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第十一話 誤解

 お金を稼ぐ目的が増えたな。

 最初は真実の書の写本を見に行くためだったけど、それはいつでもいいし、それよりもフィアを、そして姉のラナを助ける為に動こう。


 今はこの効率が良いスタシルトカゲを出来るだけ討伐しよう。

 フィアもある程度の強さはあるみたいだけど、僕が突っ込んだ方が早かったので、今のところ僕だけが、剣を振り回して倒している。


「なんだか悪い気がしているのだけど。いいのかしら。わたしさっきから何もしていないわ」

「こいつらは弱いし、平気だよ。あとで、もっと強い魔物のクエストになった時に、戦ってもらうよ」

「あなたの強さは何の強さなの?エルツ族は人族より、かなり強いけど、あなたはエルツ族の王より強いように見えるわ。その上、スキルを使ってすらいないなんて」


 スキルによってこのレベルにしたから、スキルは使っているんだけどね。

 フィアと一緒に討伐をしていたら、レベルは2つも上がって7になっていた。

 こんなのかなりズルいスキルだと思う。

 フィアは全部じゃないだろうけど、自分の秘密を話してくれた。

 それなら僕も出来るだけ隠さず話そう。


「フィア。僕の強さはスキルによるものだよ。しかも、少し、あ、いや、かなりずるいスキルかな」

「でも、あなたは、敵を倒す時にマナをほとんど使っていないわ。マナを動かさずに発動するスキルなんてないはずよ」

「そうなんだ。僕のスキルは敵を倒す時じゃなくて、もっと前に発動していたんだ。というより、今も常に発動中かな。経験値増加って言ってね。何か経験値を得る度に500ポイントずつ、経験値が加算されるんだ。ちょっとずるいでしょ」


 あぁ、驚いているなぁ。

 それとも何言ってるんだこいつって顔なのかな。


「驚いたわ。そして、何を言っているのかしら。そんなスキルあるわけないじゃない。そんなにわたしに隠したいスキルなの?もしかして、恥ずかしいスキル?」


 どっちの顔でも正解だった。

 そして、恥ずかしいスキルってなんだよ。

 自分の恥ずかしい妄想を話す事で相手に精神ダメージを食らわすとかなら、一生使わないよ、そんなスキル。


「本当だよ。多分僕は今レベル7になっているはず。

 ステータス・ウインドウスキルが無いから、確認できないけどね」


 レベルも窓無しもばらした。

 これで、嫌われてしまうか。


「レベル7!?本当なの?でも、あの強さの説明はつくわね。窓無しなら、強力なユニークスキルというのも。わかったわ。あなたの言っている事は多分本当の事なのね。知り合いに窓無しでユニークスキル持ちがいるから、そういう人たちは、ちょっとおかしいところがあるのも、共通点なのね」


 そうなるとキミもユニークスキル持ちになっちゃわないかな。

 おかしな発言多いし。

 でも窓無しを嫌う人じゃなくて良かった。

 そもそものスキル作成スキルはまだ言えないかな。

 他のスキルもあるし、少しずつ話していこう。


 話しながらスタシルトカゲを狩っていたけど、辺りには居なくなってしまったみたいだ。

 そろそろ頃合いか、とギルドに戻って、換金することにした。



「ふううん。そうなんだー。わたしホントに遊ばれてたんだー。わたしが汗水流して働いている間に、かわいい女の子とクエストデートだなんて、粋なことをするじゃない」


 しまった。またレティに話さず決めてしまった。

 しかも、怪しいと話し合っていたフィアと2人で戻ってきて、あまつさえ、クエストを一緒にしてきたなんて、浮気みたいじゃないか。

 いや、レティとはそういう関係じゃないんだから、浮気とかは違うから!

 フィアともそういうのとは違うから!

