第五十二話 シャッハ予選
リーカを追いかける。
馬で移動するリーカ達だけど、全力で走ればすぐに追いつくと思う。
森の中だけど、人がよく歩いて踏み跡がしっかりついた道がしばらくは続くから走りやすい。
思った通り、前方に4対の騎兵が見えてきた。
リーカももちろんいた。
真後ろからだと話しかけづらいから、道から外れて藪の中を突っ切り横に付ける。
「リーカ!ちょっと話があるんだけど!」
「うえっ?!リーンハルトくん?どうしたんですか?って言うかなんで追いついてるんですか?今、襲歩で走ってるんですよ?」
「そんなことより、さっきの写本を探してるって話、うわっぷ枝が……。写本を、、さが、、、くそっ走りづらい、、」
横を見ながらだと前方の障害物に当たって速度が落ちる。
あ、そうだ。
「部隊編成」
部隊編成
部隊に登録する人物を指定してください。
エルフリーデ・アーレルスマイアー Lv3
クリストフォルス・アーレルスマイアー Lv2
ミスティルテイン=ハップ=エンギル Lv2
ウルリーカ・クルル Lv5
よし、出たぞ。
うえっ?!リーカのやつ、レベルが5もあるのかよ。
フリーデがレベル3で頑張ってるなって思って下に見ていったら、レベル5だもんな、1人だけこのレベルは異様だよ。
って僕は人の事は言えないか。
まあ、それはいいとして、範囲内にいるうちにリーカを選んで部隊に所属してもらう事にする。
「うわっ何これ?え?リーンハルトくんの名前。これリーンハルトくんのせいなんですかぁ?」
「そう!その許諾するっていうのを押して!」
「わ、分かりましたぁ。押しましたあ!」
よし、これで離れていてもこっちで色々できる。
まずはチャットスキルをリーカに渡そう。
家族シェア+経由でチャットスキルを渡すとリーカにもこのスキルが作られる。
ウルリーカ・クルルさんにチャットスキルがインストールされました。
これで、チャットを使って話せるかな。
結局、声で入力したものを文字で読むんだけど。
リン『リーカ。リーンハルトです。これが読めたら返事を返して欲しい。横のボタンを押したら声で入力できるから』
送った。
上手く返信してくれるかな。
お。
ウルリーカ・クルル 『いきなりでびっくりしましたよ。これで届いてますか?』
よし!会話できるな。
表示される名前を変えて「リーカ」に調整しておこう。
リン『さっきの写本の話なんだけどさ。あれってどういう意味なの?』
ラナ『ねぇご主人。リーカって誰なの!』
うわっ。ラナか。
チャットだからみんなにも見えてるんだった。
リン『ラナ。後でちゃんと説明する。だから、みんなもだけど、待っててくれないかな』
フィア『リーカって、リンの受験合格発表の時にいた女子ね。あの時は冗談でまた増やすの?と言ったけど、本当に増やしたのね。空き部屋あったかしら』
リン『フィアさん?家には連れて行かないからね。それとそもそも増やしてないからね?』
困った。別のチャットルームを作れば良かった。
慌てていたからみんなと混じってしまった。
いや、別にみんなに隠れてリーカと会話しようとした訳じゃないよ?
って何、僕は言い訳を考えてるんだか。
レティ『私、もう慣れました。というより諦めが半分なの。もうリンくんの側にいれるだけで充分よ』
マルモ『お姉ちゃんが増える?』
ブロン『やったー!家族が増えるー!』
後でみんなの前で額を土に付けて謝ろう。
いつも父さんが母さんにやっていたように。
最近、父さんの気持ちがわかってきたんだ………。
自分が悪くなくても、謝らないといけない事もあるんだって。
リーカ『皆さん、リーンハルトくんの事好きなんですね!私嫉妬されちゃいました!でも皆さんに受け入れてもらえるように頑張ります!皆さん、ウルリーカ・クルルと言います!これからよろしくお願いします!』
リン『いや待って!お願い!暴走しないで!リーカには今聞きたい事があったから、一時的に部隊に参加してもらってるだけだからね。話が終わったら抜けてもらうからね』
大体なんでリーカはこの一瞬で受け入れてるのさ。
どういう集まりなのか理解してないのかな。
ラナ『何言っちゃってるのよ!そんな酷い事をする子に育てた覚えはありません!』
リン『育てられた覚えもないけどね。リーカは学校の友達だよ。みんなとは違うから』
リーカ『私、振られちゃいました?ううっ』
めんどくさっ!
