第四十三話 休日
シャッハ第二回戦はリーカとクリスのいるチームAとだ。
まだ、さっきの作戦は知られていないし、雷野郎にも結果的には教えていないから、また同じ事が出来そうだ。
チームDのみんなにも戦いに慣れて欲しいから丁度いい。
リーカとクリス達がどんな戦法でくるか分からないけど、何が起きても僕が上手くサポートして、このチームで勝ちに行く!
今度は第1競技室のB3出入口から部屋に入る。
第2競技室は壁に描かれた絵が街並みを表していたけど、ここは森の中を想定しているらしい。
壁に木々の絵が描いてあった。
数分歩いた所でチームAと鉢合わせになった。
お互い身構えて、臨戦態勢をとる。
「さっきのやり方で行こう。相手は5人固まってるから、奇襲は考えなくていい」
「分かった。ナイトのみんな!この僕を守ってくれ!」
えええ!?ロルフは何でそこで変な演技を入れるのさ。
バレてないかな?
「おい、チームDのヤツ、キングが誰かバレバレだぜ。あの真ん中に囲んでるヤツを倒せば勝ちだ」
「ええ?リーンハルト君があんな下手な演技させるかな。あ、でもそう思わせておいて、という裏の裏を突いた作戦かも」
ああああ。そんな作戦じゃないです。
ロルフの勝手な暴走です。
これは上手くいかないかな。
「あの男子を狙え!一斉射撃だ!あれを倒せば勝ちだぞ!」
ええっ?!それでいいのか、チームA。
もっとこう、やり方あるんじゃないのかな。
しかも、ご丁寧に4人しか撃ってこないし。
それじゃあ、誰がクイーンか教えているようなものだよ?
それとも、そういう引っ掛けで実はあれがキングだったりして。
まあとにかくあの4つに全て当たってみれば分かる。
1発目がキングでした………。
そして、2発目から4発目は弾いたので全員ナイトです。
もうちょっと考えようよ。
「うわっ、弾かれた!私のポイント減っちゃったー!」
そういう情報も漏らしちゃってるし。
まあ、2発目以降は増えていないからバレてるんだけど。
そして、クリスが普通にキングだったよ。
クイーンはリーカだ。
「あ、ねぇちょっと待って、みんなまだ撃たない方がいいよ。だって、リーンハルト君が居るんだよ?さっき全員の弾に当たって何かしたんだよ」
「そんな事を言っても、あのキングに当てれば勝ちなんだから、当てれば良いんだよ!当てれば!」
おお、リーカは分かってるね。
他の人達はロルフの下手な演技につられてるね。
「リーカがクイーンだ!あの撃ってこない女子以外を狙え!」
「チームDはあの男子がキングなんだ!あれを倒せば勝てる!撃てぇ!」
ああ、また撃つのね。
キングに当たると退場になるからそれだけ避けて他は弾かせてもらう。
キングの弾はロルフに当たってしまう。
ああ、僕が弾くと思っていたのに、急に避けたからかな。
「当たった!一発キングに当たった!」
「ああ!退場だ」
「私も」
「僕もだ」
敵のナイトはクイーンの僕に2回ずつ当ててしまったから退場だ。
これで、チームAはキングとクイーンだけになる。
どっちを狙おうか。まあキングだよな。
「みんなクリスがキングだから一斉に狙って!」
「あ、ちょっと無理」
「うん、ダメだな」
「出来ませんわね」
「そうですね。王子は流石に撃てないですね」
えええ?ここでこういう効果があるの?
その為のキング人選なの?
ずるいなぁ。
じゃあ、リーカを狙うか。
でもなぁ。ティアナしか削れないし。
「ティアナ。女子を狙って」
「え、あ、はい。分かりました」
ああ、もう!
避けられてる!
そんなに名前呼びは嫌かな。
僕だから?