 ううっ、何も午後からは完了報告カウンターの担当にならなくてもいいのに。


「で?言い訳は済んだ?」


 寝言は済んだ?とも、辞世の句は済んだ?とも聞こえる。


「フィアは事情があってお金が必要で、僕はそれの手伝いをすることにしたんだ。後で帰ってからちゃんと話をするから。だから、それまで、待ってくれないかな。昨日の僕の気持ちは変わっていないから」


 思いっきり、浮気現場を見られて、言い繕っている奴の言い分だなぁ。

 帰ったら土下座かなぁ。

 確実に父さんと同じ道を突き進んでいる気がする。


「帰ってからって、この人と一緒に住んでるの?もしかして、夫婦?」

「いきなり名前呼び!?いつの間にそんなに仲良くなってるのよ!リンくんこの子に何されたの!テイムされたの?」


 あぁ。双方向から、殺気がチクチク刺さるよ。

 どっちに突っ込む気力も無いよ。


 落ち着いて話し合おうということで、レティの休憩時間を待って、近くのお茶が飲めるお店に3人で入った。


 そこで2人には誤解を出来るだけ与えないように、懇切丁寧に説明をした。それはもう必至に。

 フィアの種族とかを僕が言うわけにはいかないから、そこはぼかして、お姉さんを奴隷から解放する手伝いだ、と話すとレティは泣き出した。


「そんな…、くすん、フィアさん。いえ、フィア!私にも手伝えることがあったら何でも言って。リンくん!君はフィアのことしっかり手伝うのよ!」


 こういう時もレティだなぁ。

 ここが、レティのいいところでもあるんだけど。


「あなたのお姉さん、みたいな、人?それって、他人なのでは?つまり、同棲?」


 こっちはだめか。

 いや、別にフィアにレティのことをどう思われても関係ないじゃないか。そうだよ。恋人ってわけでも無いし。

 そう言ったらレティもだけど。

 堂々としていればいいんだよ。


「レティには、この町での仕事を紹介してもらう予定で付いてきたんだよ。ついでにルームシェアさせてもらっているんだ。同棲じゃなくて、同居ね。フィアの考えていることは無いから安心して」

「何故わたしがそう言われて、安心しなくてはいけないのかしら。あなたが、誰とどうしようとわたしには関係ないわ。仕事を紹介してもらうのを口実に、女の部屋に上がり込んで同棲し始めても、別に気にして無いわ」


