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第百三話 神の嫉妬

 ディアと僕、それから護衛役をすると言ってくれたリーカとレリアの4人で王宮に来ていた。

 勇者と赤目の剣姫の護衛なら安心だ。

 僕はリンの姿で来ている。


 アリアは自室で寝ている。

 眠っていれば、接続したままでも、殆ど切り替わらなくて済むようだ。

 たまに一瞬だけ、アリアの方に制御が移るけど、寝てるから分からないし、1秒も無いから、こっちの動きにも影響ない。





 受付で謁見の申し込みをする。


「あのー。こんにちは」

「はい。いらっしゃいませ〜」

「国王との謁見をしたいんですけど」

「あら。まだちっちゃいのに国王様とお会いして、何をお話しするのかな?今から王国の事を考えて謁見するなんて偉いわね〜」


 ああ、いつもの顔見知りの受付の人じゃないのか。

 説明めんどくさいな。


「はい。これが一般謁見のカードね。首から提げていてね。そちらの保護者のお姉さん方もこちらをお願いします」

「あ、いえ。一般ではなくて、特別謁見でお願いします」

「うふふ。誰からそんなの聞いたのかな?あのね。特別謁見って言うのは、普通の人じゃあ出来ないのよ?そうね、例えば国王様から勲章を頂いた人とか」

「あ、これでいいですか?」


 ベニトアイト勲章を受付のお姉さんに見せる。

 こういう時があるから、やっぱり持ち歩いていて正解だった。


「あら、綺麗なペンダントね。お母さんのを持って来ちゃったの?ダメよ?それに、国王様から頂いた勲章じゃないといけないのよ」

「えっと、これが国王から貰った勲章なんですけど」

「もう、そうやって、特別謁見を許していたら皆んなお家からペンダントを持って来ちゃうでしょう?こう言うのは規則だから、子供でもダメなのよ。はい、一般謁見のカード。奥に行って、列に並んでね」


 結局、列に並ぶことになってしまった。

 まあ、普通は順番なんだからいいか。


「リン殿はいつもああやってズルをして、順番を抜かしていたのか?」

「え?ズル、、、なのかな。そう言われるとそんな気もして来た。ズルは良くないよね」

「うむ。横入りは良くないな」

「ご、ごめんなさい、騎士団の私が言っても聞いてくれなかったので、あの受付の人はここに入ったばかりなのかと」

「レリアは悪くないよ。今までズルい事をして来た僕がいけなかっただけなんだから」

「、、、リーンハルトくんは、勲章持っているのですから、ルール通りだと思うんですけど、、、」


 今日は謁見が多いみたいで、30人くらいの人が廊下で待っていた。

 椅子がズラッと並べてあって、その最後尾に座って待つことにする。


「時間かかりそうですね」

「ふむ。国王に皆、謁見するのか。かなり多いな」

「ああ、待たせてごめんねディア。でも、それだけこの国の国王は国民の声を聞こうとしているんだよ」

「なるほど、我が父も見習うべきだな。しかし、国王の時間は有限だ。よくこれだけの話を聞けるな」

「話の要点を掴むのが、まあ、上手なんだろうね。そこからの解決策を判断するのも早いし、だから、謁見の時間は皆んな短いと思うよ?」


 あれ?なんで僕は国王の事、こんなに誉めてるんだか。

 言ってて自分が気持ち悪いな。


「にいちゃん、分かってるね!国王様はいつも我々民の言葉を聞いてくださる。この前も、公園にゴミを捨てるやつがいるからなんとかして欲しいって言ったら、騎士団の見回りコースに公園も入れてくれてさ。ゴミは最近全くなくなって綺麗になったよ」

