第五十三話 リーカ
リーカを探している間にも他のメンバーが入れ替わり話しかけて来た。
フリーデとクリスにミスティルテインさん。
ディート先輩も暑苦しかったし、何故か雷野郎まで話しかけてきた。
「ふん!仕方がないから認めてやるが、調子にのるなよ!」
そんな事を言いにわざわざ来たの?
認めて来れなくて良いし。
そんなのどうでも良いからリーカを見つけないと。
一体どこに行ったんだ?
あ、そうだ。「友達を探す」スキルがあった。
これってとてもスキル名には見えないと僕は思うんだ。
なんで、こんな名前にしたんだか。
まあ、これに文句を言っていても仕方ない。
友達を探すスキルを起動して、リーカの居場所を地図上に表示する。
多分他の人には見えていないだろうと思うけど、この辺りの地図が目の前に広がり、一点に赤いピンのようなものが刺さっていた。
このピンが刺さっている場所にリーカが居るはずだ。
森の中。
まあそうだ。
地図の表示範囲が広すぎるんだ。
二本の指を地図に当てて、指を広げると地図も拡大していく。
ピンを中心にどんどん拡大すると、この辺りの原っぱが分かる程の大きさになる。
んん?リーカが居る筈のピンの場所はこの広場から外れて森の中に刺さっている。
僕の居る場所も「+」で表示されているから、地図上の現在地も分かる。
えっとあの木がこの地図のこれだから、こっちか。
地図と実物を見比べながら、リーカのいる地点に行ってみる。
森の中に入り、もう少しでリーカの居る場所に着きそうだ。
お、いたいた。
声を掛けようとしたけど、リーカの話し声が聞こえてくる。
誰かと話しているみたいだった。
「え?バレたって?何がですか?ええ?私の正体ですか?そんなぁ。私何かヘマをやっちゃいましたか?あ、、、そうですよね。それはバレますよね。うわあああ、どうしよう。リーンハルトくんって何者なんですか?私リーンハルトくんに殺されちゃうの?」
何か物騒な話になってるな。
「え?私がリーンハルトくんを、、、ですか?出来ませんよ!人を殺めた事も無いですし!それに!リーンハルトくんはダメです!だって。だって!リーンハルトくんは私の、、、初めての人、、、だから。ぽっ」
いや待て!何言ってるのさ!
相手はあのスファレライト神なんだろうけど、それでも変な誤解は解いておきたい。
「ちょっとリーカ!変な言い方しないでよ!どうせ初めての友達って意味なんでしょ?」
「わあ!リーンハルトくん!?そうです。初めての人、なんです」
「だから、言い方!スファレライトさんも聞いてるんでしょ?僕とリーカはそんなんじゃ無いからね!」
「えっと、あ、はあ。はい。はい。ええっ!?それ言うんですか?やだなぁ。ふう。リーンハルトくん。すー様からの伝言です。俺のうーたんに手を出したら、ケツの毛をむしりにいくからな!だそうです。ううっ、恥ずかしい!」
あ、困った。
関わらなければ良かったよ。
すー様にうーたんかぁ。
それにしても、スファレライトはリーカの事を大事にしてる?のか?よくわかんないや。
ダメだ、思考能力が低下してる気がする。
脅し文句もよく考えたら、大した事を言ってないし。
お尻の毛なんて生えてないし。
もし生えていても、むしられたからって、美容的にはむしろ大歓迎なんじゃ無いかな。
ああ、いかん、あの呼び方がショックだったから、どうでも良い事を考えて現実逃避してたよ。
「リーカは勇者候補なんでしょ?」
「はい…………。やっぱりバレてましたか。私の正体に気付くなんてリーンハルトくんは何者なんですか?」
「僕?僕は、、、何だろうね。キミの友達かな?」
「うっ!すー様!精神攻撃を食らっちゃいました!もうダメです!私、もうヤバイです!」
何を言ってるんだろう………。
せっかく知り合えたんだし、仲良くもなったのに、敵になるのは嫌だな。
「リーカ。スファレライトの言う事なんて聞かないで僕の所においでよ!」
「はい!行きます!一生ついて行きます!」
え?なんで?
いや、良いんだけどさ。
そんなに簡単に鞍替えしていいの?