 あら、振られたわね、とレティが余裕顔になっている。

 別に振られてないから。そう言うつもりじゃないから。


「でも、あなたに押し倒された責任は取ってもらおうかしら。あんなに強引にされたの、初めてだから、痛かったわ」


 違うから。ぶつかって巻き込んで倒れただけだから。

 あぁ、レティの背後に大魔王の影が見えてきた気がするよ。



 誤解は解いた。

 レティだから簡単に解けたけど。

 今後もしばらくはフィアの手伝いをするという事、効率をあげる為にクランを作る事をレティに許してもらった。


 フィアはやっぱりギルドの中に入って、身元がバレるのを恐れていたようだ。ギルドから出てきた人にクエストの内容を聞きまくっていた。

 フィアたち、エルツ族は魔物化したとは言っても、犯罪者というわけでも、ましてや、指名手配などされているわけでもない。

 別種族とはいえ、要人とまではいかないから、特にフィアはギルド内で顔を知られているわけでもない。

 その事を教えると、ホッとした様子だった。

 これで、ギルドにも一緒に入って、冒険者登録もクラン登録もできる。


 レティは休憩が終わったので、仕事に戻ってしまった。


 フィアの冒険者登録を済ませた後、クラン専用のカウンターに向かう。


「おい、あいつあの子とクランを組むのか。俺らのレティシアさんといつも仲良さげに話してるくせによ」

「さっきは、そのレティシアお姉様と3人で何か揉めてたわ。二股なのがバレたのよきっと。それで、お姉様に振られて、諦めが付いたんだわ」


 後ろから、有る事無い事言われてるな。

 揉めてたのは有る事の方だけど、振られてはいない。


「クランの新規登録ですね。では、こちらの用紙に必要事項をお書きください。登録料はフォルク大銀貨1枚となります」


 1万フォルクか、高いな。

 でも、効率を考えたら、必要な出費だ。


 クラン名か、どうしよう。


「ねえ、フィア。クランの名前はどうしようか」


 もう、フィアと呼んでも睨まれなくなったぞ。

 いい感じだ。


「破壊の混沌デストロイスター、とかはどう?」


 どう?じゃないよ。

 破壊が二つ入ってるし。

 そんなに壊しまくらない平和なクランにしたいよ。


「んー。じゃあ。ディアマント=ツィン=ヘルグリューンは?わたしの親友の真の名よ」


 人の名前を勝手にクラン名にしてはいけません。

 それに真の名をそう簡単に出すのはいいの?


「もう、我儘なのね。では、ロート・ファフニールではどう?エルツ族の守護龍の名よ」


 赤き原始の龍か。もうそれでいいか。

 登録が受け付けられて、クラン「ロート・ファフニール」が登録された。

 クラン証とクラン専用の手帳を受け取る。

 それと、さっきのスタシルトカゲの完了報告で4級に上がっていた。

 まだ、2回しかクエストしていないのに、と思ったら、さっきの討伐数が多かったらしい。

 流石に30匹は狩りすぎたかな。

 完了受付のお姉さんに少し怪しまれたけど、フォルク金貨1枚と大銀貨5枚になったから良しとしよう。

 このお金も大銀貨2枚を抜いてから、全てクランの手帳に移し替える。

 それぞれの当面の生活費としてフィアに1枚渡した。


 明日はクラン専用のお得なクエストを探してみよう。

 まだ本会員ではないから、普通なら報酬の良いクエストは受けられないけど、クランが認められれば、それだけの実力があるとみなされて、クラン用のクエストとして、高報酬のクエストも受けることができるのだ。

 ただし、今は受け取れていた準備金とか、手厚いサービスは受けられなくなる。


 フィアと別れて、一人で部屋に戻る。

 レティはまだ帰ってきていない。

 今の内に考えていたスキルを一つ作っておこう。



 マナ変換 SLv1


  戦闘経験値をマナに変換する

  基幹マナ対応 変換レート:5.2K

  循環マナ未対応

  活動マナ未対応

  マナリンク対応


  アクティブスキル

  効果時間:3600s

  リキャストタイム:86400s

  ビルドタイム:30s

  使用SP:0.9M


  残SP:2.2M


  [戻る] [作成する]



 これが前から気になっていて、いつか作ろうとしていたスキルだ。

 ただ、以前は90M近く使用SPが必要だと書いてあり、なかなか作れていなかった。

 それが、久し振りに見てみると、何故か0.9Mに減っていた。

 これは、恐らく以前に経験値増加やインベントリ、ストレージといった、マナの変換やマナリンク関係のスキルを作ったことで、何かそれらのスキルで共通的な能力というか機能が作られたのだろう。

 そのおかげで、このスキルに必要な大部分が既に僕の中にあるんじゃないかと、予測している。


 このスキルは多分だけど、1日1回1時間だけになるけど、経験値1pに対して、SPが5.2K溜まるんだと思う。

 Kは1,000の意味らしい。

 +500pのスキルがあるから、その分だけでも2.6Mになるはずだ。

 このスキルの組み合わせがあれば、魔物を倒す度に毎回2.6M以上のSPが貯められる事になる。

 レベルは今の7もあれば当面困らないし、変換も1時間だけのようだし、集中して貯めれば、大量のSPを蓄えて、強力なスキルが作れるようになるだろう。


 その後、レティが帰ってきたので、料理スキルを駆使して夕食を使ったら、泣いて喜ばれた。



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