第百二話 再会
「ちょっと行きたい所があるんだ」
「はい!何処へでもついて行きます!」
この会話だとチッコイ姉御とそれに従う妹分にしか見えない。
誰かと話すような時は、もうちょっと女の子っぽい話し方にしないといけないんだろうか。
インビスや屋台がたくさん出ている広場に来た。
ソーセージ祭りは終わってしまっているから、いつもここで出店を出しているお店だけになっている。
「ふう。やっぱりもう居ないよね、、、」
「誰かを探しているのですか?」
「うん。前にね。この姿の時にお世話になった人達がここにお店を出していたんだけど、お祭りも終わったしマルブランシュにもう帰っちゃったかな」
「お隣の国の人ですか、、、。それなら、またすぐ会えますよ。マルブランシュなんてあっという間に行けますって!」
「リーカ、、、。うん。ありがと」
そうだよ。
頑張れば何日かで行ける場所なんだし、今度会いに行こう。
「リーカ。今日は付き合ってくれてありがとう。少し休もうか、カフェでも入って甘いもの食べよう?」
「はい!では、あちらのお店に行きましょう!」
ドサクサに紛れてリーカに手を握られ、引っ張られていく。
「ちょっと、手握ってるって!」
「お帰り、ご主人。何よ、リーカはご主人の手を握ってるっての?」
「あれ?ずっとあっちばっかりって訳にはいかないのか」
「ねぇねぇ。手、握ってるの?なら、私とも握っておく?ね、ね」
「また今度ね。また行って来るよ」
「そう、、、行ってらっ、、、、はっ、この隙に、、、ブツブツ」
ラナが変な事企んでる顔してるな。
ちょくちょくこっちにも意識を戻さないと僕の身が危なそう。
「アリアちゃん?戻ってきましたか?」
「うん。ごめん。定期的に戻らないと自動で切り替わるみたい。生命維持の意味があるんだと思うし、それに、別の意味で体が危険そうだから、たまにあっちに戻るね」
「家なのに危険なんですか?、、、ああ、ラナさんですね」
それだけで、理解されてしまうラナのいつもの行動には問題があるのだと思うよ。
ん?んんー。あれは、、、。
「リーカ。カフェ中止。あの人、追いかけるよ」
「へ?うわっ!ま、待ってください!」
人多過ぎだよ。
見失っちゃった。
「誰なんですか?さっき会いに行った人ですか?」
「ううん。こっちに帰って来る時に出会った人、、、に似てたんだよ。似てるだけで他人かもだけど」
「また、女の子、、、ですね?」
「ああ、まあ、否定できないけど、今度のはそう言うんじゃないから」
「そう言って増えましたからね!」
フィアみたいなことを、、、。
あれ?これって嫉妬で言っているのかな?
だとすると、フィアも、、、も、もしかして、、、。
「フィアが僕に嫉妬してる?!」
「この男は頭が湧いたのかしら。それとも、沸かして欲しいのかしら」
「あ、しまった、このタイミングでこっちに戻るのか」
「わたしがリンになんですって?」
「う、ううん!何も無いと思うよ!フィアは僕の事なんて何とも思ってないと思うよ!」
「………そこまででは、、、無いと思う、、、けど」
「え?」
「何でも無いわ!早くあっちに戻りなさい!」
「ふあい!」
「ああ、びっくりしたあ」
「お帰りなさい。結構急ですね」
「意識が抜けている間って、こっちの体はどうなってるの?」
「ポケーッとしてるだけですね。結構、可愛いですよ?」
「そ、そう。まあ、立っていられるなら平気か。でも、一人じゃ外に出られないね」
「そうですね。なので、お出掛けの際のお供は是非、私にお任せを!」
あ!居た!