「え?、、、あ、はい、、、そうですけど!すー様には助けてもらって感謝はしてます!でも!でも!もう私はリーンハルト様の魔法に掛かって、、、あ、恋の魔法に掛かってしまったんです!」
呼び方が「様」になってるし。
わざわざ言い直してるし。
「あ!ダメです!ダメですって!そ、そんな」
リーカが手をこちらに伸ばしてくる。
握手なんかじゃない。
魔法を撃つ時のポーズだ。
口は呪文を唱えている。
スファレライトに操られているのか。
まずいぞ。僕はリーカに攻撃なんて出来ないし、ここで避けたら後ろはみんなのいる広場だ。
場所を少しずつでもずらせないか。
ああ!もう呪文が完成しそうだ!
「ダ、ダメ、エ、エイスの氷槍。避けてぇ」
最大防御!
うがあっ!
リーカが撃った氷の針が僕の体中に突き刺さる。
流石にレベル5だけある。
針というより矢のような太さがある。
「いやあああ!リーンハルトくん!なんで避けてくれないんですか!」
次の魔法が来る!少しでも射線をずらしていかないと全部受ける事になってしまう。
っていうか呪文の詠唱早いよ!
こっちが移動しようとするとリーカもそれに合わせて僕の後ろにみんなが来るようにしている。
ダメだ、あの威力だと向こうまで届いて被害が出てしまう。
僕がレベル8じゃなければとっくに死んでたぞ!
「エイスの氷槍!!もうやだあ!」
「ぐはあ!」
ま、まずい、なんとかしないと。
ステータスウィンドウが無いから今生命力がいくつ残っているのか分からない。
でも何となく、今のまま行くとかなりまずいって気がする。
どうする?
また次の魔法が完成しそうになっている。
あまりこれを受けすぎると命に関わりそうだ。
くそっ。もうリーカに攻撃するしか無いのか。
ラナ『ねぇご主人。リーカって子はどうなったの?いつ家に連れて来るの?』
こんな時にチャットが来るのかよ!
まあ、こっちの状況なんて分かんないから仕方ないけどさ。
「ラ、ラナさん、うぐぐっ。ご、ごめんなさい!エ、エイスの氷槍!」
「うがああっ!」
そうか、ラナのチャットはリーカにも見えてたか。
でも、まずい、まずい。
も、もう体が動かない。
くっ、ラナ、ごめん、返事返せそうにない。
でもこれで奴隷から解放されるからいいかな。
そんな事言ったら怒りそう。
あ。奴隷か。
あの時作られたスキル。
「絶対服従」
絶対服従スキルウィザード起動
どのアバターユニットをスレーブノードに接続登録しますか?
ザフィーア=フェルゼン=シュタイン
マルモア=ペルレ=テュルキース
ブローンセ=メッスィング=テュルキース
レティシア・バルシュミーデ
ウルリーカ・クルル
これならいけるか?リーカを選ぶ。
ノード接続
『ウルリーカ・クルル』さんをスレーブノード2に接続登録しました。
ノード2に絶対服従スキルをインストールしました。
ノード2にメッセージスキルをインストールしました。
ノード2に経験値共有スキルをインストールしました。
上手くいった!!
「リーカ!スファレライトには従うな!僕に従え!」
「はいぃ!何でも従いますぅ!やったあ!呪文が止まったああ!」
やってやったぜ。
これでスファレライトがリーカを操れなくなった、っていうか勇者にするっていうのも阻止できたんじゃないか?
「も、もう、すー様の言う事は聞けません!リーンハルトくんをこんなに傷付けて、私が傷付けてしまって、そんな事をさせるすー様、、、スファレライトになんて従いません!」
「リーカ。まだスファレライトとは話が出来てるの?」
「はい。少し声は小さくなりましけど、会話できてます」
「なら僕の声も聞こえてるな。スファレライト。僕は女神クリノクロアの遣い、リーンハルト・フォルトナーだ!お前が僕から奪った運命は返してもらったぞ!この子は僕の運命だ!お前にはもう渡さない!」
よし、このくらい言っておけば諦めるだろう。
ああ、回復しなきゃ。
自分で回復魔法を掛けていく。
氷の槍で体中穴だらけだよ。
辺り一面血の海だ。
ああ、だるい。
失った血までは回復しないのかな。
「…………リーンハルトくん………。私…………」
「ああ、気にしないでいいよ。これはスファレライトがやったんだ。君は操られただけ、利用されただけだ。だから、君は気に病むことは全然無い」
「私………リーンハルトくんの運命の人だったんですね!」
え???
あ!違う!
そう意味じゃないんだよ!
スファレライトが僕の勇者になるっていう運命を奪ってリーカに与えたから、だから、リーカに僕の運命があるっていうだけで、リーカが僕の運命の人って意味で言ったんじゃないんだよ!
ああああ。言葉選び、失敗したああ!
