!それが魔王です!」

「我は魔法では粛正せぬぞ?」

「おい!ほら!魔法は使わないとか言ってるぞ!それに粛正とかも言ってる!」

「魔法のように不思議なスキルです!粛正と言う名のスキルです!」

「そんなスキル名では無いのだが」

「リーンハルト!なあ!何かおかしく無いか!なあ!」


 ああ、もうめんどくさ。

 全部バラして土下座した方が早いかな………。


「お父様。クリスは小さい頃から、責任ある事を任されると張り切って、張り切りすぎて少し暴走気味になってましたよね?」

「うあ?う、うむ、そうだった、、、か?むう、そうかもしれんな」

「今、クリスは女神様より大事な大事な任務を任されて、とても張り切っているのです。少し張り切り方が、アレですが………。ですが、任された事はいつも責任を持って達成していたではありませんか!クリスの事を信じてあげましょう?」

「お、おおお。そうだな!フリーデ!その通りだ!クリスの事は信じよう!そうか、いつものあの感じなのか。はははは!そうかそうか!女神からの任務か!」


 流石フリーデだ。父親の扱いも手馴れたものだ。

 これで国王はクリアでいいのかな?

 まあ、落ち着いたらもう少し丁寧に説明するとしよう。

 クリスはここで今まで通りの生活をして貰えばいいだろう。

 話し方が少し変わっただけで、根は優しいクリスのままだから、魔王になったとは言っても王宮の人達に危害を加えるとかも無いでしょう。


「ところでリーンハルトよ。そこの2人の女性は誰だ?ここに連れてきているからには、余程の間柄なのだろう?」


 あれ?しまったかな。何となく勢いで連れてきてしまっただけなんだけど、連れてくるって本当は凄く意味のある事なんだろうか。


「もしや、その歳で一度に2人と結婚でもするのか!そうか!よし、俺が仲人をしてやろう!結婚式のスピーチもするぞ!余興で国王踊りも披露してやるぞ!」

「ちょっと待った!最後のは物凄く気になるけど、結婚とかまだする歳じゃないですよ!」

「むう?ならどういった関係なのだ?この場にわざわざ連れてくるのだから意味があってのことなのだろう?」


 まずいな、どうやって説明しようか。

 リーカが勇者だとか、ベルシュがエルツ族とか正直に言えないよな。


「えっと、その、クリスが女神の仕事をする事になったのでその手伝いというか、補佐をする為に集めました。そ、そうです!この仕事はこれから攻めてくるかもしれないノルドと戦闘に参加する必要があるんです!だから、少し守りを固める為の人員です!」

「ふうむ。そうか、戦闘に加わる必要があるか」

「クリスとフリーデは全力で僕とこの2人が守ります」

「フリーデもなのか?クリスが女神から賜ったのでは無いのか?」

「えう。その、、、フリーデは、、、フリーデ!クリスの為に是非手助けをしたいって言ってくれたんだよね?」

「リーンハルト?……………そ、そうですわ!わたくしクリスが心配ですから付いてまいりますわ!」

「むむ。フリーデはクリスの事となると過保護だからな。分かった。リーンハルトよ。2人の事をくれぐれも頼んだぞ」

「はい!お任せを!」


 ふひぃ。上手く誤魔化せたかな。

 フリーデも理解が早くて助かる。


「ですがお父様。リーンハルトはこのお二人ではなく、アウグステンブルク公のご長女と婚約されたとか」


 ちょっとフリーデ!何急に要らない情報を発してるのさ!

 さっきまで僕の意を汲んで、協力的だったじゃないか!


「ほう。あのアウグステンブルクとか?確かその長女は何とかの剣姫とか言われていたな」

「赤目の剣姫ですわ」

「そうだそれだ。流石リーンハルトだな。公爵家の娘を捕まえるとは、恐れ入ったぞ。何だ何だ、何処で知り合った?どんな慣れ初めなんだ?」


 もうこれって八方塞がりなんじゃないの?

 僕以外の皆んながレリアと僕の婚約を信じて疑わない。

 遂には国王に知られて、こんな興味津々な顔されてるなんて、もう否定できる状況じゃないよ!


 もう諦めて婚約を本当にしちゃう?

