第四十一話 授業開始
今日から授業が始まる。
楽しみだ。
科目は試験でやったのと同じものだ。
どんな内容を教えてくれるのだろう。
朝からワクワクが止まらない。
家を出るときにフィアに「帰ってきたら内容を教えなさいよ」と言われてるので、フィアの為にもしっかりと授業を受けなければ!
「お、おはよう。リ、リーンハルト。こ、これが学生の挨拶であっているかしら?朝、家の者に聞いたのですわ」
「おはようフリーデ。あってるよ。今日から授業だね!楽しみだね!」
「え、ええ。そうですわね」
(お、おは、よ)
「おはよう。クリスはもう少し声を張るといいと思うよ」
もう僕には慣れたと思ったんだけどな。
周りに緊張してるだけとか?
リーカはもう来ていて、目が合ったから軽く手を挙げて朝の挨拶をしたら、何?と言う顔をされた。
何でいつも彼女には伝わらないんだろう。
1時間目はフォルクヴァルツ語だ!
昔の詩集を読んで美しい言い回しを学んだり、勇者物語から一文を引用して、この時の主人公が話している相手の気持ちをみんなで考えたりした。
僕が好きなラダマイア冒険記も題材にあった。
「いやあ。面白かったね。あの賢者様の言葉にはあんな意味があったなんて、今まで読んでいて気がつかなかったよ。やっぱり賢者様は只者では無い!」
「今の授業でそこまで盛り上がれるのは羨ましいですわ」
「勇者こそが至高」
良かった。クリスが普通に話してくれた。
でも言っている内容はよく分からない。
賢者様こそ究極だよ。
その後も算術や歴史、マナ学、共通語などいくら聞いても飽きない授業が続いた。
お昼になると食事を摂るために長めの休憩時間が設けられている。
みんな家からパンを持って来ていたり、学園内にある食堂に行って食べるみたいだ。
おお、そうだ!昨日のあのメンバーを誘って食堂でお昼を食べると言うのはどうだろう。
これは名案だ!
今日こそみんなが仲良くなれるように頑張らないとね。
「フリーデ、クリス。お昼に行かない?リーカとあと昨日の護衛の人も誘ってさ」
「いいですわね!行きましょう!ユーリアに声をかけて来ますわ」
「あ、じゃあ僕はリーカに聞いてみるよ」
リーカはまだいるかな。
パンだったら誘えないか。
「リーカ、お昼は持って来てないかな?良ければ昨日の人達と一緒に食事に行かない?」
「ガーン!そんなあ。今日は一人で食事だと覚悟してたからパンを持ってきてしまいましたあ」
「あ、無理しなくていいよ。明日また誘うから」
「ダメですぅ!今日一日遅れが出ると私一人だけ除け者になるじゃないですかぁ!明日になったら私の知らない話で盛り上がるんだー!」
どうしろと。
この元気を友達作りに活かせばいいのに。
「パンはお家に帰ってから食べる事にして、今は一緒に行く?」
「はいぃ!付いていきます!何処までも!」
ユーリアさんも加わって5人で食堂に行く。
当然、そこに着くまでに会話らしい会話は無かった。
さっきまで普通に会話してたじゃないか。
友達として集まると緊張するみたい。
その違いがよく分からない。
食堂は先にメニューを選んで、支払いまでをここでしてしまう制度のようだ。
「券売機」と書かれた箱で注文するらしい。
何にしよう。
えっとマウルタッシェンのグラタンにザウワーブラーテンとクネーデル。あとはシュパーゲルかな。
この国の人は大抵お昼を大量に食べる。
だから、昼のメニューにも色々な種類の料理が用意されている。
僕だってこの歳だけど、きっちり食べるぞ。
券売機に書かれたメニューの料金を入れて食べたい物のボタンを押す。
おお!ウィンドウが浮かんだ!