「へ、へぇ、そうですか」

「それでよ、今度は夜中にうるせえ奴がいるから何とかして欲しいって嘆願に来たのさ」

「そ、それは大変ですね」


 急に隣に座って順番待ちをしているおじさんに話しかけられてしまった。


「そうなのよね。国王様はくだらない事でも必ず聞いてくださって、何かしら行動に出てくれるのよぉ」


 更に奥にいたおばちゃんが参加して来た。


「そうそう。ウチはね前にね、、、」

「そうよねぇ、私んとこはね、、、」


 さっきまで黙って待ってたのに、皆んなガヤガヤと話し始めた。

 きっと、待ってるのに飽きてきて、何でもいいから話がしたかっただけなんだろうな。


「待つ間は静かにせぬか!王の御前だぞ!中まで聞こえてきたわ!」


 謁見室から髭を蓄えたローブ姿の人が出てきた。

 あれは、確か僕の叙勲式で国王の右に立っていた、3人の賢者だか何だかの一人だ。


「ふむ?そこの、、、リーンハルト・フォルトナーではないか?」

「え?あ、はい。そうです」

「………そうか。おかしな言動をすると国王から聞いていたが、今合点がいった。まあ、並びたいのであれば好きにすれば良い。よし、次の者、入れ」


 今のは何だったんだろう。

 少し呆れられた?


 1時間程待って、ようやく僕達の番になった。


「思っていたより早いな、30組はいたのだぞ?一人2分程度ではないか、、、」

「それでも、手は抜いてないから、ああやって国民に好かれるんだろうね」


 ああ、何で今日は国王を褒めてしまうんだよ!

 なんかもう、ディアに自慢してるみたいになってるよ!


「こんにちは〜」

「ああん?リーンハルトじゃないか!なんで一般謁見できてるんだよ。ああ、そうか、忘れているんだったな。お前は特別謁見で入れるんだ、今度受付ではそう言うんだぞ?」

「あ、いえ。記憶は戻ったんですよ」

「なんだ、戻ったか!それは良かった。ん?なら何で特別謁見で来なかった。今までそうだっただろう?」

「ズルはダメなんですよ。他の人達も待ってるんだから、それを飛ばしちゃったらいけないんですよ」

「お前は何を言って、、、おい、剣姫。何があった?」

「は、受付で勲章を見せたのですが、取り合ってもらえず、一般謁見のカードしか貰えなかったのですが、それをリンはズルは良くないと、、、」

「意味が分からん。受付がリーンハルトを知らなかったのは仕方なかったが、お前はもっと自分の立場を分かっておけ!優先順位が違う!国に対しての影響力が違う!お前が何かする事には国の将来が関わっている場合があるんだから、そこは他の民より先に謁見する必要がある!」


 ううっ。そう言われるとそうなんだけど、でも、そんなに僕が国にとって大事なのかな。

 この間、僕を次期国王に、とか言ってたのだって、今考えると、前の勲章の時みたいに僕を政治利用しようとしているだけなんだと思うし、そう言った駒としては大事なのかもしれないけど、優先させる程とは思えないんだよな。


「まあいい。お前は今日付けで国王付きの王宮魔導師になれ」

「え?嫌ですよ。何か面倒くさそうなことやらされそう」

「お前な。魔導師としての最高職を面倒くさそうって。分かった分かった。名前だけだ。何もやる必要はない。国王付きなら王宮内は何処にでも入れる。王宮内に内示も出すが、、、そうだな、クラウゼン。コイツにフリーパスを発行してやれ」

「はい。かしこまりました。フォルトナーさん。それがあれば、あなたを知らない人でも、どう言った立場の人なのか分かってもらえますから大丈夫ですよ」

「は、はあ。どうも」


 そんなに何回もここに来るつもりも無いんだけどな。


「よし、それじゃあ次の者!」

「いや、用事がまだですよ!僕は影響力が違う、、、とか言っておいて、話を聞かないで追い返さないで下さいって!」

「んお?そうだったか?大抵はひとつ解決したら終わりだから間違えてしまったな!」

「まったく、、、」

「それで、どう言ったご用件でしたか?そちらのお二人は分かりますが、こちらの方は初めてですね?」

「ええ。この人に関してのお願いがあって来ました。実はこの人は、、、エルツ族なんです」

「リーンハルトくん?!言っちゃって良いんですか?!」

「うん。良いんだ。この人達なら分かってもらえ」

「この者をひっ捕らえろ!エルツは厄災だ!」

「国王、、、それは違っていたって結論が付いたじゃないですか、、、」

「あ、、、そうだったか。すまんすまん。ってリーンハルト!お前その剣は何だよ!」


 ああ、もうこの国はダメだと思って思わずギベオンソードを抜いていた。


「一応聞きますけど、エルツの事はどうするんですか?」

「大丈夫だ。何もしない。小さい頃からずっとエルツは厄災だって、教わって育ったからもう条件反射になってるのだよ。すまんすまん。ってか、お前、あのままだったら、俺を敵に回すつもりだったのかよ」

