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第三十六話 合格発表

 とうとう合格結果が張り出されたらしい。


 ダ、ダメだ、ドキドキし過ぎて、たまに勝手に戦闘モードに切り替わって周りがゆっくりになったり戻ったりしてる!

 ラナが話しかけて来てるけど、「ごおしゅ………じ…ん……」とかなって何言ってるか分かんない。


 深呼吸、深呼吸!

 すううううううう、うぐぅ、ぐ、ぐるじい。


「はああ、何やってるのよ。神の勲章を持つ男でしょ?ほら!行って、来な、さい!」


 フィアに背中をバシバシバシと叩かれて押し出される。


「う、うん!見て来る!」


 あれ、何だかドキドキが無くなってる。

 フィアが何か魔法でも使った?

 でも、これで落ち着いて見れるよ、ありがとう。


 受験番号はM00124だ。


 ああ、こっちは剣術学科だった。

 ここはいいや、もう一つの紙を見に行こう。

 ああああ、見つけちゃった。

 見ないようにしてたのに目の端に入っちゃったよ。

 だってM00124だけが剣術学科の紙の一番上に一際大きく書いてあったからどうしても気付いてしまった。

 なんで?嫌がらせ?


 ま、まあ、いい。こっちは前哨戦だ!

 少なくともこの学園に通えるのは決まったから、クロに頼まれた事はやれるようになった。

 あとは、あっちだ!


 じわじわと魔法学科の合格発表の紙に近づく。

 ああ、羊皮紙なんだ。

 いや、それはどうでもいい。

 一番上には、、、書いてないか。

 当たり前か。


 上から見て行くけど、無い、無い、えええっ無いよ?!

 あ、受験番号順か。

 じゃあ一番下だ。

 一気に一番下を見る。


 ・

 ・

 ・

 M00115

 M00118

 M00121

 M00124

 以上


 あった!あったよ!あったー!

 よ、よかったあ。

 え?ホント?

 番号これだっけ?

 受験票と見比べる。

 Mの1・2・4。合ってる!


 振り返りみんなに向かって、笑顔で頭の上でマルを作る。

 ワアッと破顔して喜んでみんなで抱き合っていた。

 しまったあ!あっちに戻ってから受かったって言えばあれに混ざれたのに!

 もう一度やり直しをお願いしたい!




 とにかくこれで、あの卑怯な手しか使わない先生の所に行かなくて済む。

 早速入学手続きをしに事務所に向かう。


「合格おめでとうございます。ではこちらに必要事項をお書き下さい。こちらには保護者の方、ご本人にご記入いただきたいのですが、保護者の方は本日いらっしゃっていますか?」

「あ、はい。レティ!ちょっといいかな?これ書いて欲しいんだけど」

「はいはい。ここに私が書けばいいの?えっとレティシア・バルシュミーデっと、あとは、職業は王国1等監査官と王国公務員1種コンシェルジュでしょ。勤務地は王立冒険者活動支援事業センター王都本庁、これでいいかな」


 あ、そうか、王都に異動してきたから、勤務地も王都になるのか。

 あ、ここ記入漏れだ。


「レティ、年齢、書き忘れてるよ?」

「うぐ。ちょっとは気を使いなさいよ。21と」

「あれ?レティって20歳じゃなかったっけ。いつ誕生日迎えたの?お祝いしなくちゃ」

「名前と年齢をセットにしないでっ!リンくんが軍に行ってたときよ。それに祝わなくていいから。祝うと本当に歳取っちゃうから」

「?祝わなくても歳は取るよ?」


 羊皮紙に穴が空くんじゃないかと思うくらいガリガリと21の文字を書いていた。

 その後、僕も名前や住んでいる所を書いて入学手続きは無事終わった。

 入学金は金貨2枚に大銀貨5枚、つまり25万フォルクだ!

 た、高い。

 それに授業料は年間で金貨5枚もするし、施設費とやらの費用も一年に大銀貨4枚、それ以外にも金貨1〜2枚分は必要らしい。

 これ、年に大金貨1枚くらい掛かるんじゃないの?


