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第二十七話 叙勲の準備

 レティはまだ仕事があるからと、涙目でギルドに戻っていった。

 エルツ族の4人とカフェで話すには騒ぎそうな感じがしたのでレティの部屋で話す事になった。


「無事帰ってきてこれたね!ご主人!」

「うん。みんなも元気だった?」

「別に。あなたに心配される程弱くはないわ」

「ほう。ここでこういう態度とっちゃうのが我が妹の魅力よね!素直に再会を喜べなくて、つい突き放した言い方になっちゃうの私!」

「お姉ちゃ、姉さん!それは私の真似かしら?」


 ユルい会話が身にしみるー。

 僕は守れたよ。この家族を。みんなの笑顔を!


「リンお兄ちゃん?泣いてるの?」

「にいちゃん、どこか痛いの?」


 姉弟2人はさっきから僕の両側にへばりついて離れない。

 僕が涙目になったのを覗き込んで心配してくれている。


「ううん、違うよ。みんなとこうやって生きて会えたのが嬉しいんだ」


 守ったから、とかは口に出せない。

 そんな押し付けがましい事は心の中だけで思っていればいい。


「危なかったの?ねぇ。メッセージだとそんな話なかったじゃない!ご主人もしかして怪我とかしたの?」

「だ、大丈夫だよ!ほらこの通りに何処も怪我してないでしょ?」


 一度死んじゃったんだ。てへ。とか絶対言えない。

 家族でも秘密にしないといけない事があるのは仕方ないよね。

 んー。言った方がいいのかな。


「無事なら別にいいのよ。姉さんも焦り過ぎよ」

「そうよね。今ここに無事でいるものね」


 うっ。心が痛い。


「あ、あのさ!それで功績が認められて、今度叙勲される事になったんだ!よくわからないんだけど、カーネリアンとかベニトアイトとかの勲章が貰えるんだって!」


 死んでしまった事を隠すのが心苦しくて話を変えてしまった。


「カーネリアン様にベニトアイト様?何故、神の名で勲章を渡すのかしら」

「え?エルツ族の神様でもあるの?」

「当たり前よ!私達エルツ族の血筋でもあるのだから」

「血筋って神様の?どういう事?」

「あなた常識の話になると何も知らないのね?変な事は異様な程知ってるのに」


 フィアの説明によると、エルツ族は人族が魔物化した種族と言われているけど、実際には人族と魔物の間に生まれた子供がエルツ族の先祖と言われている。

 そして、その魔物というのは、高位のものは人の形を取っているらしい。


「魔物の名前って特徴あるでしょ?」

「クロモリとかアカガネとか?金属にも同じ名前がついてるよね」

「その辺りは長年の交配で劣化していった魔物よ。もっと強力で高位の魔物はどうかしら?」

「ああ、ギベオンベアーとか?あ、宝石の名前だ!」

「そうね。そして、ギベオンベアーは人語を話し、家を建て、村を作ると言われているわ。高位の魔物は人と言ってもいい位の知恵や知識を持つの」


 そうなんだ、ギベオンベアーってそんなにすごい魔物だったんだ。


「ここまで話せばわかるかしら。魔物というのは元々神だったものがその神格を落としてしまい、人と交わって変質してしまったものなの。神そのものが変質したものは魔族と呼ばれて、その子や孫と世代が変わる度に動物や鳥の特徴が出てきたものが魔物と呼ばれるようになったのよ」


 神様の中には元々鷹の化身とか、象の神とか動物や鳥などの神もいる。

 それが世代が重なる内に強く出てきて野生化してしまうのだという。

 その魔物化した者が更に劣化してクロモリウサギのような動物寄りの魔物になったらしい。


「私もエルツ国王の受け売りなのだけどね。エルツ族は昔神格がまだ高かった時の神と人族との間に生まれた子達の末裔なの。だから魔物化したと言っても神格があった分知性もマナも高いまま子孫を残す事が出来たらしいわ」


