82 宝箱はおめかしする
前回:無邪気な王女サティアが加わった
「トシゾウ、その服装は良くないかも。私は別にどんな格好でも良いと思うけど、貴族たちは服装で人を計るからね。なめられちゃうかも」
打ち合わせ中、サティアが自分のドレスをひらひらさせながら言う。
俺はサティアに向かって【蒐集ノ神】を起動した。
サティア・ラ・メイズ
年 齢:17
種 族:人
レベル:10
身 分:人族の王女
装 備:ヘルビクス・バタフライのドレス 抗毒の腕輪
「ヘルビクス・バタフライか。迷宮35層にそんな名前の魔物がいたな」
「わかる?さすがトシゾウだね。現代では製作不可能な装備だよ。ボクはこれでもお姫様なんだ」
そこそこ大きい胸を張るサティア。
「サティアは残念だな。ボロ雑巾よりはマシだが、もう少しレベルを上げろ。宝には価値がある。その価値を発揮できるものが使うべきだ。早くドレスの所有者として相応しい人間になれ」
「アズレイ王子はボロ雑巾の事です。サティさん」
シオンが絶妙なタイミングで補足する。シオンはかわいいし役に立つな。
微妙に順番を間違えて説明しているのがまたかわいい。
「ぐぬぬ。けなされているのに、やけに説得力がある上に微妙に励まされるとか。反論できない…」
ぐぬぬと声に出すサティア。別にかわいくないぞ。
「わ、私のことはいいよ。トシゾウこそ、そんな装備をしているのはおかしいんじゃない?オークの鎧や鉄の短剣は駆け出し冒険者の装備だよ」
「俺はサティアと違って、この装備を使いこなせる。何も問題ない」
「でも、トシゾウは強いよね。それなら誰でも使いこなせる安い装備じゃなくて、トシゾウがギリギリ使いこなせるような強い装備を身に着けたほうが、より装備の価値を引き出していると言えるんじゃない?」
…。
「…ふむ。なるほど、一理ある。良い進言だ。サティアは意外に役に立つな」
「意外は余計だよ。前から思ってたけど、トシゾウって偉そうだよね」
「偉いからな」
「ぐぬぬ」
サティアは話しやすい。こういう気軽なやりとりも良いものだ。
俺の装備は迷宮を出るときに適当に見繕った装備のままだ。
【無限工房ノ主】により手入れされ新品同様だが、装備の質としては三流である。
これまでは気にかけることもなかったが、人間の世界で服装はそれなりに多くの意味を持つのだったな。
前世の記憶は曖昧だが、俺も人間だった時は必要に応じて服を変えていた気がする。
「服を着こなすことは重要だよ。服はまず目に入るものだし、その人を端的に表現するんだ。どれくらいの力がある人か、どこに所属する人か、どんなタイプの人なのか、今どんな気分なのかって」
「ほう。サティアは賢いな」
「初めて普通に褒められたけど、それ、褒めてるんだよね。実はばかにしてるんじゃないよね」
「もちろんだ」
「サティさん、ご主人様から褒められるのは、とても幸せなことなんです」
「そ、そう。シオンも苦労してるんだね?」
「何の話だ。…だが、そうだな。たしかにサティアの言う通りだ。冒険者ギルドの力を示すためには、ギルドマスターである俺が良い装備をしていた方が良いだろう」
力を示すのに相応しい装備か。
そうなると、やはり50階層相当の宝が相応しいだろう。
俺は無限工房からとある鎧を取り出し、身に着けた。
この鎧は軽量でありながら恐ろしい防御力を誇る。見た目も本能に訴えかけてくる逸品だ。
「ト、トシゾウ、どうやって一瞬で着替えを…あれ、その装備、どこかで見たことあるような。たしか、歴史の勉強の時、だったかな?」
驚きつつも、サティアはどこかで見たことがあると言う。見せるのは初めてのはずだが。
「その朱の色艶、アカゾナエ、さらにノドワ、クサズリ…、まさかトーセーグソク…」
呻くような声を出すダストン。
「そうそう。たしかそんな名前で本に載ってたんだっけ。それでトーセーグソクって何?」
「なんと。姫様はご存じないのですか?勇者に憧れたことのある者なら知っていて当然。常識中の常識ですじゃ。中でもこれは特別な…、と、トシゾウ殿。これをどこで…はっ、まさかこれも…」
「うむ、親切な冒険者が迷宮まで届けてくれたものだ」
「そ、その、我々に譲っては…」
「却下だ」
「う、ワシは、ワシの憧れは…。おいたわしやサイトゥーン様…。あだだ、腰が…!」
よろよろと崩れ落ちるダストン。
老衰か?老衰はエリクサーでは治せないぞ。
ダストンはいちいち反応が面白いな。




