第百一話 2台持ち
精霊の抜け殻や妖魔は全て倒した。
でも、抜け殻だ、とか、人形だ、とか言ってもバラバラグチャグチャな感じは結構悲惨な光景だ。
このまま放っておくのもアレなんで、一箇所に集めて焼却処理する事になった。
腕やら足やらを集めて焼くって状況もアレな感じだけど。
んん?何だか胸の辺りが熱くなって、全身の毛が逆立っている。
何これ。
力の源が体中を駆け巡っていく。
何か起きてるのか?
ポーン
『レベルアップにより、外部記憶装置の容量が増加した為、圧縮されているログの一部を解凍します』
おお?さっきのでレベルアップしたのか。
解凍って何か凍ってたの?
あ!、、、、おお、ちょっと思い出した。
っていうか色々忘れていたんだな。
「リーンハルトくん、どうしました?」
「あ、クルクルさん。その制服姿、試験受かったんだね」
「えっと、クルクル?何を言ってるのですか?」
「あれ?クルクルさんだよね。ペンとインクを貸してあげた」
「また、懐かしいやり取りが出てきましたね。私の事忘れちゃったんですか?」
「ううん。思い出したよ!クルリーカウルルさん」
「ウルリーカ!ああ、懐かしい!あの頃はまだリーンハルトくんのものになるなんて思いもしなかったのですよね、、、」
何の話だろう。
どうやら、まだ全部を思い出してないようだ。
「どうされました?リーンハルトさん」
「あ!あの時の、、、、えっと、アレクシアさん?」
「………そうですか。わたしの事がお嫌いになったと………」
「え?いえ、そういう訳では、、、あれ?」
(レクシーさんと呼ばないからですよ!)
クルクルさんナイスアドバイス!
「レ、レクシーさん、やだな〜嫌いになんてなるはずないですよ〜」
「………うふふ………そうですよね………」
怖いよ。こんな人だったっけ。
「リーンハルトくん。もう、おうちに帰りましょう。精霊もスファレライトを倒した事でもう出てこないでしょうし。少し休んだ方がいいと思いますよ!」
「そ、そう?そうかな?」
「そうです!ちょっと疲れたんですよ!」
「そうですね。わたしの呼び方を間違えるなんて、かなりお疲れのようですね……ね」
う、うん、これは早く逃げ、、、帰った方が良さそうだ。
何故かクルクルさん、、、ウルリーカさんに家まで送って貰っている。
そんな送って貰わなくても平気なのに。
あれ?でも、前からこうやって歩いていたような気もするな。
どうも、記憶が曖昧だ。
「ただいまです!」
「おっかえり〜」
「ウルリーカさん?何故、ただいま?」
「ウルリーカ!あ、合ってた。いえ、そうじゃなくてリーカって呼んでください!」
「リーカ?クルクルさんとかリーカとか呼び方いっぱいあるね」
「どっちの呼び方もリーンハルトくんが名付け親なんですけどね、、、」
「ご主人、どったの?」
おお、ラナだ。あれ?お姉ちゃん?どっちだ?
「ねぇ、ラナって僕のお姉ちゃんだったっけ」
「あ!私の名前、、、、ああああ、思い出しちゃったかあ。せっかくお姉ちゃん呼びしてくれてたのにい」
「うん。今ので分かったよラナ」
「思い出したのかしら?記憶が混ざってるのね。大丈夫?」
「フィ、、、、フィアが僕の心配?!どうしたの?熱でもある?あ、ラナに弱み握られて脅かされてる?」
「以前のわたしがどう見られていたかが分かるわね」
フィアってこんなに優しい表情だったっけ。
「あ、でも、懺悔してくれた時から凄く優しくなってくれたよね」
「待ちなさい!そういう事をみんなの前で言わない!」
「へえ!フィアちゃあん、懺悔して優しくなったんだあ」
「姉さん、鬱陶しい!レティもニヤニヤしない!」
「私、もうこの癒しだけで、生きていけるようになっちゃったわよ」
レティ、、、だよな。
こんな達観したような目をする人だったかな。
女神様のように皆んなを微笑ましそうに見つめている、、、。
「わ、私は覚えてる?」
「ずっと僕を睨んでいた赤目の剣姫、、、かな」
「ご、ごめんなさい、、、。あの時は怪しい子って印象だったから、、、」
「記憶が人によって違いマスね」
「あ!ダミーさん!」
「わたしの事はそういう認識デスか、、、まあいいデスけど」
「わ、分かってる、アニカだよ!一番強烈な記憶が戻ったみたいで、ちょっと混乱してるんだよ」
「そうすると、私はクルクルさんが一番強烈な記憶だったんですね、、、他にも色々あったのに、、、」
思い出した内容の差がひどいという一部の人の抗議により、懺悔室に連れていかれたりもしたけど、少しでも記憶が戻った事は皆んな喜んでくれていた。
「レベルアップねぇ。この期に及んでまだレベルが上がるの?ご主人は世界最強でも目指してるの?」
「勝手にアップしちゃうんだから仕方ないよ」
「勝手にって、、、、。皆んなレベルを一つ上げるのに何年も掛けて頑張っているのに、、、」
「今のレベルって9だっけ?ギルドにも流石に9は居ないわね。王宮にも数えるくらいしか居ないんじゃないかしら」
レベル9?!