 勲章の報奨金がまだ残ってるから払えなくはないけど、こんなに掛かるんならしっかり勉強しないともったいない。


 受験を申し込んだ時よりもっと多い資料が入った袋をもらう。

 何が入ってるんだ?と思ったら制服とか鞄とかのパンフレットが大部分を占めていた。


 そうか、入学の時にはこういう物も揃えないと行けないのか。

 自分で稼いだお金で払えるから良いけど、他の子の親は大変そうだ。

 貴族の家ならホイホイお金を出せるんだろうけど。


「リーンハルトくん!合格してたんですね!おめでとう!私も合格してました!あ!どっちでした?魔法?剣術?ってその笑顔を見ればわかりますよね!」

「やあ、おめでとう、リーカ。無事、同級生になれたよ」


 ビキッ


 え?何?今の音。

 後ろから?


「ほおう?ご主人ったら、もうこんな可愛い女子と仲良くなっちゃってるのねぇ」

「私最近相手にされてないと感じてたのは気のせいじゃなかったのね。やっぱり若い子なの?1つ歳を取ったせいなの?」


 誤解だ。

 いや、仲良くなったのは事実だけど、友達になっただけだし。

 それがたまたま女子だっただけだし。


「あ、リーンハルトくんのご家族?どうも、はじめまして、ウルリーカ・クルルと言います。試験の時はすごく良くしてくれて、あんな事されたの初めてだったからびっくりしちゃいました」


 言い方っ!!それワザと言ってる?

 ペンとインク貸しただけだよ?!

 背中にドスドスと二つの拳が突き刺さる。

 痛い痛い!

 中指だけ尖らせないで!

 仕方ないから防御だけでも最大レベルまで上げて痛みを和らげる。


「ああ、あれね!リーカがペンとインクを忘れたから貸したって言うだけの話ね。それだけだったね」

「あ、でも私もリーンハルトくんの為に私の全てを賭けて助けたからおあいこですねっ!」


 そりゃあ、試験落ちそうになったから人生が掛かってたけど、すぐにやめて良いよって合図したよね。

 そこの二人はスネを蹴らないで!

 今は痛くないけど絶対後でジンジンするよ!


「学校が始まるの、すごく楽しみ!私、リーンハルトくんと一緒に色んなことをしたいな!次は入学の時ですね!」


 かき乱すだけ乱したら行ってしまった………。

 何してくれてるのさ。


「さ、さて、僕達の家に帰ろうか?」

「リンは何人まで増やすつもりなのかしら?」

「フィアは大人しいかと思ったら急に何言うのかな!?」


 まるで僕が大勢の女子に囲まれる生活を望んでるみたいじゃないか。

 今そうなりつつあるけどさ!

 ブロンは男子だし!増やす予定はないし!


 二人、いや、三人の誤解を解きながら家に帰ろう。

 ただの友達なんだと分かってもらわないと。


「こんにちは。合格したみたいですね。おめでとうと言わせてもらいますね」


 え?誰?

 あ、えっと確か、レティ!じゃない、レクシー?だっけ。


「ど、どうも。レクシーさん、ありがとうございます」

「ふふ、良かった。名前、覚えておいてくれてた。騎士さん。次はこの学園でお会いできますね。その時は仲良くしてください、約束ですよ」

「は、はい!約束、です」


 行っちゃった……。

 え?なに?それだけ言いにここで待ってたの?

 も、もしかして僕と話す為だけに!

 ま、参ったな〜。

 あ、いや、参ったな………。


「今の時点で二人増やす予定があると言うわけね」

「違うから!今の人は違うから!道案内してくれただけだし!」

「そう。今の人は違うならさっきの子はそうなのかしら」


 うわ、怖い、フィア怖い。

 なんで?後の二人なら分かるけど、フィアは別に僕の事なんとも思ってないよね!