みんなまとめてめんどくさっ!!
不用意にリーカを部隊編成に入れちゃったし、チャットもみんなのと同じのにしちゃったけどさ。
もうリーカもこっちに引き込んじゃおうっかな。
うちに住む?とか言ったりして。
いやいやいや。リーカとはそういう感じじゃなかったよね。
それより写本だ!写本!
もう直接聞いちゃえ!
『リーカって勇者候補だったりする?』
『あの、、、、今、、、、交戦中なので………………エイスの氷槍!!王女殿下!右です!あとでまた、、、にしてください』
くう、惜しかった。最初にズバリ聞いてれば良かった。
あ、近くにいるんだから僕がその戦場に行って手伝った方がいいか。
一人増えれば有利になるかもしれないし。
急いでリーカ達のところに行くとまだ戦闘中だった。
相手は騎乗4人に歩兵4人。
敵はポーンクラスを連れてきたのか。
後ろに回り込んで、シュトラールでポーン2人を切り刻、、、、めないけど、スカスカと斬る。
敵ポーンクラスAにダメージ 52pt
敵ポーンクラスBにダメージ 88pt
へぇ。こういう風に相手へのダメージも表示されるんだ。
こっちに気付いたポーン達が全員僕の方を向く。
光るシュトラールが僕の方にブンブン振り回されてくるけど、そもそもレベル差が5〜6はあるから身体能力を最大にしなくても止まって見える。
本当にゆっくりと、足が痺れていて動けないの?っていうくらいの遅さで剣を振っている。
その間を抜けて確実に最初の2人を抹殺する。
死なないけど。
敵ポーンクラスAを撃破!!
敵ポーンクラスBを撃破!!
よし。
よく見ると視界の端に
味方 Q1 R2 B2 K2 P8
敵 Q1 R2 B2 K2 P6
と小さく表示されていた。
キングは倒されると試合終了なので表示はない。
Kはナイトの事を表している。
今、ポーンを2人倒したから敵のPが8から6になっていた。
勢いに乗って残りの2人のポーンも倒そう。
ん?ポーンの一人がシュトラールじゃなくて手を伸ばしてる。
魔法?
うわっ、この人ナイトだ!
「ヴリズンの氷塊!!」
「ファッケルの火!」
咄嗟に逆属性の魔法が出せて良かった。
半分、感だったけど。
両方の魔法は中間でぶつかり、派手に氷の粒と火の粉を撒き散らして、爆音とともに砕け散った。
マナをほとんど込めてなかったから威力が同じくらいになったみたいだ。
「ナイトか!ちっ」
相手は次の呪文を唱えながらシュトラールを振ってくる。
でもこっちは詠唱なんて要らないさ!
「ブラントストフの爆裂!」
ザールブルク砦の壁を破壊した爆裂の魔法だ。
こんな時じゃなければ、人に向かってなんて撃てない。
ドグオォォォォン
おわっ!爆発した。
いや、そういう魔法なんだけど。
敵ナイトクラスAを撃破!!
敵ナイトクラスBを撃破!!
敵ビショップクラスBにダメージ 125pt
敵ルーククラスAにダメージ 76pt
敵ルーククラスBにダメージ 32pt
敵クイーンクラスがダメージを反射
敵クイーンクラスからの反射ダメージ 21pt
あれ?クイーンが居た。
反射して僕がダメージ受けちゃった。
クイーンが遠くて良かった。
反射ダメージが多かったら僕が倒されていたところだよ。
「あの奥の男子がクイーンだ!シュトラールで攻撃して!」
「リーフデの癒し!」
敵クイーンは一番ダメージの多かったビショップに回復魔法を掛けたみたいだ。
敵ビショップクラスBが回復 20pt
味方ルーククラスBがダメージ 25pt
まずい、今の間にフリーデが敵ルーククラスの剣でダメージを受けてしまった。
クイーンから倒そう。
馬の間を抜けて、クイーンの下に来る。
クイーンは攻撃が出来ない。
だから敵ルークがクイーンを守ろう割り込もうとして来る。
邪魔!