 成る程ね。

 エルツ族が人族から迫害されているのもそう言った神様との繋がりに嫉妬したからなのかもしれないな。


「そうなるとご主人はその二柱の神様から勲章を貰うのね!凄いじゃない!」

「すごいすごい!」

「すごーい?にいちゃん何がすごいの!」

「神様から貰うんじゃなくて人族の国王から貰うんだよ。勲章の名前は神様の名前を勝手に借りてるだけじゃないかな?」

「そうなんだ、ちょっとがっかり」

「がっかりがっかり!」

「がっかりー?」


 あれ?勲章貰うのってあまり凄くないような気がしてきたぞ。


 翌朝、王宮からの使者という人が来て、一枚の羊皮紙を渡していった。

 羊皮紙はくるくる巻かれて金色のシーリングワックスで封印がされていた。

 この封って切っていいんだよね。

 恐る恐るナイフで封を切ると羊皮紙を広げて中身をみんなで読む。

 ぎゅうぎゅうに集まって見づらい。

 マルモとブロンは読めないだろうに。

 羊皮紙に書かれた内容は勲章の叙勲式の日取りや、どういう格好をして来いとか、誰までは連れてきていいとか、意外と親切に細かな事が書かれていた。

 勲章を貰う人というのは一生に一度あるかないかなので、誰もが受勲初心者なのだから、恥をかかせない為にも丁寧な説明になるらしい。


「着ていく服が無い!」

「私達も参列できるみたいだけど、みんな服が無いわ」

「ねぇ、ご主人。わたし一応奴隷の身なんだけど、行っていいの?」

「これに名前が書いてあるんだからいいんじゃないかな。ラナにも勲章を貰うところを見て欲しいよ」

「うはあっ!久しぶりにご主人の眩しい笑顔を頂きました!はあはあ!わたしこれで十分な気がするです!」


 ラナはいつも通りで安心した。しばらく放っておこう。

 それにしても僕を始めとして、エルツ4人とレティを合わせて6人分の正装を新調するのかー。

 一回しか着ないのに勿体ない。

 やっぱり受勲、辞退しよっかな。

 そう言ったらみんなにかなり怒られた。

 ええー。いいじゃん。無駄な服を買うくらいなら勲章とか要らないから、みんなで豪華な食事でもしようよ。


「ご主人!これは総意です!決定事項です!家族一同はご主人の晴れ姿が見たいのです!勲章が胸に着いたご主人のキリッとした笑顔をこの目に焼き付けたいのです!」

「のです!」

「でーす」


 ラナはマルモとブロンに何か仕込んでるのか?

 最近変な同調をしてる気がする。


「早く服を買いに行くわよ。正装なんて仕立てるのに時間がかかるのだから」


 フィアも乗り気だな。服は新しく仕立てるの?既製品とか無いの?

 誰かから借りられないかな。

 服を仕立てるお金をどうやって捻出しようかとあれこれ悩んでいると、また部屋の扉を叩く音がする。


「リーンハルト・フォルトナー様でいらっしゃいますか?我が主人、アウグステンブルク公フレゼリク・クリスチャン様より仰せ付かってまいりました」

「はあ。そのお方がどのようなご用件で」

「此度の叙勲、おめでとうございます。つきましては叙勲式にかかる準備をアウグステンブルク家が全て取り仕切らせていただきます。さあ、まずはお召し物から取り掛かりましょう」

「ちょ、ちょっと待ってください。なんで、僕なんかの叙勲式にそんな貴族の方が?」


 アウグ、、、誰だ?何処かで聞いたような。


「将来の義理息子の晴れ舞台に何を惜しむ必要がある、と我が主人は仰せです。最高級の仕立て屋に参りましょう」

「いやいやいや。なんの話ですか?そこの二人は睨まない!僕も訳がわからないんだから!」

「昨晩、ヴァレーリアお嬢様が帰られまして、フォルトナー様のご活躍を何時間も話されておりました。特に多くの敵に囲まれ絶体絶命の危機に命の危険を顧みずお嬢様をお助けに来られた話は、それはもう、王子様に助けられた一国のお姫様のようなお顔でございました。そして、お父様である公に是非フォルトナー様へ贈り物をしたいと申されました」


 待て!ヴァレーリアお嬢様?誰だ?

 王子様?僕が?なんの話だ!

 頭が整理できないから両脇の姉妹はグリグリ突かないで!


 ヴァレーリア、救出。

 は!レリアか!

 かーっ。僕はなんでこんなに名前の覚えが悪いのか!

 そういえばレリアは貴族のお嬢様だったか。


「その、レリ、ヴァレーリアさんからの贈り物と言うことはわかりました。あの、そのアウグ、アウ、グサ、」

「アウグステンブルク公でございます」

「そ、そう!アウグス、テン、ブルク公!はその上級の貴族様なのですか?」

「はい。公爵様でいらっしゃいます。また、ノインの冠、軍神位でもあります」


 ノインの冠というのは、通常到達出来るのは数千人に一人と言われている9段騎士の更に上、王国内にたった9人しかいない最強の王宮騎士だ。

 毎年ノインの冠に戦いを挑んで勝てばその位に立つ事が出来る。

 だけど、ノインの冠は尋常ではない強さでここ数年誰もその地位を明け渡す事にはなっていないらしい。

 その中の軍神位にレリアのお父様は在位しているのか!

