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第四十四話 冒険者ギルド?

「何しに来た?ここは子供の来るところじゃないぞ?」


 あ、これ、演技してるのか。

 そういう演出なのね。


「えっと、冒険者登録をしたいんですけど」

「ほほう?その歳で冒険者か!中々やるようだな。よし、登録してやるぜ。手を出してみな。ほれこのリストバンドが冒険者の証だ。退館する時には出口のバンド入れに入れてくれよな」


 スタッフもノリノリだね。

 冒険者登録はこの時にマナ紋を読み取ってるんだね。

 あれ?次に来た時はこのバンドはどうやって受け取るんだ?

 と思ったら2回目以降の時には入口でバンドも渡されるみたいだ。

 ここはマナ紋の登録がメインなんだ。


 さて、登録も済んだしダンジョンに行ってみようかね。


「なぁ待ちな!お前さん達、ここが初めてならクエストをやってみないか?そこのクエストボードにはお前さん達初心者でも出来るクエストがたくさんあるぜ」


 え、いいです。

 散々クエストはやりました。

 いまさら体験も無いよ。


「やってみましょうよ。何事も経験よ」

「にいちゃん、これ取っていい?」


 ああ、マルモやブロンはクエストの受け付けとかやった事ないからしてみたいのか。

 ブロンにクエストボードに貼られている紙を剥がさせる。

 番号を用紙に書くんじゃ無いんだ。


「えい!」


 ビリッとクエストの書かれた紙を剥がすとカウンターに持っていく。

 ラナも何か選んでいた。

 何かやるつもりみたいだ。


「おお?いいクエストを選んだみたいだな?これならそこの扉から入るんだぞ。中の説明書きをよく読んでな」

「はーい」


 扉には「レーゲンの森」と書いてあった。

 僕が生まれ育った村とマルネの町の間にある森じゃないか。

 懐かしい。

 アカガネ狼と戦ったっけな。

 あの時は大変だったけど、今なら余裕だな。


 ここにはブロンと僕、フィアが入る。

 ラナはマルモとレティと一緒に別のクエストの部屋に入ったようだ。


 部屋の中は本物の木が植えられていて、森の中にいるような雰囲気を出していた。

 壁にも森の風景や天井には青空が描かれていて、レーゲンの森を思い出させる。

 違和感と言えば部屋の真ん中に置いてある、色とりどりのボールかな。

 説明を読むと、木の隙間や草の中から飛び出してくる魔物を、このマナボールと名付けられた、ただのゴムボールを当てる、というのがクエストらしい。


「えっと、何処に出てくるか分からないみたいだから、それぞれ三方向を担当しようか」

「うん!」

「ええ、わかったわ」


 ウィンドウに「クエスト開始」の文字が浮かび、周りの草むらからクロモリウサギが飛び出してくる。


 あ、いや、アルメルウサギかな?

 見た目がただのウサギのぬいぐるみだから区別つかないや。

 どっちだとしても、この僕のマナボールで狩ってやる!

 えいっ。

 あまり本気で投げるとゴムボールが破裂しそうだから、ここはそっとね。


 アルメル、じゃなくてクロモリウサギのお腹のあたりに付いている的のような丸い板にマナボールがポコッと当たるとウィンドウには「当たり!経験値が1増えた!」と表示される。

 ああ、うん。そうだね。

 いい経験をしているよ。


 次々とウサギやら小型の魔物やらが飛び出してくるので、ポコポコとマナボールを当てていく。

 これなら身体能力も知覚能力も普段のままで、問題なさそう。

 隣をチラッとみると、ブロンが懸命にゴムボールをぬいぐるみに当てようとしていたけど、中々当たらないみたいだ。

 ええええ、ブロン、レベル上げてたよね。

 こういう命中精度ってレベル関係ないのかな?


 反対を見るとフィアが顔を真っ赤にしてマナボールをぶん投げていた。

 と言うか、まともに真っ直ぐ飛んでいない。

 うわっ、何でこっちに飛んで来るのさ。

 ほとんど真後ろだよ?


 はっ!!もしや、エルツ族は投げるのが苦手?

 それともこの二人が下手なだけ?