「学校なんだからさ!友達とか知り合いは増えるものだよ!その度にほら、妬いたりしてたら大変でしょ?」

「誰があなた相手に妬くのかしら。頭の中にメールの水塊でも詰まってるのかしら」


 よく分からないけど、今のフィアに逆らってはいけない気がする。

 そっとしておこう。


 帰り掛けに学校の制服を作りに行く。

 普通の服屋では作ってないらしく、学校用の服を専門で取り扱っているお店があるようだ。

 やっぱり男子用は種類も一つで採寸だけしたらすぐに終わってしまった。

 女子用は3種類から選べるらしい。

 全部揃えておいて、その日の気分でどれを着るか選ぶ人もいるみたいだ。


 制服、大銀貨7枚もしたよ。7万フォルク。

 ただ学校行くだけなのに、どんどんお金が吸い取られて行く。

 まだまだ取られそうで怖い。


「みんな僕が学校行きたいって言ったばかりに、たくさんお金が掛かってごめんね」

「なに言ってるのよ。ご主人が稼いだお金じゃない!自分のお金なんだから自由に使っていいのよ」


 そうは言っても王都で6人が暮らすにはお金がかかる。

 ただでさえ物価はマルネより高いし、市民税や王民税、それに家を持っているから固定資産税だって毎年かかる。

 その上、僕の学費が増えるのに僕はロクにギルドで働く事も出来ない。


 そう考えるとみんなに稼いでもらうなんて、悪い気がしてきた。


 マルブランシュ共和国の通貨ブラン貨は、フォルク貨と交換する時の割合が毎日変動するからその差額で儲からないかな?

 ブラン貨が安くなった時に大量にブラン貨に変えておいて、ブラン貨の価値が高くなった時にフォルク貨を買い戻せばいけそうだ。

 確かこの近くに周辺諸国の通貨と交換してくれるお店があった筈だ!

 後で行ってみるかな。


 それから、いろんな人からお金を出し合ってもらって、そのお金でお店を開いて、儲かったお金の一部をお金を出してもらった人に返す、と言うのはどうだろう。

 出してもらったお金を記録した羊皮紙を書いて渡しておけばそれが証拠になるし。

 一からお店を開かなくても、既にあるお店ごと買い取ってもいいかも。


 あれ?こういう知識も真実の書からのものか。

 そう考えると10歳の子供がやっちゃいけない事のように思えてきたからやめておくか。


 しばらくはレティのお給料とエルツ4人のクエストで稼ぐお金に頼るしかないのかな。

 なんだか自分が情けないやら、悔しいやら。

 そんな感じの事を帰りながらみんなに話したら、結構な勢いで怒られた。


「リンくん!君はもうちょっと自分の歳とか立場ってものを理解した方が良くないかな?私、大人なんだからこの子達全員くらい養えるわよ。コンシェルジュって結構高給なのよ?」

「あ、レティ、ずるい。私達だってお姉さんなんだからもっと頼って欲しいな。ご主人」

「リンお兄ちゃんは気にしないで!ブロンと私だってクエストやるの楽しいよ」

「うん!楽しい!」


 みんな………。ありがとう!ありがとう!


「ほら、フィアちゃんも何か言ってあげなよ。ご主人が不安がるじゃない」

「い、いいんだよ、ラナ」

「わたしは」


 フィア?


「わたしは、少し、うらやましい、わたしもリンみたいに学校に行ってみたい………」

「フィア!ごめん!僕ばっかりわがまま聞いてもらって!」

「うそよ。リンを困らせるための冗談よ。エルツ族が学校なんて行ける訳ないのだから、そんな事思いもしていないわ」


 そう、なのか?

 エルツ族ってだけで、そんなに差別されているの?

 奴隷にされてしまう、王都にも気軽に入れない。

 それに学校にさえ通えない。

 おかしい。この国は、いや、どの国だってそうだ!

 こんな考え方間違っている!


 エルツ族が魔物、いや、堕ちてしまった神様との子供だからって、僕達と何が違うっていうんだ!

 血筋がなんなんだ!

 会ったこともない何百年も昔の人の事じゃないか!


 怒ったぞ!フィアにこんな悲しい顔をさせてしまった僕自身に!

 そして、その大元凶になった、この世界のエルツ族に対する考え方に!


 王立学園を中等部から高等部に行き、それを卒業したら、騎士学校に行く。そして、王宮詰騎士団に入って、そのトップに登りつめるんだ!

 そしたら、国王に意見だって言える。

 そこで、エルツ族の事をもっと他の種族と同じ扱いにしてくれって文句を言うんだ!

 そうだ!その為に学校で色んな事を学ぶんだ!



 違う!ちがーう!

 もう騎士団員だった!

 この前、国王と口喧嘩だってしちゃってる!!

 何これ。もう学校行かなくたって、エルツ族の事を言いに行けるじゃないか。

 よし、学校はもういいから国王の所に行ってエルツ族の事を直談判しよう。


 ってそれも違った。

 学校は勇者候補を見つけるの!

 すぐ忘れるの良くない!

 情報操作スキルでメモしておこう。

 そう言えばこんなスキル作ったな。

 真実の書を読む為にお金を貯めていたっけ。

 すっかり忘れてた。

 メモを取った事を忘れる可能性がありそうで怖い。


「ご主人、さっきから、一人で百面相してて、面白いわよ」


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