 ダメだよな。

 フィアもレティもラナも居るんだし。

 フィアはどうぞご勝手にと言われるだけかもしれないけど、それでも、何となく彼女を裏切ってしまう感じがする。


「あ、いや待て!アウグステンブルクか。そうか、、、それはまずいか。いや、むううう。しかし、国王の、、だが、、、」


 なんだ?国王が悩み始めたぞ?

 何か問題があるのか?


「リーンハルト!悪いがその婚約は少し止めさせてもらうぞ!場合によっては無かったことになるかもしれん。せっかく勝ち取った相手かもしれないが、、、いや、そうか、順番さえ守れば、、、、ううむ。少し考えさせてくれ。おいクラウゼン!今すぐ枢機院を全員緊急召喚だ!なにを置いても優先させろ」

「はっ!」


 クラウゼンさんが急いで部屋から出て行く。

 いたんだ、クラウゼンさん。

 しかし、こんな大ごとになる程のものなのか?僕の婚約と言うのは。

 おかしいよね?国王がただの国民1人の婚約にこんな悩んで、枢機院を招集するとか。

 レリアと婚約する事、以上の厄介事を企んでいるんじゃないのか?国王は。


「リーンハルト。悪いな。アウグステンブルク公には俺から言っておく。これからその事で会議をして、国としてどうすべきか検討する。だから、今日の所はこれで帰ってくれないか。結果は必ず伝える。クリスとフリーデの事は頼んだぞ!ではな!ほら、帰った帰った!」


 謁見の間から追い出されてしまった。


「どうしたんでしょうね。急に慌ただしくなって。リーンハルトくんの婚約相手が何かまずいみたいでしたね」

「リン様、本当に結婚するのですか?」

「しないしない。国王が何かしてくれるみたいだし、頑張ってもらって是非無かった事にしてもらいたいよ」

「ええー。ちょっとそのお相手の方がかわいそー」


 それを言われると苦しいんだけど、でも、まだこの歳で婚約者がいるのも困る。

 別に僕は貴族の家の出じゃないし、平民として自由な出逢いをしたいものだ。




 ベルシュには自宅に帰ってもらい、リーカと道具屋などを回って買い物をしてから、家に帰ってきた。


「何してるの?ご主人」

「うん。これからこの街も危険な状況になるかもしれないからね。ちょっと、家の安全性を高めようかと」

「安全性?」


 この為に新たにスキルを作成した。


 魔法円クラフト SLv1


  魔法円を描くことで、様々な動作、仕掛けを作ることができる。



 僕がいなくても動作し続ける、仕掛けを仕込んでおけるスキルだ。

 魔法円と呼ばれる2重の円の中に文字や模様を描くことで、その組み合わせによって思い通りの動作をさせることが出来る。


 というのも図書館塔に久し振りに行ってみた時にこんな本を見つけたからだ。


『かんたん!やさしい!魔法円クラフト 初級編』



 よく冒険物語には、怪しげな魔法使いが「魔法陣」というものを書いて、悪魔のようなものを召喚しているけど、本来魔法陣と言うものは実在しない。

 そんなに簡単に遠くにいる人を図を描くだけで呼び寄せられたり出来るわけない。


 魔法陣のモデルとなったこの魔法円と言うものは歴史も古く、現代では主流となっている音声で発動する魔法が発明される前は、この魔法円が魔法使いの最大の武器だった。


 まずは、簡単な動作を試してみる。

 小さな板切れにペンで円を2重に描く。

 そして、その円の中に、今はもう使われていない古い文字、古い言葉を円に沿って書いていく。

 言葉の意味は全く分からないけど、本に書いてある通りに書けばいいだけだから、模様を書いているようなものだ。


 最初はお試しで簡単な動作なものを選んだから、文字も少なく上手く書けた。


「よし、これで、僕のマナを流し込めば動くはずだ」


 ここでマナを流せば、僕の循環マナと繋がりが出来て、常に循環マナ値、つまり、CPを占有し続けるようになる。

 これくらいのものだと1%にもならないと思うけど、大きな仕掛けを組めば、その分占有CPは大きくなるから注意が必要だ。

 最近までは占有CPは80%を超えていて結構ギリギリだったんだけど、レベルが8になって一気に32%まで減っていたから、多少は大きめの物が作れるはずだ。

 レベル1つでかなりCPは増えるものなんだな。


 書き上げた魔法円にマナを流し込む。

 魔法円が淡く青白い光りを放ち始める。



  魔法円クラフト


  魔法円デバイスとのペアリングを開始しますか?


