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第三十話 懺悔

「わたし、あなたにずっと謝りたかったの」


 謝る。フィアが?僕に?


「あなたはわたしの為に、いえわたし達の為にたくさんのことをしてくれたわ。ラナを助けて、マルモとブロンを救い、今回もわたし達を護る為に軍に入って勲章を貰うほどの働きをしてきたのでしょう?」


 そう改めて言われると、色々やってきたように思うけど、まあ、最初はフィアの笑顔が見たくて頑張っただけだし、今も家族みんなを護りたいって思っているだけだ。


「そんな風にしてくれているのに、わたしはずっとあなたに何も返せていない。ラナを、姉さんを救ってくれた時のお礼すら言えてない。わたしはリンに貰ってばかり」

「そうでも無いよ。家族の喜ぶ顔が見られたならそれはフィア達から貰ったご褒美になると思うよ。それなら毎回貰ってるから、収支はトントンだと思うな」

「まったく、もう。リンらしいわね。分かったわ、もう謝らない。わたしがリンの、、、か、家族なら、お互い一々謝ったりしないわ。だから、せめて、こう言わせて。あ、ありがと」


 顔が見えない懺悔室で良かった。

 今、僕の顔はニクロムヘビより赤くなっていると思う。

 フィアも同じかな。

 それなら顔が見えるところの方が良かったかも。

 赤くなるところは全然見せてくれないからちょっと見たかった。


「どういたしまして。フィアは僕の事を家族って思ってくれてたんだね」

「なっ!何を今更言うのかしら!わたしはもうだいぶ前からリンの事を」

「ただいまー!ご主人!フィア!あのね、すぐそこのお店のアイアシェッケが美味しそうだったの!」


 お互い照れ臭くてどうしようかと思ってたところだったから助かった。流石、主従契約を結んでるだけあって、困っているのを察知してくれたか!

 そんな訳ないか。

 でも、ようやく、フィアの気持ちが聞けた気がする。

 かなり嬉しい。

 ラナはもう少し自分の気持ちは抑えた方がいいと思う。


 今度は全員で買い物に出かけた。

 家に家具は揃っていたから、あとは掃除道具や料理道具など生活に必要な物を揃えれば良さそうだった。


 家から少し歩いてお店がたくさん並ぶアーケードに来ていた。

 キレイに切り揃えられた石畳みの左右には小さなお店が軒を連ねている。

 上を見るとガラス張りのアーケードがすっぽりと空を覆い、雨が降ってもこの中では濡れずに買い物が出来る。

 今は晴れているので、陽の光がガラスに当たってステンドガラスのようにキラキラ光ってキレイだ。

 お店は大抵はガラス窓が大きく取ってあり、中の様子がよくわかる。


 雑貨屋などは大きく戸を開けて気軽に入れるようにしているみたいだ。

 早速ラナとマルモとブロンが吸い込まれていく。


「これ!このお皿がいいと思うの!みんなでお揃いのにして!」

「わあ!かわいい!あ、ラナお姉ちゃん、こっちもかわいいよ」

「……」


 ああ、ブロンはそうでもないか、まったく興味を示していない。

 何となくついていったのを後悔している顔だ。

 まあ、まだ美味ければ皿の柄なんて気にしないお年頃だよな。

 結局、ラナとマルモ主導でどんどん食器類や鍋などが選ばれていく。

 あれ?フィアはこういうのは拘らないのかな?


「なによ。わたしに料理の事を聞いても無駄よ。わたしに塩と砂糖の区別が付くと思ってるのかしら?」


 おかしい。フィアが余りにも堂々としているから、一瞬納得しそうになったけど、それくらい区別できないのはマズイんじゃないのか?

 お店の中は大きく二分されていた。

 楽しそうに生活に必要な物を選びまくっている二人と、何にも興味を示さずただボウッと立ち尽くす二人だ。

 何だこの光景は。

 僕はどっちに付いた方がいいんだ?