 そして、そんな人からお金とかの支援をしてもらっちゃうのっていいの?

 レリアとの話しには何度も出てきていても、会ったこともないんだけど。


「申し遅れました。わたくしはアウグステンブルク家の執事をしておりますクルトと申します。以後お見知り置きを。では早速参りましょう」


 途中ギルドにも寄ってレティも連れてきた。

 アウグステンブルク家の名前が出た途端、ギルド長が慌てて飛び出してきて、どうぞどうぞレティシアを持っていってください、とぐいぐいレティを差し出してきた。

 ギルドが貴族に弱過ぎるのか、アウグステンブルク家の名前が強過ぎるのか。


 マルネの町の中では一番高級そうな仕立て屋に来た。

 王都にある超高級店の支店だそうだ。

 こんな所に僕達のような冒険者が入っていいのだろうか。


「か、帰りましょ?ご主人!場違いもいい所よ!私達が踏み入れていい場所じゃないわ!」

「何言ってるのよ!こんな高級店でドレスを買えるなんてギルドのお給料じゃ到底できないんだから!みんな行くわよ!」


 おお、レティが気合い入ってる。

 フィアもそわそわしてるし、折角だからここで仕立ててもらおう。


 僕とブロンは男子という事で、二階に連れて行かれる。

 一階は全て女性用なのだそうだ。

 まあ、男は正装と言っても全身紺色のスーツに重そうなマントだ。あまり派手ではないかな。

 唯一帽子に大きな白い羽が付いているのが派手な所だ。

 装飾はいくつか付いていたけどオーソドックスなスタイルだし、すぐにデザインは決まった。

 採寸も終わりやる事が無くなってしまった。

 ブロンも男の子用の服はあまり変わりばえしないようで、大した時間もかけずに終わってしまった。

 それっぽければ何でもいいと言うのが本音だ。

 まだ下に降りたら怒られそうだし、何してよう。


「女性の方々はじっくり時間を掛けるのも楽しみの一つですからね。紅茶をお入れしますので、こちらでもう少しお待ちくださいませ」

「あ、すみません」


 店員さんに気を遣われてしまった。

 二人だけだから寂しそうに見えてたのかな。


「紅茶をどうぞ。アウグステンブルク様のご紹介だなんて、中々ございませんよ。どなたかご家族に名誉な事がございましたか?」

「は、はあ」


 この店員さんは僕が寂しがらずに済むように話しかけてくれてるんだろうな。

 まあ、魔法作りとかしていても良いんだけど、一人でブツブツ呟きながら手を空中で動かしてる姿は見せられないから助かったけど。


「名誉な事と言えば、近々王都では最高栄誉勲章の叙勲があるらしいですね。なんでも、過去最年少なのだとか。どの様な偉業をされたのでしょうね、想像もつきません」


 すみません。それ僕の事です。

 大した事はしてないけど政治利用に使われて勲章貰ってしまいます。

 でも、よくよく考えたら政治利用といっても、勲章をくれるのは国王様なんだから、その国王様が少しは僕の事を認めてくれたって事は無いのかな。

 それとも、国王様自ら政治利用に僕みたいな子供を使ってしまうのか?

 軍事にはかなり弱い国みたいだから、政治もあまり高度な事は出来ないっぽいよな。

 みんなして真実の書を読めばいいのに。

 でも、読んでも全く理解できない人も居るって聞いた事があるから、スキルとか能力みたいなのが必要なのだろう。


 女子達もドレスが決まり、採寸も完了したようだ。

 みんなキレイなドレスが作れて嬉しそうだ。


 ここで作ったドレスを待たずにすぐに王都へと移動しなければ叙勲式に間に合わない。

 王都には都市メールスと同じで馬車で5日間は掛かる。

 今回はアウグステンブルク公が6頭立ての高速馬車をわざわざ仕立ててくれるみたいで、3日間で王都に着くらしい。

 正装は王都で仕立ててくれるのであちらで受け取れることになっていた。


 レティも長期休暇を取って6人でいざ王都に向かおう。

 あれ?国王様から勲章貰うのに両親とかに知らせなくていいんだろうか。

 ま、今度でいいか。






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