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第六十四話 覚悟

 問題って言うのは面倒なもの程、重なってしまうものだ。

 別々のタイミングでやってきてくれればいいのに、そう言う時こそ集中して、問題の渋滞になってしまう。


 せっかく、何も起きない平和な生活がやって来たと思っていたのに。

 目下の大問題はレリアだ!

 何故か僕がレリアの婚約者という事になっているみたいで、しかも、それを僕が放り出して、他の女と夜逃げした、とかの尾ひれまで付いて回っているらしい。

 この歳でそんな事になる訳ないだろうに。

 大体10歳で婚約とかないでしょうよ、と思ったら貴族の間柄では、ステータスウィンドウを得る儀式を行う年齢の10歳くらいから、親同士で取り決めて婚約までしてしまうそうだ。

 うちの親がアウグステンブルク家のご令嬢と婚約なんて聞いたら卒倒しそうだな。


 あの後、社会科見学は無事?終了して、学園にぞろぞろと戻っている。

 周りのクラスメイト達はさっきの「赤目の剣姫、電撃婚約!」の衝撃がまだ残っていて、誰もかれもがその話題で盛り上がっている。


「な、なあ、リーンハルト。さっきの話ってさ。本当なのか?」


 ロルフがよくぞ聞いてくれた。よしいいぞ、ここで、しっかりと否定して誤解を解いておこう。


「いやいや、あの第2部隊の隊長さんも冗談が好きだよな〜。あの人、僕のちょっとした知り合いなんだけどさ、ああいう事を言ってみんなを驚かせるのが趣味なんだよ〜。剣姫もそれに付き合わされちゃって、迷惑だったんじゃないかな〜」

「お、おお、そうだったのか。はは、そうだよな!あんな話ある訳ないか!いやあ、すっかり騙されたな!」


 うんうん。いいぞ!もっと大声で言って出来るだけ多くの人に伝わってくれ!


 周りからも「え〜あれ嘘だったの?」とか「なんだ〜剣姫は婚約した訳じゃないのか〜良かった〜」とかコソコソ聞こえてくる。


「あれ?でも、貴族の間で回ってくる貴族回覧板には、ヴァレーリアさんが婚約お披露目会を催すから、参加する人は丸を付けてくださいって言うのが来てましたよ?」


 せっかくお茶目な団長さんの嘘で話が落ち着きそうだったのに、ベルシュが訳の分からない情報でぶり返して来た。


「私、ヴァレーリアさんとはお友達なので、丸を付けました!お相手は書いてなかったんですけど、リン様だったんですね!なんだか私、嬉しいです!2人とも私の大事なお友達同士がご結婚だなんて!」


 いやいやいや、貴族回覧板って何だよ!

 あ、いや、そこは心底どうでもいいんだけど、普通招待状送ったりしないの?

 回覧板に丸付けるだけで参加表明出来ちゃうんだ。

 ああ、いや、それもこの際どうでもいいよ!

 貴族のヤケに大衆的な習慣は脇に置いて、もう貴族界にはレリアの婚約が広まってしまってるのかよ!


 少し侮っていたな、貴族。


「あのさ、ベルシュ。その相手って書いてなかったんでしょ?それって、僕じゃなくて他の貴族か何かの誰かなんじゃないかな〜とか」

「ええ?でも、さっきヴァレーリアさんも否定しなかったじゃないですか」

「そ、それは、第2部隊の隊長さんのイタズラのせいで、、、」

「わたしの所にもその話が来ています。でも、ベルシュさん。内密に事を進めるということもあります。お相手はまだ伏せておいて、当日のサプライズにするのではないのでしょうか?」


 待ってよ、フリーデまで話に参加して信憑性を高めないでよ!


「ああ、そうだったんですね!すみません、リン様、私、嬉しくってペラペラと大声で話してしまって、、、」

「そうですよ、ベルシュさん。皆さん!皆さんも今聞いたことは、ご内密にお願いしますよ?同じクラスの友の幸せですから、皆でお祝いしてあげましょう」


 上手くまとめた感を出してるけど、違うんだよ!