王立学園食堂
投入額:1000フォルク
注文1:マウルタッシェンのグラタン 350フォルク
[注文する]
なるほど、図書館と同じ感じなんだね。
欲しいメニューを全部選んだら注文をする。
これだけでもう、奥の厨房に注文が届いているらしい。
便利だ。
こういう仕組みってどうやってるんだろう。
学校でこれも勉強できるのかな。
料理が出来上がると別のウィンドウが開く。
王立学園食堂
料理ができました
注文番号:25
カウンターに行くと僕が頼んだ料理が並んでいる。
そこにある装置に手をかざすと頼んだ人だと判定されて、料理を受け取ることができる。
みんなも思い思いの料理を頼むと、一つのテーブルを囲んで食事を摂った。
会話は無かったけど……。
焦らない焦らない。
まだ始まったばかりだ。
午後はマナ育の時間だ。
マナ育というのは、どうやら実習の一種で、実際にマナを使った競技などをするみたいだ。
「マナ育では基本的にはシャッハをする事になる。この競技でマナの扱い方やマナの感知能力を鍛えていくぞ!」
シャッハというのは5対5で行うマナを使った遭遇戦を模したゲームだ。
ベゲークヌンク・ゲフェヒトというのが正式名称らしくそのまま遭遇戦という名前らしい。
だけどシャッハという誰かが呼んだ呼び名の方が定着して、今ではこの名前も公式に認められたのだとか。
「みんなマナ弾は出せるな。これだ」
先生が手を前に出し、掌を上に向けるとその上にマナで出来た玉が浮かび上がる。
なんだこれ?こんなの作った事ないよ?
でも、みんな普通に出してる。
知らないの僕だけか。
どうやって出すんだ?
出ろ!ほい!ぐおー!
ゼエハア、ダメだ。みんな出来るのに僕だけなんで?
もしかしてステータス・ウィンドウに付いている機能なのかな。
検索してみよう。
マナ弾SLv1
マナの弾を作り、放出する事が出来る。
マナを離れた相手に受け渡したり、簡単な情報を載せることで無音での合図に使われる。
ステータス・ウィンドウの付属機能。
なるほどね。
だから僕には出ないのか。
でも、これを作っておけば問題無し!
他の窓無しの人にとってはこういう事でも苦労するんだな。
「このマナ弾を当てると、、、まあ、何も起きないな。ほら、こうやって当ててもなんともないだろ?」
「うわっ、あ、はい、ちょっと眩しいかな?」
「ああ、顔に当てると眩しいな。だからお前らは顔には当てるなよ?」
ああ、これ、叙勲式で国王が僕に当ててたヤツだ。
まったく、国王は行動が子供っぽいんだよ。
「それでな、あとはこれを付けるんだ」
腕に付けるリストバンドのような物がみんなに配られる。
左手に付けてみる。
バンドには一箇所装置のような物が付いていて、そこにはボタンが一つだけ付いていた。
ボタンを押すとウィンドウが浮かび上がる。
シャッハ
状況:待機
役:ナイト
ポイント:2pt
何だか分からん。
「今は全員ナイトと出ていると思う。それが役の一つだ。他にキングとクイーンという役がある。このゲームはキング役を倒すか、逆にキング以外を全て倒すと勝ちになる。ポイントは2ポイントと出てるな?ナイトとクイーンは試合開始時には2ポイントを持って始まる。キングだけ3ポイントで開始だ」
「あ、さっきのマナ弾を当ててポイントを減らすんですね」
「そうだ。マナ弾が当たるとこのバンドが反応してポイントが1減る。0になれば退場だ。やってみると分かりやすいな。ここの3人とこっちの3人、前に出てみろ」
6人が選ばれて前に出る。
あ、その中にリーカとクリスがいた。
男子の2人がキング、そしてリーカと別の女子がクイーンに選ばれる。
先生が待っている装置でバンドに役の設定をするようだ。
そして、王子のクリスが何故かナイトになった。
先生、そこはクリスを王にしておいた方がみんなも分かりやすくないかな?
「ナイトのお前、マナ弾でこっちのナイトに当ててみろ」
先生がクリスにやらせる。
何故か周りがザワザワし始める。
どうしたんだ?
クリスがマナ弾をもう1人のナイトに当てる。
「あ、眩しい!えっと、おお、本当に1ポイント減ってるぞ!」
当てられたナイトがそう状況を説明する。
なるほどね。こうやってポイントを減らしていく訳か。
「今度はクイーンに当ててみろ」
なんで先生がクリスに言う度に毎回ざわつくのさ。
クリスは言われた通りにクイーン役のリーカにマナ弾を当てる、と思っていたらポヨンとマナ弾が弾かれ消えてしまった。
リーカはマナを弾くスキルでもあるの?