  [キャンセル] [ペアリングをする]



 ペアリングをする、を押す。



  魔法円クラフト


  名称未設定1 ペアリング済み CP1.5%[解除]


  [スクリプトを組む]



 これで、動いているのかな?


「これは何が出来るの?あ、光った」

「これは音に反応して魔法円が光るんだ」

「それだけ?」

「それだけ」

「これが何の役に立つの?」

「これは仕組みを理解するための練習だから、これでいいの」


 よし、もっと凄いの作って驚かしてやる。

 えっと、何か無いかな。これと、これとを組み合わせれば、上手くいくか?


 今度は3つの魔法円を描いて、スクリプトを組んでみる。

 スクリプトと言うのはいくつもの魔法円を組み合わせて複雑な動作を作る為のものだ。

 作った魔法円は、「人感センサー」、「魔法ターゲット」、「火の魔法」の3つだ。

 スクリプト画面を開いて、ペアリング済みの「人感センサー」魔法円を指で触ってから「魔法ターゲット」魔法円まで引っ張ると2つの魔法円の間が線で繋がった。

 実際の魔法円自体に線が繋がるわけではなく、あくまでもウィンドウ内で表示されている魔法円を表す四角いマーク同士の話だ。

 線で繋がるとその線には条件が付けられるようになる。

 今回は「女性、20歳以下であること」としてみた。

 次に「魔法ターゲット」から「火の魔法」へと線を繋ぐ。

 そこでは「入力を魔法ターゲットにする」を選択する。

 この入力というのは、線を繋いできた「人感センサー」からの情報のことになる。

 つまり、「人感センサー」で反応した人を魔法のターゲットにするという設定だ。

 最後に「火の魔法」はそれ自体にも設定が出来る。

「タイプは火の玉。火力は最弱。時間は10ms。色は#FF0000」

 これで0.01秒だけほんのり暖かな火がターゲットとなる人に当たるはずだ。

 色まで付けられるんだな。色は赤にした。


「よし出来た。この前を通ってみてよ」

「今度は大変そうだったわね。ここを通るの?熱っ!熱いわよ!ふうふう。もうヤケドしそうになったじゃないの!」

「あ、あれ?温度高かったかな。ごめんごめん。リーフデの癒し」

「ふへへ。手を握ってくれたから許しちゃう」


 時間が短かったからその分威力が増したのかな?

 危ない危ない。

 まずは自分で試さないとか。

「人感センサー」の条件を「男性、20歳以下」に変えて、「火の魔法」は時間を「100ms」に変えてみた。

 センサーの前を僕が通ると「火の魔法」の魔法円から火の玉がポッと出て僕に当たる。

 おお、ちょっと熱めだけど、ヤケドする程ではなくなった。

 もう少し長めにすればいいかな。

「女性、20歳以下」に戻して、「200ms」に調整してラナにもう一度試してもらう。


「あ、あったか〜い。今度は平気ね。でも面白いわね。これで家の守りをさせるのね」

「うん。人感センサーの条件にはノルド人というのは無いから、もう少し魔法円を増やさないといけないし、火の魔法も出力が足りないし、マナも足りなくなっちゃうから外部マナ源を用意する必要もある」

「外部マナ源?なにそれ?」

「マナを貯めておく箱、、、みたいなものかな?」


 出来上がった魔法円の仕掛けの前でリーカが行ったり来たりしては「あったか〜」と言っている。

 そこにフィア達がやってきた。


「また変な事をしてるのかしら?熱っ!何よこれ」

「ああ、ごめん。ってそんなに熱くないでしょ?」

「え?え?私、熱くないんだけど。何で?何で?」

「あ、20歳以下ってしちゃったんだった。レティだけ反応しないようになってるんだ」

「何で年齢制限なんてあるのよ!私にも当ててよ!ねぇ仲間外れにしないでよう!」


 仲間外れにしたつもりはなかったんだけど、レティが21歳になってたのをすっかり忘れてたよ。

 しまったな。しばらくレティが拗ねてしまった。


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