路地裏に入っていった。
追いかけよう。
「あ、アリアちゃん?居ました?」
「こっち!」
僕達も追い掛けて路地裏に入る。
後ろ姿はコートにフードだから分かりづらい。
また見失う前に追いつかないと。
「ディーちゃん!ディア!」
まだ遠いけど、聞こえたらしい。
立ち止まってキョロキョロしている。
「はあはあ、ディア!追いついた」
「む!お前、、、あなたはいつぞやの、、、アリアージュ殿!また会えたな!」
「はあ、はあ、はあ、うん、あ、会えたね、はあ、はあ」
「大丈夫か?あちらのもっとへばっている者もアリアージュ殿の知り合いか?」
「うええん、アリアちゃん早いですう」
「あ、うん。僕の家族」
ディア王女だ。
ようやく王都まで来れたんだね。
あ、そう言えば記憶が無くなっていたから、ディアの事を皆んなに伝えるの忘れてた。
「フィアやラナ達の所に連れて行くよ」
「おお!やっと会えるか!ここへ来てからかなり探したのだが、なかなか見つからなかったのだ」
まあ、エルツ達は基本、外に出ないからね。
出ても近くの公園とか顔見知りのやっているお店くらいだもんな。
探しても会えるはず無いよ。
「あ、ちょっと待ってね」
「フィア!ラナ!今から帰るけど、二人にお客さんだよ!マルモとブロンもお昼寝から覚める頃かな」
「どうしたの?っていうか私達にお客さんってあり得ないじゃないの!」
「また増やしたいのを誤魔化しているのね!」
「違うって!本当に4人の知り合いだよ」
「え?この街に知り合いなんて居ないわよ?」
「まあまあ、今から連れて行くから、また後でね」
「あ、ちょっと」
「さて、一言伝えたし、じゃあ、行こうか」
「意味あったんですか?今の」
「まあまあ、自分でも意味なかったなあ、とか思ってないよ?」
「急に体が固まって目さえも動かなくなって奇っ怪だったな。病気か何かなのか?」
「え、、、。そんなに変だった?」
「まあ、かなり、、、」
そうか、あまり見せられる物じゃなかったか、、、。
家に着いた。
「ただいま!」
「そっちはずっと家にいたわよ」
「丁度切り替わってしまった、、、、。やり直す」
「ただいま!」
「今度こそお帰り〜」
玄関を開けた時にリンに戻らされてしまった。
アリアでちゃんと帰宅完了した。
「じゃじゃじゃ〜ん!ほら!この人!連れてきたよ!」
「ディーちゃん?!」
「フィーちゃん!!」
「何をしてるのかしら!こんな所まで来たら危ないじゃないの!」
「う、うむ。危険を承知でフィーちゃん達を救出に来た!」
「ああ、ディアちゃんには、連絡してなかったもんね。どうにかしようとも思ったんだけど」
感動の再会って感じ、、、じゃないね。
でも、お互いを思いやってるからこそなんだろう。
「んん〜、、、。あれ?ディアお姉ちゃん」
「あ、ディアちゃんだ」
マルモとブロンもお昼寝から起きてきた。
「ディーちゃんと呼ぶようにいつも言っておるだろう?」
「う、うん、ディー、ちゃん」
「ディーちゃん?」
やっぱり感動の再会にはならない。
おかしいな。
期待してたんだけどな。
こう、抱き合って、泣きあって、やっと会えた〜的な?
エルツ族はその辺ドライなんだろうか。
何の見せ場もなく、再会は完了し、他の子にもディアを紹介して、ようやく落ち着いた。
「それで、ディアちゃんは王女の身でありながら、勝手に家を飛び出してここまで私達を救いに来た、と」
「ま、まあ、そうだな」
「でも、私達は特にもう囚われの身でもなく、平和にここで暮らしていた、と」
「う、うむ、そのようで何よりだ」
はああああ。
ラナの大きな溜息。
まあ、ディアは助けたい一心で来てるから、あまりラナも怒れないでいるのだろう。
「国王様や王妃様は心配してるんじゃない?」
「父さまや母さまには置き手紙をしてきたから問題ない」
「ディー?それで問題無い訳ないと思うのだけど」
「ま、まあ、わたしの一人や二人少し留守にしたって大して変わりない!」
あなた王女でしょ?