でも今更、君は別に僕の運命の人でも何でもないよ?とか言えないよおおお!
「私、そんな気がしてたんです!あの時!あの場所で!私にペンとインクを貸してくれたあの瞬間!私!リーンハルトくんが運命の人って、そう感じてたんです!」
そんなわけないよね?
あの時そんな素振り見せてなかったよね?
ああ、でも、女子の心は男にはいつまで経っても読み解く事は出来やしないんだぜ、って父さんも母さんに怒られながら言ってたよ。
しかし困ったな。
今はリーカも興奮してるみたいだから、あとで落ち着いてからゆっくり誤解を解いていくかな。
ってダメじゃん!
奴隷にしちゃったよ!
あ、主従契約だけど。
「ネックレス型主従契約証明端末」いわゆる「奴隷の首輪」は無くても主従契約は可能だ。
魔法やスキルで主従契約を結ぶ事で首輪でするのと同じような効果になるらしい。
今回のはスキルでの契約になるんだろう。
首輪での契約だと頬に奴隷、、、じゃなくて主従関係を示す焼印を押されるけど、魔法やスキルでの契約だと、契約完了後、頬に焼印と同じ様な模様が浮かび上がるようになっていた。
リーカの右頰がジュッと音がして、焼印のような模様が浮かび上がる。
「熱っ!え?リーンハルトくん私の頬、何かなってます?」
「あ、うん、その、何て言うか。僕の奴隷になったっていう証みたいなのが、現れたかな?」
「奴隷?リーンハルトくんの?」
「ごめん!スファレライトの束縛から逃がすために、僕の奴隷にしちゃったんだ!あ、でも、そのお陰でスファレライトに操られなくなったでしょ?」
やっぱりまずいよね。
リーカの許可を得ずに無理に奴隷に、、、主従契約を結んじゃったんだから。
「ふあぁ。私の事をそんなに束縛したかったんですね!もうこれこそ運命の人!一生一緒なんて!」
盛り上がって居るところ悪いけど、10年で契約は切れるからね。
リーカは22歳になったら晴れて自由の身だよ。
でも10年か〜。
1人の女の子の人生を大きく変えちゃったな〜。
やっぱり責任とらないとだよな。
それに、今、契約を解除しちゃったら、またスファレライトがリーカにちょっかい出してくるかもしれない。
リーカを守る為にも、勇者の運命を守る為にも今はこの状態がベストかも。
「リーカ。スファレライトが何か言ってきたら、すぐ僕に知らせて欲しいんだ。あいつは何企んでるか分からないし、今も別の件で悪さをしているみたいだから、キミの身を守るためにも、お願いね?」
「はい!ご主人サマ!かしこまりました!」
「ちょっと待った!呼び方とか!話し方とか!今まで通りでお願いできるかな?」
「ええええ。奴隷と言ったら普通こうじゃないんですか?ちょっと憧れてたんですよねぇ、こういう関係」
え?リーカってエルツ族じゃないよね?
僕の周りにはこういう人しかいないのかな。
いや、フィアとかマルモやブロンは違うはずだ!
そうまだ半分だ。
過半数では無い。無いったら無い。
この顛末はクロも見てたって事で良いんだよね。
これも聞こえてるのかな?
それとも心の声を聞くのは有料?
勇者候補問題は一段落したと思うんだけど、クロの話を聞いてみないと分からないな。
図書館塔はラーシュ写本とか探したいからまだ通うけど、勇者候補探しはこれで終わりだろう。
どっちかと言うと、スファレライトがやってると思われる、精霊や天使の悪事とかの問題の方が気にはなる。
ベルシュがカルから貰った、僕と一緒に悪い精霊をやっつけろって言う神託と、ミスティルテインさんの過去にスファレライトがやったアールブの民から奪った精霊権限の話。
そのどっちもスファレライトが思いっきり絡んでるんだろうから、また僕ががっつり関わらないといけないんだと思う。
もうなんか、神様の国?とかの憲兵とか居ないのかな?
あいつ神様達の問題なんだからそっちで何とかして欲しいよ。
「リーンハルトくん。リーンハルトくん」
「ん?何?どっか痛い?」
「それは大丈夫です。あの、、、今日ってもうリーンハルトくんの家に、、、私、住むんですよね?」
「いや、住まないよ?キミは住むところあるんでしょ?そこに今日も帰りなよ」
「ええええ!そんなぁ!だってスファレライトが用意した家だから絶対追い出されちゃいますって!」
そうなのかぁ。
それじゃ、仕方ないかぁ。
やっぱりフィアの言った通りに、増えちゃったよ。




