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第五十六話 アニカ

 アニカは何とか治せそうという事だし、精霊をダミー君、ダミーさんに変換して回っている誰かが、何処のどいつなのか、学園がどう絡んでいるのかは、結局分からないので、ひとまずそれは棚上げだ。


 カルとアバターで出掛ける約束もした。

 そして、リーカも何故かお出かけの約束をさせられた。

 この分だと、家にいる家族みんなとも出掛ける約束をさせられそうだ。


「カルはアバターを持ってるのに、ここの信者さんに乗り移って話をするんだね」

「ええ。神のアバターは滅多な事では動かしませんから。災害級の出来事とか、種族の存続に関わるような出来事に対処する時くらいですね」


 そんなアバターを僕とのお出掛けに使っちゃっていいの?


「あ、大丈夫ですからね?低硬度神の場合は気軽に使っても平気ですから。ランニングコストが低いんですよ。燃費が良いっていうんですかね」

「そ、そう。それならいいんだけど」

「それにアバターじゃなくて、私本体がそちらに行っても良いんですよ?そ、そしたら、な、生身の私に会えますよ?」

「え?女神なのにこっちに来ても平気なの?」

「……反応薄いですね………。流石に気軽には行けませんけどね。申請とか手数料とかちょっと大変になりますけど、行けますよ。それに、子供の頃は3年間そちらの学校に留学するんです。私、王立学園の先輩なんですよ?」


 そうなんだ。

 それじゃあ、クロもそうなのかな。

 あれ?そうだとすると、今のあの学園にも神様候補、女神様候補がいるって事か。

 誰だろう。



 いろいろ気になることは山ほどあるけど、今はアニカを元の精霊の姿に戻す方法を探ろう。


「そろそろ家に帰ろうか。カル。ありがとうね。今度は用が無くても来るから」

「はい。待ってます」


 家に帰ろうと歩き出す。

 僕とリーカとアニカ。


「ちょっと待った。アニカは何でついて来るのかな?」

「あ、ヒドイデス!わたしに野宿をしろと言うのデスカ?」

「あ、そうか。今まで学園の倉庫に居たのか。でも、それまでの精霊時代の住まいはどうしたの?」

「いつ戻れるかなんて分かりまセンでしたから、解約してしまいマシタヨ。こっちの世界だとイチモンナシデス!」


 え?このタイミングで一人増える事になるの?

 それは幾ら何でもマズイよね。

 つい先日、リーカが新メンバー加入したばっかりなのに。

 リーカは、まあ、本人の意思というか、僕の事を何というか、運命の人と勘違いしてる節があるから仕方ないけどさ、アニカはそう言うのとは違うからな。

 精霊に戻すまでの一時的なものだ。

 うん、そういう論調で話せば皆んなも理解してくれるはず。

 言い訳とかでは無い。


「た、た、たたただいま」

「た、が多めですよ?」


 緊張してるんだよ!

 ラナが出迎えてくれる。

 フィアは出迎えてくれた事は一回もない。


「おかえり、ご主人。…………はあ。ご主人が何かに目覚めちゃったわ。私というものがありながら!人形の方がいいなんて!目を覚まして!ほら、私の方が魅力的でしょ?ほらほら」

「そう言ってクネクネしないでよ。この子は人形に見えるけど、そうじゃないんだ。アニカっていうんだ」

「もう名前まで付けて!手遅れなの?戻ってこれないの?」

「ハジメマシテ。アニカと申しマス。今日からお世話になりマス」

「ほあああ!喋る機能付き!?凄いわね」


 説明面倒そうだな。

 レティはまだ仕事だろうから帰って来てから詳しく説明するか。


 家に入るとフィア、マルモ、ブロンがリビングで寛いでいた。


「あ、ほらあ!お姉ちゃんの言った通りでしょ?当たったよ!」

「ホントだあ。マルモ姉ちゃん凄い」

「そうね。びっくりだわ。人が愛せず人形に愛を求める人が居るのは聞いた事があるわ。愛の形は人それぞれよ。でも、こんなすぐそばに居るとは思いもしなかったわね」


 ダメだ、レティが帰る前にしっかり説明しないと、また変な誤解を生む事になってしまいそうだ。

 ん?マルモの当たったって何だ?


