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第三十五話 剣術試験

 剣術試験はまだ終わってないかな?

 何人か木剣で打ち合ってるのが見える。


「あのー。まだ試験は受けられますか?」

「何だ?遅刻か?気がたるんどるな!」

「ち、違います!さっきまで魔法学科を受けていたんです!」

「むう?両方受けるのか?変わったヤツだな。よし!これを持て!私とやるぞ!勝てば合格だ!分かりやすいだろう!がははは!」


 いきなり木剣を渡されて、この先生?と試合かよ。

 勝てば合格って、それじゃあ全員不合格なんじゃないの?


「バルテン先生!それでは他の受験生と合格条件がちがいます!みんな一撃でも入れられたら合格だったじゃないですか!」


 もう一人の先生が抗議してくれる。

 やっぱりもっと緩い条件だったのか。


「僕はそれでもいいですよ?」

「ほう、自身たっぷりだな。どおれ、お手並み拝見といこうか!とおっ!!」


 うおっ!挨拶も無しに攻撃してくんなよ!

 びっくりしたじゃないか!

 すぐに戦闘モードに切り替えたから、途中からはゆっくりに見えたけどさ。

 でも、この先生はノルド軍のアフさんよりは弱そうだ。

 あの時は同じ速度で戦っていたからな。


「ほほう、大口を叩くだけあるか。今のを避けるとはな!だかこれは避けれるかな!ふん!」


 イテッ!

 何だ!先生の手に握っていた何かを投げつけられた。

 くそ!離れていたから油断した!

 うわっ!なんか目が痛い!ヒリヒリする!


「唐辛子を粉にした物だ!痛かろう!目が開けないだろう!」


 何だこの先生は!

 さっきからずるい事ばかりしてるぞ!

 こうなったら全力でいってやる!

 先生は木剣を腰だめに構えていたから、多分胴を狙って来る筈!

 目が開かないから感でタイミングを合わせて後ろに飛ぶ。

 木剣が腹のすぐ側を通り過ぎる音を聞いたら、構わず前に飛び込む!

 木剣を体の前に構えたまま先生にぶつかる。

 よし、間合いがこれで分かった!


「うぐぅ!何をする!」


 ぶつかった勢いを殺さず先生をぐいぐい押し込む。

 真剣ならこれで相手は斬れてるんだけど、これで終わらせるつもりはない。

 先生が何かする前に攻め切る!


 木剣を押しこみ先生との距離を少しだけ開けると、身体レベルを最大に引き上げ、木剣で先生を斬り刻む!

 本気で斬ったら木剣でも真っ二つにしちゃうから、剣が先生の体に当たった瞬間に手前に引いて服だけを斬り、斬りつけた反対に抜けるように木剣を振り抜く。

 相手は本当に斬られたと感じている筈だ。


 目を閉じながら、何度も何度も繰り返し斬る!

 剣の振り始めと振り終わりだけ見ると、剣が先生を完全に通り抜けているから、周りから見ても斬ってるように見えるのだろう。

 辺りの受験生からキャーっと叫び声が上がる。


 あれ?もしかして本当に斬っちゃってたりするかな?

 見えないって結構不便だ。

 まあ、斬った手応えが無いから大丈夫でしょ。


 ふう。こんなもんかな。

 いくら剣を振っても先生に当たらなくなったので終わりにする。


 目が痛いから治しておくか。


「ヴェルフリッシングの種」


 あ、これじゃあ治んないや。


「レーベンの泉」


 これもダメ?

 そうするとツィスカさんが使っていた「リーフデの癒し」とかが効くの?

 そんなの作ってないぞ。困った。どうしよう。目が痛い。


「あ、あの。誰か、リーフデの癒しを掛けてもらえないですか?」

「「「ひぃっ」」」


 え?何?

 何かあった?


「えーっと、どなたかお願い出来ませんか?目が痛くて開けられなくて」

「あ、あの、回復しても、斬らない、ですよね」


 この声はさっき抗議してくれたもう一人の先生か。

 言っている意味がよく分からないけど、回復してくれるなら何でもいい。


「斬りませんよ。当たり前じゃないですか」

「ほ、本当ね、………リーフデの癒し」


 長い呪文の後に魔法の効果が現れて僕の目はすっかり痛みが引き見えるようになった。

 これで一安心だ。


 回復してくれた先生を見るとガクガク震えて涙目になっていた。

 どうしたんだ?