 くぅ。一手遅れてる気がする。

 何か一手、あと一手挽回しないと後戻り出来ないところまで行ってしまいそうだ。



 本当に剣姫の婚約相手は僕だという派閥と、いや違うきっとお相手は上級貴族のご子息だから直前まで伏せているんだ派、そして、そもそも、剣姫は婚約なんてするはずない派にクラスメイトは分かれて、熱い議論を交わしていた。

 そんな事をしている暇があったら勉強でもしてなさい!


 学校に着くまでの間その話題で持ちきりだった。

 だが、学校に戻ってくると、何やら緊迫感が漂っていて、そんな浮ついた話をしていて良いような雰囲気ではなかった。


「何があったんです?」

「ああ、エーレルト先生。今、王国軍の通達が来まして、緊急で職員会議になるので、すぐ職員室に集まってください。あ、生徒達は帰らせないように。バルテン先生も早く来てください!」

「ああ、分かりました」

「何でしょうね。クラスのみんなは一度教室に戻って自習にしてください。あまり騒がないようにね」


 そう言って先生方は行ってしまった。

 何があったんだろう。

 皆んなも不安そうにしているけど、生徒達は教室でその会議の結果を待つしかない。


 さっきまでの気軽なざわつきではなく、不安の混じった空気の中、それでも黙っているのは息苦しいのか、誰もが何かを喋って気を紛らわしている。


「リーンハルトくん。さっきの騎士団の人が話していたことでしょうか」

「そうかもね。でも学校のしかも中等部にまで何かがあるとは思えないけど」


 しばらくして、担任のエーレルト先生が険しい表情をして教室に入ってくる。

 その顔にクラスの皆んなも何かを感じ取って空気がピリッとするのが分かる。


「えっと。皆んな落ち着いて聞いてね。今すぐ急に何かあるって訳じゃないから。ええっと、そうね、まずは王国軍から入った情報あたりから話しますね」


 意外と先生は落ち着いていて、皆んなが思っていたよりは緊迫した状況ではないと感じ取れた事で、一気に場が弛緩する。


「でも、あんまり緩みすぎないでね?軍からの話だと、近々この王都でノルド軍との市街地戦が始まってしまう可能性があるらしいの。そんな事態にはさせないように、軍も騎士団とか冒険者達に動いてもらって、未然に防ごうとはしているらしいの。でも、万が一と言うこともあって、国は各学校の学生達にも都市防衛を担って貰いたいのですって」


 僕が騎士団に入らされた時も思ったけど、こんな子供達にまで戦わせるなんて、それだけ、我がフォルクヴァルツ王国の軍事力は低いのだろうか。

 結局レリアだって、子供と言っていい歳だし、僕なんかまだ10歳なのに最前線に行かされている。

 高等部だけじゃなく、中等部もって言うことは、戦えそうな人はみんな駆り出されてそれでも足りないのだろうか。


「大丈夫よ。都市防衛って言っても、王都の外壁は騎士団の皆さんが守ってくれますし、もし、王都内に入られても冒険者の方々が戦ってくださいます。生徒の皆んなは後ろで援護を頑張ってくれればいいのよ」


 王都に居る民間の大人達は戦わないのか。

 まあ、一般的な街の人達は学校に通う事も、戦いの仕方だって誰からも学ぶ事は無いから仕方ない。

 実はこの学校に通っていることだけでも、かなりのエリート組らしい。


 そうなると、騎士団や冒険者達だけでは頭数が足りないのも頷ける。

 この大きな王都を守りきるには、広さや守るべき人の数からすると、戦闘可能な人員が圧倒的に足りないだろう。

 だからこその、学生の起用なのだ。


「その時のために今からグループ分けをしてチームを作っておきます。もし何かあった時はそのチーム毎に行動してもらうことななります」

「先生!ここが戦場になるんですか?」

「え、ええ、そ、そうならないように兵隊さん達が頑張ってくれてるわ」

「私達も戦う事になるの?」

「ええー?やだよー」

「ノルド兵って強いんだろう?」

「でも、前に砦を取り返した時は圧勝だったって言ってたぜ」


 溜まってきた不安が一気に溢れ出し、思い思いに言いたい事を言い出し始める。


「皆さん!少し落ち着きなさい!すぐにここが戦場になるわけでは無いと先生も仰ったでしょう?それに、私達はこの国を守る為にこの学園で戦い方を学んできたのではないのですか?」


 フリーデが率先して皆んなを落ち着かせている。

 でも、平和な学園生活から急に他国との戦争が目の前に突き付けられて、穏やかでいられる筈もなく、騒ぎは収まりそうにない。


(ねぇ、フリーデ、フリーデ)

(な、なんです?リーンハルト。内緒話ですか?)