「ご主人!この辺のみんな持って!ちょっと探すのに邪魔になってきたの!」


 まだ買うのか。

 お金は報奨金が残ってるからいいけど、こんなに持ちきれないって。

 あ、しまっちゃえば良いのか。


 インベントリ経由でどんどんストレージに入れてしまう。

 おお、スッキリした。


「………。ご主人?今何したの?ここにあったのどこにやったの!?捨てちゃった?」


 あ、そうか、ストレージの事はフィアにしか教えてなかったっけ。

 そういえば、スキルを作れる事や窓無しの事も皆んなにちゃんと話さないとな。

 隠し事は出来るだけしたくない。


「ちゃんと持ってるから大丈夫だよ。家に着いたら全部だすね」

「そうなの?どう見ても消え去ってるんだけど。勝手に買っちゃったから怒って遠くに投げちゃったとかは無いのよね?」

「ぶっ!僕はそんな事をするイメージがあるの?」


 それ以降は特に気にする事もなく買った物を次から次へと僕に渡してくる。

 その度にストレージに入れるけど、もう入れられる枠が一杯になってきた。


 まだ買うの?インベントリにも5個は入れておけるから、ひとまずそこに入れておいて、ストレージを急いでスキルアップグレードしておく。


 そんな事をしている側からさらに追加だよ。

 もう入れろところが無い。

 仕方ないから両手に持っておく。


「ご主人、何で急に手で持ってるの?」

「ちょ、ちょっと鍛えようかなって」

「そ、そうなの?」


 いかん。説明が面倒だ。もうここで色々説明しちゃうか。

 いやダメだ。大事な話だから家でゆっくり落ち着いて話したい。

 もう全部話す気になってるのに、まだ誤魔化してるのが心苦しい。

 懺悔室に入りたい気分だ。


 そうだ、スキルの事を話す前にステータス・ウィンドウをこの際だから作ってしまおうか。

 窓無しでも嫌われないって分かってるけど、やっぱり出来れば窓無しじゃなくなってから、スキルの事を話したいよね。


(すてーたす、うぃんどー)


 なぜか緊張する。


「すてーたすうぃんどー」 検索結果 1件


  ステータスウィンドウ SLv0


 あった。

 スキル名を指で押す。



 ステータスウィンドウSLv0


  ステータスを表示し、管理できるウィンドウ。

  通称、「窓」


  アクティブスキル

  リキャストタイム:10s

  ビルドタイム:300s

  使用SP:124M


  残SP:253M


  [戻る] [作成する]




 うおっ。何この使用SPの量は!

 最近は戦闘の為に結構作ってきたけど、それでもだいぶ溜まってきていた。

 でも、ステータスウィンドウは半分近く使わないといけないみたいだ。

 舐めてたよ、ステータスウィンドウ。


 さあ!ようやく窓無しから解放されるね!

 こんな事ならもっと早く作っていれば良かったかも。

 まあ、SP足んなかったか。


 万感の思いで「作成する」を押す。



 ステータスウィンドウSLv0


  ステータスを表示し、管理できるウィンドウ。

  通称、「窓」


  アクティブスキル

  リキャストタイム:10s

  ビルドタイム:300s

  使用SP:124M


  残SP:253M


  エラー:依存性の欠如:

  ステータスウィンドウはカーネルと競合します。


  [戻る] [作成する]



 ん?エラーってなんだ?

 いつもならこの後作成画面になるはずなのに、この表示のまま動かない。

 何度押しても、このエラーというのが表示されて作れない。

 もしかしてクロが言ってたのってこれなのか?

 大事な何かが無くなるのはステータスウィンドウの事だったのか!

 あれ?違うか。僕が死んじゃった時に選択肢の中で教会でスキルを貰ってた時からやり直す、というのを選んだ場合には、ステータスウィンドウが貰えてその代わりスキル作成スキルは無くなってしまうって言ってたから、レアスキルとステータスウィンドウは同居できないとか?

 それなら窓無しがレアスキル持ちが多いって言うのも説明が付くか。


 うう。そうか、やっぱり僕は窓無し人生は確定なんだ。

 いいんだ、ちょっと窓有りに憧れてたのにカッコつけて今の今までステータスウィンドウを作ろうともしなかったけど、結局同じだったんだよ。

 これで、どうしよっか、作っちゃおうっか、とか悩まなくていいんだ。いいんだ、、、。



 ストレージのスキルレベルが上がってまた収納スペースが増えたら、買い物のペースも急に上がった。

 僕が手持ちだったから、少しは自重してくれていたらしい。

 寧ろ我慢していた分、まだ収納できると分かったら反動で買い物の量はさっきより増えていたよ。


「ふえー。買った買ったー!こんなのエルツの王宮暮らし以来だー。ありがとね、ご主人」

「かったかったー」


 え?王宮に暮らしてたの?王女と友達だって言うのももしかして本当の事だったりするの?