「ふうー!ふうー!何これ!当たらないじゃない!どういう仕様で作ってるのかしら!アンチマナシールドとか絶対防御空間とか張ってあるのよね?リン!どうなの!」

「………違うと思います………」

「リンは私の投げ能力を疑うのね」

「………えっと、このクエストは上級者向けなのかなあ、なんて………」

「そう、それなら仕方ないわ。あとはリンに任せたわ。必ずクエスト達成するのよ」


 ひぃぃ、最近フィアは僕に厳しく接してくるような気がする。

 何か嫌われる事をしちゃったんだろうか。

 出来るだけラナやレティと話して、フィアには近寄らないようにしてるんだけどな。


 とにかくここはクエスト達成の為に、僕が頑張らないと。

 他の人を助けるんじゃなくて、自分が頑張るのかぁ。

 まあ、ゲームだし、仕方ないか。


 フィアの範囲も含めて僕がどんどん当てていく。

 ブロンはさっきから少しずつ当たり始めてきて、楽しそうなので放っておく。

 ちょっとだけ知覚能力を上げて、百発百中でどんどん経験値を上げていく。

 よし、後半はほとんど当てたぞ。


 魔物が出てこなくなった。

 終わりかな?


 冒険者が参加中のためハードモードに移ります


 何これ。

 うわっ、パイライトタイガーとかスタシルトカゲとかちょっと強そうな魔物が出てきた。

 マナボール一個じゃ倒れない!

 3回当てたらようやく倒せた。

 何だよこれ!レーゲンの森にこんなのいないよ?


 しかも、魔物がちょっとだけ顔を出したらすぐに引っ込む。

 的の部分なんてほんの一瞬だけしか見えない。


「あら、リンは私のお願いは聞いてくれないのかしら」


 やるよ!やりますよ!

 フィアの為なら何でもやるって!


 知覚能力は最大に引き上げる。

 身体能力も投げた勢いでゴムボールを破裂させない程度に上げる。

 あ、そういえばレベルが上がって操作できるようになったこの能力の上限だけど、投げて当てるっていうのは無いな。

 投げるというのはレベルに関係ないんだな。


 次々と現れる中級の魔物のぬいぐるみにゴムボールを一度に3個ずつ当てていく。

 片手に3つずつボールを持って、少し角度を変えてボール同士が当たらないように上手く的に命中させる。


 あ、ゴムボールが割れちゃった。

 強すぎたか。

 よし、ゴムボールにマナ弾を込めて投げてやる。

 これなら本物のマナでボールが強化される筈。


 ちょっと強めに投げてみるけど、大丈夫だ。ゴムボールも魔物のぬいぐるみも、問題ない。

 ちょっとだけ、魔物のぬいぐるみがベコベコになってるけど気にしない。


 いいぞ。強化された分早く投げれるから、5、6体の魔物が同時に出てきても全て3発ずつ当てて、まだ余裕がある。


 ふふふふ、何だこれ結構楽しいじゃないか。

 ダダダ、ダダダ、ダダダと3個ずつ弾が当たる音だけが鳴り響く。


 お、終わったか?


 クエスト終わり 獲得経験値は3752でした


 そんなに出てきたのか、魔物。

 これでクエストは達成したのかな。

 さっきのギルドに戻ってみよう。


「私を放って楽しそうだったわね」

「いや、どうしろと。フィアの為に頑張ったんだよ」

「…………そう。ならいいわ。…………………ありがと」


 え?何?今ありがとうって言った?

 フィア、熱がある?

 じゃなくて。

 さっきまでのトゲトゲしたのは無くなって、またいい感じになってくれたのかな?

 懺悔室の時みたいに、少し距離が近づいた感じになってくれたかな?

 それならこのクエスト、思いっきり頑張って良かったよ。


「ブロンは楽しかったかしら?」

「うん!最後はにいちゃんの真似をしたら当たるようになってきた!面白かった!」

「そう、良かったわね」


 あれ?恥ずかしさを誤魔化してる?

 気のせいか顔もほんのり赤く染まってるような。


「ジロジロ見ないでって」

「す、すみません!」


 さっきのギルドのカウンターに行くと記録はもう届いているみたいで、クエスト達成の報酬が既に用意されていた。


「おお、よくこの難しいクエストをこなしてきたな!さすがだぜ!これが今回の報酬だ!ほらよ」


 3人にそれぞれメダルが渡される。

 今回は初心者向けだったみたいで、銅色のメダルだった。

 ここではこれを集めていく方式なのだろうか。


「このクエストはまた挑戦できるぜ。次はウルトラハードモードになるけどな。その後はナイトメアモードも待ってるぜ」


 何その怖い名前のモードは。


 今まで何処に隠れていたのか、壁の隙間からラナ達が出てくる。

 本当に何処に隠れてんだよ。


「いやあ、遅かったね、君達。私達なんか、あっという間にクエストコンプリートしてほら、このメダルの色!どう?どう?」

「ラナ、恥ずかしいわよ」


 ラナ達は僕らより早くクエストを終えてメダルを貰っていたようだ。

 首から提げているメダルは銀色に輝いていた。


「途中から冒険者モードに切り替わった時は正直焦ったわ。でも、3人の息を合わせて苦難を乗り越えたわ!」

「そ、そう。僕も大概楽しんでるよなって思ったけど、ラナ達は更に輪を掛けて満喫してるね」

「達は要らないわよ。全力で楽しんでるのはラナだけだから」


 まあ、概ね、全員思っていたよりは、来てよかったと感じていたと思う。


 さあ、お待ちかねのダンジョンだ!