「エイスの氷槍!」
マナが全然込められていないから、針のような細い氷しか出来ないけど、それでも一瞬ルークの体を固まらせるには充分だ。
敵ルーククラスBにダメージ 43pt
続けてクイーンクラスへシュトラールを斬りつける。
スカスカするから全然当たった気がしない。
敵クイーンクラスを撃破!!
「まずいクイーンがやられた!撤退だ!」
逃すか!
「ブリクスムの雷鳴!!」
バリバリバリバリバリバリ!!
逃げ出して敵だけの塊になれば、広範囲魔法が使えるからね。
クイーンもいないし、これで終わりでしょ。
敵ルーククラスAを撃破!!
敵ルーククラスBを撃破!!
敵ビショップクラスBにダメージ 3pt
あ、あれ?
おかしいな。
ビショップ一人だけほとんど無傷だ。
あ、丁度落馬して魔法の範囲から偶然外れたんだ。
痛そう。
魔法や剣のダメージは無いけど落馬は生身の体だもんな。
落ちたビショップ男子生徒の所に近寄って無事を確かめる。
「だ、大丈夫?」
「う、痛てて。腰打ったけど何とか大丈夫」
「ほっ。良かった。じゃあ悪いけど」
「あ」
シュトラールでグサグサ刺しまくって留めをさす。
敵ビショップクラスBを撃破!!
味方 Q1 R2 B2 K2 P8
敵 Q0 R0 B1 K0 P6
両陣営の数はこうなった。
おお、圧倒的じゃないか、って全部僕がやっつけてた。
なんだか、魔法も剣も思いっきり使えるから、思わずやり過ぎちゃったかな。
敵ポーンクラスDにダメージ 12pt
味方ポーンクラスGにダメージ 23pt
味方ポーンクラスBにダメージ 54pt
あ、あっちも敵と当たったんだ。
こっちのキングとクイーン、ポーン達はスタート地点から動かない作戦の筈だから、敵の残り部隊が突撃してきたんだろう。
味方は結構やられてるようだ。
敵にビショップが一人いるのは大きいな。
こっちのあの雷ナイトは何やってるんだか。
急いで馬部隊と一緒に自陣に戻る。
その間に味方はポーンが5人やられて、かなり危ない状況まで来ていた。
でも、なんとか間に合った。
こっちの増援はルークとビショップ全員にナイトの僕だ。
クイーンの回復もある。
ここまで来れば、僕はもう何もしなくても、あっという間に敵を一掃してキング以外全てを倒した。
試合終了
王立学園の勝利!!
王立学園 16対1 ハイデルベルク魔法学校
「勝ちましたね!リーンハルトくん!」
「うん。勝ったね」
結局、勇者候補の話は聞けないまま試合が終わってしまった。
これなら後で聞いても同じだったよ。
まあこれでゆっくりと聞ける。
「ねぇリーカ」
「リーンハルトさん。貴方のお陰で勝つことができました。王立学園がシャッハに参加し始めて以来初の事です。本当にありがとうございました」
レクシーさんが珍しく頬を上気させながら、僕の所へ寄って来て、両手をギュッと握る。
「あ、いや、そんな事は」
「お前が開始早々いきなり馬部隊を追いかけた時はびっくりしたけどな!聞いたぞ。ピンチだった所をあっという間に一人でやっつけたんだってな!」
ヒルデさんも嬉しそうだ。
「みんなで倒したんですよ。たまたま僕が留めを刺しちゃっただけで」
「なんだよ〜謙遜するなよ〜。ボクはお前の事認めてるんだからな?アレクシアさんの次にだけどさ〜」
勝った興奮でちょっとうざったい。
それよりリーカだ。
あれ?どこ行った?
リン『リーカどこ〜?』
返信無いし!




