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84 ゼベル・シビルフィズの野望と有能シオン

前回:人族至上主義者のボスはゼベルだった。あとはブタだった。

 ふん、日和見を決め込んだ無能どもが。

 ゼベルは内心で悪態をつく。


 奴らは大した野心もなく、自分の保身と、肥え太るための餌を手に入れることしか考えていない。

 しかもその保身ですら他人任せ。ハナから考えることを放棄しているのだ。

 周囲におもねり、輪から外れた弱者を攻撃して悦に入る。


 腰抜けたちだ。

 本来ならそんな無能どもの機嫌を取ってやるなどごめんだ。

 だが、さすがにシビルフィズ領単独では王位の簒奪は叶わないだろう。


 俺が王となった暁には、すべてまとめて処分してやる。


 ゼベルはほくそ笑み、部下を呼び出す。

 今後の計画を練るためだ。


 内心、ゼベルは人族至上主義などどうでもよいと思っている。自分が権力を手にするために利用しているだけに過ぎない。王族に対立できるの唯一の組織であるため、そこに便乗しただけだ。ゼベルは国が欲しいのである。


 レインベルの王城への使者は、すべて兵を買収して始末した。

 痺れを切らした領主自身が助けを求めに来たが、その時は奴の部下の家族を人質に取り、うまくやった。もちろん全員死んでもらったが。


 それでもどこからか王族に情報が伝わったようだが、もう派兵は間に合うまい。特殊区画のボスが復活した以上、このままではレインベルの失陥は時間の問題だろう。


 これであれは八方ふさがり。見せしめとしてちょうどよいだろう。後は俺の元に泣きついてくるように仕向けて、領ごと飼ってやっても良い。


 新しい領主は高潔な女のようだ。領民を受け入れるとでも言えば断らんだろう。我が領地は大量の穀物を生産するシビルフィズ高地を持つゆえに、説得力もある。あの娘を飼い慣らし調教した後は、領民は奴隷にでもして軍資金とすればよい。


 懸念があるとすれば、あの知恵ある魔物か。60層の魔物を倒したという出鱈目なうわさが出回っている。さすがにそれはありえない話だが、それなりに強力な魔物なのだろう。

 火のないところに煙は立たぬからな。白竜を倒したというあの獣人も警戒する必要がある。


 だがいかに個の力が大きいとはいえ、単独であればなんとでも料理できるだろう。こちらにも勇者と言う大ゴマがあるのだ。

 高い金を出して飼い慣らしてきた勇者を、やつらが消耗したところに送り込めれば。

 そのためには密偵を忍ばせて機を伺えばよい。


 王家と親しいレインベルを失陥させ、王家の信用を失墜させる。それを餌に他の領にも離間を働きかけ、懸念材料の魔物まで処理すれば。

 あとは残った一部の貴族と弱らせた王、姫を片付ければ終わりだ。


 シビルフィズ高地には、練度の高い兵が揃っている。

 内地にあるシビルフィズ領は荒野からの魔物の侵入を受けないため、レベル効率の良い迷宮での鍛錬に専念できる。


 麦が取れるのは、あくまでも食料自給率が高いというだけのことにすぎない。

 力の源は迷宮。シビルフィズ領の特殊区画は、18階層にある。その地を維持するということは、領兵はみな一流の兵士であるということ。


 時が来れば、全てを簒奪してやろう。


 この部屋に曲者の耳がないのは確認済みだ。

 ゼベルは“口頭で”部下と打ち合わせを進めた。


「さすがはゼベル様」


「今のところは奴らを泳がせてやろうではないか」


 ゼベルは静かに笑った。



 貴族たちはおろか、ゼベルすらも気付いていない。

 彼らが蔑む獣人の耳が、ピクピクと動いていたことを。



「ご主人様、全て聞き取れました」


「よくやったシオン。あの細い男の会話もか?」


「はい。あの距離なら扉を挟んでも聞き取れます。細い男、ゼベル・シビルフィズがレインベル領に悪さをした黒幕みたいです。…許せません。それに、ゼベルは王様になるつもりでいます。今の王様を病気にしているのもゼベルです」


「なるほど。コレットはブタが敵だと言っていたが、その上に狼が一匹いたらしいな。そのゼベルとやらが王になったら、いろいろと台無しだ。非常に有益な情報だ。シオンは優秀だな。とても役に立つ」


「ありがとうございます」


 王城に俺の目的の邪魔をしている人族至上主義者がいることはわかっていた。

 そのため俺の【蒐集ノ神】とシオンの【超感覚】で情報を収集していたのだが…。


 こちらにうっとうしい視線を向けるブタたちの中で、明らかに様子が異なる者がいたため、シオンに特に注意するように指示していた。


「ブタはブタらしく消費だけしていれば良かったものを。そこに狼が混ざり、身の丈に合わない野望を抱いたか。俺の目的の邪魔になるブタはどうするべきだ、シオン」


「はい、ご主人様のことを悪く言うブタさんは、狼ごと〆て、全て奪えば良いと思います」


「その通りだ。シオンは賢いな」


「えへへ」


 油断している狼とブタたち。だがそこはシオンのスキル【超感覚】の射程内。


 俺たちとゼベルの位置はかなり離れている。

 レベル30に満たない人族では、たとえ聴力を強化するスキルを持っていても声を拾うことのできない距離だ。ゼベルはシオンが並外れた聴力を持つことを知らない。


 もし知っていても、まさかこの距離で盗聴されるとは思うまい。


 一応の盗聴対策はしているようだが、シオンの情報収集能力はすでに規格外の域に達しているのだ。


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