 授業でダミーさんを壊してしまった事、それを蘇生したら半分精霊として復旧してしまい、あちらの世界の本体と繋がってしまった事。

 元の精霊に戻すまでは住む場所がない事も含めて、誤解のないように、時に丁寧に、時に熱く、語った。

 誠心誠意説明すれば、理解してくれるものだ。

 というより、アニカが僕への特別な感情を持ってなさそうというのが分かったお陰でかもしれないけど。


「ふーん。それで、どうやったら元に戻るのよ。というより、本体が別の所にあるなら、元の戻れるまではそっちに戻っていればいいじゃないの」

「それが出来ないんデス。わたしが抜けてしまったらこのアバター、、、体が空になってしまいマス。そうすると、生命維持が出来ないのでこの体が死んでしまいマス。精霊の体に戻れれば、生命維持装置を使ってログアウトできるんデスけど………」

「中身、、、綿、だもんね。どうやって生きてるのかしら。試しに抜けてみたら意外と平気なんじゃないの?」

「そんなの出来マセンヨ!ローンがマダ残ってマスから冒険は出来マセン!ステータスウィンドウでは生命力もチャントありマスし、マナもありマス。だからこの体が生きてるのは確かなんデスけど………」


 そうなると、精霊の体に戻すまではここに住む事になるわけだな。

 これは早くその方法を見つけないといけないな。


「ヒントはもうあるんだ。少し試してみたいから、部屋に戻ってるね。だから、、、その、、、アニカの部屋とか用意してくれると助かるんだけど、、、、」

「もう、仕方ないわよね。ご主人は。人助け、、、精霊助けだし、皆んなも協力するわよ。だけど、ちょっとご主人が新しい事を試すのにワクワクしてる感じが滲み出ているのが、ね。何、早く試したくてソワソワしてるのよ!もう。早く行きなさいって!」

「あ、あ、ごめんね。ちょっとほら。今までにないものだからさ。あ、いや、アニカを助けるのが一番なんだけどさ」

「いいから、早く行く!アニカはこっち来て!部屋はリーカと相部屋ね」


 うう、ごめん、ホントごめん。

 急いで自室に向かう。

 別にもうみんなの前でスキルを作ったって良いんだけど、こういうのは集中したいっていうか、多分みんなの声が耳に届かなくなっちゃうから、一人の方がいいと思う。


 早速、カルに聞いた情報を試してみる。


「れんきんじゅつ」


「れんきんじゅつ」 検索結果 1件


  錬金術mod SLv1



 これだな。なんだmodって。



 錬金術mod SLv1


  錬金術が使えるようになる大規模mod

  製作者:パラケルスス

  配布場所:鍛冶屋フォーラム

  前提mod:なし

  インベントリ、ストレージとのマナリンク対応

  ヴェラルドリンク対応


  アクティブスキル

  リキャストタイム:60s

  ビルドタイム:3600s

  使用SP:1025.6M


  残SP:2582.6M


  [戻る] [作成する]




 これで作れそうなんだけど、これはパラケルススさんっていう人が大元になるスキルを作ったという事なのか。

 なんか凄いな。

 僕のはスキル作成と言っても既にあるものから選んでるだけだから、厳密には一から作ってないんだよな。

 人のレシピで料理する、みたいな?


 この人は新しいレシピを考えたって事だ!

 僕もこういうの出来ないかな。

 ま、まあ、それもワクワクするけど、今はこの錬金術modだ!