 辺りの受験生もみんな同じような状態だ。


 さっきの戦った先生を見ると仰向けに倒れていた。

 服はビリビリになってたけど、血も出ていないし、思っていた通り怪我の一つも無い。

 ああ、怪我というより、先生は恐怖のあまり気絶してしまっていたようだ。

 頭くらいは打ってるかも。

 ちょっとやり過ぎたかな。


 呼吸もしてるし、問題ないだろうと振り返ると、周りの人達が一気に後ずさる。


「あ、あの、大丈夫ですよ?この先生はビックリして倒れただけで傷一つ付いてないですから」

「そ、そうなの?でもさっきはザクザク切り刻んでいなかった?」

「そんな筈ないじゃないですか?ほら、気絶はしてるけど血だって出てないですよ?」


 もしかして、この先生を細切れにしたと思って怖がられてたの?

 あ、そりゃそうか。

 そんな事を試験でするヤツなんて僕だって怖いよ。

 いかん。

 頭に血がのぼってやり過ぎた。


 変に力を持つとこういう判断力が鈍るな。

 気を付けないとな。


「あの、ほら、敵を惑わすスキルですよ。斬られたように思わせておいて実は何も切れてない、みたいな?」

「あ、そうなの!良かったー。うちの学園に猟奇的な子が入ってくるのかと思ったわ」


 周りもみんなホッとしていた。

 なんだよ。みんなも僕がアブナイヤツだと思ってたのか。


「それで、この試験ですけど。この先生、気絶しちゃいましたから、判定はどうなるんですか?」

「ああ、それは私が責任を持ってあなたの勝ちと認めます。でも、合格かどうかは別ですからね。さっきバルテン先生は勝ったら合格と言ってましたが、それは一次試験ですから」


 これで決まる訳じゃないのか。


 とは言ってもバルテン先生は気絶したままだし、後はこの女性の先生が一人で残りの試験を全部受け持っていた。

 一人一人を見ていたら時間が足りないので、全員並んで木剣の素振りをずっとしているのを先生が見て回ったり、二人一組になってこれまたずっと打ち合ってるのを順に見たりと受験生的にはきつい試験となった。

 ちなみに僕はまだ怖がられていたのか、誰も組んでくれなかったのでずっと素振りをさせられていた。

 寂しい。


 試験が全て終わる頃にはみんな腕はパンパンになっていた。

 疲れ果てて倒れ込んでいる人もいたけど、僕はレベルが高いお陰で何ともなかった。


 さて、剣術学科の試験がも終わったし、もう帰っていいのかな?

 広い試験会場を出ると、廊下にはクルクルさんがいた。

 え?何?僕の事を待ってたの?

 って違うか。

 きっと剣術に興味でもあるんだろう。


「や、やあ、お元気ですか?」

「はあ、元気です。そんな事よりリーンハルト君!今の剣術の速さは何ですか!!と言うより魔法が使えるのに剣術もあの強さなんて、おかしくないですか!!あれですか?ズルですか?変なクスリを裏通りで仕入れたんですか?」


 この人は何を言ってるんだ?


「クルクルさんはこんな所で何してたのかな?」

「私の名前はウルリーカ・クルルです!」

「あああ!ごめんなさいごめんなさい!ウル!リーカ!さん!名前を覚えるのが究極的に下手なもので!あのよろしければリーカって呼んでもいいですか?それなら覚えられそう」


 目を見開いて口もパカっと開いている。

 これはどういう表情なんだ?


「そ、そんな!私を愛称で呼んでくれる人が現れるなんて!!いつも家名か、そこの人、とかしか呼ばれないのに!」


 これは喜ばれてるのか?それとも、嫌がられてるのか?


「えっと、そう呼んでも良いのかな?リーカ?」

「かはっ!!呼び捨て!!今日はなんて日なの!」


 これでもまだ嬉しいのか、拒絶なのか分かんないや。


「あの、ダメなら、頑張って家名を覚えるよ、ク、ククルさん?」

「ダメー!!せっかく、せっかく、愛称・呼び捨てなんて、お友達みたいな呼び方してくれたのに、変えないでー!」



 あ、呼んで良い方だったんだ。

 しかし、この人は呼び方一つで過去に何か有ったのだろうか。

 違うか、今まで呼び方に何も無かったから、今この騒ぎなんだな。


 リーカとは共に助け合った命の恩人同士として仲良くなった、んだと思う。どうだろう?

