44 宝箱は奴隷を買う 中
「お客様?」
「…む、すまない。少々考え事をしていた。奴隷たちに声をかけることは可能か?」
「もちろんでございます。奴隷たちの発言は禁じておりますが、お客様の許可があれば受けごたえができるように命令しています。また、お客様が望むのならば自由にアピールさせることも可能です」
「なるほど、では奴隷たちに触れることは可能か?」
「はい、商品の価値が下がる行為のみお控えいただければ、あとは好きにお選びください」
そう言って奴隷商人は俺の斜め後ろに控えた。
俺は【蒐集ノ神】を起動し、奴隷を一人ずつ確認していく。ふむ、さすがに言うだけあって、多様な人材が揃っているようだ。
人族、獣人、あれはドワーフか?珍しい。あれはスキル持ち。さらにあれは…。
奴隷たちは俺が選び始めたことを察したようだ。
目が合うと怯えたように目をそらす者、逆にアピールするように胸を強調する者、無関心な者、逆にこちらを品定めしようとしている者など。
怯えているのはともかく、無関心だったりやる気がない奴隷は困るな。
俺がやろうとしていることのためには、あらゆる人材が必要になる。
やる気があるのなら全員ほしい。
やる気がなければ役に立たない。もちろん役に立たない者は不要だ。価値がない。
とはいえ、今やる気がなくても、ずっとそうだとは限らない。
シオンも最初は目が死んでいたのに、今は命令一つで軍を相手に無双できるようになった。
まずはやる気を出させて、それから勧誘してみるか。
「声を出しても良い」
俺は懐に手を入れ【無限工房ノ主】から青く輝くプリズム、レイン・オブ・エリクシールを取り出す。
「お客様、何を…?」
奴隷商人が怪訝な目を向けてくるが、言質は取っている。七色の青に輝くプリズムを奴隷たちの中心へ放り投げる。青の虹が降り注ぐ。
「ひっ!? 熱い!」
「ゴホッ、の、喉が、え!?声が出て…」
「こ、これは一体…」
奴隷たちの傷や病が一瞬で完治する。驚く商人と奴隷たち。
奴隷たちはそれなりに小綺麗にされていたが、痩せぎすだったり傷や病弱さが目立つ者も多かった。
50人を超える奴隷の管理には大きなコストがかかる。
商品の価値を保ちつつコストを抑えるように、食事や病気の治療は制限していたのだろう。
俺は動揺する全員へ向けて口を開く。
「聞け。俺の名はトシゾウ。迷宮から出てきた魔物だ。俺の所有物として働く、やる気のある人間を求めている。俺は魔物だ。よって種族によって優劣をつけない。俺の役に立つか、立たないかだ。全ての者に、適正と希望に合わせて仕事を与える。やる気さえあれば、どのような者でも役に立てるように配置する。
不服があれば異議申し立てをする権利を与える。また借金奴隷、犯罪奴隷関係なく、働きに応じて一定の報酬を与えよう。もちろん人族以外の奴隷も同様だ。真面目に取り組む者には、相応の扱いをする。だがやる気のない者、役に立たない者はその限りではない。
次のスタンピードが終わるまでを試用期間とし、その後役に立たぬ者と、希望する者をここに送り返す。今から考える時間を与える。他の者との会話と、質問を許可する。その後、希望者は前に出ろ」
奴隷たちは硬直していたが、俺の言葉を理解した者から、徐々に奴隷同士での会話が始まり、ざわざわと賑やかになっていく。
「お、俺は獣人だ、です。でも人族のおもちゃになって嬲られるのは嫌なんだ。奴隷だけど、獣人の誇りを捨てたくないんだ…です」
「言っただろう、種族は関係ない。お前は何ができる、何がしたい」
「ち、力がある。重いものでも必死に運ぶ。レベルは3だが、戦うこともできる」
「ならば肉体労働か、戦闘員として使おう」
「ほ、ほんとうか!?」
「ウチはこんな派手な服を着せられとるけど、ほんまは商売人や。あきんどや。籠の中の鳥なんてごめんやで。トシゾウはん、何でもいい、ウチを外で使ってくれへんか?」
「迷宮の素材を扱うつもりだ。それに関わる気はあるか」
「ほんまか!?」
「わ、わたしたちは頭も悪いし、力もないです、でも一生懸命がんばります。買ってくれますか?」
「やる気があればそれで良い。役に立てないなら、役に立てるように努力しろ」
「は、はい!」
「酒さえあれば家でも城ても建ててやるし、剣でもクワでも作ってやるぞ。どうだ?」
「酒は俺の役に立つために必要か?必要なら用意しよう。必要ないのならば、俺の役に立ってから給料で買え」
「ふん!若造が偉そうに。お前さんが環境さえ整えてくれるなら、あっと驚かせてやるわい!」
「そうか、期待している」
……
いくつかの質問に答えていく。
一通り質問に答え、希望者を集める。
奴隷の首輪の登録を更新し、希望者には、労働条件を魔法契約で誓約する。
全てが終わるころにはそれなりの時間が経っていた。
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