いつの間にそんな事に、、、。
ああ、そう言えば、経験値増加のスキルを作ったっけ。
それにしても、何をしたらそんなレベルに達する事が出来るんだろうか。
思い出した事の一つに、アリアの事があった。
何となくあの体で動き回っていたような記憶がうっすらとあった。
ただ、その思い出した場面というのが、たくさんのおじさんに囲まれていた、、、、って言うのがとても気になる。
その前後はまだ思い出せないけど、あれは何が有ったんだろうか。
リビングのソファーにストレージからインベントリ経由でアリアを取り出す。
トサッとソファーに落ちて横たわるアリアは確かに記憶にある僕の女子化した時の姿だった。
「ちょっと、女の子を眠らせて連れて来ちゃったの?とうとうご主人、犯罪に手を染めちゃったの?!」
「とうとうって何さ。いつかこうなるとは、って思ってたみたいに言わないでよ」
「だって、女の子を連れてくるのが当たり前になって来てるから、いつかはやりそうだったじゃない」
失敬な。ここに居る人達は皆んな自分の意思でここに来たんじゃん!
それに、アリアは僕でもあるんだし、今までとはちょっと違うと思うよ?
「それで?この子、、、あら?確かにこの子はご主人だった子よね?」
「うん。あ、この姿で会ったことあったっけ」
「ほんのちょっとだけね。この見た目で僕だよ僕、とか言われても、詐欺とかにしか見えなかったわよ」
それもそうだね。
「で、この子をどうするつもり?変なことしないわよね、、、」
「しないよ!もう。よいしょっと」
「何?寝るの?寝室に行きなさいよ」
「いいのいいの、どうなるか分からないから念のためにね。えっと、デバイス、アバター02。コネクト!」
おお?一瞬視界が暗くなったけど、すぐにまた明るくなった。
ラナの位置が変わった。
よいっしょっと。
起き上がってみる。
「え?え?起きた?誰?ご主人なの?」
「うん。うまく動かせたね」
今、僕はアリアの中に居て動かしている。
リンの方は、、、あれ?こっちにも意識あるな。
目を開けるとリン目線だ。
同時には動かせないけど、交互に動かせば二体とも動かせている。
「ええ?ご主人も動いた?!こっちの女の子もご主人?!どうなってるの???」
「ごめんごめん。ビックリさせちゃったよね」
「こっちも動かせるみたいなんだ」
「一度には動かせないけどね」
「自分で自分を見るのも変な感じだな」
「はあああ。もう頭が痛くなって来たんだけど、、、」
何々?と他の子達も集まってくる。
「あらら。リンくんの女装姿ね。でも、リンくん本人は別に居るのね」
「また、おかしな事を、、、。いやらしい事しようとしてるのではないでしょうね」
「しないよ!?フィアはもうちょい信じてよ!まあ、最初は面白そうだからってやってみたんだけどさ」
でも、思っていたより良い効果があった。
「こっちの体はさ、アリアって言うんだけど、これを動かしている時は記憶が全部戻るみたい。記憶する場所をこっちの分も使えるんだと思う」
「あらま。それじゃあ、今までの事は全て思い出したの?」
「うん。アリアだった頃の事も、帰って来てリンに戻った後も全部わかるよ」
試しにアリアとの接続を切ってみると、やっぱりリーカはクルクルさんまでの記憶しか無く、アニカはダミーさんとしか思えなかった。
逆にアリアだけに接続したら記憶は全部が全部あるままなんだろうけど、戻れなかったらどうしようと思うと、怖くて出来なかった。
面白いし、リン単品で記憶が全部戻るまでは、2台持ちで行くことにした。
慣れてくると、ほぼ同時に動かすのも出来るようになってくる。
同時に動いて見せるには、こまめに使う機種を変えれば良い。
普通の別人との会話だって、同時には話はしない。