 リーカの事は愛称と呼び捨てを要求しておきながら、リーカからは「リーンハルト君」と呼ばれるし、あっちの方が年上なのに敬語だし、あまり、仲良くしてくれている感じがしない。

 まあ、この試験をお互い合格すれば晴れて同級生となるから、それからもっと仲良くなればいいと思う。

 学校の友達はもっとたくさん作りたい!

 楽しみだ!


 違ーう!

 友達を作りに学園に入ろうとしてたんじゃ無かった!

 クロに頼まれて勇者候補を見つけにきたんだった!

 危なかったー。

 思わずワクワクしてたよ。


 でも、まあ、あれだ。

 勇者候補を探すって言ったって、すぐに見つかるとも限らないし?

 仲良しを増やしておいた方が捜査もやり易くなるだろうし?

 そうそう、その為には友達とか、捜査協力者としてたくさんいた方が楽し、、、捜査も捗る筈だ!


「リーンハルト君はどちらとも受験したんですね。両方受かっていたらどちらの学科に入るんですか?」

「何を言ってるのか分からないよ。魔法学科を選んで当然じゃないか!」

「当然なんですか………。あ、でも剣術学科だけ受かってたらそちらに入るんですよね?」

「そ、そんな筈ない。そんなことになったら、あの先生だよ?こうなったら何としても魔法学科に受からないと。金か?金があれば受かるか?ああ、あんなに買い物しなきゃ良かった!」

「あ、あの、お金がいくらあっても合格には出来ないと思いますよ?」


 合格発表は3日後、中等部棟の前に張り出されるらしい。

 家に帰って来てからも、合否がどうなったのか気になって仕方ない。


「平気よ!ご主人!魔法バリバリ使えてたんでしょ?マナも有るんだし可愛いんだし合格よ!」

「姉さん、途中から姉さん視点の評価が混じっているわよ」

「筆記は問題無かったんでしょ?勉強時間は短かったけど、私の受験対策は完璧だったと思うのよ!」


 ど、どうしよう。

 筆記も不正解がすでに二つ見つかっていたんだった。

 魔法学科も剣術学科も不合格って事があり得るんじゃないの?

 そうなったら、せっかくみんなに勉強を付き合ってもらったのにごめんなさい!

 や、やっぱり残っているお金で何とかするか!?


「リンお兄ちゃん!今日ね、私、リンお兄ちゃんが学校に行って勉強してる夢を見たの!だから、受かってるんだよ!」

「夢?」

「今日、私とマルモ達とでお昼寝してたんだけど、その時にご主人の夢を見たんだって。それが学校で楽しそうに授業を受けている姿だったらしくて、マルモったら起きてすぐにお兄ちゃん受かってた!って叫んでたの。ふふふっ、ガバッで起きたらいきなり両手を上げて大声出すものだから面白かったわ」

「ううー、そこは話さなくていいよお、ラナお姉ちゃんー」


 か、可愛い。

 その光景、見たかった。

 そして、ラナはこの子達と一緒にお昼寝してるのか。


 よし!マルモが夢に見てくれたんだ、受かってるはずだよ!

 あ、でも実は剣術学科にだけ受かってたっていう夢だったりして。

 だ、大丈夫!マルモはそんな夢は見ない!


 合格発表までの3日間は何も手に付かず、結局一日中ぼうっと過ごしていた。



 そして!

 ついに来た!

 合格!

 発表!


「ドキドキドキドキ」

「それ口で言うの?」

「何か言ってないとドキドキし過ぎて気持ち悪くなってくる。ねぇレティ、合格発表って張り出されるんだよね」

「そうね。合格した人の受験番号だけが書かれた紙が貼られるのよ」


 学園の中等部棟に家族みんなで来ていた。

 一人で行くって言ったのに、どんな結果でも一緒に受け止めるのが家族だ!とラナに言われてこうなった。


「紙って羊皮紙かなー。それとも普通紙かなー」

「普通?何が普通なの?」

「受験番号って書き足したらダメかな?あ、ペン忘れた」

「そんなのダメに決まってるでしょ?もうリンくん落ち着いて!」


 中等部棟の前まで来た!

 まだ張り出されていないけど、受験生はだいぶ集まって来ていた。

 前の方にはリーカも居るのが見えた。

 あの、雷野郎もいた。当然名前は記憶の遥か彼方だ。


 前の方が騒がしくなる。

 合格結果が張り出されたらしい!



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