「ナイトがクイーンに攻撃をしても、こうやって弾かれてしまう。今当てたナイト。ポイントはどうなってる?」
「あ、ああ、1ポイント減ってる」
「そう言う事だ。ナイトはクイーンに攻撃しても弾かれ、逆に自分のポイントを失ってしまう。次にクイーンのお前、このナイトにマナ弾を当てろ」
「は、はい。えっと王子、行きますね」
クイーン役のリーカが王子のナイト役のクリスにマナ弾を当てる。
少しややこしい。
「あ、え?2ポイントになってる」
「そうだ、クイーンは回復役だ。マナ弾を当てると相手のポイントを1増やす。もう一度当ててみろ」
「は、はい!えいっ」
リーカが放ったマナ弾はクリスに当たると、またポヨンと弾かれてしまう。
「ナイト役の最大ポイント、2ポイントの状態でクイーンがマナ弾を当てても弾かれてしまう。そして、その場合は放ったクイーンが回復する事になる」
「はい!そのクイーンが2ポイントだったらどうなるんですか?」
「その場合はもう何も起きない。無駄弾だな。あとはキングだがその役は誰に対しても攻撃が効く。ナイトと違ってクイーンを1ポイント減らす事が出来るぞ」
ややこしいルールだな。
ナイトはクイーン以外を攻撃できて、クイーンに攻撃すると自滅する。
クイーンは回復しか出来ない。
キングは全員に攻撃出来る。
だな。
「やってみるのが一番理解が早い!丁度20人いるから4チーム作れるな。この5人、ここの5人、それと、ここが5人いるな、あとは残りで4チームだ。よし!2チームずつで試合をするぞ!まずは、役を5人で話し合って決めろ」
先生が有無を言わせずチーム分けをしてしまった。
文句が出る前に役決めの時間にしてしまい、誰もチーム分けに対して抗議が出来なかった。
割とこの先生やるのかもしれない。
しかし、知り合いとは見事に別になってしまった。
さっき側にいたリーカとクリスはチームAで一緒だ。
フリーデはチームBで、ユーリアさんとあの雷野郎はチームCだった。
別に雷野郎は知り合いじゃないな。
僕はチームDだ。
知らない人ばかり。上手く話せるかな。
「みんなよろしく」
「う、うん、よろしく」
男子は僕ともう1人。女子3人のチームだ。
「役決めどうしようか」
「やっぱり、ロルフ君がキングかな?」
「クイーンは貴族のミューエさんかバウムガルトさんがいいと思うけど、2人はどうかな?」
「わ、私はクイーンなんて似合いませんので、バウムガルトさんどうぞ」
「そう?じゃあ、わたくしが」
やはりみんな勘違いしてるんだな。
最初だし任せようかとも思ったけど、負けるのは悔しいし口出ししようかな。
「あのさ。みんな初戦は気持ちよく勝ってみない?」
多分、次の試合では他のチームにも真似される。
でも、せっかく勝敗が決まるなら勝ちに行きたい。
「君は飛び級の。いいんだよ。そんなに頑張らなくても、ちゃんと僕達はチームの仲間として受け入れているよ。そうだよねみんな」
「ええ、そうです。貴族のわたくしが責任を持ってこのチームを勝たせますから、あなたは従っていれば大丈夫ですよ?」
「か、かわいいです。と、歳上には興味ないですか?」
一人だけ歳下だから、功を焦っていると思われてるんだな。
まあ、仕方ない。
最後のミューエさんと言う人はウチに居る誰かさんと発言が似ていて身の危機を感じる。
「ううん。今のやり方だと負けるかもしれないよ。僕の作戦に乗ってみないかな。戦いならここに居る誰よりも経験者だと思うよ」
「はいはい。仕方ないわね。バウムガルトさん、ミューエさん、ここはこの子の言う事をやってみます?」
「平民の子のわがままを聴くのも貴族の務めですからね。いいでしょう、任せますわ」
「か、可愛い男子のおねだりを断れる人はいません。お姉さん、なんでも言う事聞いちゃいます」
やっぱり、やめれば良かったかな。
残りの男子、ロルフ君?とやらも賛成して、僕発案の作戦会議が始まった。