「まあ、僕はエルツ側よりですからね。というよりはこの人とか、他に居る僕の仲間の味方です」

「まったく、、、その為なら王国の敵にもなるってのか。また、それが出来るんだろうなお前なら。危ない危ない。俺のついうっかりで国が滅ぶところだったぜ」

「そうですよ。ヒヤヒヤしましたよ!フォルトナーさん。念押ししておきますが、我がフォルクヴァルツ王国はフォルトナーさんと敵対するつもりはありません!何か問題があったり、あなたの不利益になるような事があれば、我々にご相談ください。意見の相違はあれども、あなたと戦争だけは避けなければいけませんので、そこは安心してください」


 むむー。

 ホントかな〜。

 ギベオンソードはしまうけど、警戒は怠らない。

 国王もクラウゼンさんも信用できる人だけど、信頼している訳ではない。

 今までの事は信じているけど、これからもそうとは限らない。


「リン殿、我等はやはりこの国では好まれてはいないようだな。これをひっくり返すなど出来ないだろう」

「いいや!これを何とかしないと、この国もダメになる。この国の為にも、これをひっくり返すんだよ!」

「リーンハルト。お前、、、やっぱり面白いな。クラウゼン、ほら言っただろ。コイツは国王になるべきなんだよって!」

「ああ!そうだ!僕は国王になんかなりませんからね!」

「はああ?!何言ってるんだよ!この間は了承しただろう?」

「してませんよ!それに、あの時は記憶が無かったんですから、了承してても無効です!」


 国王なんてやれる訳ない。

 この国王みたいに、人望があって、人に好かれる人がやるべきだ。

 ああ、今日は何でこの人をこんなに誉めてるんだよ。


「俺は諦めんぞ。必ず説得してお前を国王にしてやる」

「はいはい。それよりこっちです。この人がエルツである事は分かって貰えたと思いますが、その先が問題なんです」

「エルツ族って以上の問題があるのか?」

「そうですよ。僕がこの国を滅ぼすだの言ってますけど、そんな事しなくてもこの国、今、滅びそうですよ?」

「ど、どう言う事だ?!」


 はあああ。さて、ここからが問題だな。


「まずは、この国だけじゃないですけど、国民や王宮やこの国の人達はエルツに対して異様な程、嫌悪感を抱いていますよね」

「ああ、そう教えられて来たからな」

「その教えがまず間違いなんですよ。以前にここでエルツは神の子という話をしましたよね?」

「ああ、調査させたら、それを裏付ける文献が出てきた。更に遠くの国ではエルツは神の子というのは当たり前の物として伝わっている国もあった」

「そうでしたか。では、そこは信じて貰えたんですね」

「ああ。だからこそ、王宮や枢機院でもエルツは厄災でも何でもないという結論には至った」


 ふう、やっとそこまでは来たか。


「ですが、国民にそれをそのまま伝えても、理解はして貰えないでしょうね」

「そう、、、ですよね」

「長年の教育の賜物だな。俺もまだ頭では理解していても、咄嗟にはどっちだか分からなくなる」


 根深いな。

 まったく誰だよこんな訳の分からない事するのは。


「その、エルツに対する嫌悪感は差別的にエルツの人達を扱います。奴隷にしたり、エルツというだけで、暴力を受け、しまいには命さえ奪われる」

「ああ、それが当たり前だった。魔物を倒すのと同じ感情だ」


 ああ、そうか、魔物を倒すって気持ちと同じなのか。

 僕はそれすら、もう、する気は起きない。

 魔物は友人になれる。

 エルツは家族になれる。


「その感情が間違いなんです。意図的に植え付けられた、偽の感情なんです!」

「偽の感情だと?!」

「植え付けられたという事はそれをした人がいるという事ですか?」

「人では無いです。神です」

「?!!!何を、、、神がそんな事をする訳が、、、大体何の理由があってそれをする!」


 それはまだ臆測でしか無い。

 でも、今までの神や女神の話、それらが起こした出来事、歴史から考えると、その推測は大体合っていると思う。


「神が嫉妬したからですよ」


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