ただのチームメイトなのに、何、急に馴れ馴れしく呼んでるの?とか思われてるんだよ、これ。
2ポイントを持っているベルシュにマナ弾を当てて、僕自身のポイントを回復する。
クリスがロルフを狙ってくるのを防ぎながら、僕がポイントを減らす度にベルシュに当てて回復するのを繰り返す。
その間に何とかティアナがリーカに2回当てて試合終了となった。
色々と納得のいかない試合だった。
絶対こういう所がこの国の弱さの原因なんだよ。
授業初日は何とか無事終わった、と思う。
やり直せるならやり直したい事もあるけど、まあ、授業も面白かったしクラスメイトとも仲良くなれたし。
ああああ、そうだった。ティアナがあれから話してくれなくなったのは明日何としても挽回したい。
「ただいま〜」
「おっ帰りぃ〜、ご主人!お姉様ズが今か今かとご主人の事を待ってたわよ!」
「誰がお姉様ズよ。リン………おかえり……うう」
「んもう、フィアったら、さっきはご主人が帰ってきたら、大きな声でおかえりって言うって話してたじゃない。恥ずかしがり屋さんだね!」
「リン兄さん、おかえりなさい」
「にいちゃんおかえり〜」
ん?何か違和感が?
フィアが珍しく恥じらっているからか?
「あ、あの、リン兄さん。お茶淹れますね」
んんん?あれはマルモだよな?
あんな感じだったっけ?
「にいちゃん、にいちゃん!マルモはね。また夢を見たんだって。にいちゃんがキレイなお姉さんとどっかに行っちゃうから、マルモが行かないでって言ったら、にいちゃんが子供は連れていけないよって。そういう夢」
何だその夢は。
キレイなお姉さんって言い方だと、誰か分からない人なのかな?
すると家族以外のお姉さんと何処かに行こうとするのか。
それをマルモが引き止めようとしたら、子供はダメだと。
僕も子供じゃないかよ!
いや、夢だしね?
でも受験の時も結構信じたから、これも何かの予兆みたいなものに思えてならない。
ああ、それが違和感の正体だ。
マルモが頑張って大人っぽい話し方をしてたんだね。
リン兄さんとか普段言ったことないよね。
でも、おもしろ、、、可愛いからそのままにしておこう。
キレイなお姉さんか、誰だろうな。
フリーデの事かな?
それとも、まだ会った事がない人?
「んんん。おほんおほん。ご主人〜?そのキレイなお姉様ならここにいますわよ?」
「誰なのさ、その話し方は。まあ、信じるにしてもいつの事か分からないし、その時になったら状況もわかるでしょ?」
「むー。ちょっとキレイなお姉さんにワクワクしてない?」
「いや、してないよ。ここに3人もいるしね」
「ほう、そういう事言うようになったのね。リンくんは。学校で何を学んできてるのよ」
ああ、言葉選びを間違えた。
お、フィアが聞いてないフリをしてるけど、耳がピクピク動いている。
お姉さんについていくのが気になる?
それとも、僕がフィアの事をキレイなお姉さんと呼んだのが気になる?
「ジロジロ見ないで欲しいのだけど。そして、誰とでも何処へとでも行ってしまいなさい」
怖い。
そして、相変わらず仲良くなれない。
そして、こういう時いつもラナはニヤニヤしている。
「そうそう!今日ギルド長から転勤祝いだってくれたのよ。王都冒険者村のチケット」
「何それ。大体、王都なのか村なのか」
「あ、それクエスト中に知り合ったパーティが話してたわよ。村というより館みたいよ。その館の中で冒険者の体験ができるんですって。魔物の形をした的にボールをぶつけたり、討伐部位を採取するゲームがあったり」
「それは果たして面白いのかな?」
それにいつも本物でやってるものなんじゃないのかな。
お金を出してわざわざ体験するのか。
「結構人気スポットなのよ?ダンジョン型宝探しって言うのが本格的で休みの日にはかなり並ぶみたいよ?」
「へぇ、ダンジョン型ねぇ。この辺にはダンジョンって本物も無いもんね。それなら僕もやってみたいかも」
「お、行く気出てきたわね。よし、早速行こう!」
「いや、もう夕方だよ。毎日学校があるし、今度の休みの日に朝から行く方が良くない?」
「リンくんも結構乗り気になってるのね」
いいじゃないのさ。
ダンジョン型。どんなのか知らない物ってワクワクするでしょ?