大した問題だよ。
「早く帰った方がいいと思うな」
「アリアージュ殿、、、。や、やはりそうだろうか。フィーちゃん達を見つけなければと夢中になっていて、事の重大さに今気付いてしまった。どうすれば良いだろうか」
楽観的なのか、ただの阿呆なのか。
「そう言えば、ご主人はディアちゃんの事知ってたのね」
「ああ、うん。マルブランシュからの馬車が一緒だったんだ。あと、こっちの町でも助けて貰ったんだ」
「待て!ラーちゃん。今この方のことを何と呼んだ?」
「ご主人」
「アリアージュ殿は特殊な性癖をお持ちなのか?」
「どういう意味?」
「ちょっとディアちゃん。子供になんて事言うのよ!ご主人は私の奴隷主ってだけよ!」
「いや待て!そっちの方が子供がなる立場ではないだろうが!」
うん、そうだね。ごもっともだよ。
「私はこの立場、気に入ってるのよ?それにね。ご主人に命を助けて貰ったし、フィアちゃんも助けて貰って、マルモもブロンもそうよ」
「そうなのか?フィーちゃんも?」
「別にわたしは助けては貰ってないわ」
「そんな事ないわよ!フィアちゃん、ご主人と一緒にいるようになってからは、よく笑うようになったもの」
そんなに笑ってたっけ。
睨まれてばっかりだったような、、、。
「フィーちゃん達が皆んな無事だったのは良かったが、根本的な問題は解決していない。我らエルツはどの国に居ても、苦しまされる。この国にいる我が同胞はほぼ間違いなく奴隷に落とされている」
「私もそれで、売られそうになったしね」
「エルツは争う事を好まないが、もう我慢の限界だ。これ以上仲間が傷付くのを見過ごす訳にはいかない。お父様が、、、国王様はフォルクヴァルツやマルブランシュなどエルツを奴隷としている国を相手取って戦線布告をするつもりだ」
エルツが戦争を仕掛けてくる?!
そんな、、、。
エルツだの人族だの関係なく仲良くなれるのはこの家に住む人達でわかる事なのに。
「わたしはそうなる前にフィーちゃん達を助けて連れ戻したかったから、急いでこの国に来たのだ。だから、フィーちゃん!祖国に帰ろう!そうすれば、この国が我がエルツに攻め落とされても問題無い」
「ディー。あなた馬鹿なのかしら」
「な!フィーちゃん??な、何を怒っているのだ?!」
「怒っていないわ。ただ、ディーに呆れているだけ。わたし達がエルツの国に戻ればこの国はどうなっても良いと、わたしが思うだろうと、ディーが考えたのなら、やはり馬鹿ディーだったというわけね」
「ち、違うのか、、、?」
「わたしはこの国が嫌いではないわ。あまり外には出られないし、エルツである事を隠さないと生きていけないけれど、でも、嫌いにはなれないわ」
「だって、ご主人が居るんだもんね!」
「べ、別にそうは言っていないわ、、、」
そうか、フィアはこの国を嫌いにはならないでいてくれていたのか。
ラナを奴隷として売り捌こうとしたり、エルツだってだけで捕まえようとする人がいるっていうのに、、、。
「あのさ、ディア。僕はこの国の住人だよ?ディアは僕の事、嫌い?」
「アリアージュ殿は、、、いや、嫌いではない、むしろ好意的に思う。だが、それは特定の人だからだ、全体のことではない」
「そうだよ、全体の事じゃないんだよ。そりゃあ今はエルツに対して攻撃的な人は多いけど、でも全員じゃない。エルツだからとか、人族だからって見方をしない人だっているんだよ!」
「そう、かもしれんが、、、。だが、現実はどうだ!実際にエルツはエルツだというだけで捕まり奴隷にされ売られていく!人族ではこうはならないだろう!」
「だから、そこを変える!!僕がこの国からエルツに対する見方を変えさせる!」
ずっと、嫌だった。
ラナがいつも、外に出たがらないのは、また捕まるのではないかと怯えていた事。
フィアが普通の人と同じように学校に通いたがっている事。
マルモやブロンが元気に外で遊べない事。
それだけじゃないけど、でも、こう言うのが、今のエルツの立場だって思うと何とかしたいってずっと思っていた。
だから、僕がこれを何とかしたい!何とかするんだ!
「だが、アリアージュ殿がどれだけ頑張っても、国を動かす事は出来ないだろう」
「アリアもまあそれなりに役に立つとは思うけど、そっちは僕の方がやれると思うよ」
「ああ、君は確かリン殿だったか。君も子供ではないか。どちらにせよ同じ事だ。だいたいだな。知らないかもしれんがアリアージュ殿はとてつもないチカラを持っているのだぞ?だが、それでも、国や民の心を変えるなど、簡単には出来ない」
「アリアは僕でもあるんだ。その力は僕の力でもある。それにまあ、この国の国王には、少しはエルツに対しての考えを改めさせるのはもう出来ているから、望みはあると思うよ」
「な、何を?ア、アリアージュ殿?」
「ん?そっちの僕が言った通りだよ?アリアとリンは中身が一緒。今、同時プレイ可能になったんだ」
「???」
まあ、理解し難いよね。