(あのさ、こんな感じで言ってみたら?……………)


「そんなので収まりますの?信じてますわよ?おほん。皆さん!ここで、頑張って成果が出れば、赤目の剣姫に認めて貰えるかもしれませんわ!先程のようにお声を掛けて頂いたり、もしかしたら騎士団へ誘われてしまうなんて事もあってもおかしくありませんわ!」


 最後のは僕は言ってないぞ?

 それでも、今の言葉に皆んなの不安や恐れが消えて、憧れの人に一歩近づけるかも、という期待に盛り上がっていた。

 不安に縮こまっているより、多少の嘘があっても今は元気になっていた方がよっぽど良い。


「ああ、良かった。王女殿下。流石ですね。助かりました」

「ああ、これは、わたしではなく、、、。いえ、それよりも、チーム分けをしてしまいましょう」

「ええ、ですが、王女殿下、王子殿下はおそらく有事には王宮に戻られる事になると思います。流石に両殿下が他の生徒と同じ、と言う訳にはいきませんので」

「そ、そうですわね。それは、、、ええ、もちろんその事は分かっています。わたし達にはわたし達の役割がありますから」


 それもそうだ。

 いくら学生とは言え、王族のフリーデとクリスを何も考えず戦場に送り出すという事は出来ないだろう。

 もし、戦いに赴くとしたら王族として、責任ある立場で出るべきだ。


「他の人はスキルや魔法のバランスを考えてチームを組んでくださいね。あ、学校対抗のシャッハに出た人はその人達だけでチームにするらしいので、生徒会室に行ってください」


 シャッハチームはこの学園としても最精鋭なのだから、バラけさせずに一纏めにしておくつもりなんだろうか。


 リーカとミスティルテインさん、そして雷野郎とで生徒会室に行く。


「お待ちしていました。皆さん。また、このメンバーで集まる事ができましたね。王女殿下と王子殿下は仕方ありませんが、再び皆さんと力を合わせて頑張りましょう!」

「そうは言っても、今度は実戦だ!シャッハのようにポイントも無いし、本当に命のやり取りをするんだ。中途半端な気持ちではすぐにやられてしまうぞ!」


 レクシーさんとヒルデさん。

 ついこの間までシャッハで毎日練習していたのに、久し振りにあった気がする。

 3年生は高等部の受験がある大事な時期なのに、それでも、戦争となれば関係なくなってしまう。


 一通り挨拶をした後は、シャッハの時のように役割を決めていく。

 もちろん、ポーンやルークだからといって、魔法を使ってはいけないということではない。

 チームの役割として、指揮役のキング、回復役のクイーンと言ったように各自のやるべき事を決めていくのだ。

 僕は当然ナイトを選ぶ。

 というより皆んなシャッハの時と同じクラスにした。


「学生の、しかも中等部の居るエリアまで敵が来る事は無いと思いたいが、難攻不落と言われたザールブルク砦があっさりと落とされてしまった事もある。いざという時を今から想定しておくのだ!」

「ヒルデはもう少し肩の力を抜いてね。リーンハルトさん、貴方にまた頼ってしまうかもしれません。ふう、いけませんね。貴方を見ていると10歳の子供には思えず、重荷を押し付けてしまいそうになります」


 僕こそ重荷は誰か周りの人に押し付けてしまっていますよ。

 自分では何もできない。

 賢者様のようになるというのを言い訳にして、いろんなものの責任から逃げている。

 背負ってくれている人が居るというのを自覚しておかないといけない。

 だからこそ、今ここではこう言うんだ。


「大丈夫ですよ。皆んなが僕を助けてくれれば、僕は皆んなを助けます!ここに居る全員で勝ちましょう!」


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