 通路の真ん中を進むと「闇と破滅のダンジョン入口」と書かれた部屋があった。


 気のせいか、子供向けにしては名前が強烈なような。


 入り口には説明書きがあって、そこには中での注意が書いてあった。

 中にいる魔物は本物そっくりに作られているらしい。

 だからといって本物の剣や魔法で実際に攻撃しないようにと注意があった。

 マナ弾が撃てる人は魔物に当てると倒せるらしい。

 ただし、本当に生き絶える訳ではなく、やられたフリをしているだけだから、そのまま放っておいて欲しいのだという。

 どういう意味だ?


 マナ弾が使えない人は入り口で配られる柔らかな素材の「なんちゃって剣」で斬ると、これまた倒れたフリをするので、次の魔物に向かって欲しいのだそうだ。

 やっぱり意味がわからん。

 魔物は本物そっくりじゃなくて本物なのか?


「これは大丈夫なところなんだろうか」

「この説明を見る限りでは、平和そうだからいいんじゃないの?」


 念のため全員なんちゃって剣を持ってダンジョンの中に足を踏み入れる。

 部屋、じゃなくてダンジョンの中は照明、じゃなくて明かりとして松明、に似た形の光る何かで薄暗く照らされていて、あまり奥の方は見えない。


 最初は普通の通路の壁に岩の絵が描かれていただけだったけど、奥に進んでいくと段々と本物の岩が置かれ始めていて中々に凝っていた。


「リ、リン兄さん。裾に捕まっていい?」

「うん、いいよ、ってラナとレティも捕まるの?」

「だって怖いじゃない」

「暗いのは苦手なのよ」

「フィアも捕まっていいよ?」

「…………」


 何か言ってよ。怖いよ。

 思い切ってみたけど、言うんじゃなかった。

 お、ブロンは平気そうだね。

 先頭を堂々と歩いてる。


 ぴちょんぴちょんと天井の岩から水が垂れてくる。

 凝ってるな。

 いつの間にか松明風の明かりは無くなって、ヒカリゴケのような物が辺りを照らしていた。

 目が慣れたのかこのヒカリゴケが明るいのか、さっきより明るく感じて来た。


「あ、あれ!あの岩の陰に何か居ない?」

「居るわね。耳が長いからなんとかウサギじゃない?」


 確かに少し前の方の岩陰からウサギのような耳だけがのぞいている。


「えっと、みんな一応剣を構えておいてね。僕が横から回り込んでそっちに追いやってみるよ」

「わかったわ。気を付けてね」


 気を付ける必要がある場面なんだろうか。

 でも、異様な緊張感があるな。


 そっと岩の横に回って、覗き込む。

 居た。確かにウサギだ。クロモリウサギだ。

 さっきのアルメルかクロモリか判別出来ないぬいぐるみじゃない。

 ちゃんとクロモリウサギと見てわかる。

 いや、これ本物だよ。

 耳動いてるし。

 そもそも、追いやるって、動くの前提じゃないか。


 完全に後ろに回ってから、声を出してみる。


「わっ!」


 ビクッと驚いたクロモリウサギは跳ね上がって、みんなの方に走っていった。


「来た!どうしよう、こんな剣で倒せるの?」

「やるしかないわよ!えいっ!」


 レティが振ったなんちゃって剣がクロモリウサギに当たると「え?」と言う顔をクロモリウサギがしたかと思うと、キョロキョロと周りを見渡し、もう一度レティの持つ剣をじっと見つめた。

 そして、よいしょ、と言う掛け声が聞こえてくるような動きで寝転び、両手を上げて目を閉じてしまった。


「………」

「………」

「あ、倒したって事ね」

「「「ああ」」」


 え?何?魔物が演じてくれてるの?

 ある意味凄くないか?

 しかも、魔物が魔物役してるんだ。

 そりゃそっくりだ。

 何を言ってるんだ僕は。


 まあ、なんだか、ルールというか、法則というか、分かってきたから、楽しめそうかな。


 むしろこの後、本物のクエストが出来るか心配になってきたよ。

 少なくともクロモリウサギはもう狩れないと思う。



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