リンとアリアも同時に喋らなければ、見た目は殆ど別人として生活出来そうだ。
「ご主人は良いけど、こっちは混乱するばかりよ!」
「デモ、これって精霊同士でもよくやりマスヨ?3台同時使いもイマシタ。仕事用とプライベートの機体を持ち込んだりしてマシタので」
なるほどね。画期的!とか思ったけど、天の世界じゃ結構有名な手法だったんだ。
「ちょっと、こっちで出掛けてくるよ。どこまで離れても動かせるか試してみたいし」
「アリアちゃんでもその夢中顔になるのね。もう何を言っても試すんでしょ?もー。危なくなったら早く帰って来るのよ?」
「はーい」
手を挙げて返事をする。
リン側からアリアを見る。
ほうほう、なかなか可愛いな、僕。
アリア側からリンを見る。
うーむ。もうちょい体を大きくしたいな。
この中じゃあブロン、マルモ、アリアの次にちっこい。
アリアは良いけど、リンはもっと大人なカッコいい体つきになりたいものだ!
成長スキルとか無いかな。
「行ってきま〜す」
「あ、私もついて行きます!護衛します!」
「ええ?別にいいよ?」
「ダメです!こんな可愛い子が街に出たら、すぐ悪い人に攫われてしまいます!」
「そんなに人攫いだらけの街じゃないよね、王都って。それに、アリアは天使の力が使えるから、そんじょそこらのヤツなら負ける事は無いと思うけど」
それでも、捕まったり、売られそうになったけどね。
「だーめーでーすー。お外について行けて、戦えるのは私だけなんですし!何があるか分からないんですから!はい、行きますよ、アリアちゃん!」
「うぇぇぇ」
ちょっとその辺をぶらぶらしようと思っただけなんだけどなあ。
それに、外について来て戦えるのは、レリアも何だけどなぁ。
まあ、いいか。
リーカも本気で心配してくれてるみたいだし。
「うへへぇ。リーンハルトくんと二人きりでお散歩デートぉ!くふふ」
そうでもなかった。
アリアの姿で街に出る。
リーカと並んで歩くと姉妹みたいだな。
身長的には僕が妹だね。
「て、て、て!」
「どうしたの?」
「手を!繋ぎませんか?」
「え、遠慮しておきます」
「ええ?!何でですかあ!女の子同士なんですから、別にいいじゃないですか!」
「見た目はそうでも、中身は男子だってば。リーカは良くても僕が緊張する」
「わ、私でも緊張してくれるんですか?」
「うぐっ、もういいからあっち行くよ!」
「あああん!ケチー!手くらいいいじゃないですかあ!」
リンの時よりぐいぐい来るな。
見た目で接しやすいんだろうけど、天使のアバターって言うのも、人々に癒しを与えるように出来ているみたいだ。
すれ違う人皆んなが僕を見ては笑顔になっていく。
たまに、お年寄りからは拝まれたりする。
往来の途中で跪いて祈らないでよ!
次から次へと拝む人が増えてきて、臨時教会みたいになっちゃったし。
「はあああ。凄かったですね。最後は後ろに祈り待ちの行列が出来てましたよ?」
「もう祈らせてって言われても断らないとだね。お年寄りには悪いけど、下手をしたら騒動になりそうだったから心を魔物にして断ろう」
「むう。心を魔物にしないとだね!」
「急にどったのよ。ご主人。アリアちゃんが何かしたの?」
「うん。いや。僕は何もしてないんだけど、自然と問題が擦り寄って来るんだ」
「厄介な人なのね。アリアちゃんって」
僕のせいじゃないと思うんだけどなあ。
天使用の最高機種っていうのが、目立つんだよ。
可愛いし、天使だし。
「可愛いし、天使だし」
「アリアちゃん?独り言で自画自賛ですか?まあ、アリアちゃんマジ天使ですけど、あまり自分では言わない方が良いと思いますよ?」
「そうだよね、、、。これじゃあ、ただの自分大好きっ娘の発言だよね、、、」