「わたしは買い物なんてしないわよ。ラナとディアが王宮を抜け出して二人で買い物をしていたみたいだけど、わたしは服以外のセンスは無かったから、姉さんに全部任せていたわ」


 服以外、ね。


「何かしら。姉さんと同じ目で見ないで欲しいのだけど」


 今も基本的に真っ黒だもんな。


「ねぇ、最初に会った時はもっと明るい色の服じゃ無かった?」

「隠れてお金を稼いでいたんだから、一般人のセンスに合わせないと、目立って仕方ないじゃない。今はもうそんな事を気にする必要がないから、わたし本来の姿を見せる事ができるわ」


 真の名だったり本来の姿だったり、これはエルツ族の特徴なんだろうか、それとも、フィアのセンスの問題なんだろうか。

 このフィアの本来の姿を見る限り後者なんじゃないかと思えてくる。


「その目はやめてって」



 買ってきた掃除道具で家中を掃除をする。

 ホコリは凄かったけど、これから住む家だと思うとワクワクしながらみんな楽しそうにキレイにしていた。


「住める程度にはなったかな。後はまた気付いたら買いに行く事にしよう。それでさ、えっと、その」

「なーに?ご主人?は!部屋割りね!いいわ!私と一緒がいいなんて言い出しづらいわよね!分かってるの、分かってるの!その願い!私が叶え「姉さんうるさい」


 今だ!ラナがしょんぼりしている隙に切り出さないと!


「あ、あのさ。あ!懺悔室!懺悔室に入っていい?」

「何かわたしたちに懺悔する事があるのかしら?」

「これって、ずっと言いたかった事をみんなに言うっていうので使ってもいいんでしょ?」

「まあ、そうね。リンがその事で負い目を感じていたのなら、それを話す事が懺悔になるわ」


 僕が手前の部屋に入り、皆んなには裏から聴く側の部屋に入、れないからラナが代表で入って、後は入り口で顔を寄せている。


「いいわよ。ご主人が話したい事を何でも話していいわ」

「ど」

「ど?」

「ドキドキする」


 はあああ。って何で皆んなため息つくのさ。

 今までずっと黙ってきた事を話すんだから緊張くらいするさ!


「お、おほん。フィアにはさ、少し話した事があったけど、その、僕にはちょっと人とは違うスキルがあるんだ!だから、さっきの買い物で物がしまえたのもそのせいなんだ」


 家に着いてインベントリやストレージから買った物をドンドン出した時にも驚かれた。

 というよりあまりその事に触れられなかったから引かれてた?


「ほう、、、続け給え」

「え?それは誰の真似なの?」

「い、いいの!そういうのはサラッと流してよ」

「そう?えっとそれで、そのスキルなんだけどほんのちょっとだけレアな気もしなくもないスキルでさ。スキルを何というか、作っちゃおうっかなー的な?」


 うわああん、ダメだあ。

 可能な限りライトな感じに話したつもりだったけど、皆んな黙ってるう。


「あの、作るってどういう風に?ナイフとか使うの?」

「え?あ、ああ、窓みたいなので作るんだ。メッセージと同じ音声入力だよ」

「なるほど、、、。あれも変な窓よね。あ、そうか、あれもご主人のスキルで作ったんだ」

「そう、かな?あれは主従契約の時に勝手に作られたからよくわかんないや」


 良かった。ラナは比較的メッセージとかで耐性が付いてたか。

 フィアは?見るのが、こ、怖い。


「前振りはもういいから、早く懺悔を話しなさいよ。この体勢、ちょっときついのよ」


 んんん?

 今のが懺悔なんだけど。

 あれ?フィアにもスキル作成スキルの話はしてなかったよな。してたっけ?いや、してないよ、多分。


「今のが懺悔、です。今まで黙っててごめんなさい」

「何を言ってるのかしら?秘密がある事の何処に謝る要素があるの?リンが異様に魔法やスキルを持っていたり、以前は持っていなかった魔法が使えるようになっていた事の説明は付くようになったのはスッキリしていいけれど。それより懺悔する事は別にあるんじゃないのかしら?」


 そんな風に思ってくれるんだ。


「ねぇ、ご主人。私もご主人に私のスキルは話してないわよ。でも、それで私の事嫌いになる?」

「え?あ、そうか!嫌いになんかならないよ!」

「よ、良かったあ!ちょっとドキドキしちゃったじゃない」


 そこは自信持ってたんじゃないのか。


「でも、リンは他に懺悔する事があるようね」

「え?な、何かな」

「みんなにスキルの事を隠さずに話すというのが懺悔だったようだけど、ここにはレティがいないようだけど?」

「あ!」


 後でレティと合流した時にしっかりと懺悔させていただきます。





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