早く行ってみたいけど、僕には学校がある。
こっちはこっちで楽しみだから、休みの日までは我慢だ。
学校での毎日は楽しく過ごす事が出来た。
授業は知らない事ばかり出て来て勉強になったし、マナ育は結局シャッハの作戦をクラスみんなに教えて、どのチームも情報が一番というのを理解してもらえたし。
ただ、フリーデとクリス、ユーリアさんそして、リーカの仲を取り持って、放課後に何処かで食事をする、というのが中々出来ないでいる。
王女と王子というのは思いの外用事があるらしく、予定が開かなかったからだ。
どうにかして、達成したいものだ。
そして!待ちに待った休みの日!
朝早く起きてお弁当も作った!
料理スキル全開で作ったから味は保証付き!
ストレージに入れておいたから、暑さで痛む事も無いだろうしね。
あれ?みんな起きてないの?
ほら、起きて!着替えて!もう行くよ!
「んー。おはよ。早いわね、何処行くの?」
「王都村だよ!早く!」
「ああ、王都冒険者村ね。それだと本格的に何を表してるのか分からなくなるわよ」
全員起きてくるのに一時間近く掛かった。
もう!早くしないと混んじゃうよ!
「思いの外ご主人が一番ノリノリね。はいはい、引っ張らなくても行くから、ちょっ、そんな、グイグイしたら、裾伸びる」
「もうそろそろ着くはずよ。あ、あれそうじゃない?」
見えてきた!王都村!
冒険村だっけ?
名前なんてこの際どうでもいい。
早く中に入ろう!
「こう、なんて言うか。建物の外観は普通よね」
「普通だわ」
「そ、そうね、町に溶け込んでいると言うか、区別つかないと言うか」
そう言われれば外の見た目は良くある建物だな。
ここはギルド会館です、と言われても信じる人は多いだろう。
入口だけは看板が立て掛けてあって、ここがお目当ての建物だと思い出させてくれている。
「ようこそ!王都冒険者村へ!
ここが冒険の始まりの村!」
ああ、そういう意味で村なのか。
さて、どんな村なのかな?
入口に入ると、学園にあった券売機に似た箱があった。
ここで、入場券を購入するらしい。
王都冒険者村券売機
大人 300フォルク
小人 50フォルク
高齢者 100フォルク
冒険者 1000フォルク
団体 30人以上で一人100フォルク
皆んなの分は小人でいいのかな?
冒険者って大人より高いじゃないか。
この料金体系で、誰が私は冒険者ですって申告するんだろう。
「冒険者5人ね」
「え?小人じゃないの?」
「ここ、冒険者チェックがあるわよ?あのゲートでマナ紋を調べて冒険者登録してるか分かっちゃうのよ」
出たな、マナモン!
可愛い名前の割に活躍の幅が広いな。
それにしても高いな冒険者料金。
5000フォルクを入れて5人分の入場券を購入する。
それぞれのウィンドウに入場券が表示されたのを確認して、いざ!入場ゲートをくぐる。
当然、一番高い料金を払ってるから、冒険者チェックも問題なくすんなりゲートはくぐれた。
ゲートはくぐったけど、何もない。
ただの通路だ。
ここから左に行くと、ギルドエリア、右なら、採取エリアだ。
そして、真ん中の通路を進むとダンジョンエリアになる。
どれから行こう。
いきなりダンジョンに行く?
それとも順を追って進む?
どうしょっかあ。
「あ、初めての人はギルドで登録するところからだって。本物と同じなのね」
そんなの実際に体験済みだから飛ばせないの?
ま、まあいい。
焦るなって事だ。
ささっと登録を済ませて、早くダンジョンに行こう。
それが既に焦ってるって?
左の通路を進むと、「冒険者ギルド」と書かれた扉が現れる。
扉?じゃないな。大人の腰の高さにしか戸は付いてなくて、押して開いたら後は自動で閉まってくれる。
バネで戻る仕組みかな?
スイングドアとか言う奴だ。
何でこんなのが付いてるんだ?
ギルドの中は木の壁、木の床、カウンターも木製で、物語の挿絵で良く描かれているような、昔のバーのようなイメージだ。
中にいる人は一般のお客もいるけど、怖い顔の如何にも冒険者っぽい人達も居た。
多分、ここのスタッフか何かだろう。
カウンターに行くと、男性スタッフがダルそうに座っていた。
「んん?何しに来た?ここは子供の来るところじゃないぞ?」
いや、子供が来る所だよね。
[修正]チケットを6人分貰った、というのを一人分にし、チケット購入も残り5人分に修正しました。