 配布場所ってあるけど、そこから貰ってこないといけないのかな。

 ま、作ってみるか。

 作成ボタンを押してみたけど、普通に作れそうだ。

 途中、「鍛冶屋フォーラムからダウンロード中」とか出ていたから、大丈夫なんだろう。


 思っていたより、ビルドタイムが掛かるみたいだから、下のリビングでアニカの話でも聞こうかな。


 下に降りてみると、アニカが皆んなに囲まれていて、どうやら質問責めにあっていたらしい。


「あら、もういいのかしら、夢中になってこちらの事はどうでも良かったのではないの?」

「うっ。その、待ち時間があるから………」

「そう。待ちになったら、わたしたちを放って置いてしまったのに気付いて慌てて降りて来た、という事かしら」

「うぐっ。はい。すみませんでした………。楽しそうな事しか見えなくなって、放ってしまいました………」

「もう。フィアは意地悪はその辺にしておきなさいよ。ご主人に構ってくれなくて拗ねてただけじゃないの」

「なっ!そんな事はないわ!何故わたしがリンに放って置かれて拗ねないといけないのかしら!リーカは笑ってないでアニカの生活に必要なものを書き出しなさい!」

「うふふっ、あ、はい!ごめんなさい!」


 最近、フィアが怖い。

 特にリーカがやって来てからは、僕に何かと突っかかってくる。

 レティ以外は皆んなエルツ族だから、人族が増えるのが嫌なんだろうか。

 そして、一時的とは言えまたエルツ以外の人が増える訳だから、怒ってるんだよな、きっと。


「アニカはダミーさん時代はあっちの世界で、だらけてたんでしょ?」

「そう言われるとタシカにそうなのデスが、本当に年中だらだらシテタ訳ではありマセンヨ?」

「ダミーさんの記憶というか、ダミーさんとしては見たり聞いたりはしたないの?」

「動けないので大した事は出来ないデスけど、たまに動作チェックはしてマシタヨ。攻撃されそうになったら怖いのでソッコーログアウトしてマシタけど」


 そうか、ダミーさんというかアバターには入ったり入らなかったり出来るのか。


「それなら、誰がアニカのアバターをダミーさん化したのかは覚えているんだね」

「……多分……」

「多分なの?見てたんでしょ?」

「顔は見てマスけど、知らない人デシタから。この国の人の顔は区別付かないデス」


 あ、そうか、マルブランシュ共和国出身だったか。

 って、そんなに顔違うか?フォルクヴァルツ人と。

 まあ、僕も人の事は言えない。名前と顔があまり一致しない。


「あ、デモ、わたしをダミーさん化する時に何かの道具を持っていた人をあの学園で見まシタヨ」

「お、それ誰?先生?生徒?」

「ムー。誰だったでショーカネ。男性でした。年上デスネ」


 男の先生、かな。


「何か特徴は無いかな。背の高さとか、あ、見た目だけじゃなくても話し方とかでも」

「ムムー。ソーデスね〜。あ、わたし最初にその人に目潰しされマシタ!指でグシッて。チョー痛かったデス。ブスッじゃなくてグシッデス」

「その違いは興味があるけど、それよりも、その卑怯な感じはもしかしてあの先生なのか?」

「ご主人、今ので思いつく人ってあまりいい人に思えないんだけど、逆に今の情報だけでその人って決め付けちゃっても大丈夫なの?」

「そうだね。いくらあの先生でも、決め付けは良くないね」

「あ、あと、大人しくしていれば、もうこれ以上は何もシナイと言われて、大人しくしたら、グルグル巻きにされて、最後はダミーさん化されてしまいマシタ」

「やっぱりあの先生だよ!絶対だよ!もう違っていても良いよ!」

「違ってたら良くないでしょ」


 絶対あの先生だと思うんだよな〜。

 学校でそれも調べてみるか。


「ソー言えば、学校の人、もう一人変な人がイマシタ!」

「変な人?誰?」

「タシカ、今年入った人デス。女子で眼鏡を掛けてマシタネ。一年生の魔法の授業で全然わたしに当たらなくていつも悩んでいるみたいデシタ」

「ふむ。そんな子居たかな?それで?その子がどう変なの?」

「休み時間にコッソリ倉庫に来て、わたしの体の何処かに何かを仕込んでイマシタ、多分、背中の辺りデス」


 何だろう。よし、調べてみよう。


「ちょっとご主人。何しようとしてるの?」

「もう人形だろうと見境なしなのね」

「いやいやいや、ダミーさんだよ?綿の詰まった人形だよ?」

「中身は女子ですよ!リーンハルトくんはそういう無神経な所があるんですよね!」


 おぅ………。総攻撃だ………。

 つまり、今のは僕が全面的に悪かったんだ。

 何故かは分からない。分からないから怒られた。

 そういう事だろう。


「ごめんなさい。ラナ、悪いけど、アニカの背中を調べてくれないかな。………あ、僕は、ちょっと隣の部屋に行ってるよ」


 見てるのもダメなのか。

 人形なのに。


 数分後、部屋に戻ると、テーブルの上に何かの装置が置いてあった。


「何これ?アニカの背中にあったの?」

「そう。綿の中に埋まってたわ。何なのかしら」

「じゃあ、調べてみるか。解析」



 [解析結果] 1件

  盗聴器 真偽判定100.0%

  ゼルマ・ウルブル所有



 盗聴器って、音を密かに聞く機械なのか?

 ゼルマ・ウルブルか。確か図書館塔でチェインドライブラリーに来て魔法の書みたいなのを見ていた子だ。

 何故名前で分かるかというと、情報操作で書き留めていたからだ。

 僕がそんなの覚えられるわけがない。

 そして、100%の判定結果。

 神様関係の道具とかなんじゃないの、これ。



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